『俺が大人になったらを俺のお嫁さんにするんだ』 無邪気な笑顔でそう言ってくれた彼。 なのに大人になった途端、アイツは私以外の女の子とばかり恋愛をするようになった― あなたにずっと隠してる 何度も好きになってること―
「あれ?またオーランドの奴、恋人変えたんじゃない?」 「あーほんとだ。いいよなあ、モテる奴は」 そんな事を言いながら通り過ぎていく学生たち。 彼らの見ていた方向へ視線を移せば、確かにそこには彼がいた。 それもブロンドの綺麗な女性を連れて。 二人は仲良く寄り添って楽しそうな笑顔を見せている。 時折オーランドが彼女の頬にキスしたり、軽く抱きしめたりしながら… こんな光景、もう見慣れたはずなのにズキンと胸が痛んだ。 私はいつからオーランドの事を"幼馴染"ではなく、"一人の男性"として好きになったんだろう? もうそんな事すら思い出せない。 分かってるのは…私は一生、オーランドの恋人にはなれなくて、ずっと"幼馴染"のままという事だけ。 そして、いつも彼の恋愛相談の相手だった― 「もう理想を絵に描いたような子なんだ」 「そう…」 「だから速攻で食事に誘ったんだけどさ」 「ふーん」 オーランドはさっきから私の曖昧な返事に気付きもしないで嬉しそうに、そんな事ばかり話してくる。 私は聞きたくもない話に適当に相槌を打ちながら雑誌をペラペラと捲った。 だいたい、こんな時間に家に来て、「ーご飯食べさせてー」なんて、今やハリウッドスターになったオーランドらしかぬ台詞だ。 きっとご飯は都合のいい理由で本音は話を聞いて欲しかっただけだろう。 昔からそうだ。 オーランドは恋人が出来たり、別れたり、また好きな人が出来たり… そういう時は必ず私の家にやってきては、こんな風に一人でしゃべっていく。 いい加減、こんな関係やめたいのに、どうしても言い出せない。 この関係までやめちゃったら、私とオーランドを繋ぐ線は切れてしまうだろうから。 「ん〜の作るシチューは、ホント美味しいね!」 「…そう?普通のクリームシチューだけど…」 「凄く美味しいよ?は昔から料理が上手だったよなぁ。いい奥さんになれるね」 「…ありがと」 無邪気にそんな事を言ってくれるオーランドを私はまた好きになる。 たったそれだけで幸せな気分になれるのだ。 「あ、でももそろそろ恋人くらい作らないと。こんなに料理上手なんだしさ」 「……そうね」 小さな幸せの後に来る悲しみ。 こんな台詞も笑って頷かなければならない。 私とオーランドはそんな関係。 もう、こんな風に彼の一言で一喜一憂するのは嫌になった。 だから今日こそは、と思って用意していた台詞を私は思い切って口にしてみた。 「実は…出来そうなのよね」 「…え?」 「料理を食べさせてあげれそうな人」 雑誌を閉じてそう言うと、オーランドはキョトンとした顔で私を見ている。 私からそんな話を一切した事がないからだろう。 「え、どういう…」 「仕事先で知り合ったんだけど…ね。何度かデートしてみて、凄くいい人だから」 私の仕事は少しでもオーランドと近くにいたいと思ったから、学生の頃にあるモデル事務所に入った。 さすがに女優には向いていないし、でも幸せな事に人よりはスタイルがよく育った私はすぐに大きな仕事を取れるようになったのだ。 オーランドに少しでも誉めてもらいたくて、必死に自分を磨いた。 有名になった彼に少しでも釣り合いたいと思って仕事も頑張ってきた。 でももう、そんな無駄な片思いは終わらせようと、最近思っていたのだ。 オーランドと…その理想を絵に描いたような子の事が記事を騒がすようになってから。 もうこれ以上、オーランドの事で傷つきたくない。 そう思うようになった。 「彼もモデルでね。なかなか趣味も合うし話してて楽しいの」 「…どうしたの?…今までそんなこと一度も言った事がなかったのに」 「そうだっけ?」 「そうだよ。俺が恋人は?って聞いても、いらないって、いつも言ってただろ?なのに急に―」 「急にじゃないわ?