Irreplaceable existence

 













彼の前髪に指を通し、寝顔を見つめる。


たったそれだけで胸が高鳴って同時に痛くもなるのだ。


















こんなにかけがえのない存在でも 届かない背中――




















「あ〜頭いてぇ・・・」


そう呟いてソファから起き上がる男。


「ああ、・・・水ちょうだい、水・・・」


コイツは私の恋人でも何でもなくて・・・いわゆる"幼馴染"というやつ。


「はい、お水!全く・・・!飲みすぎよ?」


呆れたように溜息をつきながらミネラルウォーターを差し出せば、彼、レオナルドは煩そうに目を細めた。


「・・・悪かったね」
「当たり前よ。悪いに決まってるじゃない。夜中に酔っ払って押しかけてくるなんて」


そう言いながら私は隣に座るとゴクゴクと水を飲んでいるレオを睨んだ。


「女と別れるたびに私の家に来られるなんて迷惑以外のナニモノでもないわ。今日はせっかく休みだったのに―」
「・・・お前・・・」
「な、何よ・・・」


レオは目を更に細めると横目で私を見てくる。
そして、いつものように皮肉たっぷりの笑みを浮かべた。


「その様子だと最近、男と寝てないだろ・・・」
「・・・!!はあ?!」


朝っぱらからとんでもない事を言ってくるレオに私は顔が真っ赤になった。


「バ、バッカじゃないの?!」
「だから、そんなイライラしてんだろ?あー分かった、分かった。じゃあ俺がいい男紹介してやるよ」
「な・・・何・・・っ」


得意げに笑っているレオに私はあまりの怒りで言葉が出てこない。
なのにレオは笑うのをやめ、大きな欠伸をすると―


「はぁ〜腹減った・・・。、何か飯作って」
「―――ッ!!」


ブチ・・・っと何かが切れた音がした。


「勝手に冷蔵庫の中のモン食べてろ!レオのバカ!」




ボフッ!




「ぅわっぷ・・・」




あまりの怒りに私はクッションをレオの顔面に叩きつけ、ドスドス歩きながらバスルームへと向かった。
後ろからはレオの「おい、〜。ご飯・・・」と言っているのが聞こえたが、そんなもの無視してバンっとドアを閉める。


ったく!人の気も知らないで!!いい加減にしろってのよ!
だいたい何で、いっつもいっつも女と別れたら、うちに来るわけ?!
やけ酒飲むなら、あの能天気な親友のトビーとでも飲んでろってのよ!


イライラしながらバスルームに入ると一気にパジャマを脱いでお湯を出した。
熱いシャワーを顔から浴びて何とか気分を落ち着かせようとする。


「はぁ・・・」


壁に両手をつけて下を向くと頬から顎に水滴が流れてくる。
それが涙と混じって床へポタポタと落ちていった。


アイツ・・・レオとは子供の頃からの知り合いだ。
家が近所だったから学校もずっと同じで、言ってみれば兄貴みたいな存在。
レオは若い時からCMとかドラマに出るような仕事をしていて昔っから女にもモテていた。
中学、高校と合わせても何人の女と付き合ってたか、私ももう忘れてしまった。
(と言う事は本人も忘れてるだろう)
そして完全に俳優という仕事をしだして世界的に有名になった今でも、それは変わらない。
いや、学生の頃以上に女と派手に遊んではゴシップ雑誌を賑わしている。
そんな彼を私は傍でずっと見てきた。
呆れながら、時には怒りながら。
でも、それでもレオを嫌いになりきれないのが今の私――


レオが"女と別れた・・・"と言って私のところに来るようになったのはいつ頃だったか。
あんな遊び人のクセに妙なところで寂しがり屋で、決まって恋人と別れた後は「一人でいたくない」と言って押しかけてくる。
そのたびに私は朝までお酒に付き合い、レオの話に耳を傾けるのだ。
まあ、よくよく聞いてるとレオも大して本気でもなかった事がわかり、そのたびに呆れるんだけど。
でも、それでも彼の女関係の事なんて本当は聞きたくない・・・
そんな私の気持ちを知りもしないで、レオは昨日もうちへとやって来た。


お決まりの、「一緒に飲もう。一人でいたくないんだ」なんて言いながら・・・


簡単に顔や髪を洗い終わり、キュっとコンクをひねった。
シャワーが止めるとポタポタと雫が足元に落ちている。
そのままバスタオルを取り髪を拭くと私はバスローブを羽織った。


