✿先輩×後輩✿
毎回が部屋に来るたび、楽しい時間だったはずが最近は煩悩と戦う時間へと変わる。
映画を観てる時、甘えるを覚えたが俺の足の間に納まって座ると、俺は当然上から見下ろす形になるから、ついつい胸元へ視線が向くのは男の心理ってやつだ。
衿元が大きく開いた服の時はギリ膨らみが見えそうになってるから、毎回(…ンンンっガ、マ、ン!)となるのは最近のデフォルトになりつつある。
は甘えるを覚えたが、俺。五条悟は我慢を覚えたってわけだ。
「それは凄いな」と傑にやたらと褒められた。ナチュラルに煽られてる気がしたけど。
んで、今は次のデートでいく夢の国のチケットをパソコンで予約してるとこで、は「楽しみー!」なんて言いながら無邪気に俺の背中に張り付いて画面を覗いてる。そうなると必然的にささやかな膨らみが背中にむにゅっとした感触を伝えてくるから、ここで例の我慢の時間がやってきた。
脳内で慌てるな、落ち着け、と一休さん並みの天使の声が聞こえてくる。でも逆に、ここまで我慢したんだから、そろそろいいんじゃねえの?というフレディ並みの悪の声も聞こえてくるわけで、ここから脳内煩悩最終決戦が始まる。
――だって期待してるから部屋に来るんじゃねーの?もうOKってことでいいだろ、そこは。
――いや、は初心だからその辺のことは全然分かってねーし、そんな子に簡単に手を出しちゃダメじゃねーの。が怖がって泣いたら俺も泣く自信がある。最強の俺が泣いたらシャレになんねーだろ。
とまあ、結局はを怖がらせたくないという本音の方が勝つから、ここで理性の勝利となって、一旦はこの戦いも落ち着くまでがルーティンだ。
やっぱ付き合い始めたばかりでがっつくのもカッコ悪いし、の前では「カッコいい五条先輩」でいたい気持ちもあるから、なるべく彼女とくっつきすぎないように――。
「あ、五条先輩、見て、これ!可愛いヌイグルミ!」
「……あー…うん(可愛いって言ってるが可愛い)」
ホームページに載ってるヌイグルミを見てはしゃぐ彼女は、予想以上の破壊力があった。すでに脳内が可愛いのエレクトリカルパレード中。スキンシップ大好きなのに我慢してるせいか、このところ俺の情緒が危ういことになってる。
本音を言えばもっとくっつきたいけど、前はどんな風にに触れてたっけ?と思い出せないくらい、意識してるかもしれない。
「あー…はこれが一番欲しいわけ?」
「うん。この子が一番好き」
後ろから俺の首に腕を回しながらぎゅうはやめろ、と思いつつ、が一番好きだというキャラのヌイグルミを眺める。こんなもん何で欲しいのか俺にはさっぱり分からないけど、それを言ったら何かが終わる気がするから言わないでおいた。きっとここに傑がいたら「凄いな、悟。気遣いも覚えたのかい?」と、あのにやけた顔で煽り散らかしてくるはずだ。
「…じゃあ、行った時にこれ買ってやろうか?」
欲しいというものは何でも買い与えたくなるお父さん心理になりつつ、そう言うと、は「え、いいの?!」とやけに食いついてきた。かわいすぎ。
「こんなの何個でも買ってやるよ」
前の俺ならここで確実にほっぺに吸い付いてたかもしれない。
でも今日は違った。が身を乗り出して俺のホッペにちゅっとキスをしてきたからだ。
「ありがとう、五条先輩」
「………」
今の俺にはそれだけで十分、幸せだったらしい。情緒がえらいことになって全身が脱力した結果――。
「え、五条先輩、どうしたの?」
照れとか嬉しさとか幸せとか、色んなプラスエネルギーが爆発してソファに倒れ込んだ。

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