オーリーに言ってないだけで私、色々な人に誘われたりしてたしデートだってしてたのよ。でも付き合うまでいかなかっただけ」 「嘘…ほんとに?」 「ええ」 それも事実だ。 ただオーランドには何となく言いたくなくて、"いらない"と言ってただけ。 私なりに彼を忘れる努力もしてたんだから。 でも出来なくて…結局は誰とも付き合うことなく終わったんだけど。 「じゃ…その男と…付き合うの?」 「ん。まあね」 「…ふーん…」 オーランドは何となく不満げな顔で再びシチューを食べだした。 その様子に思わず首を傾げる。 ほんとはもっと喜んでくれるだろうと思ったのだ。 だって彼は会うたびに、いつも「恋人作れば?」なんて無神経な事ばかり言ってたから。 だから今日その話をしたら、きっと「おめでとー!」なんて言って抱きついてくるかと思ったのに。 そして、そう言われたら今度こそ諦められると思ってたのに。 どうして、そんな顔してるのよ…。 すっかり温くなった紅茶を口に運びながら私は食事を続けるオーランドを見ていた。 さっきのように彼女の話でも何でもしてくれていいのに。 「で、オーリーはその理想の子と上手くいきそうなの?雑誌には、かなりラブラブな写真が載ってたけど」 「…え?あ、ああ…うん、まあ」 「何よ。気のない返事ねぇ…。今までで最高に理想に近い子なんでしょ?」 「そうだけど」 「じゃあもっと嬉しそうな顔したらいいじゃない」 言いたくもない台詞を口にしながら私は軽く笑った。 なのにオーランドはいつものように微笑むでもなく、逆に少しスネたような顔で、「嬉しいけどさ」とだけ呟く。 そして食べ終わったと同時にお皿をキッチンに運んで、戻ってきた瞬間、ジャケットを羽織だし驚いた。 「俺、帰るよ。明日も早いから」 「え?そうなの?」 「うん…じゃあ…」 「気をつけてね?」 私は呆気にとられながらもオーランドを見送った。 普段なら次の日が仕事だと家に来ないので、明日はてっきりオフだと思っていたのに。 「はぁ…とうとう言っちゃった…」 オーランドの使ったお皿を洗いながら小さく息をつく。 さっきの話は本当の事で最近デートしてたモデルのジョンに先日、「ちゃんと付き合って欲しい」と言われていたのだ。 彼は凄くいい人で今までの人と違って何となく気が合うし一緒にいても楽になれる人だった。 だからこそ、この不毛な片思いを終わらせる事が出来るかもしれないと思った。 そして最後の決心をつけるためにオーランドに話したというのに、彼は気がない素振りを見せ、サッサと帰ってしまった。 「何なのよ…。散々人のこと煽ってたくせに…おめでとうくらい言いなさいよね…」 さっきのオーランドの素っ気なさを思い出し、そんな文句を言ってみる。 私の事なんてどうでもいいのかな。 私が誰と付き合おうとオーランドには何も感じないほど、どうでもいいことなのかな。 それが何だか悔しくて涙が浮かんだ。 「オーリーのバカ。勝手にしろ…」 そう呟くと洗い終わったお皿を乱暴に食器乾燥機へと突っ込んだ。 「!ここだよ」 その声の方に顔を向けると、ジョンが笑顔で手を振っているのが見えた。 「ごめんね、遅くなって」 「いや、そんな待ってないよ」 ジョンは人当たりのいい笑顔を見せたまま、椅子を引いて私を座らせてくれた。 ここは二人で何度か来た事のあるバーで、今日は仕事の後で待ち合わせをしていたのだ。 例の返事をするために― 「じゃあお疲れさん」 「ありがと」 そう言って互いのグラスをカチンと合わせ淡い色のカクテルを口に運んだ。 「はぁ、美味しい」 「今日は大変だった?ショーのリハだろ?」 「うん。何だかショーだと熱気も凄いし圧倒されちゃった」 「そうだろうな。でもやりがいはあるしチャンスだから頑張って」 「ありがとう」 ジョンの言葉に笑顔で頷くと、彼も嬉しそうに微笑んでくれる。 そしてふと私の方に体を向けて座った。 「で…さ。返事なんだけど…」 「え?あ…」 ジョンは待ちきれないといった様子で私の顔を覗き込んできた。 もちろん覚悟していた私はちゃんと"YES"という為に真っ直ぐに彼を見つめる。 