「もう25になるのに恋人の一人もいないのか?」





久しぶりに会った旅の仲間、ドムにそう言われて僕は苦笑を洩らした。


「そう言うけどさ。なかなか上手くいかないし…まして結婚しようと思えるような子とは簡単に出逢えないよ」
「そうかぁ?ま、でもそのうち一瞬で恋に落ちるような出会いがあるかもしれないぞ?」
「だといいけどね?」
「はぁ…モテるのにもったいない…」


僕の言葉にドムは大げさに頭を抱えて見せた。



今日は互いに時間が取れて、こうして男同士でバーに来ている。
彼とは今でも良き友人関係にあって、時々こうして会っては一緒に飲んでいるのだ。
でも今後はそれもなかなか出来なくなるかもしれないな、と僕は思っていた。


「で、婚約パーティはいつ?」


空になったグラスにバーボンを注ぎながら尋ねるとドムがガラにもなく照れたように笑った。


「来週末くらいにしようと思うんだ」
「ああ、来週末ならロスにいるし絶対行くよ」
「そっか、良かった!エヴァがどうしても皆に会いたいって言うからさ」


ドムはホっとしたように息をつくと嬉しそうな笑顔を見せる。


エヴァ…とはドムが今回プロポーズをした女性で人気ドラマ「LOST」で二人は共演をしている。
エヴァンジェリン・リリー、通称エヴァは「とても聡明で素敵な子だよ」とドムは幸せそうな笑顔で言っていた。


「じゃあ来週ちゃんと紹介してよ」
「ああ、もちろん。旅の仲間は全員に声をかけなくちゃ」


ドムは笑いながら僕の肩に腕を回した。


その後、二人で遅くまで飲んでから明け方近くにバーを出た。


「来週また電話するな!」


ドムはフラフラしながらも幸せそうに手を振り帰って行った。







「婚約か…」


家までの帰り道、幸せそうな笑顔を浮かべていたドムを思い出し溜息が零れる。
ニュージーランドでの日々が脳裏を掠め、何となく寂しくなった。
いや、ドムが本当に愛する女性と出逢えたのは僕も嬉しい。
ただ、あの頃のように、もう皆でバカが出来ないのかなと、ふと思ったのだ。


"もう25になるのに恋人の一人もいないのか?"


さっきのドムの言葉が頭に響く。


そりゃ僕だって今日までに好きな女性の一人や二人いなかったわけじゃない。
でも何となく自然消滅になって終わってしまうのだ。
まあ原因は色々あるにしても…最大の理由は僕が忙しさにかまけて会う時間を作れなかったという事か。
それに「別れよう」と言う彼女を引き止めるほど、僕の方も相手を想えなかったというのもある。
数年前からこんなのばっかりだ。
運命の出会いなんて求めて、理想を追いすぎだと言われた事もある。
でも…僕はそれでも信じたかった。
全身全霊で想えるような、そんな人が現れるって…


…あんなに幸せそうなドムを見ていたら、やっぱりそういう出会いがあるって思えるから―






















「ヘイ、リジー!」
「…ビリー!元気か?」


ドムの家の前についた途端、反対側から走ってきて抱きついてきたのは僕の兄貴分でもあるビリーだ。
彼ともドム同様、あの共演以来しょっちゅう会ってる友人の一人。
でも最近仕事が重なって今日会うのは二ヶ月ぶりくらいだろうか。


「しっかし驚いたな!あのドムが婚約なんてさ!」
「ああ、僕も電話もらった時はぶっ飛んだよ」


ビリーを抱きしめ返し、そう言うと二人でドムの家の門へと入って行った。


「今日は誰が来るんだ?オーリーとかヴィゴには連絡ついたのか?」
「ああ、オーリーはロケ行ってたみたいだけど昨日からロスに戻ってるから来るって。ヴィゴはロケ先だから無理みたい」
「そっかぁ。ショーンも24シーズン5の撮影に入ったばかりで来れないって嘆いてたしな」
「でもまあ"旅の仲間"とは、また別に集まるって話してたよ?」
「なら、その時また盛大に祝ってやるか」
「そうだね!でもじゃあ、今日は旅の仲間は僕らだけかー。ま、でもドムのドラマの仲間達が来るんだろ?」
「そうみたいだな。皆、楽しい奴だってドムも言ってたよ」
「そっか。ドラマ見ててもいい雰囲気そうだったしな」


