Irumi
※三角関係(性的描写あり)


世界中が今日という特別な一日を誰とどう過ごしているかなんて、少し前のオレにはどうでもいいことだった。殺し屋にキリストの生誕祭の素晴らしさを解かれても困るだけだ。けど彼女と過ごせるなら、どうでもいい存在の誕生日を盛大に祝ってやりたい気持ちにさえなるんだから、恋というものは厄介だ。特に、自分だけのものにならない女を相手にしている時は。

――あと一時間くらいで行くね。

そんなメッセージが送られて来たのが二時間前。約束の時間を一時間も過ぎれば、さすがのオレもケータイを手に彼女の番号を表示した。だがそんなオレの殺気にも近いオーラを感じ取ったかのように、そっと部屋のドアが開く音。オレはまるで待ってなんかいなかったとでもいうようにケータイをテーブルの上へ滑らし、手にしていた本に視線を落としたまま「来たんだ」と声をかけた。気晴らしに手にした本は一ページも進んでいないし、全然内容は入ってこない。意識は全て彼女の方へ向いている。
こっそりという表現が合いそうなほど、は静かに入ってきた。まだこの家の、というよりは家族に遠慮をしているらしい。彼女は「イルミ、ごめん」と後ろからオレの首に両腕を回して抱き着いてきた。彼女からはかすかに外の匂いと一緒にクリスマスローズの香りがする。脳裏に頭のおかしい道化師の顏が過ぎった。

「遅いからもう来ないかと思ってた」

我ながら意地が悪いなと内心苦笑しながら振り返ると、は少し悲しそうな顔で、もう一度「ごめんね、イルミ」と謝った。

「雪が降ってきて飛行船が少しの間、飛べなかったの」
「…フーン。じゃあ来なくても良かったのに」

なんて思ってもない言葉を口にすれば、途端には泣きそうな顔をする。そんな顔を見ていると、もっと傷つけてやりたくなるんだから不思議だ。大好きなのに、もっとオレのことで傷ついて悲しんでくれたら嬉しいなんて、オレも頭のおかしいアイツと同類なのかもしれないとちょっぴりウンザリした。

「クリスマスはイルミと過ごしたかったんだもん…」
「クリスマスだけ?」

素っ気なく返事すれば、彼女はまた落ち込んだ顔をする。オレを散々待たせたんだから、これくらい言わせてもらわないと。せっかく彼女の為の道しるべも準備していたんだから。

「ごめんね…」
「…謝って欲しいわけじゃないよ」
「あ、でもふもとに来てビックリしちゃったの。山がキラキラ光ってたから。今日は目印があるって言ってたけど、あれイルミがやってくれたの?」
「まさか。執事にやらせたよ、もちろん。オマエ、ああいうの好きだって言ってたろ。雪も降ってきたからここまでの目印にやらせただけ」
「そうなの?すっごい綺麗だった。おかげで迷わず来れたの。ありがとう、イルミ」
「言葉だけ?」

そう言ってもう一度振り返ると、彼女の唇がオレのと重なって、ちゅっと甘い音を立てた。同時に彼女の指がオレのシャツのボタンを外して肌へ触れてくる。その悪戯な手を掴んで強引にオレの膝の上に座らせた。

「…もう、痛いよ。イルミ」
「オレのここの方が痛い」

そう言いながら彼女の手を自分の心臓のところへ当てると、の手がピクリと反応する。それを合図に、今度はオレの方から口付ける。角度を変えて何度も縫うようにキスをしながら、の着ていたコートを脱がすと、中は薄いキャミソールドレス一枚。寒々しい恰好に思わず彼女の体を腕の中へ納めた。

「これじゃ風邪引くだろ」
「平気…」
「でも体が冷えてる」

ドレスの裾から手を差し込んで太腿を撫でながらショーツの中心へ指を這わせた。彼女の腰がオレを誘うように浅く揺れる。ショーツの隙間から指を差し込むと、の口から小さな声が漏れて、指先にぬるりとしたものがまとわりついた。