「はぁ・・・私も少し二日酔いかな・・・」


レオの酒に付き合うと私までつい飲みすぎてしまう。
・・・聞きたくもない話を聞いているから。


(今日は休みだし・・・レオが帰ったら、もう一回寝よう・・・。アイツどうせ仕事だろうし)


そう思いながら廊下に出ると、何かいい匂いが鼻腔をくすぐる。
何だろう?と思いながらリビングに向かうと、レオがキッチンに立って何かを焼いているのが見えた。
レオは鼻歌交じりでフライパンを振りながらジュ〜っという美味しそうな音をさせている。
私は静かに歩いて行くと彼の背中を見つめた。


いつも・・・見てきた彼の背中・・・
子供の頃から、ずっと追いかけて来た。
でも振り向いてもらえない・・・私は後ろから彼を見ているだけ。
手を伸ばしても決して届かない、レオという存在――


いつの間にか、かけがえのない存在になっていたのに・・・それを伝えられない・・・。


それが今の私とレオの関係なんだ――





「あれ?出たの?」
「あ・・・うん・・・」


レオがふと私に気づき、振り返った。
私はハっとして、ぎこちない笑顔を見せると彼の方に歩いて行く。


「何・・・作ってるの?」
「ん〜?ああ、ツナオムレツ。が作ってくれないからさ」


レオはそう言って笑うと焼きあがった形のいいオムレツをお皿の上にひょいっと乗せた。


「ほら」
「・・・え?」
「食べろよ。も腹減ってんだろ?」


いきなりそんな事を言われて私は驚いた。


「で、でもレオだって―」
「ああ、俺はもう食べた。ほら」


そう言って指差した方を見れば確かにテーブルの上に空のお皿とコーヒーカップが置かれている。


(じゃあ・・・レオは今、私の為にこれを焼いててくれたの・・・?)


たったそれだけで胸の奥がキュッとなった気がした。


「何だよ、食べないの?」
「う、ううん。食べる・・・ありがと・・・」


涙目になったのを見られたくなくて私は俯きながらお皿を受け取った。
レオはそんな私の頭にポンと手を乗せると、「ま、夕べ迷惑かけたお詫びって事で」と笑っている。
その言葉が少し痛かった。


(迷惑なんて・・・ほんとは思ってないよ・・・?)


言いたくても言えない言葉を心の中で呟きながら、私はテーブルについた。
レオは自分の使った皿とカップを下げると、すぐにコーヒーを淹れてくれる。


「はい、コーヒー」
「あ・・・ありがとう」
「いいって。それより美味しいか?」
「うん、美味しい」


不安げな顔で覗き込んでくるレオに私は素直に頷いた。
するとレオも嬉しそうに微笑んで私の頭をクシャっとするとリビングの方に歩いて行く。
視線でそっと追うと、彼は煙草に火をつけながらソファに座り、テレビをつけて見始めた。


(レオ、仕事じゃないのかな・・・?何だかノンビリしてるみたいだけど・・・)


オムレツを食べながらレオの様子を伺いつつ、そんな事を考えた。
だいたい、いつもは朝起きると「いけね、仕事行って来る!」なんて慌てて帰って行くのだ。
でも今日はそんな気配は見せない。


もしレオもオフなら・・・今日は一緒にいて欲しいな・・・
でも・・・きっとレオの事だからオフでも、また女の人とデート、なんて事もありえるか・・・
"女と別れた"って言ってた次の日には別の女性とデート、なんてレオにはよくある事だ。


ふと寂しくなって最後の一口をパクっと一気に口に放り込んだ。
その時、携帯の着信音が鳴り響き、ドキっとして顔を上げるとレオが電話に出るところだった。


「もしもし。ああ、ルーシー?うん、起きてたよ。ああ・・・今日はオフなんだ、うん」


そんな会話を聞いてると自然と聞き耳を立ててしまう。


(やっぱりレオ、デートに行っちゃうのかな・・・)


「え、これから?ん〜・・・いや別に、そんなんじゃないんだけどさ・・・ちょっと無理かな・・・」


(あれれ・・・珍しい・・・。レオが女性からの誘いを断ってる・・・。明日は雨が降るかも)


なんて思いながら食べ終わったお皿を片付け、コーヒーカップを手にリビングに向かった。
レオは電話で話しながらチラっと私を見ると、


「あーうん。ちょっと用があってさ・・・ごめん。またな?ああ・・・じゃあ・・・バイ」


と言ってサッサと切ってしまった。
私はレオの隣に座って苦笑気味に彼を見ると、「嘘つき」と言ってやる。
その言葉にレオは「何だよ」なんて言って私の額を指で突付いた。


「用なんてないくせに。だからノンビリしてるんでしょ?」


コーヒーを飲みながら、そう言うとレオは笑いながら肩を竦めた。


「あるよ?大事な用事がね」
「嘘・・・ああ、分かった。他の子とデートの約束してるんだ」


皮肉たっぷりに彼を横目で見ながら苦笑するとレオは困ったように溜息をついた。


「バーカ、違うよ。言ったろ?にいい男紹介してやるって」
「・・・・・・は?」


その言葉に一瞬、ポカンとした。


(紹介?ってさっき言ってた事・・・本気だったわけ?)