ビリーはそう言って笑うと家のチャイムを鳴らした。


「はーい」


すぐ中から女性の声が聞こえて僕は婚約したエヴァかと思い、ビリーと顔を見合わせ、ジャケットを軽く直した。


(一応、第一印象は大事だからね)


ドアが開き、「はい?」と女性が顔を見せる。


「あ、あの…」


その女性を見て僕はビリーと顔を見合わせた。
顔を出した子はドムの婚約者じゃなかったからだ。


黒くて腰まである綺麗な髪に黒い瞳。
少し儚げな印象を与える少女のような女性…
どう考えてもテレビで見てたドムの婚約者の子じゃない。
でもどこかで見た事があるような…と思った時―


「あ…えっとイライジャとビリーね?」


僕らが戸惑っていると、その子はニッコリ微笑んでドアを開け放った。


「私、エヴァの友人でと言います。どうぞ?」
「あ…どうも…」


笑顔で名乗ったという子は僕らを中へ促した。
彼女について中へ入るとドムがキッチンから顔を出し、「おう、来たな!」とこっちに歩いてきた。
ドムとハグをしながら僕とビリーが挨拶を済ませると、という女性がビールを持って戻ってくる。


「どうぞ」
「あ、ありがとう」


彼女の手からビールを受け取る。
するとドムが彼女の肩を軽く抱いて、


「ああ、紹介するよ。彼女は。エヴァの親友で今ドラマでも俺達と共演してるんだ」
「初めまして」


(共演…!だからか、見た事があったのは。でも彼女、ドラマの中と印象が違うな…)


彼女の事を何となく思い出しているとドムに紹介されたは笑顔で僕に手を差し出してきた。
その笑顔にドキっとしつつ握手をする。
彼女はビリーとも握手をすると、「噂の二人に会えて嬉しいわ」と微笑んだ。
その笑顔は何と言うか、凄く綺麗で僕は透明感がある子だな、と思った。


「オーイ、リジー!何、見惚れてるんだよ!」
「な、何言って…そんなんじゃ―」
「まま!その気持ちは分かるけどな!は俺らの間ではアイドルだからさ」
「ちょっと、ドム。何言ってるのよ…。この年でアイドルもないわ」


はそう言って照れたように笑うとドムの腕からするりと抜け出した。


「それよりエヴァの手伝いしてあげないと怒られるわよ」
「っと、いけね!今、彼女が料理の用意しててさ。俺も手伝わされてるんだ。後で呼んでくるしちょっと待ってて」


ドムはそう言って慌ててキッチンへと戻っていく。
それを見てビリーが、「すでに尻にしかれてんな」と笑った。
僕も笑いながらソファに座ると、またすぐにチャイムの鳴る音が聞こえてきて、がエントランスへと走って行った。
少しすると賑やかな声と共に男性一人と女性一人が入ってくる。


「うわー、ほんとイライジャ達がいるよ!」
「ちょっと失礼よ、マシュー!」


なかなか美形の男性が僕らを見て驚いたように両手を上げていて、一緒に入って来た綺麗な女性が、
その男性の事を肘で突付いている。
彼らを見て僕はすぐに誰だか分かった。
ドムが出演中のドラマ"LOST"の主役"ジャック"と仲間の女性"シャノン"だ。(あいにく役名しか分からないけど)


何だか兄妹のようにジャレている二人を見てはクスクス笑いながら僕らを見た。


「えっと…私やドムと共演してるマシュー・フォックスとマギー・グレイスよ?」
「どうも!マシューだよ」
「初めまして、イライジャ・ウッドです」
「ビリー・ボイドだよ。宜しく」


