『あ、もしもし?俺、オーランド』 「…分かってる」 『えーどうして出る前から分かったの?凄いね!以心伝心?』 「…ディスプレイにオーリーの名前が出るんだから分かるに決まってるでしょ?」 『え、何それ。の携帯ってそんな機能があるの?凄いなぁー♪』 「……何言ってんの。オーリーの携帯だって同じよ?」 『え!嘘。どのボタン押せばそれ使えるの?』 「………」 一日、数度目のラブコールに内心、溜息をつきながら私は沈黙した。 確かに遠く離れて仕事をする彼に、寂しいからと言って携帯を持つよう、お願いしたのはこの私だ。 でも別に一日、何度もかけて、とは言ってないしかけられても困る。 『もしもし??』 「…で、今度は何の用?」 『何だよ、冷たいなぁ…。今、記者会見が終わったからの声が聞きたかったのにさぁ』 「…さっきも話したでしょ?」 『そうだけど、また聞きたくなったんだ。だって今、俺はの故郷に来てるんだよ?どの風景を見てものこと思い出すんだ』 「………」 それは喜ぶべきなのか。 いや、最愛の恋人がそんな事で私の声を聞きたくなった、と言ってくれてるんだから嬉しい事この上ない。 でも、オーリーは今、仕事で行ってるわけで、きっと隣にはスタッフだのエージェントだの、そして共演したジョニーだのがいるはずで。 もう少し緊張感を持って仕事をしろ、と言いたくなるのも無理はない。 『あ、そう言えばの言ってた通り、日本は今、蒸し暑いよー。天気も悪いしどこにも遊びに行けない』 「行っちゃダメでしょ…。貴方を探し回るスタッフの事を考えてちょうだい」 『だってホテルに缶詰は退屈だろー?』 「退屈でもダメ。どうせ迷子になって言葉も分からなくて、私に電話してくるんだから」 『…はいはい…分かったよ…。大人しくしてる。あ、じゃあ今、プレミア会場についたから!また後でね♪』 「…また…後で?」 ブツ…ツーツーツー 「………」 唐突に切られた電話に思い切り溜息をつきながら、ガックリ項垂れる。 昨日からひっきりなしにかかってくる恋人の電話に、かなり寝不足だ。 彼は日本とアメリカに時差があるという重大な事実を知らないのだろうか。 「…眠い…」 大きな欠伸をして再び、布団に潜る。 もう、いっその事、携帯の電源そのものを切ってやろうと、電源をオフにする。 これでもう彼に起こされる事はないだろう。 私はそこでホっとして、静かに目を閉じ、一瞬のうちに夢の中へと吸い込まれていった。 プルルル…プルルル… 耳元でうるさい音が響き、私は薄っすらと目を開けた。 朦朧とした意識の中、ゴソゴソと顔を出し、時計を確認する。 部屋の中は薄暗く、まだ早朝、といった時間。 何故か家の電話が鳴っていて、私はウンザリしながらも受話器に手を伸ばした。 「もし…もし…」 『あ、ー?の携帯、繋がらないからビックリしたよー』 「……オーランド…」 彼の賑やかな声が聞こえてきて、私はそのまま意識が飛びそうになった。 「電池切れかしら…それより…どうしたの?試写会は?」 『とっくに終わって今は皆で食事中なんだー♪酔ったらの声が聞きたくなって―』 「オーランド…」 『何?マイハニー♪』 彼の言葉を切って私は静かに息をついた。 「お願いだから…帰国したら携帯を解約してちょうだい…」 『えぇぇぇ!!』 私の言葉にオーランドの絶叫が響き渡り、私の鼓膜が被害を受けた。 私の誤算は、オーランドが意外にも電話魔だったという事実を知らなかった事かもしれない。 ※ブラウザバックでお戻りください。
さすがにもうオーリーも携帯持ってますし、どのボタンがどれとか分かりますよね(笑)
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