激しい愛情と
優しい愛情と
静かな愛情・・・・・・・・・・・・・・・
三つの想いが絡まって、もがけばもがくほど・・・
窒息しそうになるほどに沈んでいく。
自分の弱い心と
3人の愛情で・・・・溺れてしまいそうだ―――
誰にも言えない秘密を楽しむ方法・最終話
間違いを犯した。
それは"秘密"という名で私の心に重く圧し掛かる・・・・・・
私には大切な友人が3人いる。
仕事で知り合ったのがキッカケだったけど、気づけば、それぞれも共演する事で仲良くなり、今では変な4人の友人関係が出来ていた。
3人は皆、とても魅力のある人。
一人は明るく前向きで周りの人達まで元気にする。
一人は優しく、謙虚で一緒にいると癒される。
一人は少年のように純粋で、話していると忘れかけてたものを思い出させてくれる・・・・・・
私は3人の、一人一人の魅力に次第に惹かれて行った。
最初は一人の人間として・・・
それが少しづつ一人の女として彼らを見るようになっていた。
4人でいる時には、もちろん友人として接していた。
ただ時々、スケジュールの都合がつかなくて約束をしていても一人が来れなくなった場合にだけ、彼らの中の一人と二人きりで会う事もある。
そんな時は、やっぱり、その相手に恋心のようなものを感じるのだ。
最初はオーランドだった。
彼は独特の魅力がある。
明るく人懐っこい彼は男からも女からも好かれるほどで、あの性格は天性のものだと思う。
それに、あの甘い顔で微笑まれれば見惚れない女性などいないんじゃないだろうか。
男の色気もあり、そして元気で甘えん坊な顔も持っている。
その二面性に私は惹かれていた。
ジョシュとイライジャとはオーランドに会う前から友人関係だったが、その時は互いに若く、本当に友達として付き合っていた。
だけど次の仕事で久々に会った時、二人ともすっかり大人の男性へと変わっていて驚かされたのだ。
ジョシュも色々と仕事の事で悩んでいる様だった。
彼と二度目に一緒に仕事をした映画でモロッコに行ってから、ジョシュの中の世界が変わったらしい。
自分の今の現状に不信を募らせ、彼は長い休養を取った。
その映画の撮影中に彼と二人で話した事があった。
そこでジョシュの感じた事を聞きながら、私は彼の事を素適な人だと改めて思ったのだ。
私はジョシュといると癒されている自分に気づいた。
イライジャは最初に会った時は17歳。
弟のような存在だった。
それから暫くしてロード~のロケで再会。
その時の彼は、少し大人になっていて、よく仕事の後に私の悩みとかを聞いてくれた。
"一人で悩まないで"
彼はいつも、そう言ってくれる。
そのたびに甘えてしまう私がいた。
3人への想いに気づいた時、私は自分で自分の事が、よく分からなくなった。
こんな風に同時に違う人を好きになった事なんてなかったから。
だけど3人それぞれに惹かれるところが違うのだ。
正直、自分でも、どうしていいのか分からなかった。
だから私は今のまま、友達のままの関係でいつづけようと思った。
自分の気持ちは言うつもりもなかった。
誰か一人を選んで告白するとか、そんな事が出来ないくらいに、皆が好きだったから。
友達のまま一緒にいれたら、と、そう思っていたのだ。
そうすれば誰かに恋人が出来たとしても、この友達関係は続いていく。
目先の想いで今の関係を壊したくはない。
本当にそう思っていた。
それが崩れたのは・・・あの夜からだったろう。
あの夜・・・・・・オーリーと偶然にも会ってしまった時から―――
『?どうしたの?』
「・・・え?」
ボーっとしていた私はその声でハっとした。
『急に黙るから・・・疲れてる?』
「あ・・・う、うん、ちょっと・・・・・・」
『あまり無理するなよ?』
「うん・・・大丈夫よ?それより・・・・・・どうしたの?」
私は衣裳部屋の奥へ行くと、そっと窓を開け外の空気を吸い込んだ。
今日は天気も良く、カリフォルニアらしい青空が広がっている。
そんな空を見上げながら、ジョシュの言葉を待った。
『・・・あの・・・さ』
「うん?」
言いにくい事なのか、ジョシュは何となく言葉を濁している。
「ジョシュ・・・?」
『あ、ごめん・・・。やっぱさ、会ってからにするよ』
「え?」
『俺、今日は早めに終わりそうなんだ。は?』
「私は・・・多分、夜中になっちゃうかも・・・・・・」
スケジュール表をチラっと見て、そう言えば、ジョシュは軽く息をついて、
『そっか・・・でもいいよ。待ってる。終わったら電話してくれる?』