「何でもう濡れてるの。ヒソカとしてきたばかりとか?」
「…そんな話したくない」

甘えるように鼻先を俺の首筋に埋めてくる彼女が可愛くて憎らしい。この体をあの男と共有していると思うだけで殺意が湧いてくる。それと同時に変な高揚感を覚えていた。ドレスの上から胸を揉み「ヒソカにどんな風にされた?」と聞けば「言いたくない…ん…」と甘い啼き声を上げる。
分かっている。彼女とヒソカの関係を知った上で、オレが二人の間に割り込んだってことは。だけどそれでも欲しいと思ったからこそ、甘んじてそれを許容している。

「そもそもオレに電話くれれば自家用の飛行船で迎えに行ったのに」
「…イルミ、優しいね」
「…オレが?」

優しい、と誰かに言われたのは初めてだ。思わず苦笑して見せると、はオレに小さく音を立ててキスをしてきた。たったそれだけでオレの身体が熱くなるんだから、これはもう異変としか思えない。このオレが目の前の少女とも言えるような女に翻弄されるなんて。

「わたし、イルミのそういうとこ好きよ」
「…じゃあオレにしとけば?」

思わず出た本音に自分でも驚いたけど、も少しビックリしたような顔をした。

「イルミ、それ…本気で言ってるの…?」
「何。本気じゃ困るって言いたいの」
「…ち、違うけど…」
はちっとも分かってないよね」
「…何を?」
「オレのこと」

言った瞬間、彼女の体を抱き上げ、ベッドの上へ放り投げると、小柄な体が軽くバウンドした。そのせいでドレスの裾がめくれて、白い太腿が露わになる。そこへ手を伸ばせば、が少しだけ身を捩った。オレは構わず太腿へ手を這わせ、目的の場所まで辿り着く。そこはさっきよりも潤みを増していて、オレの気持ちも体も昂らせてくれる。

「…ん…」

こうなることを期待していたのか、とろりと濡れたそこは凄く熱い。の脚を広げさせ、潤みのある場所を舌で弄ってやると、彼女は背中を反らせて啼き始めた。

「イ…イルミ…それ…ダメ…」
「ここはそうでもないみたいだけど」

下地が出来ていた彼女のそこはすぐにトロトロになってオレを誘ってくる。ヒソカにどんなふうに抱かれたらこうなるのって聞きたくなった。あのヒソカが優しく女を抱ける男だなんて正直驚いたけど、の体には傷一つなく、随分と繊細に扱われたようだ。それが更にオレの欲を加速させていく。舌で膨らんだ芽を転がしてやりながら、一本二本と指を増やしていけば、は可愛い声でまた啼き始めて、オレの鼓膜を刺激してきた。

「ねえ、はオレとヒソカ、どっちが好きなの」
「そ…っんなの…んんっ…」

ナカを掻きまわして良いとこを突いてやれば、は簡単に絶頂を迎えた。

「イ、イルミ…ん…っ待っ…」
「オマエ、バカなの。待つわけないだろ。今度はオレをイカせて」

イったばかりの彼女のナカに痛いほど勃ち上がったものを押し込めば、収縮してすぐに締め付けてきた。こうなるとはいつだって貪欲に絞り取ろうとしてくる。

「…ほんと…オマエ、ムカつく」

言いながらもに覆いかぶさり、口付ける。本当は彼女と飲むのに最上級のシャンパンも、そして彼女の好きな甘い甘いケーキも、渡したいプレゼントだって用意してたのに。それを見せることなく体を重ねるなんて、オレの予定にはなかった。こんなセフレみたいな行為を優先するより、もっと普通の恋人同士のようにと過ごしたかったはずなのに、触れてしまえばそれは甘い毒のようにオレの身も心も蝕んでいく。何度も奥を貫いて、を啼かせたくなるんだから、彼女からすればオレもヒソカとそう変わりない男に映っているのかもしれない。

「ねえ…そろそろオレだけのものになりなよ」

長い長いキスを終わらせ、ゆっくりと抽送しながら耳元で囁けば、の潤んだ瞳が更に潤みを帯びて、その赤い唇が何かを言いかける。でも彼女の言葉はオレの耳に届く前に、甘い嬌声へと変わった。
今日がプレゼントを強請ってもいい日だと言うのなら、オレはどうしようもなくが欲しい。
体だけじゃなく心まで欲しくなるなんて、オレも案外普通の男だったんだと、彼女を抱きながら無償に笑いたくなった。

Hisoka side


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