僕とビリーは彼らと握手をして挨拶を交わした。


「話ではよく聞いてたけど実際見るとやっぱ存在感とか違うよなー」
「そ、そうかな…」


マシューのテンションの高さに僕はちょっと笑うとキッチンからドムと婚約者の女性が顔を出した。


「いらっしゃい、マシュー、マギー」
「やあ、お二人さん!今夜はお招き頂いてありがとう!」
「こっちこそ来てくれて嬉しいわ!あ、イライジャにビリーね!ようこそ!初めまして!」


ドムの婚約者のエヴァはエプロンをしたまま僕らに挨拶をした。


「挨拶が遅れちゃって…しかもこんな格好でごめんなさいね」


そう言って明るく笑う彼女に僕は心の底からドムとお似合いだなと思った。
彼女となら明るい家庭を築けそうだ。


それから数人ほどドラマの共演者という客が続き、我らがオーランドも到着した。
皆で一通り挨拶や紹介を済ませた後に料理が運ばれてくる。


「ではでは!二人の婚約を祝って…乾杯!」


「「「「「「乾杯ー!」」」」」」


ドラマの中でもリーダーというマシューの号令で僕らは乾杯をした。
その後は色々な人に質問攻めにあったりしながら僕もだんだん皆と打ち解けて気軽に話せるようになった。
僕がドラマを見てると言うと彼らは今、撮ってる撮影の裏話とかも話してくれたり、
僕らもロード・オブ・ザ・リングでの撮影秘話などを聞かれた。
皆は気さくでドムとも、かなり仲がいいみたいだ。
歳の近い人たちと、こんな風に騒ぐのは久しぶりだった。
オーランドなんか、すでに女性陣に囲まれて、あれこれエルフ語を訊かれているようだ。


(どうでもいいけど覚えてるのかい?オーリィ…)


僕はちょっと休もうと一人輪の中から外れて庭先へと歩いて行った。
そこにあったチェアーに腰掛け、部屋の中を見れば、皆いい感じで酒が入り、それぞれ楽しそうに談笑している。
その時、ふと僕の視界に彼女、が飛び込んできた。
彼女はシャンパングラスを片手にマシュー達と何やら笑いあっている。
その笑顔はちょっとだけ僕の鼓動を早くするものだった。


何だろう…つい彼女を目で追ってしまう。
さっきだって大勢で話していても視線はついの方に向いてしまい、目が合うといちいちドキリとした。
不自然に見えないように振舞うのが大変で(俳優なのに)ぎこちない顔になってたかもしれない。


彼女のあの黒い瞳に見つめられると吸い込まれそうで、髪をかきあげる彼女の白く細い指先が綺麗で、
今も何だかんだ言いつつ見惚れてたりするんだけど。
こんな感じ久しぶりだな、と僕は思った。


そこへ視界を遮るように窓のところに誰かが立った。
部屋の明かりの逆光で僕が目を細めると、ドムがニヤっとしながら外へ出てくるのが見えた。


「飲んでるか?」
「ああ、うん。でもちょっと休憩」


隣に座ったドムにそう言うと僕は煙草に火をつけた。
ドムも同じく指先に持っていた煙草を咥えると美味しそうに煙を吸い込みながら夜空を見上げている。


「今日はほんと来てくれてサンキュな」
「何言ってんだよ。当たり前だろ?」
「…うん。あ、でもさ。また今度、今日来れなかったメンバーも呼んで集まろうな?」
「そうだね。ヴィゴにショーンに、PJとジョンにサーイアンに…。凄い広いとこ貸しきらないと」