「分かった・・・。じゃ後で電話するね・・・?」
私はそう言って電話を切った。
「ふぅ・・・」
「どうしたの?溜息なんてついて」
「――――っっ?」
その声にドキっとして振り向けば、いつの間にかリジーが笑顔で立っていた。
「あ・・・・・・リジー・・・・・・」
「おはよう、」
「お、おはよう・・・・・・あ、えっと・・・・・・衣装よね・・・?」
「うん」
リジーは普段と変わらぬ笑顔で頷いて近くにある椅子に座った。
"あの夜"の後も、リジーは変わらない態度で接してくれている。
ただ今までと違うのは――――
「ちょ・・・リジィ・・・」
衣装を出していると不意に後ろから抱きすくめられドキっとした。
そのまま後ろを向けば軽く触れる唇と唇。
だが、それはすぐに離れ、腕からも解放される。
「これで撮影、頑張れそう」
「・・・リジィ」
ゆっくり振り向けば、おどけたように、そう言ったリジーに私はかすかに頬が赤くなった。
「何言って・・・・・・。はい、これ」
視線を反らし、衣装を渡せばリジーは苦笑しながら受け取った。
だがすぐに真剣な顔に戻ると、軽く目を伏せ椅子に座る。
「今日・・・・・・ジョシュに会うの・・・・・・・・・?」
「え?」
「さっき・・・電話してたの聞こえたんだ」
「ぁ・・・・・・」
その言葉にドキっとした。
リジーは再び私を見たが、その奇麗な瞳からは何を考えているのかは読む事は出来ない。
「そんな顔しないでよ。この前も言ったろ?が思うようにすればいいって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉に顔を上げると、リジーは優しい笑顔を見せてくれた。
そうだ・・・・・・・・リジーの気持ちを知った、あの夜。
リジーはそう言ってくれた。
"は誰のものにもならないでいい"
"が思うようにしたらいい・・・・・・。僕は黙っているから・・・・・・・"
そう言ってくれた。
全てを知っても、そう言ってくれたリジーの想いが心に響いた。
責められても仕方ないのに、それでも、そう言ってくれた彼に少しだけ救われたのだ。
「ありがとう、リジー・・・・・」
「いいよ。じゃ、僕は撮影に行って来るね」
「うん、頑張って」
私が何とか笑顔で見送ると、リジーはちょっと微笑んで部屋から出て行った。
「思うように・・・・・・か・・・・・・」
そう呟いて椅子に座る。
このままじゃいけないと思っていた。
二人との関係を持ったまま、それぞれに秘密にしておくなんて出来ないと・・・・・・
このまま友達として付き合っていけるはずなんてない。
一つが崩れてしまえば残りも全て崩れてしまうんだ。
今の4人のように・・・・・・
私はそう思いながら、ジョシュの話って何なんだろう・・・・・・と少しだけ気になっていた。
「え・・・?皆・・・・に・・・・?」
「うん、話そうと思って」
ジョシュはそう言うと照れくさそうに微笑んだ。
仕事も結局、夜中までになり、終わってからジョシュに電話を入れたら、ちゃんと待っていてくれた。
なので、そのまま彼の滞在するホテルまでやってきたのだ。
そこで言われた。
「皆に・・・俺達のこと、言っていいかな・・・・・・?」
それにはドキっとしてしまった。
そんな事をしたら・・・オーリーとジョシュの関係までがおかしくなってしまいそうで・・・・・・
「・・・?あの・・・嫌か?」
「え?」
呆然としていた顔を上げてジョシュを見れば、彼は何だか不安げな表情で私を見ている。
「あ・・・そうじゃなくて・・・あの・・・」
どうしよう・・・ここで嫌だって言えば、ジョシュを傷つけるだろうか・・・
でも、このまま話せばオーリーの事も傷つけてしまう。
流され、バカな事をしてしまったツケがまわってきたんだ・・・・・・
「、どうした?」
ジョシュが私の肩を抱き寄せ優しく抱きしめてくれた。
その温もりには確かな愛情を感じられる。
今は、それすら胸が痛い。
「、もしかして・・・・・・皆のこと気にしてるのか?」
「え?」
「いや・・・・・・オーリーもリジーも・・・・・・その・・・のこと・・・」
「ち、違うわ?私は・・・・・・今のままの関係でいたかったの・・・。ただ、それだけなのに・・・」
ジョシュが言おうとした事を慌てて遮った。
だが、私の言い方でジョシュは悲しげな顔をする。
「ごめん・・・そうだよな?俺が・・・壊したようなもんだし・・・」
違う・・・違うの、ジョシュ・・・・・・
壊したのは、この私なの・・・・・・
