Chapter.7.....Surprise engagement party2               I WISH YOU...




僕は撮影が終った直後にコンテナまで全力疾走していた。
今日はこれから明日のパーティーの為の仕込みを、と一緒にやる予定だった。
僕はコンテナまで来ると思い切りドアを開けた。

?」
「あ、リジー?早かったのね!」

も一応すぐメイクを落とす準備だけはしてくれていたようだ。

「うん、もうカットの声と同時に走って来たよ~。助監督も笑ってた」

今日は、PJはロケ隊の方へ参加していた。

「じゃ、座って?すぐ落としちゃうから」
「うん」

僕はが向けてくれた椅子へと腰をかける。
と同時にアスティンが入って来た。

「もう~リジー早すぎ!」 

と苦笑している。

「だってさぁ~時間がないんだから!明日だって夜がパーティーだから昼間のうちに全部用意しないといけないんだよ?」
「ああ、そうだよねぇ。撮影の合い間にパーティーの準備してるんだから、ハードだよなぁ」
「ショーンは?アンディと飲み物調達隊だろ?沢山仕入れた?」
「ああ、一応シャンパンとワインは確保したよ?あとはウイスキーとか用意するだけ。明日昼間にでも酒屋を回るよ」
「そっか!あとは…オーリーとディヴィッドも花屋めぐりするって言ってたし、ドムとビリーは飾り付けだし…
あ、そうそう。ヴィゴは明日の料理手伝ってくれるからさ」

それに黙々とメイクを落としていたが驚いたように手を止めた。

「…え?ヴィゴが料理を?」
「うん!ヴィゴさ、料理得意だからね!皆でやればすぐ終りそうだろ?飾り付けも手伝わないとならないしさ」
「そ、そうね?ドムとビリーだけじゃ可哀相だし…スタッフの人は忙しいものね…」
「うん、だから少しでも料理は大人数で作っちゃおうよ」
「ええ、そうね?じゃ、今夜の下準備はちゃんとしなくちゃ!」

も笑顔で言うと、またテキパキと手を動かしていき、あっという間に僕はフロドからイライジャへと戻ってしまった。

「はい、次はショーンね?」

がショーンの方へとかかり、僕はコンテナにあるポットからコーヒーを入れて飲みながら好きな音楽をかける。

「お?今日はジミヘンですか?イライジャくん!」

ショーンが曲に反応して声をかけてくる。

「うん、ちょっと気合入れるのにね!気分が盛り上がってテンション上がるだろ?」

僕は少し笑いながら答えた。
そこにドムとビリーが入ってくる。

「「おっつかれぇ~~!」」

仲良くハモると、ドサっと椅子へと腰をかけた。

「お疲れ様、ドム、ビリー。ちょっと待っててね?」 

が笑顔で声をかけると、二人も笑顔で、手をあげ、「OK!」と言った。

「なあ、飾り付け、どんな感じ?」 

僕は二人に任せっきりで出来上がり具合を知らなかった。
すると二人は顔を見合わせ、

「ああ、もう少しで出来上がるよ!たださぁ~睡眠時間削って作ってるから今日なんてNG出しまくり!」

ドムが肩をすくめて笑っている。
ビリーも溜息をつくと、

「そうそう!俺が上手く言ったと思ったら、ドムがNG出して、ドムがちゃんとできたと思ったら、
今度は俺って具合に仲良く交互にNG大将だよ…!」
「そ、そっか…。大変だよね…」

と僕も苦笑しつつビリーの肩をポンっと叩いた。

「そう言えばさ、今夜はホテルの厨房借りて料理の下ごしらえするんだって?」

ドムがポットのコーヒーを注ぎながら僕を見る。

「ああ、そうなんだ!支配人に料理の手配を頼んだ時に聞いてみたら、今は使ってない厨房がそのままあるって言ってくれてさ!
それで、そこなら好きに使ってくれていいって言うし、材料とかも冷蔵庫に入れさせて貰ったんだ」
「そっかぁ~。ま、そっちも頑張ってよ!俺らもこれからドムの部屋で幕を書くからさ!」 

とビリーがガッツポーズをして笑った。

「うん!頼りにしてるよ!」 

僕はコーヒーを飲みながら煙草へと火をつけてビリーへ微笑んだ。

「はい終わり!じゃ、次ビリー?いいわよ?」

アスティンのメイクを取り終えて、が次はビリーを呼んだ。

「は~い!じゃ、俺もピピンから、ミスタービリーに戻りますかね!」 

と言って椅子から立ち上がる。
僕とドムは吹き出して、「自分で自分に、"ミスター"なんてつけるなよ!」 と笑った。
その間もは忙しく手を動かしている。

(ああ…僕もメイクの知識があれば取るのも手伝ってあげたいのになぁ…)