レオはそんな私を見てちょっと笑うと身を乗り出し顔を覗き込んできた。


「何だよ。信じてなかったのか?」
「な・・・何言ってんの・・・?いいよ、紹介なんて―」


少しづつ痛くなる胸の奥。
レオから男の人を紹介してもらうなんて、そんな事出来るわけないじゃない・・・


「何で?だって、去年、あのモデルと別れてから誰とも付き合ってないだろ?」
「い、いいったら・・・。それに恋人なんていらないもの・・・」


視線を逸らしながら何とか平静を装う。
あの恋人だってレオを忘れるために付き合ってたようなものだ。
でも結局、そんな気持ちが伝わるのか、いつも振られてしまう。


「君は俺を見てない」


そんな風に言われて私の元から皆、去っていく。
でも仕方がない。
悪いのは私なんだから。
いくら他の人と付き合ってもレオと重ねて見てしまう。
どこか似てる部分を探してしまう。
手の形が似てる、とか目の色が同じとか・・・
そんなんで相手を好きになろうとした私がバカなんだ。
だから・・・もう他の人と付き合う事をやめようと決めた。


(なのに・・・どうしてレオから紹介なんてしてもらえるのよ・・・)






「とにかく!紹介なんてしてくれなくていいから」


キッパリそう言ってレオを睨むと、彼は少し驚いたように私を見た。
でもすぐに溜息をつくと、「あっそ。もったいない。ほんとイイ男なんだけど」なんて言ってソファに凭れた。
その言葉に私はカチンとして抑えていた苛立ちが思わず出てしまった。


「別にレオに紹介とかされたくないから・・・っ」
「・・・何だよ、その言い方・・・。俺は心配して―」
「・・・だから心配もされたくない!」


思わず怒鳴ってソファから立ち上がると、レオもムっとしたように立ち上がった。


「今日のお前、可愛くないぞ?」
「可愛くなくて悪かったわね・・・!レオこそ、おせっかいじゃないの。人の気も知らないで―」
「・・・?」
「―――ッ」


ハっとして言葉を切った。
ついイライラして本音を言いそうになってしまった。


「どういう・・・意味だよ?」
「・・・べ、別に」


レオは急に真剣な顔になって私を見つめてくる。
その視線に堪えられなくなって彼に背中を向けた。


「答えろよ。俺が・・・何を知らないって?」
「な、何でもないったら・・・!それより電話の女性とデートでもしてきたら?私の事は放っておいて」
「何だよ、それ」


後ろから聞こえてくるレオの声は少し怖かった。
それでも私は涙を堪えて、また一つ嘘をつく。


「でも・・・また別れたからって私のところに来ないでね。もうウンザリなの」
「・・・おい、?」
「ずっと今まで黙ってたけど・・・もうレオのそんな話・・・聞きたく・・・ないのよ」
「・・・・・・ッ」


かすかに声が震えた。
それでもハッキリ、そう言うとレオは何も答えず、思い切り息を吐き出している。


「あっそ、悪かったよ。そんな迷惑かけてたなんて知らなくてさ」
「・・・・・・っ」
「じゃあ・・・のご要望通りデートでもしてくるよ」


レオはそう言って私の横を通り過ぎると、こっちを見ないまま、「・・・今まで悪かったな」と呟いて部屋を出て行ってしまった。
エントランスのドアが閉じる音がした時、我慢していた涙が一気に溢れてくる。


「・・・・・・ッ」



ソファに座り込み、顔を両手で覆ったが涙はどんどん零れ落ちて嗚咽が洩れた。


「・・・っ・・・レオ・・・のバカ・・・」


ずっと隠してきた想い・・・
いつも堪えてきた痛み。
それらが入り混じって悲しい気持ちと悔しい気持ちで心の中がグチャグチャだった。


もう他の人なんて見ないでよ・・・
他の人の話なんてしないで・・・


沢山の女友達に、沢山の恋人たち・・・
いつもレオから聞かされてた。
でも、もう嫌だ。
そんな話、聞きたくない。
じゃないと私はもう・・・この醜い感情を隠し切れない――