彼に"YES"と言えば、もうオーランドの事は完全に諦めなければならないのだ。 そう思うと妙に胸が痛んだ。 ダメよ…ここで躊躇したら、また今までと同じ。 何回繰り返せばいいの…? もうあんな苦しい思いはたくさんよ… そう思いながらギュっと手を握り締めた。 「あ、あのジョン…」 「うん」 「私、あなたと―」 「?」 「―――ッ」 不意に後ろで名前を呼ばれてドキっとした。 「オ、オーリー?」 慌てて振り返ると、そこにはスタッフらしき人達と入って来たオーランドがいて凄く驚いた。 「な…何して…」 「俺は打ち上げ…だけど。そっちは…デート?」 オーランドはいつものような笑顔は見せてくれず、何だか訝しげな顔でジョンを見ている。 ジョンは相手がオーランドブルームだと気付いたようで、「え?知り合い?」なんてビックリしていた。 「うん、まあ…」 「ああ…。彼が例のモデルさんなんだ」 「…そうよ。彼はジョン。ジョン、オーランドよ?彼とは幼馴染なの」 「あ、そうなんだ…。どうも初めまして」 「どうも」 ジョンとオーランドはそう挨拶を交わし握手をした。 その光景に胸が痛み、決心した気持ちが揺らぎそうになる。 何でここにオーリーが来るのよ… せっかく新しく始めようとしてるのに… オーリーのいる前でジョンにYESと言えって言うの…? 「あ、オーリースタッフが呼んでるよ?」 「ん?ああ…。じゃあ…また後でね?」 「え?ぁ…」 それは突然だった。 オーランドがちょっと微笑んでから屈むと私の頬にチュっとキスをしたのは。 「な…」 「あまり飲みすぎるなよ」 「ちょ…」 オーランドはそう言ってウインクすると、そのままジョンに、「じゃあを宜しく」なんて言って歩いて行ってしまった。 それには私もだけどジョンも唖然とした顔をしている。 「え…と……彼とは…ほんとに幼馴染…?」 「え?も、もちろん…」 私はオーランドにキスをされた頬が熱くて手で抑えながらも何とか普通に笑顔を作った。 あんな事をされたのは初めてで気持ちがついていかないしドキドキと鼓動がうるさい。 「あ、あのジョン…」 「ねぇ、」 「え?」 「彼と…何かあるわけ?」 ジョンが未だ納得のいかないような顔で私を見つめた。 「ど、どうして?あ、さっきの事ならオーリーはスキンシップ魔だから深い意味は―」 「そうじゃなくて…。何となく…彼の目がさ…」 「目…?」 「そう。俺に対して…向ける視線が嫉妬の目だったんだ」 「ま、またまた…そんなことないわよ」 「そうかな…」 「絶対にないわ」 ありえない。 オーリーがジョンに嫉妬? 絶対ないわよ、そんなの。 だってオーリーは私の事、幼馴染としか思ってないんだから。 そう思いながらカクテルをグイっと煽った。 まだ心臓がドキドキしてうるさい。 確かに…あんなオーリーは初めてだった。 「…」 「きゃ…な、何?」 ボーっとしてるといきなりジョンが私の手を握ってきた。 「さっきの返事…聞いていいかな」 「え?あ…」 そうだ…私はジョンに"YES"って言おうとしてたんだった。 ふとその事を思い出し、私は目の前のジョンを見た。 なのに、どうしてだろう… さっきみたいに言葉が出てこない。 「…?」 「あ、あの私…」 真っ直ぐなジョンの視線から目をそらしてしまった。 どうしよう…たったあれだけの事なのに私はまたオーリーに心を奪われてる。 いったい…何度好きになれば気が済むんだろう…? 「…返事は…」 「ご、ごめ―」 そう言いかけた時だった。 不意に後ろから腕を引っ張られた。 「オ…」 「送る」 「…へ?」 あまりに突然の事で思考がついていかないうちに、気付けば私はオーランドに手を引かれて夜の通りを二人で歩いていた。 オーランドも何も言わず、私も何も聞けず、ただ黙って歩いていく。 何か言葉を発すれば、今のこの時間が夢のように消えてしまいそうで。 この時の私は置いてきてしまったジョンの事などすっかり忘れ去っていた。 「はぁ…」 何度となく出てくる溜息。 