✿上司×部下✿
※匂わせ描写あり
今日こそ保科副隊長に言ってやるんだ。もう二度と、ここへは来ないでって。
だって都合のいい女にはなりたくない。
だいたい付き合ってるわけでもないのに、毎回私の家に帰って来て、ご飯食べて、お風呂に入って、私を抱いて朝、一緒に仕事に行くのっておかしくない?
だから今日はその辺をビシっと言ってやる――。
「~ただいまぁ」
「お、お帰りなさい!保科副隊長!」
「まーた副隊長ゆうて…二人きりの時は宗ちゃんて呼んで言うたやん」
「あ、ご、ごめんなさい…そ、宗ちゃん…」
――って、違ーう!!
こんなことで頬を染めてる場合じゃないでしょ、私!何で保科副隊長のペースに持ってかれるの!しっかりしろ、!今日こそビシっと言ってやるって誓ったでしょーが!早く言わないと、また――。
「~お腹空いたしご飯作ってぇー」
「はーい」
「僕、今日はの作ったハンバーグ食べたいわ」
「ハンバーグ了解です!」
保科副隊長ってば私の作るハンバーグ好きすぎない?ほんと可愛い――って、だから違うんだってばっ!
すっかり使命を忘れて何で普通に玉ねぎみじん切りにしてるの?私!ホントはこんなことしたくないのにお肉捏ねてにぎにぎしてるの何で?しかもしっかりハート形って馬鹿なの、私は!
「ー僕も何か手伝おか?」
「ひゃ」
いきなり後ろから腕が伸びてぎゅうっとされた。心臓が口から飛び出したかと思うくらいドキドキしてるのヤバい。
「あれ、?どうしたん?固まって」
「い、いえ…何でも…」
と言った瞬間、私の肩に保科副隊長の顎が乗って、更に熱が顔に集中してしまう。お風呂上りだから保科副隊長からは甘い香りが漂ってきて、それがまた変なドキドキを加速させる相乗効果。でも手はひき肉まみれだから動くことも出来ない。それを良いことに保科副隊長は私の耳や頬にちゅ、ちゅっとキスをしてくるから最悪だ。そこからじわりと熱が広がって、何かを期待したかのようにお腹の奥がジクジクしてしまう。
せっかく決心したはずの心が簡単に流されてしまいそうだ。
「のここ、何かドキドキしてるん何で?」
「…ン」
お腹に回ってた手がするする上がってきて、胸の丸みをなぞるように動く。しかも悪戯に先端をくにっと指で押された日にはびくん、と肩が跳ねてしまった。
「あ、あの保科…そ、宗ちゃん…」
「ん?」
「こ、これじゃハンバーグ作れない…」
「そうなん?ほな手ぇ洗って先にベッドいこか?」
「えっ」
保科副隊長は何故かその気になったらしい。後ろから手を伸ばすと水道の水を出して、そのままひき肉まみれの私の手を軽く流したあとハンドソープで綺麗に洗いだした。でも…
(何か洗い方がエッチなんですけど…しかも腰に保科副隊長のが当たってるような…)
指と指の間に自分の指を通して、撫でるようにして洗っている。その動きがまるで愛撫をされてるようで、指先から甘い感覚が広がっていく。
あげく限界だと言わんばかりに腰の辺りにゴリっと硬いものを押し付けられて、あ、まずいかも、と思った時には、下腹の奥の奥がきゅんとしてしまった。こうなってしまうと、もうダメで。
言われた通り、保科副隊長にベッドへ攫われ、食事の前だというのに二回連続で襲われてしまった。それも一回目は保科副隊長も限界だったみたいで、服を脱がすのも面倒だというようなせっかちなほど激しいやつ。
それで二回目は少し余裕が出来たせいか、かなり濃厚なのをじっくりと。
最後は失神させられ、目が覚めた時にはすっかり夜を回っていた。
はっ!だから何で普通にエッチしちゃってるの、私は!
ぱちっと目を開けた瞬間、そんな後悔が押し寄せてきた。でもふと視線を感じて隣を見れば――「あ、気ぃついた?」と微笑む保科副隊長と目が合う。筋肉質な上半身を惜しげもなく披露しているせいか、目のやり場に困ってしまう。こんな関係になったというのに、未だに直視できないくらいドキドキするのは、それだけ私が保科副隊長を――。
「さあ、僕から逃げられると思ってる?」
「……え」
私が考えてることなんて、保科副隊長にはお見通しだったみたいだ。通りでせっかちだと思った。きっと私が言おうとしてることを察知して、また改めて懐柔しようとしたのかもしれない。こうして抱けば私が何も言うことは出来ないと思って――。
「は何か勘違いしてるようやけど…」
「…え?」
「僕はのこと大好きやから、手放す気ぃはないで」
「…保科副隊長…」
「せやから、名前ー」
「あ…ご、ごめ…」
「あー…何も泣かんくてもええやん…。そら僕も言わんでも分かってるやろう思て肝心なこと言い忘れてたのは悪いんやけど…」
ってことで改めて、僕と付き合うてくれへん?と保科副隊長…改め、宗ちゃんは照れ臭そうな顔で言った。
思わず私が泣き出すと、彼は困ったようにへにゃりと眉尻を下げて、私の頭を「よしよし」と言いながら抱き寄せて撫でてくれる。その手の優しい動きに安心して、また眠くなってくるくらい嬉しい。
「僕がこんなに好きなのに、も思ってた以上に鈍感やね」
寝落ちをする寸前、苦笑交じりのそんな声が、私の耳を掠めていく。次に起きた時は、ちゃんと私も自分の気持ちを伝えよう。
「さよなら」じゃなく「大好きです」と言えたら、保科副隊長の好きなハンバーグを今度こそ愛情込めて作ってあげなくちゃ。

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