レオが私のことを女として見てくれてないのは知ってる。
だから彼の前でもずっと"幼馴染"を演じてきた。
レオがどれだけの人と付き合おうと、私は絶対にその立場にはなり得ない・・・
そう自分に何度も言い聞かせて嘘をついてきたのに・・・もう疲れてしまった。


何でも聞いてくれる、優しい"幼馴染"を演じる事に――









どれくらい泣いてたんだろう。
動く事も出来ず、着替える事も出来ず、私はずっとソファに顔を押し付けていた。




キンコーン・・・




「・・・・・・?」



チャイムの音がしてハっと顔を上げた。


(誰・・・?)


私はゆっくり体を起こすと涙で濡れた頬を手で拭いた。



キンコーン・・・



再びチャイムの音がして、私は溜息交じりで立ち上がった。
何だか体中の力が抜けた気がして少しフラフラする。


(・・・押し売りだったら追い返してやるから・・・)


そう思いながらバスローブの紐を縛りなおすと、そっとエントランスに向かう。


「・・・どちら様?」


少し鼻声のまま声をかける。
するとドアの向こうから、「・・・俺」と一言だけ聞こえてきた。


「・・・レオ・・・?」


私は驚いて、ドアを開けようとした手が止まってしまった。


「・・・開けてよ、


さっきとは違う冷静なレオの声が聞こえてくる。
私は何故レオが戻ってきたんだろうと思いながら言いたくない言葉が口から洩れた。


「・・・デートに行ったんじゃ―」
「・・・行けないよ・・・」
「・・・え?」
「・・・いいから・・・開けろよ」
「・・・・・・・・・」


いつもの・・・少し強引なレオの声・・・
その声に惹かれるようにドアを開けると、どこか困ったような顔をしたレオが立っていた。


「・・・どうしたの・・・?」


レオは今まで見せた事のないような顔をしていて私は少し戸惑いながら尋ねた。


「・・・入っていい?」
「え・・・?」


いつもならケンカの後でも平然としてるレオが、少し伏せ目がちに呟いた。
ちょっと驚いたが、さっきの怒りより、レオが戻ってきてくれた事が嬉しくて、私はついドアを開け放ち、彼を中へ促す。



「・・・ただいま」


レオは少し照れくさそうに、おどけた感じで呟いてリビングの方へと歩いて行く。
その後から私もついていくと、レオは苦笑交じりで振り向いた。


「どうでもいいけど、・・・。そんな格好で出るなよ」
「・・・え?」
「俺じゃなかったら危ないだろ?」


いきなり、そう言われて私は自分の格好を見下ろした。
確かにバスローブのままで、ちょっとだけ顔が赤くなる。


「・・・何かのセールスかと思って・・・」


だいたいセールスに来るのは中年女性が多い。
なので、あまり格好の事なんて気にしていなかった。
でもレオはちょっと苦笑すると、「今は男のセールスマンも多いし気をつけろよ」なんて言ってくる。
そんな風に言われると、レオがちゃんと私を女性として見てくれてるのかなって少し嬉しく感じた。
なのに口からは素直じゃない言葉が洩れる。


「・・・分かってるわよ・・・。それより・・・どうしたの?」


私が再度そう尋ねるとレオは小さく息をついて私を見た。


「俺は・・・にずっと甘えてたよな・・・」
「・・・え?」
「・・・さっき言われてハっとしたよ」
「レオ・・・?」


いきなり、そんな事を言われてちょっと驚いた。
それでもレオは真剣な顔で私を見ると、「ごめんな・・・?」と微笑んだ。
その言葉に胸が痛み、小さく首振るとレオがゆっくり私の方に歩いて来る。


「俺、全然気づかなかった・・・」
「い、いいよ、もう・・・」
「よくないよ・・・」
「・・・・・・?」


ふと声のトーンが変わり、私は顔を上げた。
すると優しい瞳が私を見つめていて少しドキっとする。
昔から大好きだったレオの綺麗なブルーグリーンの瞳・・・
こんな間近で見ると、やっぱり見惚れてしまう。


「な、何が・・・良くないの・・・?」


慌てて視線を逸らしながら尋ねると、レオは少し笑いながら私の頭に手を乗せた。


の・・・気持ちに気づかなくてさ」
「・・・・・・ッ?」


ドキっとした。
一瞬、自分の気持ちがレオにバレたのかと思ったのだ。
でもすぐに、彼の言葉はさっき私が言った事に対してだと思って、「もういいってば」と苦笑いをした。
するとレオは再び溜息をついて苦笑している。


