「へ?」
目の前で驚いたように口を開けているのは世界的にも有名なハリウッドスター。
デビューしてからというもの、"世界の恋人"だとか"抱かれたい俳優"NO1なんて言われている男。
彼が間の抜けた声を上げた途端、ピシーっと固まっているのは気のせいじゃないはずだ。
ああ、何だか瞳もウルウルしてるし、これじゃあ近所の子供と一緒ではないか。
「…だから。明日から一週間ほど実家に帰るから」
同じ台詞をまた口にするのも面倒だ、と思いながら、もしかしたら聞こえてなかったのかもしれないと、もう一度彼を見つめて言ってみた。
でも目の前のスター様はさっき以上に瞳を潤ませ、何気に眉毛なんてへにょっと下げてしまった。
あまりの反応に一応、彼の目の前で手を振ってみる。
「オーリー?」
「え、嘘だよね」
「は?」
今度は私が間の抜けた返事をする番だった。
やっとマトモな返事が出てきたと思えば。
「…嘘って…」
「嘘だよね。嘘だろ?」
「え、ちょ、オーリ…」
ずずいと迫ってくる彼にビビって少しだけ後ずさる。
「あ、あの落ち着いて…」
「…嫌だよ」
「はい?」
私の肩を掴んでいる彼を見上げれば、以外にも真剣な顔。
「嫌って言われても…」
それは困る。
だいたい何が嫌なのだろう。
私が実家に一週間だけ行ってる間、彼には沢山の仕事があるはずだ。
「ダメ!そんな帰らなくていいよっ」
「ダメってそんな…何でよ?」
ハッキリ言って何で彼がこんなに嫌がるのか分からない。
理由を問いただすと、オーランドはショボンと頭を項垂れ、私の肩からするすると手を離した。
「だって…の実家って日本だろ…?」
「…え、ええ、そうね」
「って事は一週間、日本に行くって事だろ?」
「…うん、まあ」
「耐えられないんだ…」
「…へ?」
パっと顔を上げてそう言ったオーランドに私はポカンと口が開き、今度こそ間抜けな顔をしてしまった。
「あ、あの何が?」
「…うん、無理だ。どう考えても…だってそんなダメだよ…」
「は、あの、オーリィ…?」
少し俯いて指を唇に当てながら一人ブツブツと呟く彼が心配になり、顔を覗き込む。
するとガバっと顔を上げ、いきなりギュっと抱きしめてきた。
「ひゃ…」
「やっぱ嫌だよ!一週間、に会えないなんて!」
「はあ?」
何を言ってんだろう、この男は。
小学生じゃあるまいし。
いやいやいや…今時の小学生はシッカリしてるし、そんな駄々っ子みたいな事は言わないかもしれない。
「あ、あのね、オーリー。もうチケットだって手配しちゃったし親にも言ってあるからキャンセルは無理なの」
言い含める、というよりは突き放すようにキッパリと言った。
すると抱きしめていた腕がゆるくなり、ガックリと肩を落としたオーランド。
まるでこの世の終わりみたいな顔をするから少しだけ胸が痛むんだけど。
「…そんな…じゃあ俺はどうしたらいいんだよ。がいないなら寂しくて死んじゃう―」
「ちょ、ちょっとオーリー!大げさよ?たかが一週間じゃない…」
「でも嫌なんだよ!寝る時も起きた時もが隣にいないなんて…俺は耐えられないし」
先ほどと同じように瞳を潤ませる彼に私はハアっと溜息をついた。
彼がいう事も少しは分かる。
今までだって私に仕事を休ませ、自分のロケ先にも同行させるくらいだ。
自惚れるわけじゃないけどオーリーは私と常に一緒じゃないと気がすまないらしい。
最初はもっと恋愛に対して慣れてるような感じもしてたけど、付き合いだしてその情熱的な性格に驚かされた。
それくらい愛されてるというのは幸せな事であって私も死ぬほど嬉しい。
嬉しいんだけど…
このままだと私は友達とも遊びに行く事すら出来なくなる。
「何言ってるのよ。あなたはハリウッドスターでしょ?」
「関係ないだろ、そんなの」
「…世界中の女性が泣いちゃうわよ?憧れのあなたが子供みたいなこと言ってたら」
「以外の子が泣いたって俺には関係ない」
「…もう〜。オーリィ…」
「じゃあ…俺も行く。それならいい?」
「………」
スネたようにそう呟く彼は可愛い。
でも…
「…オーリー今は撮影中じゃない」
「だから一週間だけオフもらって―」
「な、何言ってるの!ダメよ、そんな!自分の都合で撮影を遅らせるなんて―」
「じゃあどうしたらいいんだよっ」
「だからオーリーが我慢してくれればいいの!」
少しムキになったオーランドに私もムキになって言い返す。
その途端、更に肩を落としたオーランド。
「ほんとに行くの…?」
「行くわ」
「ほんとに一週間で帰って来る?」
「もちろん」
「そっか…」
