最低、最悪、無神経。 私の恋人って、ほんっと、そんな男。 ど こ に キス し て ほ し い ? 「ねぇー。まだ怒ってるの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「ほんと、ゴメンってば・・・。あれも仕事のうちだって」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「もぅ・・・どうしたら許してくれるわけ・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 かれこれ一時間は、この状態。 だって絶対、許したくないんだもの。 口なんか聞いてあげないんだから。 「ねぇー・・・」 隣でさっきから情けない声を出しつづけているのは私の恋人のオーランド・ブルーム。 彼は今や世界中で有名なACTORであり、若手の中でも人気NO・1と言われている男。 そして今は今度、公開する彼の映画のプロモーションの為に来ていた日本から今撮ってる映画のロケ地へと向う飛行機の中。 私はオーランドに誘われ、お忍びで自分の故郷でもある日本へと着いてきていた。 普通なら、ラブラブでいていいはずなのに、私はある事が原因で只今、気分は最高に苛立っている。 それもこれも、みぃーんな、この男のせいなんだけど。 「ねぇ、・・・そろそろ口聞いてよ・・・。寂しいだろ・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「あはは、さすがのオーランドも嬢には頭が上がらないんだな」 「うるさいよ!」 今、口を出してオーランドに怒鳴られたのは彼の代理人のロバート(38歳、独身) 彼は私との事も全て承知で、今回、ついてくるのも快くOKしてくれた。 それはオーランドが安心して気持ち良く仕事が出来るから、という理由だったんだけど――― 「まあ、俺からも助言すれば、あれは、ちょっとリップサービスというか、深い意味はない事だし、ちゃんも気にすることな――」 彼の言葉にジロリと睨めば、ロバートは慌てて口をつぐんだ。 そしてオーランドと目を合わせると、軽く肩を竦めて再び前を向く。 オーランドはといえば、見るからに落ち込んでいるようで悲しげに俯いて前の座席を、その長い足でグリグリしはじめた。 そんな顔したって今回は許さないんだから。 いつも、そうじゃない。 オーランドってば、全然、その辺の気遣いってものがないんだから。 私とオーランドの付き合いは、まだ、ごく限られた人しか知らない。 ここ一年ほどは友人としての関係で、彼とは、あるパーティの場で知り合った。 私は、これでも3年前にアメリカでデビューした歌手だ。 オーランドが私のファンだと友人に聞かされた直後、パーティで紹介された。 私も、もちろん彼の事は知っていたし出演作品も見ていたが、それほど彼のファンという事はなく、最初は本当に軽い気持ちで挨拶をしたのを覚えている。 その時、彼はご自慢の可愛い彼女を連れて来ていたし、特に話し込むという事はなかったが、帰り際に今度やるプレミアに是非来て欲しいと誘われたのだ。 その時は社交辞令かと思ったが、その何日か後に事務所の方に連絡が入り、私は彼の作品のプレミアに正式に招待を受けた。 その後、そのお礼として私のライヴに彼を招待してから、友人関係が始まったといえる。 彼は凄く素適な人だったし、友人としては最高にいい関係だった。 なのに何故、恋人という一歩も二歩も進んだ関係になったかと言うと・・・・・・・・・・・・・・・ 話せば長くなるので、そこは省略しよう。 と に か く。 友人関係だった頃にも、端から見てて何となく思っていたけど、この男ときたら、ほんとに無神経で八方美人で嫌になる。 だいたい前の彼女にだって、その性格が災いして振られたようなものだし、その彼女の気持ちが今は凄ーく理解出来るんだもの。 私も同じ理由で振ってやろうかしら―――! 「~お腹空かない?」 「・・・・・・・・・・・・・・・(ツーン)」 「あ、ワインでも飲む?」 「・・・・・・・・・・・・・・・(ツーン)」 「それとも一緒に映画でも見ようか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・(ツーン)」 「・・・~~・・・」 まるっきり無視を続けていると、本気で悲しくなってきたのか、オーランドは何と強行手段に訴えてきた。 「いいよー。じゃあ俺も勝手にするからさ」 「――――っっ!」 いきなり、そう言うとオーランドはゴロンと横になり私の膝の上に頭を置いた。 「ちょ・・・何してるのよ?!」 「あーやっと口聞いた!」 「・・・・・・・・・・・・・・・っ」 オーランドの行動に驚いて、つい話してしまった。 彼はガバっと起き上がり、嬉しそうな笑顔を見せている。 普段なら、その笑顔を見て、仕方なく許してしまうのだけど、今日は負けない・・・んぅっ?! 彼から顔を背けようとした、その時、突然、唇に押し付けられた彼の唇。 ・・・・・・に私は驚き目を見開いた。 「やーっとキス出来た」 「――っ!!」 ヌケヌケと世界中の女性を騙している(!)笑顔を見せ、私をギュっと抱きしめてきたオーランドに、私は不覚にも顔が赤くなってしまった。 「"エヴァに恋に落ちるのは簡単"って言ったのは役の中の話だよ?俺が現実に恋に落ちたのはなんだから、そんなに怒らないでよ」 「・・・・・・・・・・・・」 ほんと、サラリと、そんなこと言えちゃうんだから・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・オーリィ、ずるい・・・」 「・・・え?」 「そんなこと言われたら私が、まるでスネてる子供みたいじゃないの・・・」 オーランドの胸に顔を埋め、そう呟けば、少しだけ体が離れた。 ゆっくり顔を上げれば、優しい瞳と目が合う。 「は子供だろ?すーぐ本気にしてスネるんだからさ」 「だ、だって・・・」 「俺が今、好きなのはだけだよ。それだけじゃ、ご不満かな?」 オーランドは、そう言って私の唇にチュっとキスをした。 「・・・・・・・・・」 何よ・・・いっつも、これで誤魔化すんだから・・・・・・ そりゃね、私だって分かってるのよ? オーリーが仕事でリップサービスしてるのだって、本当は分かってる・・・ だけど私の目の前で、あんな事を言われたら・・・やっぱり、ちょっとムカっとくるものなのよ・・・ そういう女心は分かって欲しいわ・・・・・・? 焼きもちやくのだって・・・・・・・・・・・・ぜーんぶオーリーが好きだからなのよ? そう・・・・・・ほんとは先に好きになったのは私の方・・・・・・・・・・・・・・・ 彼の笑顔に弱いのも私の方・・・・・・ だからこそ、腹が立つのよ。 私が、こんなに好きになってしまって・・・・・・なのにオーリーは、いつも涼しい顔なんだから・・・・・・ オーランドは何度も私にキスをしながら耳元で優しく、 「好きだよ・・・・・・」 と囁いてくれる。 その甘い声に頑なな心が蕩けてしまうのは時間の問題。 腹が立つけど、やっぱり、あなたが好き―――。 オーランドは私の額、頬、鼻先・・・・・・順番に優しくキスをしていく。 その行為にされるがままの私に、彼は色っぽい笑顔を浮かべて、最後にこう言った。 「次は・・・・・・どこにキスして欲しい・・・・・・?」 ブラウザの"戻る"でバックして下さいませv
あのオーリィの発言に、つい書いた、ちょー短いお話。
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