「・・・良くないって言ったろ?」
「え?」
「お詫びに・・・とびきりの男、紹介したいんだけど・・・」
「・・・な・・・」


ちょっと笑いながら、そんな事を言うレオに私はまた胸が痛くなった。


「だ、だからそれはいいって、さっきも言ったじゃない・・・」


顔を逸らして、そう言ったがレオは笑いながら肩を竦めると、


「でもさ、と相性もいいと思うんだけどな」
「・・・な・・・何で・・・そんな事が分かるのよ」


レオの言葉に口を尖らせ、軽く睨む。
それでもレオは笑顔のまま私を見つめた。


「そりゃ長年見てたらしいからさ。・・・のいいとこも悪いとこも、多分そいつは全部知ってる」
「・・・どういう意味?あ・・・もしかしてトビー?だったらお断り―」
「そいつものこと、ずっと好きだったんだけど、なかなか言えなかったみたいなんだ」
「・・・・・・え?」


何が言いたいのか分からず、眉を顰めて振り向くと、レオは照れくさそうに微笑んだ。










「そいつ・・・レオナルドって言うんだけど・・・」





「・・・・・・は?」










一瞬、レオが何を言ってるのか分からなくて私は思い切り顔を顰めた。


(い、今・・・レオナルド・・・って言った?まさか・・・同じ名前の友達・・・とか?)


そんな事を考えながらジっと見つめるとレオが軽く噴出した。


「・・・ここまで言っても・・・まだ分からない?」


「・・・・・・・・・・・・?」


分からない・・・?って・・・どういう事・・・?
レオは何を言いたいの・・・?



そう思いながら黙っていると、レオは思い切り息を吐き出した。
かと思うといきなり私の腕を掴み、自分の方へ一気に引き寄せる。


「ちょ、ちょっと―」


「・・・ったく・・・ほんと鈍いよな、は・・・」


「・・・っ?」


ドキっとして顔を上げた瞬間。


腰を抱き寄せられ驚く間もなく、レオに唇を塞がれていた。








「――――っ」


「・・・だって・・・俺の気持ち、知らないくせに」








ゆっくりと唇が解放されると、レオが苦笑交じりで呟いた。






「・・・ったく。いつになったら・・・気づくんだ?」






得意げな顔の彼に、私は何も言えないまま固まってしまった。
ただ彼にキスされた唇が熱くて、自分に何が起こったのか分かるまで時間がかかる。


「・・・レ・・・オ・・・?」
「・・・俺がいつも他の女の話をするたびに、笑顔で"頑張れ"って言ってたよな?」
「・・・・・・ぇ・・・?」
「それが俺にとって、どんなけキツかったか分かってる?」
「・・・な・・・何で―」
「少しは妬いてくれてもいいんじゃねーの?って、いつも思ってた俺の気持ち・・・だって知らないくせに、さ」
「・・・・・・・・・ッ?」


その言葉にハっとしてレオを見上げると、苦笑いを浮かべながら困ったように眉を下げている。
でもそれもすぐに涙で曇ってしまった。


「・・・・今日まで幼馴染を演じてたのは・・・同じだったようだな?」


レオはそう呟いて泣いている私を強く抱きしめる。


そして一言・・・私が死ぬほど欲しかった言葉を呟いた―――















「そろそろ・・・"幼馴染"は卒業しないか・・・?」
















―――――その言葉を、ずっと待ってたの。


























Irreplaceable existence






        これから 変わっていく 2人の"形"
































めぐる様へ

『レオナルド。幼馴染で切ない系でお願いしますvv
レオの事が小さい頃から好きなんだけど、レオは女をとっかえひっかえ・・・。
でも、別れると決まってその幼馴染に所に来るって感じが良いです。』


リクエストではこうでしたが・・・すみません、自信ありません・・・_| ̄|○;
しかも切なくない・・・感じですね・・・あはは(苦笑)
テーマがあってそれを短くまとめるのって何気に難しいっす;;(ぇ?言い訳?)
こんなんで、ほんと申し訳御座いません;; しかも何気にハッピーエンドにしてるし、俺!(撃沈)
これ、もっと長く書けば話膨らむ気がするんですが(オイオイ)
気に入らなければお引取り致します〜(T-T)ノ
リクエスト、ありがとう御座いました<(_ _*)>


 C-MOON@HANAZO