あの夜以来、何をするにも気が入らず、私は暫くオフをとっていた。 オーランドはあの日、ほんとに送ってくれただけで、私を家まで送り届けると「お休み」と言って帰って行った。 私の額に優しいキスを残して。 あれは…どういう意味なの? どうして急にあんなことをしたの? そう聞きたいのに、聞きたいことはいっぱいなのに、オーリーはあれからロケに行ってしまい連絡すらとれない。 逆にジョンからは次の日、電話が来て、 「やっぱり彼と付き合ってたんだ。言ってくれればいいのに」 なんて言われて、否定しても聞き入れてもらえなかった。 きっとジョンのプライドを傷つけてしまったんだろう。 あの優しかったジョンが一転して嫌味をタラタラ言ってきたので私も最後は怒って電話を切ってしまった。 結局、オーランドのせいで私は新しい恋を掴み損ねた事になる。 まあでも、あの時は私もオーランドへの想いを再確認してしまって、あのままジョンにOKを出して付き合いだしたとしても、 すぐにダメになってただろうけど。 「もう!オーリーの奴、いったいどういうつもり?」 イライラしながらクッションを投げつける。 あれから何の音沙汰もなくて、何を考えてるのか分からない。 ジョンの事は前に話してあるんだからオーランドだって気付いたはず。 なのに、あんな風に邪魔をして理由も言わずロケに行っちゃうなんて… 何を考えてるのよ。 そんな事を考えてると、だんだん腹が立ってきた。 自分は好みの子とちゃっかり付き合ってるくせに、何で私の邪魔をしたの? 勝手だよ…オーリィ…。 「はぁ…ワインでも飲もう…」 いつ来るか分からない電話を待ってるのにも疲れ果て、私はゆっくりとソファから起き上がった。 キンコーン… 「………っ?」 その時チャイムが鳴り響きドキっとした。 こんな時間に来るのは一人しかいない。 私は鼓動が早くなるのを抑えつつ、そっとエントランスへ出て、「誰…?」と声をかけた。 すると思ったとおり、「俺…オーランド」という返事が返ってくる。 私はゴクリと喉を鳴らし、そのまま静かにキーを外し、ドアを開けた。 「ただいま」 目の前には、いつものように眩しい笑顔を浮かべたオーランドが立っている。 こんな風に本人を目の前にすると、さっきまで言ってやろうと思ってた言葉すら忘れて、「入れば…?」と言だけで精一杯だ。 「お邪魔します」 オーランドはいつもの様にそう言うと私の後から入って来た。 何となく彼の方を見れなくて、背中を向けたまま、「紅茶でいい?それともワイン?」と尋ねると、オーランドは「ワイン」とだけ答える。 私はそのまま先ほど飲もうと思っていたワインを取り出し、震える手でソムリエナイフを持った。 すると横からすっと手が伸びてきて… 「俺が開けるよ」 「…え?」 「貸して」 いつの間にか横に来ていたオーランドがニッコリ微笑んでナイフを取る。 そのまま手馴れた手つきでコルクを抜いてくれた。 「グラスは?」 「え?あ…」 そう言われて慌ててグラスを取りにキッチンへ行くと、思い切り息を吐き出した。 やっぱり、いつものようには振舞えない。 普段なら、こんな風に突然やって来るのは慣れてるし明るく振舞う事くらい出来るのに今日は意識してしまって無理そうだ。 「何なのよ、ほんと…」 オーランドがどういうつもりなのか分からず溜息が出る。 何だか私だけがドキドキしてるみたいで少しだけ悔しくなった。 「?」 「……わッ」 ガシャン… 急に声をかけられ驚いた拍子に手からグラスが落ちてしまった。 「あ、危ないよっ」 慌ててガラスの破片を拾おうとするとオーランドはそう言って私の手を握った。 それだけでドクンと鼓動が跳ね上がり、私はついパっと彼の手を振り払ってしまった。 するとオーランドは小さく息を吐き出し、頭をかいている。 「ごめん…やっぱ怒ってる…よね?」 「…え?」 「あんな事して…」 一瞬、オーランドが何の事を言ってるのか分からず首を傾げる。 が、ジョンの事を言ってるんだと気付いた。 「お、怒ってる…というか…」 「ごめん。