僕が指で人数を数えながら苦笑するとドムも楽しそうに笑っている。
そして少し身を乗り出すと僕の顔を覗き込んでニヤリと笑った。


「…な、何だよ。ドム―」
「気に入った?」
「…は?」
の事だよ」
「―――っ?」


いきなりの直球に顔を作る暇もなかった。
一気に顔の熱が上がっていくのが分かる。


「あははっ。分かりやすいなーリジーは!」


ドムはそんな事を言ってケラケラ笑っている。
ほんと最悪だ。


僕はプイっと顔を逸らして持ってきていたビールを一気に飲み干した。


「な、何の事だよ」
「誤魔化すなって。見てれば分かるよ。リジー何気にを意識してるからな」


ドムはニヤっと笑うと僕の肩をポンポンと叩いた。


「い、意識なんて…」
「まあまあ!俺には隠し事すんなって。それにに目が行くのも分かるしさ」
「…え?」


その言葉に顔を上げるとドムは笑いながらチェアーに凭れた。


「最初、ドラマ決まって顔合わせで彼女と会った時、俺も見惚れたくらいだし?」
「…え、でも…エヴァは?」
「彼女とは撮影が始まってから仲良くなったし…最初はとの方が会話も多かったんだ」
「へぇ…そうなんだ…」


その話に聞き入りながら僕は気づけばドムの方に身を乗り出していた。
するとドムが僕を見てニヤっとしたかと思うと、


さ、ロード〜の大ファンなんだよ」
「…え、そう…なんだ…」
「それで最初よく話し掛けてくれてさ。仲良くなった。それからかな?の親友のエヴァも交えて遊ぶようになったのは」


ドムは煙草の煙を吐き出しながら照れくさそうに笑った。


「最初は俺、に気があったんだけどさ。彼女は全然乗ってくれなくて…つか俺の言う事ぜーんぶジョークにしちゃうし」
「…まあ、それは分かるかな?」
「お、何だよ、そういうこと言うわけ?」


僕が納得するとドムは苦笑しながら額を指で突付いてきた。
ちょっと笑いながらその手を外すと、


「だってドムって、どこからジョークでどこまでが本音か分からない時あるからさ」
「そうかぁ?俺は区別してるつもりだけど…。ああ、で…結局俺のアプローチも空しく空振りで終わったんだけどな」


ドムはそう言ってシャンパンを飲むとリビングでエヴァと談笑しているを見た。


「まあでも…が振ってくれたおかげでエヴァが俺に同情してくれて見事OKもらったってわけ」
「あはは!なーんだ。彼女のお情け?」
「うるせー」


僕がからかうとドムはスネたように口を尖らせた。(まあ"同情"っていうのもドム流のジョークだと分かっている)
だけどすぐ一緒に笑い出し、


「ま、でもリジーがもしに気があるなら…なるべく会える時間作ってやるけど?」
「…えっ?」


ドキっとするような言葉を言われ、僕は再び鼓動が速くなった。
ドムはそんな僕の反応を見て楽しいのか、ニヤニヤしながらこっちを見ている。
僕はその視線から目を逸らすとの事をチラっと見た。


「き、気があるっていうか…さ…」
「何だよ」
「何となく…目が行くんだ」
「それが一目ぼれってやつだって」
「ひ、一目ぼれって…ただ僕は…笑顔が綺麗だなぁとか…?…」


言ってて恥ずかしくなり、僕はビールを一口飲んだ。
だがドムは苦笑いを浮かべ、僕の肩をポンポンと叩くとチェアーから立ち上がる。


は俺より一つ年下の29歳。今現在、恋人はなし!ドラマのロケで殆どハワイに住んでるからな」
「…そ、そう…なんだ…」(4歳年上には見えないな…)