ジョシュは相変わらず優しく抱きしめながら、頬にキスをしてくれる。
それだけで胸が高鳴り、愛しさが溢れてきてしまう弱い私―――
やっぱり・・・・・・このままじゃいけない。
漠然とながら、そう思っていた。
「、お帰り」
「オ、オーリー・・・・・・」
明日は撮影が早いと誤魔化し、ジョシュのホテルには泊まらず、そのまま帰宅すれば、家にはオーリーが待っていた。
「ど、どうしたの・・・・・・?」
私は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、それでも精一杯の笑顔を見せる。
ソファから立ち上がったオーリーは、そっと私を抱き寄せ頬にキスをした。
「に会いたくて待ってた。ダメだった?」
「・・・・・・そんな事は・・・・・・.電話くれれば良かったのに・・・・・・」
「驚かそうと思ってさ」
オーリーは、そう言っていたずらッ子のような笑顔を見せた。
そのまま顔を近づけ、ゆっくりと唇を重ねてくる。
瞬間、私の体が熱くなった。
「ん・・・・・・ちょ・・・・・・オーリー・・・・っ」
「・・・・・・どうしたの?」
少しだけ体を放せば、彼は訝しげに私の顔を覗き込んでくる。
「な、何でも・・・・・・ちょっとメイク落としちゃうから・・・・・・」
「そう?じゃ、待ってるね」
オーリーはそう言ってシェビィの方に行くと抱っこして頭を撫でている。
そんな彼を見ながら私は静かにバスルームへと歩いて行った。
「はぁ・・・・・・」
洗面所でお湯が流れているのを見ながら溜息が洩れる。
ジョシュに会ってきた後には余計にオーリーの顔が、まともに見れない。
どうしたらいいの・・・・・・?
こんなこと、いつまでも続けていられない・・・・・・
私は迷っていた。
どうしたらいいのか・・・・・・どうすべきなのか・・・・・・
サっと顔を洗い、軽くシャワーを浴びると、楽な服装に着替えリビングに戻った。
オーリーは猫じゃらしを持ってシェビィと遊んでいる。
「あ、。こいつ、少し太ったね」
「あ・・・・うん。体調が良くなったら食欲出ちゃって・・・・・・」
少し丸くなったシェビィを見て、そう言えばオーリーは猫じゃらしを置いて私の方に歩いて来た。
そして、そっと腰を抱き寄せるとコツンと額をあててくる。
「は・・・・・・少し痩せたね・・・?」
「そ、そう・・・かな・・・」
「痩せたよ・・・。ちゃんと食べてる?」
「・・・た、食べてるよ?」
何とか笑顔を見せ、そう言うも、オーリーはまだ心配そうな顔のまま。
「もしかして・・・・・・何か悩んでる?」
「え・・・?そんなこと・・・」
「俺とのこと・・・隠してるの嫌かな?」
「オーリー・・・」
その言葉にドキっとして目を伏せると、彼は額を放し、そこに軽くキスをした。
「俺さ・・・考えたんだけど・・・。俺達のこと・・・・・・皆に話そうと思って・・・」
「・・・・・・っ」
その言葉にドクンと心臓が跳ね上がる。
そんな・・・オーリーまで・・・
「この前も・・・リジーに電話したんだけど・・・隠しておくのが辛くて・・・」
「え?」
「あ、でも言えなかったよ?ただ、こんな風にコソコソ会うの嫌なんだ・・・。は・・・?」
「私は・・・・・・」
私だって嫌だ。
きっと前の状態なら、はっきりさせていただろう。
でも・・・・・・今は・・・・・・
「・・・?」
オーリーは心配そうに私の事を見つめている。
そんな彼を見て胸が痛んだ。
「もう少し・・・・・・待って・・・?」
「え?」
「お願い・・・・・・」
何とかそう言って顔を上げると、オーリーは少しだけ悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔を見せて頷いてくれた。
「うん・・・分かった・・・。じゃあ・・・もう少し待つよ。皆の気持ちもあるしね?」
「・・・・・・ありがとう・・・」
オーリーは優しい・・・
互いに気持ちを伝え合った、あの日から今まで以上に優しくなった。
もう演じる必要もなくなったからだろうか。
素直に愛情表現をしてくれる。
それが今は嬉しくもあり、また辛くもあった。
最初からオーリーの本当の気持ちに気づいていたら・・・
こんなバカな事をしないで済んだんだろうか・・・。
ジョシュに縋る事もなく、リジーに相談して告白させるとこまで追い込むこともなかったんだろうか。
最初からオーリーだけを見ていれば・・・・・・
でも、もう・・・・・遅いよね・・・・・・?