なんて考えつつ、今夜の準備には、オーリーはくるなよ…とジミに祈っていた…








、こっち、こっち!」

僕は厨房の入り口の前まで走って行くと、を呼んだ。

「あ、ここなの?何だか裏に入ると迷路みたいで分かりにくいわね?廊下も薄暗いし…」

は苦笑しながら走って来た。
僕は買い物をしてきた日、支配人と一度来てるので場所は分かっていた。
そして、そっと扉を開けると、その広い厨房の中は真っ暗でシーンとしている。

「リジィ…スイッチどこなのかな…」

真っ暗な厨房を二人で入っていくと、が呟いた。

「えっと…何だか壁に何かが沢山あって分からない…って言うか見えないよ!」 

僕も苦笑しつつ叫んだ。
いくらコンタクトをしてるとは言え、僕は極度の近眼で、こう暗くては何も見えなくなってしまう。
も真っ暗で怖いのか僕の背中を…というか服をキュっと掴んでくる。
僕はちょっとドキドキしながら、少しづつ前に進んでいった。

(こんな暗い中に二人きりはまずい…。ほんとにドキドキしちゃうよ…!)


その時――


ガン!


「ぃた…っ!」
「…?!」

が何かにつまづいて僕の背中によろけてきた。
僕は見えないながらもを支えて手探りでの頬を両手で包んだ。

「大丈夫?!どこが…痛いの?」
「つ…!…ごめんなさい…。あの何か台の足につまづいたみたい…足の小指が痛い…」

よほど痛いのか、ぶつけた方の足が床につけないのだろう。
は体重を僕にかけて必死に掴まっている。

「うわ、足の小指は痛いよね…!大丈夫、歩ける?」

の頭を撫でながら片手で彼女の体を支えてあげると、暗くて見えないものの何とか顔を覗き込んだ。
表情が見えないと凄く心配になる。

「う、うん…ちょっと…」 

は凄く痛いのか、そこで黙ってしまった。

「だ、大丈夫?よっぽど強くぶつけたよね?凄い音がしたし…」

僕はちょっとオロオロしながら、の頭を撫でつづけた。
丁度、僕の胸の辺りにの頭があるのが分かる。

「…少し…痛みが引いてきたわ…」

が痛いのを我慢しているように呟く。

「ほんと?無理しないでね?痛みが治まるまで動かない方がいいし…」
「ん…ありがと…」 

すぐ近くでの声が聞こえるのが何だか凄くドキドキした。
僕の胸の近くにの顔があるから心臓の音が聞こえないかと心配になるほど…。
何だかそのままシーンとしてしまって僕は顔が赤くなってきた。
の体を支える為、腰に置いた腕も硬直したまま。

ど、ど、どうしよう…ほんとに顔が熱くって…心臓の音も本気でやばい…聞こえちゃいそうだ!
は僕の服を掴んだままだし、何だか抱き合ってるような錯覚に陥るよ…
ちょっと屈めばキスができてしまう…
ああ!ダメダメ!そんな事を考えるから心臓の音がドッキンドッキンと大きくなっていっちゃうんだ!

僕は必死に違う事を考えるようにした。

ショーンの変な寝顔…
ドムのゴジラかと思うほどのイビキ…
オーリーのモヒカン頭・・・・(!)
PJのコオロギ、雄たけび事件…&PJの強風、メガネ吹っ飛び事件などなど…。

僕は次々と笑えるようなネタ(!?)を思い浮かべるように努力していた。
すると――

「リジィ…何だかドキドキしてるよ?大丈夫?」

いきなりに、そう言われて僕は一瞬、そのうるさい心臓が止まったかと思ったほどに驚いてしまった!

「え…そ、そう…かな…?」

(何て答えていいのか分からないよ…!どうしよう?)

「だ、だって…こんな暗い中で女の子とこんなに密着したら…男なら誰だってドキドキくらい…するよ…うん…」

と何だか動揺バレバレな口調で呟いた。

「そ、そうなの…?ごめんね…?」 

と何だかまで少し動揺したような口ぶりで呟く。

「え…謝ることはないよ…?僕はラッキーだなって思ってるんだから…」 

とつい本音が出てしまって自分で眩暈がした(!)