ほんと反省してる…」 「オーリィ…」 顔を上げると、何だかシュンとしたオーランドに私は少しだけ驚いた。 「怒ってるかな…と思ったら連絡できなくて…でも凄く気になって…帰国してすぐ来ちゃったんだ…」 「…そう…」 「彼…怒ってただろ…?」 「え?ああ…まあ…」 「そうだよね…。デートの邪魔したんだし当然か…。じゃあ…彼とは―」 「もう会ってないわ?次の日に断ったし」 落ち込んで気にしてる様子のオーランドの気持ちを少しでも軽くしてあげたくて、そう言うと、彼はビックリしたように私を見た。 「え、断った…?」 「うん。彼、私が思ってたよりも凄くネチっこい性格だったの」 ちょっと苦笑気味にそう言うと、オーランドは少しキョトンとした後に、「ぷっ」っと噴出した。 「そっか…なら…良かった」 「良くないわ…?」 「え…?」 「何で…あんな事したの…?」 今なら聞けそうで思い切って尋ねてみた。 すると意外にもオーランドの頬がかすかに赤く染まった。 「オーリィ…?」 「あ…いやだから…さ…」 「あんな事したら誤解されるわよ?現にジョンだって私とオーリーが何かあるんじゃないかって疑ってたし…困るのはオーリーじゃない」 「え、何で俺が…」 「だってオーリーにだって恋人が出来たんだし―」 そこで言葉が切れた。 オーランドの顔がかすかに曇り、目を伏せてしまったからだ。 「オーリィ…?どうしたの?あ…もしかして彼女と上手くいかなかった…とか?」 この前は次のデートで必ず口説くって言ってたから、てっきりすでに付き合ってると思ったのだ。 なのにオーランドは困ったように視線を泳がせている。 「どうしたの?オーリー。彼女は―」 「言わなかったんだ」 「え?」 「彼女とのデート…断ったし」 「は?何でよ。だって理想を絵に描いたような子だって、あんなに―」 「違ったんだ」 「……え?」 不意に私を見たオーランドの言葉に眉を寄せれば、彼はもう一度、「違ったんだ、それ」と呟いた。 「ち、違ったって…」 「だから…デートの約束してたけど断った」 「な、何で…」 「やっと気付いたから」 オーランドはそう言うと真っ直ぐに私を見つめた。 「気付いた…って…何に?」 熱を放つオーランドの瞳から目をそらせない。 「俺…の事が一番大切なんだ…」 「…へ?」 「今頃になって気付くなんて遅すぎなんだけど…さ」 オーランドはそう言って照れくさそうに微笑んだ。 でも私はその言葉の意味が分からず、頭の中でオーランドに言われた事がぐるぐると回っている。 大切…ってどういう意味? 幼馴染としてって事…だよね? 「あ、あの…」 「ああ、いいんだ…。返事は分かってるから」 「は?」 何だか一人で話を進めていくオーランドについていけず、変な声が出てしまった。 「あ、あのオーリィ…分かってるって…何を…?」 「だから…が俺の事を幼馴染としてしか見てないって事…」 「…………」 目を伏せて悲しげに呟くオーランドに、私はまたしても唖然とし、口が開いてしまった。 その意味を把握するのにすら、時間がかかり、嬉しいとかいう感情が全く沸いてこない。 「ちょ…オーリィ―」 「ああ、言わないで!いいんだ…俺がバカだったんだ…。いつもが傍にいてくれる事に慣れすぎて…安心しすぎてたんだから…」 「…安心って…」 「は今まで誰とも付き合うことをしなかったし…。でもこの前、があいつにとられるんじゃないかって思ったら凄い嫌な気持ちになって」 「オーリィ…?」 「…気付いたら、あんな事しちゃってた…。から恋人が出来るかもって聞いた時から凄くイライラしてて… でもやっと気付いたんだ。あいつと一緒にいるを見て…俺の場所だったの隣に違う男がいるのを見て…」 オーランドはそこで言葉を切ると、掴んだままの私の手をそっと握った。 「俺…を一人の女の子として…凄く大切に想ってたんだって事…やっと気付いたんだ」 「――――ッ」 思わず息を呑んだ。 聞き間違えかと思った。 まさかオーランドがそんな風に思ってくれてたなんて… 「でも…は俺のこと男として見てないのは分かってるし…」 「な…ちょ、ちょっと待って…?