皆に全てを話して、答えを出さなければいけない。
オーリーの腕の中で、私は、そう思っていた。
「え?皆に話す・・・?」
「・・・・・・うん」
「二人がそう言ってるの?」
「・・・・・・うん」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私の話にリジーは驚いたように、手で口元を抑えた。
その様子を見て、撮影前に話すべきじゃなかったか、と少しだけ後悔した。
「それで・・・・・・はどうするの?全てを二人に話すの・・・・・・?」
リジーは、ゆっくりと私の方に視線を向けた。
私は目を伏せ暫く黙っていたが、小さく頷き顔を上げた。
「もう・・・嘘をつき続けるのも嫌なの・・・。二人を騙すのは嫌・・・」
「騙すって・・・。は悪くないよ・・・っ」
「リジィ・・・・・・」
「は、ほんとは、こんな関係望んでいなかったんだ・・・!それを壊したのは・・・僕らの方だろ?」
リジーはそう言って強く抱きしめてきて私は驚いた。
「リジー・・・誰か来ちゃうと困るから・・・」
「いいよ・・・。別に誰に見つかったって」
リジーはそう言って更に強く抱きしめてくる。
その腕の強さから彼の想いが伝わってくるようだ。
"こんな関係、望んでいなかった"
そう・・・そうだ。
私は今までの関係を壊したくはなかった。
でも・・・皆の気持ちを知ってしまってから途端に弱くなった・・・
寄りかかってしまいたくなった。
だけど、いつまでも、こんな秘密の関係を続けていけるはずもない。
「リジー・・・もう・・・終わらせなきゃ・・・・・・」
「・・・」
「今日、二人と待ち合わせしてるの。撮影が終わったらリジーも一緒に来てくれる・・・?」
ゆっくり顔を上げ、そう言うと、リジーは視線を反らした。
だが少しすると軽く息をついて小さく頷いてくれた。
「分かった・・・。最後まで見届ける・・・。の側にいるよ・・・」
リジーはそう言って少し体を離すと、触れるだけの口付けをした。
そして再びギュっと抱きしめてくれる。
もう全てを話す。
そう決めた。
秘密の関係は今日で終わり。
真実を話して、二人に詰られ、軽蔑されたとしても・・・仕方のない事だ。
真剣にぶつかってきてくれた彼らの想いを、これ以上、汚す事など出来ない。
そう・・・友達と言う関係すら失ってしまったとしても―――
2人は押し黙っていた。
互いに顔を合わせようとせず、何かを考え込んでいる。
リジーは私の事を心配そうに何度か見ているのが分かるが、私はただ二人が何かを言うのを待っていた。
包み隠さず全てを二人に話した。
自分のしたこと、自分の本当の気持ちを。
「嘘だろ・・・?」
ジョシュは呆然としたように、そう呟き、そのまま黙り込んでしまった。
オーリーは私が他の人に抱かれた事に気づいていたのだ。
その相手がジョシュだったと言う事に驚くと言うよりは、何となく納得したような感じだった。
だからだろうか・・・・・・
「・・・」
最初に沈黙をやぶったのはオーリーだった。
「僕の・・・気持ちは前にも言ったろ?今も変わってないよ・・・」
「オーリー・・・・・・」
その言葉に、ゆっくり顔を上げれば、オーリーは優しい笑顔を見せてくれている。
"もう他の男に抱かれないで・・・。僕だけを見て・・・"
オーリーは確かに、そう言った。
「・・・。が決めて・・・・・・?」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・?」
オーリーの、その言葉に私も、そしてジョシュやリジーも顔を上げた。
するとジョシュも軽く息をついて口を開く。
「俺も・・・・・・そうして欲しい・・・・・・。今も気持ちは変わらない」
「ジョシュ・・・・・・」
「・・・・・・選ぶのはだよ」
―――――っ?