(な、何言ってんだ?俺!これじゃあ、ギリギリで告白か、はたまた、とってもスケベな男だと思われるってば!)

僕は自分のアホさ加減で眩暈どころか変な汗が出てきて困ってしまった。
すると、

「な、何言ってるのよ…」 

はきっと今、顔が真っ赤なんだろうなと分かる口調で言うと、僕からそっと離れようとして、少しよろけた。

「キャ…」 
「あ、危ないよ…!」

僕は暗い中、必死にの腕を掴むと、

「ごめん…別に変な意味で言ったわけじゃ…。冗談だからさ?」 
「う、うん。分かってるわ?ちょっと恥ずかしくなっただけで…」 

は少し微笑んだようだった。
その時―
パッと明るくなって僕は眩しさのあまり目を瞑ってしまった。

「眩し…」

も呟いている。
そこに大きな声が響いた。

「な、な、何してるのさ!」
「え?オーリーか?」

僕はまだ眩しくてハッキリ目を開けられない状態だったが、そのやかましい声でオーリーだとわかった。
するとドタドタ歩いて来たようで、いきなり僕の腕を掴んで、から引き離した。

「ちょ…オーリー?」

も驚いている様子。

「二人で…今、抱き合ってなかった?!」

僕はやっと目を開けるまでに回復して、そのうるさい声のするほうへと視線を向けて驚いた。
オーリーがしっかりを抱きしめて僕を睨んでいる。

「ちょ!オーリー何してるのさ!」 

僕は驚いてからオーリーを引き離そうとした。

「ちょっと…オーリィ…離して?足が痛いの…。あまり動かすと…」

が顔をしかめて呟くと、オーリーも驚いて、

「あ、ごめん!え?足・・・どうしたの?」 

と心配そうにの顔を覗き込む。

、そこの台に足の小指をぶつけてさ。それで立てないから僕が支えてたんだよ!」

僕はさっきの状況を、ちょっとフテくされながら説明した。
オーリーは、キョトンとした顔だったが、いきなり笑い出した。

「アハ…ハハハ!そ、そうなの?俺はてっきり暗闇をいい事にリジーがを手篭めにしようとしてるのかと…」
「はぁ?!んな事するかよ!」

あんたじゃあるまいし!! と心の中で付け加えた。

つーか"手篭め"って、いつの時代だよ?!今はもうミレニアム元年だよ?!
それに何でオーリーがここに!!今日は遅いって言ってたのに!

「大丈夫??」

オーリーはが心配なのか、さっきの僕みたいにの隣でオロオロしている。

「うん…もう大丈夫。力入れても痛くないわ…。はぁ…さっきは涙出ちゃった…」

も苦笑しながら足を動かして、そっと床に置いている。

「良かった…僕もどうしようかと思ったよ…」
「ごめんね、ありがとう、リジー」
「ううん!とにかく痛いの治って良かったよ。足の小指は骨折しやすいって言うし、ちょっと心配しちゃった」
「ほんと?骨折は…してないみたい…。でも、それくらい痛かったけど」

はちょっと恥ずかしそうに舌を出して笑うと、

「それより…オーリー、よく電気の場所分かったわね?」 
「え?ああ、適当にスイッチみたいの押したらついたよ?それに暗くても慣れたら見える方だしさ」

(何だ、それ?…ほんとリヴの言うように野生動物か、あんたは!)

僕はとの二人の時間を邪魔されて、ムゥ…っと頬を膨らませた。

(せっかくヘンリーが今日もいないってのに…!)

すると、オーリーも、そこに気づいたのか、

「あれ?チビスケは?さっき一緒に戻ってきたのに」 

と聞いて来た。

「ああ、それが…今日は邪魔になるだろうってヴィゴが寝かしつけたみたいだよ?明日は手伝うって張り切ってたようだけど」
「ふーん、そっか!じゃ、静かでいいな」

オーリーはニコニコとに微笑みかけている。

(よ、よくないよ!こんな事ならヘンリーに来て貰った方が良かった…!)

オーリーを阻止してくれるのは今では彼しかいない!と僕はヘンリーに、そこだけは全幅の信頼を寄せていた――!