何でそう思うの…?」 そこでオーランドが勘違いをしてる事に気付き、慌てて尋ねた。 するとオーランドはかすかに唇を尖らし、 「だって…は俺がどんな子と付き合おうと、俺みたいにヤキモチ妬いたりしたことなかったし…」 「え…?」 「俺はこの前、あんなに嫌な気持ちになったのに…は今まで俺が恋人の話をしたって気のないような顔で黙って聞いてただろ?」 「そ、それは―」 だって…そういうフリをするしかなかったんだもの… ヤキモチ妬いてるなんて知られないように振舞ってきたんだもの… それは全てオーリーとの今までの関係を続けられるよう…壊さないよう…そう思ってきたからなんだよ? 何度も貴方を好きになってる事、知られたくなかったから― 「ごめん…」 「……?」 不意に握られてた手が解放され、ビクっとなった。 「急にこんなこと言われても困るよね…」 「オーリィ…」 「でも…今まで通り…幼馴染として…俺の傍にいてくれる…?」 不安げな顔で、でも真剣な顔でそう言ってくれたオーランドに、思わず涙が零れた。 「わ、な、泣かないでよ…ごめ…ごめんね?…」 オーランドは何故かひどく慌てて、私の頬を指で何度も何度も拭ってくれる。 そんな彼を見て、いつもは強引で女の扱いには慣れてるくせに、と内心、少しだけおかしくなった。 「バカ…」 「…うん…」 「…オーリーの鈍感…」 「うん……ぇ?」 最後の一言にオーランドは一瞬キョトンとした顔で私を見た。 そんな彼を見つめて、私は昔からの想いを心の奥から解放した― 「私の方が…気付くの早かったんだから」 「……?」 まだ分からないといった顔をしてるオーランドに、ちょっとだけ微笑むと、私はゆっくりと顔を近づけ、触れる程度のキスを唇に送った。 その瞬間、オーランドは目を丸くして固まってしまったけど、私は堪えきれずに彼に抱きついてギュっと抱きしめる。 「…?」 「バカ…遅すぎるよ…」 「え…」 「私は…何度もオーリーのこと好きになってたのに…」 勇気を出して耳元で呟けば、オーランドの体がビクっと反応した。 だけど、すぐに背中に腕を回され、強く強く抱きしめられ、鼓動がいっそう激しく高鳴る。 「……嘘みたいだ」 「私だって…」 「今まで…ごめん…」 私の心が彼に届いたのか、オーランドは私の首筋に顔を埋めて呟いた。 「…好きだよ、…。ずーっと…俺の傍にいて」 「ずっと…いたでしょ?」 「違うよ…。今日からは…幼馴染としてじゃなく…俺の恋人として」 私の言葉にオーランドがクスクスと笑う。 そして、ゆっくり体を離すと、我慢できないといったように唇を塞がれる。 あんなに辛かった日々が、たった一つの甘いキスで全て綺麗に流されていく。 また貴方を好きになる。 前より深く、貴方を想う。 私は何度だって、貴方に恋に落ちるから―もう他の子は見ないでね? 祈るよう、彼の耳元で囁いた。 Whereabouts of sadness 今日からは "幸せの居場所"へと 変わっていく 日浦華蘭さまへ 『相手の俳優はオーリーかジョシュが・・・w 設定は幼馴染で、ヒロインはずっと相手を好きだったが、相手はいつも違う人と付き合ってる感じで最初は片思い。 ちょっと切ない系。しかし、何かのきっかけで二人は付き合い出し、甘々。ヒロインにベタ惚れ状態がwww』 大変、長らくお待たせしました!<(_ _)>(土下座) ほんと遅くなって申し訳ありません;;; 申し訳ないついでに、こんな内容でごめんなさいです〜(/TДT)/ 最後は甘々という事でしたが、そんな甘くないまま終わってしまったとゆう最悪な結果に… オーリー気付くの遅いよ! 友達から意識する瞬間って、ホント難しいです…(汗)(言い訳) こんな不出来なもので、ほんとすみませんでした(●´人`●) でもリクエスト、本当にありがとう御座いました! C-MOON@HANAZO
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