違うと否定しながらも、その話を聞いてちょっとホっとしてる自分がいる。
ドムも気づいてるのか、更に言葉を続けた。


「趣味は読書と映画鑑賞。大好きな映画はロード・オブ・ザ・リング!そして、その中でも特に好きな人物は―」
「……?」


そこで言葉を切ったドムに僕は顔を上げた。
すると目の前に彼の指があり、それは僕の鼻先に押し付けられる。




「お前だよ、フロド」


「…ぇ?」




目を丸くするとドムは、「ぷ…ほんと大きい目だな、リジー」と笑っている。
そして少し屈むと、


「"弱かった彼が旅の途中、仲間に助けられながらもどんどん成長していく姿を見てたら真剣に応援したくなる"ってさ」
「………」
「特に"王の帰還でのフロドは愁いを帯びてて素敵だった"なんて言ってたかなぁー?」
「………っ」
「何だよ、リジー。照れてんの?」
「…ぅっさい…」


顔を赤くして逸らした僕の頭をドムはからかうようにクシャっと撫でて来た。


「ま、そういう事ではリジーのファンだ。だからなるべくイメージを壊さず優しくしてやってくれよ」
「……な、どういう意味―」
「傷つけるなよ?あいつは今では俺の妹分みたいなもんだから」


振り返ると目の前にドムの顔があり、僕の鼻っ面にビシっと指をさした。


「き、傷つけるとかつけないとかさ…。ちょっと大げさじゃない?」


そう言ってドムを見上げると彼はクスクス笑いながら、


「だって気になるんだろ?それにリジーなら4歳くらい離れてても気にしないだろうと思ってさ」
「…また古い話を…」


ウンザリして溜息をつく。
ドムは僕が過去にかなり年上の女優と付き合ってた事を言っているのだ。
まあ、あれから僕は素直に恋愛出来なくなったんだけどさ。


「さて、と。そろそろエヴァのところに戻るとするかな」
「あ、おいドム…」
「待ってろよ。呼んで来てやるから。あいつもリジーと話したいと思ってるからさ」
「は?い、いいよ、ドム…!」


さっさとリビングに戻ろうとするドムのシャツの裾を引っ張ると彼は苦笑交じりに振り向いた。


「親友の好意は素直に受け取れって」
「こ、好意って―」
「それに…に惚れてる男はまだいるんだから早く口説かないと取られるぞ?」
「…え?」


ドキっとして顔を上げるとドムは顎をクイっと上げてリビングの方をさした。
そっちを見ればがいて、その隣には先ほど紹介されたイアンという青年が寄り添っている。


「イアンも狙い。まあは気づいてるのかいないのか、軽く交わしてるけどな」
「…へ。へぇ…」


普通の顔を装いながらも、視線はついつい楽しそうに話している二人に向いてしまう。
ほんと今日の僕は変かもしれない。


「じゃ、そういう事だから大人しく待ってなさい」
「は…?あ、おい、ドム―」


ドムは俺の肩をポンと叩くとリビングに戻っていってしまった。
追いかけようとも思ったが、ドムが真っ直ぐのところへ行ったのを見て慌てて視線を逸らした。


ったくー!ドムの奴、いつからあんなおせっかいになったんだ?
親戚の"お見合いおばさん"じゃないんだから!


そんな事を思いながら溜息をついてると、ふと影が落ちてドキっとした。
振り向くと、中から髪の長い女性がこっちへ歩いて来る。
――彼女…だ。









「イライジャ、飲んでる?」



何となく緊張しながらも、「ちょっと飲みすぎかな」と笑顔で答える。
彼女は僕の隣へ腰をかけると、


「私も少し飲みすぎちゃって…。はい、ペリエ」
「あ…ありがとう」


ちょうど喉が渇いてて飲みたいと思っていた僕は彼女の小さな手からペリエを受け取った。
チラっとりビングの方を見ればイアンがつまらなそうな顔でこっちを気にするかのように見ている。
ドムはドムで相変わらずニヤっとしながらエヴァとコソコソ話しているようだ。
僕は気にするのはやめようと視線を彼女に戻した。
は穏やかな表情で夜空を見上げていて、「ふぅ…気持ちいい」と小さく息を吐き出している。
その横顔が綺麗で思わず視線を外し煙草に火をつけると彼女が不意に僕を見た。