「さてと…じゃ、用意しちゃいましょうか?」 

が腕まくりして微笑んだ。

「うん、そうだね!急がないと…」
「俺も手伝うよ!」 
「ええ?オーリー料理出来るの…?」 

僕は目を細めつつオーリーを見た。

「む…出来るよ、それくらい! ―、何したらいい?」 

には満面の笑顔。

「あ、そうね…。じゃ、オーリーはジャガイモの皮を剥いて切ってくれる?フライドポテトの大きさに」
「OK!」

オーリーは何だか嬉しそうに、が出していくジャガイモを運んで水で洗い始めた。

(全く…ゲンキンな人だよ…オーリーは)

僕は軽く溜息をつくと、自分の担当のマリネとタコスを作るべく、まず玉ねぎやひき肉を出し始めた。
はケーキのクリームを作る為に、材料を出して作業をし始めている。
クリームは当日作っている暇はないので今日のうちに作ってしまうのだ。
暫く黙々と作業をしていたが、僕は少し息をつくと、ジャガイモの皮を剥いているオーリーを見た。
するとオーリーは恐々と、包丁で皮を剥いてるのだが、何だかチビチビ剥いてるだけで皮が細かく下落ちていく。

「ちょっとオーリー、それじゃ時間かかるよ?」 

僕は呆れて溜息をついた。

「う、うるさいな!前に一度、包丁で指を切ってから怖いんだよ…!」

と、口だけ動かして、目だけはジャガイモを真剣に見ている。
僕はちょっと吹きだすと、

「じゃあ、皮むき様ので剥けば?あれなら子供でも簡単に出来るから」 

と言って壁にかかってた皮剥き機を取ると、オーリーへと渡した。

「ああ、そっか!これがあったんだっけ!って、子供でも出来るってのは余計だよ!」 

とオーリーは不満げな顔で受け取り、それでジャガイモに再度トライしている。
それでも、

「おぉ!剥ける、剥ける!リジー、これ面白いくらい剥けるよ?!」 

とすぐに、はしゃぎ出して僕はまた吹き出してしまった。

(全くさぁ…子供か、あんたは…!)

僕は嬉しそうに皮を剥いているオーリーを見て苦笑すると、また自分の作業へと戻った。
サーモンのマリネがいいと、が言うので、昨日のマーケットで買って来たサーモンを薄く切っていく。

(あ~あ…これをと二人でやってたら…きっと新婚気分だったのになぁ…)

そんな事を思いつつ、僕はチラっとを見た。
はクリームを作るのに泡だて器を一生懸命に動かしている。

、大丈夫?それ結構、力いるんだよね?」
「う、うん…そうなの…。泡立ってくるまでが、ちょっと…」 

は必死に泡立てている。
その一生懸命の顔が可愛くて、僕はそっと微笑むと、「僕、やろうか?」 と声をかけた。

「でも・・・リジーもやる事あるでしょ?大丈夫よ?」 

は言うも嬉しそうに微笑んでくれた。

「そう?疲れたら、いつでも言ってね」 

と、僕も微笑んで自分の手元に視線を戻した時、オーリーが顔を上げて、

「俺がやろうか?」 

と嬉しそうに言っている。

「あんたはジャガイモの皮をまず剥いてよ!全然、進んでないじゃん!」

僕が呆れながら言うと、オーリーはジロっと僕を睨んだ。

「む…だ、だってさ、久々なんだよ、こんな事をやるのは!」
「だからって皮を剥くくらい、簡単だろ?別に魚をさばけって言ってないんだしさ」
「そうだけどさ…」 

と、オーリーはシュンとして俯いてしまった。
僕はちょっと可哀相だったかな?と思って、

「もう、ゆっくりでいいからさ…。ちゃんと朝までには終らせてね?」
「わ、分かってるよ…」 

とオーリーは頬を膨らませて一生懸命にジャガイモの皮と格闘している。

僕はちょっと苦笑すると今度は水にさらしてあった玉ねぎを切っていった。






「出来たぁ!」

と僕は嬉しそうに声を上げた。

やっとクリームやら、マリネやら、が出来て、あとはオーリーのジャガイモ…
いやフライドポテトのみだと思っていたが、一向に終る気配もなく仕方ないので、
僕とは自分の作業が終った後に、オーリーが必死に格闘していたジャガイモを切る作業を始めた。
オーリーが切ると、太かった細かったり長かったり…とバラバラのサイズになってしまっていた。