ジョシュの言葉に驚き、思わず息を呑んだ。
てっきり詰られるかと思ったのに、そんな事を言ってくる二人に胸が痛む。
でも・・・・・・選ぶなんて、そんな―――
「少し・・・・・・考えさせて・・・・・・」
私がそう言うと、二人は黙って頷いてくれた。
ただリジーだけは不安そうな顔で私を見つめていた――
それから一週間後、私は空港の出発ロビーにいた。
「はぁ・・・・・・.いい天気。ね?シェビィ」
キャリーバッグに入っているシェビィに、話しかければ、彼は少し怯えたように丸くなっている。
そんな姿を見て笑みが零れた。
「ごめんね?環境が変わっちゃうけど・・・・・・でも日本もいい所だからね?」
そう言ってバッグを覗けばシェビィは小さく鳴いてキュっと目を瞑った。
顔を上げ、時刻を見れば、あと30分ほどで搭乗しなくてはならない。
私は軽く溜息をつきながら、カリフォリニアの青い空を見納めとばかりに見上げた。
皆は・・・・・・今頃、どこで何をしてるんだろう・・・・・・
そう思うだけで胸に痛みが走る。
ごめんね・・・・・・
オーリー、ジョシュ、リジー・・・・・・
今の私は・・・・・・きっと誰も選べない―――
こんな私のことなんて・・・・・・早く忘れて・・・・・・憎んでくれたって構わない・・・・・・
『―――便にご搭乗のお客様は・・・・・・』
「さ、行こうか、シェビィ・・・・・・」
アナウンスが聞こえて来て、私はキャリーバッグとスーツケースを手に立ち上がった。
最後にもう一度だけ振り返る。
バイバイ、ロサンゼルス・・・・・・
夢とか希望とか愛を・・・・・・沢山くれた国・・・・・・
溢れてくる涙を指で拭い、私はそのままロビーを歩き出した―――
「?!」
バン!
「はぁはぁはぁ・・・・・・」
勢いよく開け放したドアの向こうは、何もない、空の空間だった。
それを見た瞬間、全身の力が抜け、僕はその場に膝をついていた。
「嘘だろ・・・・・・?何で・・・・っ」
何だよ、これ・・・・・・
どこに・・・・・・行ったんだ・・・・・・?・・・・・・!
「おい、リジー・・・・・・!!」
後ろから声が聞こえてオーリーが走って来た。
そしてガランとした部屋を見て、僕と同じように、体の力が抜けたのか少しだけよろめくと壁に凭れている。
「何・・・・・・だよ、これ・・・・・・」
オーリーは、そう呟くと僕の前にしゃがみ肩を掴んできた。
「おい、リジー!どういう事だよ?がスタッフやめたって、どういう事だっ?!」
その言葉に、僕はゆっくり顔を上げた。
「・・・・・・からない・・・。ここ数日・・・の姿が見えなくて・・・さっき聞いたら、個人的な理由で急遽、止めたって・・・」
「そんな・・・」
オーリーは呆然としたように座り込んで頭を抱えている。
彼に電話で知らせたのは僕だ。
そして、もう一人・・・
「・・・・・・」
気づけばジョシュも来ていて僕らと同じように呆然と何もなくなった部屋を見ている。
「どうして・・・・・・」
どうして?
そんなの決まってる。
これが彼女の出した答えだ。
誰も選べない。
だからこそ、誰も選ばなかった。
でも・・・・・・前のようには戻れないから・・・・・姿を消したんだ。
今、思えば・・・僕には分かっていた気がする。
二人が、"選ぶのはだ"と言った、あの時から――――
こうしては、僕らの前からいなくなった。
オーリーとジョシュはの行方を必死に探していたけど、僕は探さなかった。
これが・・・・・・の出した答えだから・・・・・・
誰も選ばなかった事で、僕らの関係を守ってくれたような気がして・・・・・・
彼女に秘密なんて似合わないから。
あんな関係を楽しめるほど、彼女は汚れてなんかいないから―――
これで良かったんだ、と自分に言い聞かせる。
きっと彼女は、この世界のどこかで、元気に暮らしている。
僕はどこにいても、の幸せを祈ってるから・・・・・・
それはオーリーや、ジョシュも、きっと同じだと思う。
二人は、そのうち諦めたのか、を探す事をやめたようだった。
そして僕はあの日から・・・・・彼女と同じ黒髪の子を見かけるたびに、今も胸が痛くなるんだ―――
ブラウザの"戻る"でバックして下さいませv
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あぁぁ~ほんと沈没~
何度も書くのを止めたりして、ほんと書けない章でした^^;
結局、最後は別れとなってしまいました。とりあえず終。
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