✿先輩×後輩✿

今日も今日とて呪霊討伐に明け暮れ、一日が終わってしまった。夏真っ盛りのこの時期は疲れた体に甘くて冷たーい物が欲しくなる。
だから帰りに同級の七海くんと灰原くんとでコンビニに寄ってアイスを買うことになった。

ちゃんは夏に食べるアイスって何が好き?僕はやっぱりガリガリくんかな!」
「私はアイスの実ー!七海くんは?」
「……何でもいいかな。冷たければ」
「えーじゃあ例えばロックアイスでもいいってこと?」
「………」

素朴な疑問を返しただけなのに七海くんは黙ってしまった。細い目が更に細くなって溜息ついてるから私が何か間違ったのかなあ。
とりあえずアイスを買って――結局七海くんはパピコのソーダ味を買ってた――コンビニを出ると、一際賑やかな声が響き渡った。

~!」
「あ、五条先輩だ!」

コンビニの方に歩いて来たのは一つ上の先輩だ。身長高くてスタイル良くて、顔面偏差値は圧倒的レベルで最強のイケメンだから、一般人の中に混ざった時の合成具合が凄い。五条先輩は初対面の時から私を可愛がってくれて、喋ると結構緩いし面白いし、いつもすんごく優しい。
これ七海くんに言ったら、ものすっごいしかめっ面されたけど何で?

「オマエも任務帰り?俺もー。こんなとこで会うなんて運命?あ、アイス買ったんだ。アイスの実って何かっぽくてかわいー」

五条先輩は私が応える前にどんどん話を進めちゃうから、結果「あ」とか「えっ」しか返せないのはいつものこと。サングラスを外した時に見えるキラッキラの青い目に見下ろされると、凄くドキドキして緊張してしまうのもある。なんて考えてたら、突然体をむぎゅうっと抱きしめられて「うひゃあ」と変な声が出てしまった。五条先輩は結構ぐいぐいくる系で、スキンシップ魔だったりする。

「あー癒されるー。は俺の癒しだわー。今日もちっこくて可愛いー」
「あ、あのご、五条先輩…?ここ外…」
「んー?いいのいいの」

五条先輩はいつものように私の頭に頬ずりを始めた。何かこうすると仔猫を抱っこしてるみたいで癒されるらしい。
五条先輩の飼い猫…なりたいかも、と思いつつ、いつもは高専内でされることが多いけど、この往来でのハグは死ぬほど恥ずかしい。
灰原くんは呑気に笑ってるし、七海くんは全然こっちを見ようとしない。きっと関わりたくないんだろうなあ、なんて思ってると、今度は後ろから「みんな、お疲れ」という静かな声が聞こえてきた。五条先輩の相棒で親友の夏油先輩だ。夏油先輩も高身長でスタイルも良くて、五条先輩とは違った大人っぽさのあるイケメンだ。夏油先輩も優しくて、大好きな先輩だった。

「あ、傑ー。そこで拾ったー」
「うわ」

ハグタイムが終了するや否や、五条先輩は私を軽々と右腕だけで抱っこして夏油先輩の方へ歩いて行く。五条先輩にとったら私の体重なんてないも同然らしい。
うーん、でもこれ子供を担ぐのと同じなのでは。喜んでいいのか凄く迷う。というか、これはハグより物凄く恥ずかしい!だって五条先輩の手のひらがちょうど私のお尻とか太腿に触れてる気がするし、夏服のスカート短いからパンツ見えそうで怖い。

「こんなとこで担ぐとか、が恥ずかしいだろ。真っ赤になってるからやめてあげて」
「あ?何だよ。俺の癒しタイム邪魔すんな、傑。あ、傑には貸さないから」
「…わっ」

またしても体がむぎゅうっと抱きしめられたのはいいとしても、抱っこの体勢だと今度は私の胸が五条先輩の顔に――。

「あーの当たって気持ちいい。やわらかー」
「ぎ…ぎゃああっ!!」

胸の膨らみに顔を押し付けられ、頬ずりをされた瞬間、私の羞恥心が限界突破。今まで出したことのないほどの声量で叫んでしまった。それを見ていた夏油先輩は「それセクハラだよ、悟」と呆れ顔を浮かべてるし、灰原くんは「相変わらず二人は仲良しだね!ね?七海」とニコニコしてる。ただ七海くんだけは口元が盛大に引きつっていた。まるで犯罪者を見るような目つきで五条先輩を見てる。でも五条先輩はみんなの視線なんて全く気にしてないみたいだ。

「はは、叫んでるもかわいー。何か体ぷるぷる震えてるし」

真っ赤になって口をパクパクさせてる私を見て笑うと、五条先輩は「とりあえず、アイスの実、俺にも食べさせて?」と可愛く口を開けるから、恥ずかしいのを堪えて買ったばかりのそれを先輩の口へ入れてあげた。そうすれば解放されるかな?と思ったその時。五条先輩が私の指までちゅっと舐めるから「うぎゃ」とまた変な声が出てしまった。恥ずかしさのあまり、ぶわっと涙目になると、五条先輩は意味深な笑みを浮かべて言った。

の指の方が甘くて美味しい」
「………っ!!?」

ぼんっという音が鳴った気がするくらいに顔から熱が噴き出して――私の頭がくてんっと後ろへ倒れた。

「あー!傑!が気絶した!」

頭に血が上り過ぎた私は、五条先輩に抱っこされながら失神。その後は大騒ぎした五条先輩に保健室まで運ばれたらしい。




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