「全く…オーリーっどうやったら、こんな形に切れるのさ?」

大きさがバラバラの中に、たまに三角っぽい形のポテトまであり、僕は思わず吹き出した。

「うるっさいな!アートだろ?そんな風に斬新な形のポテトを切れるなんて、早々いないよ?」 

とヤケクソ気味だ。

「こんな形じゃ火が通るのだって遅くなるってば!」 

と僕は苦笑しつつ、そのオーリー曰く自称アートな形のポテトを従来の形へと戻していく。
そんなこんなで、やっと出来上がったのだった。

「はぁ…何だか肩が凝っちゃったよ…」 

とオーリーがぼやいている。

「あのね…オーリージャガイモしか触ってないでしょ?」
「あの皮を薄く剥くのに全神経を使ったんだよ!リジーが横から、いちいち、"ああ!皮、厚すぎるだろ?"とかうるさいからさ!」
「だって、あんなに厚く剥いたら実がなくなるじゃないか!」
「いいだろ?食べやすくてさ!」

まるで子供のケンカのようになり、僕はどっと疲れてきた。
も止めに入る元気すらないようだ。

「じゃ…これ、またしまわせて貰って…明日は何時にしましょうか…」
「そうだなぁ…。明日は皆が手伝ってくれるし、そんな早くなくても良さそうだよね?」
「そうね…じゃ、12時過ぎにする?」
「うん、パーティーは6時だし…それまでに終るよ、きっと」
「じゃ、明日は12時半頃に」
「はあ…いいなぁ。僕は花屋めぐりだから10時には出発だよ?ディヴィッドと二人で…」

とオーランドは寂しそうに呟く。

「そうねぇ…花屋は早いしね…。いい花はすぐ売れちゃうから…。でも頑張ってね?リヴの為に…」

が優しくオーリーの腕を掴んで微笑むと、オーランドは、すぐに笑顔になる。

「うん、頑張って起きるよ!明日は奇麗な花があったら、にも買ってくるね!」
「ほんと?ありがとう」

も笑顔で答えると、「じゃ、もう部屋に戻りましょうか…2時半だもの」

僕は嬉しそうなオーリーの顔を睨みつつも時計を見て驚いた。

「うわ~撮影延びたときと変わらないね」

僕も苦笑しながら、「早く寝よ!」 と言って厨房から出て行く。
それぞれエレベ―ターに乗ると、も自分の階で降りた。

「じゃ、今日はお疲れ様でした!また明日、頑張ろうね?」 
「うん、Goodnight!
「Goodnight~!、また明日ね!」
「おやすみ、リジー、オーリー」

は笑顔で手を振ると、部屋の方へと歩いて行った。!
僕はドアを閉めて、エレベーターはまた一階上まで上がっていく。

「はぁ…腕が痛い…。ジャガイモの皮むきって弓打つときとは、また違った筋肉使うよ…」

オーランドが腕をさすりながら呟く。
僕はちょっと吹き出して、

「ジャガイモの皮を剥く時に使う筋肉ってどんな筋肉なんだよ?」 
「使うだろ?こう…こうやって剥くと!」
「それはオーリーが力入れすぎなの!」 

僕は苦笑いしながら言うと、エレベーターを降りて自分の部屋まで歩いて行った。

「じゃね、Goodnight!オーリー」
「ああ、Goodnight!」

僕はすぐに部屋へと入ると軽くシャワーを浴びた。
そして煙草に火をつけると、ソファーへとドサっと腰を降ろす。

「はぁぁ…」

煙と共に溜息までが洩れた。

せっかくと二人の夜が…またオーリーと3人…
くそう…絶対に、オーリーの罠だ!陰謀だ!しかも野性動物並みの勘だよ!
さっきは…凄くいい雰囲気だったんだけどな…
僕は、さっきの暗闇での事を思い出すと、またしても胸がドキドキしてきて軽く頭を振った。
ほんと…僕、動揺して何だか変なこと言っちゃったよな…
まさか気持ちは気づかれてないだろうけどさ…
何だか、この二日間、と一緒に入る時間が多くて嬉しいけど…
ちょっと心の距離を感じたりして寂しい気もする。
ショーンが言ってたように、分かって貰えるように本気でぶつかっていくしかないんだけど…
が僕との間にラインを引いたままじゃ難しい気がする。
どうやったら…そのラインを消してくれるんだろう…

その事を考えると、さっきとは違って胸がツキンと痛むのを感じ、そっと溜息をつく…
でも明日は…出来るだけをフォローしてあげたい。
どんなに辛くても、そういう気持ちだけは湧いてきて僕は本当にの事を大切に思ってるんだと再確認する。

そんな…自分が凄く愛しく感じたりもして…嬉しくもある。

人を本気で好きになった気持ちが今の僕には宝物のように思えた…






3rd