そう呟いたオーランドはソファにトボトボと歩いて行ってポスっと力なく腰を落とした。
かなりへコんだその姿に内心、苦笑しながら私も彼の隣に座る。
「アっと言う間よ、一週間なんて」
「俺には1年のような気がする…」
「だから大げさだってば」
彼の言葉にクスクス笑いながら、軽く口づける。
「お土産いっぱい買ってくるから。ね?」
私がそう言うと、オーランドは何とも複雑な顔をした。
「はぁ…」
大きな溜息と共に時計を見る。
今朝、が笑顔で出て行ってから6時間。
何とも言えない寂しさが襲ってきてソファにゴロリと横になる。
何でこんな日に限って撮影が夜なんだよ…
まだ共演者やスタッフといれば気が紛れたのに。
ソファの上でゴロゴロしながら再び溜息をつく。
さっきが行く前に頼んでくれた朝食も、手付かずのままテーブルに置かれている。
ゆっくりと起き上がり、大好きなサラダの入ったお皿を持つと、一口だけ食べてみた。
が、すでにしなっとなった野菜がまずくて皿を元に戻した。
一人で食べたって美味しくないし、食欲だって出ない。
いつもなら隣にがいて、彼女の笑顔があって凄く楽しいのに。
一緒に食事をしながら他愛もない話をして、そんな時間が凄く幸せなのに。
今日から一週間、こんな風に一人で過ごさないといけないなんて耐えられない。
たった6時間経っただけで、こうなんだから残り6日間なんて到底無理な話だ。
「はぁ…」
何度目の溜息なのか自分でも分からなくなってきた。
食べるでもなく野菜をフォークで突付きながら、今日の撮影にまで支障が出そうだ、と思った。
「…いっそ休んで追いかけようかな…」
の存在が傍にいなければ、こんなにもやる気が出ないなんて。
こんなに自分がダメな男だったなんて…
そう思った瞬間。
「そんな事されたら困るんですけど。オーランドさん」
「――――ッ??」
静かな部屋に突如、聞こえてきた愛しい人の声。
バっと振り返れば、呆れたように微笑んでいるの姿があった。
あまりに驚いて、一瞬幻か?と疑い、目をゴシゴシと擦ってみる。
「ああ、ダメよ、そんなこすっちゃ。夜は撮影でしょ」
苦笑しながら歩いてきた彼女は俺の手を取って隣に座った。
ふわりと甘い香りがして、本物のだと確信した時、思い切り抱きしめる。
「苦しいよ、オーリー」
「本物だ…」
「当たり前でしょ?」
耳元でクスクス笑う彼女の声に、さっきまでの寂しさが溶かされてゆく。
「…どうして」
「んー飛行機に間に合わなかった」
「え?だって間に合うように出てったのに」
「そうなんだけど…」
はそう言って体を少しだけ放すと、
「オーリーが心配で搭乗手続きしようとしても出来なかったの。で、モタモタしてたら飛んでっちゃったみたい」
はそう言いながら俺の頬にちゅっとキスをした。
そんな彼女に一瞬、唖然となったけど、でもやっぱり嬉しくて。
思い切り強く抱きしめた。
「わ、オーリー?」
「嬉しいよ…凄く嬉しい!」
「ほんと大げさね。オーリーは」
「だって…凄く寂しかったから…」
「寂しいって…まだ数時間しか経ってないじゃない」
「でも寂しかったんだ…息が詰まりそうだった…」
そう言ってさらに強く抱きしめると、は苦笑しながら息をついた。
「みたいね…。食事もしてないし」
「だって一人じゃ美味しくない…」
「そうね。私も…寂しかったよ…」
「うん…」
「今夜は一緒に食事に行こうか」
「…もちろん」
そう言って体を放すと、今までの寂しさをぶつけるように彼女に口付けた。
いつもと同じ柔らかい唇に何度もキスを繰り返す。
「もう一人にしないでよ」
「…ほんと大げさ」
俺の言葉に笑いながらも、優しいキスを返してくれる彼女。
ひからびた感情
大げさでも何でも 君がいないと僕はダメなんだ
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久々にお題でオーリー夢なんぞw
相変わらず私の描くオーリーは寂しがりやさんだわね…(汗)
と書いてる最中にうちの息子(猫)は私に構って構ってとジョリジョリ舐めてきます(痛)
あげく無理やりデカイ体で膝の上に乗ろうとするので凄く邪魔。
なので抱っこして横に避ける…また乗ってくる。また下ろす…の繰り返しですから(TДT)しつこい猫だ…
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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