「イライジャって思ってた印象と少し違ったわ」
「え…?違うって…」


先ほどのドムの言葉を思い出し、ドキっとした。


(もしかして…すでにイメージ崩れちゃってるのかも…)


そんな不安にかられながらも僕は笑顔を崩さず彼女に微笑んだ。



「もしかして…ガッカリした…?」
「え?」


軽く訊いたつもりだった。
だがは意外にも驚いた顔で慌てて首を振った。


「まさか!その逆よ?」
「…え?」
「もっと…その…愛想のない人かと思ってたの…」


はそう言って申し訳なさそうな顔を見せた。
その顔を見て僕は思わず苦笑した。


「僕、そんな風に見えた?」
「あ、あのね。インタビューとか見る限りではそうじゃないんだけど…。子役からやってるし、
業界にも慣れてるんだろうなあって勝手に想像してたの。ほら、この業界って表と裏の顔が違う人も多いし…」
「ああ…それなら分かるよ。確かにそういう人もいるよね」


僕が同意するともホっとしたように笑顔を見せた。


「そうなの。こういうパーティとかで会うと結構驚いたりしたわ?雑誌とかテレビで優しい印象だった人とかが、
こういう場ではツーンと気取ってて、私みたいな無名の女優には鼻もかけないって感じなの」
「僕も…そういうのと一緒に見られてたわけ?」


笑いながら尋ねるとはまたしても首を振った。
そんなに振ると酔っちゃわないかと心配になる。


「見てたというんじゃなくて…。イライジャもあんな感じだったらどうしようって…思ってた」
「…じゃあ…実際こうして話してみた印象は?」


伺うように尋ねるとはさっき僕が見惚れてしまったほどの、あの笑顔を見せてくれた。


「凄く有名なのに気さくで優しい人なんだって思ったわ」
「…それは…どうもありがとう」


僕は照れ隠しでわざと畏まってお礼を言うとはクスクス笑い出した。
その笑顔も4つも年上とは思えないほど無邪気で可愛らしい。


ああ…やっぱりこれってドムの言うように一目惚れなんだろうか。
何故か彼女の笑顔を見ると心の奥が暖かくなって鼓動が速くなる気がする。
最初に会ってビビビっときたというよりは…彼女を見てると何だか静かに優しく何かが流れ込んでくるような感じだ。


これって…


ふとドムの方を見ればエヴァと寄り添いながらも肩を竦めて見せて、


"ほーら、俺の言ったとおりだろう?"


なんて言いたげな顔をしている。
でも…今日だけは彼が正しいのかもしれない。
このドキドキが一目惚れと言うならそうなんだろう。
だって昨日までちょっと色褪せ気味だった世界が今は鮮やかに色づいて見える。


「…イライジャ…?どうしたの?」


ボーっとしてるとは心配そうに顔を覗き込んできた。
その真っ直ぐで綺麗な瞳は本当に吸い込まれそうなほど澄んでいる。


「何でもない。えっと…僕の事はリジーでいいよ」
「…え?」
「僕たち…もう友達だろ…?」
「…友達…」
「そう。と言うより…友達になって欲しいなって思って」


そう言って微笑むとの瞳が僅かに揺れた。
でもすぐに可愛い笑顔を見せてくれる。




「…喜んで。リジー」




























君の笑顔に会えたとき 





       この世界





           まんざらではないとってしまう





















            進める気がするよ  また一歩 未来への階段へ

































※ブラウザバックでお戻りください。


リジーお誕生日おめでとう!祝25歳!(※今回内容は誕生日では書きませんでした;)
そしてドム、婚約おめでとうー!ビックリしたぞー!(笑)
という事で…リジーのお誕生日夢が何故かドムの婚約ネタまで入れちゃいました(;´▽`A``
しかも意味の分からない話で申し訳ない…。一応…リジーの一目惚れ…かな?(オーイ)
次は急いで連載を書いてきまっす!


皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【C-MOON...管理人:HANAZO】