Chapter.7...Surprise! engagement party!1 I WISH YOU...
ポカポカと気持ちのいい昼下がりだった。
僕は休憩に入って食事をした後、この前、と二人で上がったコンテナの上で一人寝転びながら真っ青な空を見てた。
はぁ~…気持ちいいなぁ…。このまま寝ちゃいそうだ。
それにしても…はどこに行ったんだろう?
ランチに行く前に、も誘ってみようかとコンテナを覗いたけど、誰もいなかった。
まぁ、オーエンとグラントは他のメイクのグループと山へロケに行ってるから解るけど…
の場合は…スタジオ担当なのに…。
ヘンリーと、何処かへ食事にでも行ったのかな…。
は、ここ最近はずっとヘンリーのお守をしてる。
ロケ現場に連れて行くとオーリーとケンカになって、うるさいからってヴィゴがの行為に甘えて預けてるってわけ。
ヴィゴの彼女…ジーンもいるが、ヘンリーが嫌がるらしい。ジーンはヴィゴについてロケ現場に行っている。
そのおかげで、朝のとの楽しいメイクタイムに、お邪魔虫が二人になった。 ―もう一人はアスティンだ―
その後に、最近スタジオ撮影へと変わったビリーやドムまでが乱入してくるから、更に僕との会話の時間が削られていく…。
「はぁーあ…」
僕は軽く溜息をついて目を瞑った。
何だか、この前の夜から、まともにと二人で話してないよなぁ…。
何で僕の恋って障害があるんだ?
そりゃ障害があればあるほど恋は燃えるって言うけど、僕の場合は多すぎなんだよなぁ…
そよそよと気持ちのいい風が僕の顔を撫でて吹いていく。
このまま…昼寝しちゃおうかな…
次の撮影まで、まだ時間もあるし…始まる時になったら携帯でも鳴らしてくれるだろう…。
そんな事を考えつつ、すでに、うつらうつらし始めた、その時――
「…ジィ…?リジー?そこにいるの?」
ああ…の可愛い声が聞こえる…
もう夢を見てるのかな?…
「リジー?」
最後に僕を呼ぶ声が聞こえたかと思うと、続いて大きな声が僕の耳を襲った。
「フロド!!起きろよ!!」
「…うわぁ!」
僕は驚いて、そのまま飛び起きてしまった。
何事かと頭を振り少しだけ寝ぼけた顔で、今の声は…と恐る恐る振り返ると…
ハシゴのかけてある場所からヘンリーが、頬を膨らませて顔を覗かせていた。
「…ヘンリー?」
何でヘンリーがここに…? ―僕は思考回路を必死に巡らせる。
「フロドが起きたよ、!」
ヘンリーは嬉しそうに顔を下に向けて叫んだ。
「え……?」
僕は驚いた顔のまま、その場でボーっとしていた。
一瞬寝たのを、いきなり起されたから、まだ頭がハッキリしない。
するとヘンリーがコンテナの上まで上がって来て、続いてまでが上がって来るのが見えて僕は一気に目が覚めた。
「Hi!リジー」
「…!」
僕の顔につい笑みが零れる。
「探したのよ?ランチを一緒にどうかな?と思って。ねぇ?ヘンリー」
「…えっっ?!」
「そうだよ?でもさっきスタジオまで行ったら、もう出かけた後でさ。だから僕と二人でランチに行ってきたんだ!」
得意げに答えるヘンリーは軽く無視して(!)もう春だと言うのに僕の心の中には秋の風が吹き抜けていった。
OH!MY!GOD!!が僕をランチに誘いにスタジオまで来てくれただなんて!!!
何やってんだ?!俺!!すれ違いなんて…
「ご、ごめん…!」
僕はショックを受けつつも、つい謝ってしまって、に笑われた。
「え?どうして謝るの?私が突然行ったんだから仕方ないわよ。今度からは先に電話入れるね」
その言葉に僕の胸が高鳴る。
「う、うん!そうしてくれる?その時は待ってるからさ…」
僕の言葉には笑顔で頷くと、コンテナの上に寝転がった。
「はぁ~気持ちいいわね!」
僕もまた寝転がると、さっきと変わらないままの青い空を眺める。
「ほんと…気持ちいいなぁ!」
(本当なら…の隣に僕が寝転がってるはずなんだけど…)
そんな事を思いつつ、僕との間に嬉しそうに寝転がったヘンリーを横目で見た。
最近のヘンリーのナイトぶりは見事なものだった。
僕がと楽しそうに話していると、すぐに割り込んでくる。
まあ、それでも僕はオーリーみたいにに極度のスキンシップをするわけじゃないので、
オーリーほど酷くは敵視されてはいないんだけどね。
だが…ヘンリーのボディーガードの仕事(?)は僕やオーリーだけに留まらない。
スタッフや他の共演者たちにまで被害が及んでいる。
の上司のオーエンは、に軽く仕事上の注意をしただけで蹴飛ばされた。
「をイジメるな!」 と言われて…
の先輩のグラントは、の肩を軽く抱いただけで、浣腸された(!)
「僕とダディのに気安く触るな!」 と言われて…。
ドムはを飲みに誘っただけで、靴の中に犬のウンチを入れられ(!)それを怒ると、
「僕のをデートに誘うからいけないんだ!」 と言われてた…。
オーリーにいたっては…もう言うまでもないだろう…。
相変わらずボロボロの扱いさ…。
僕だけが唯一、酷い仕打ちは受けてなくて、が僕をランチに誘おうとしても別に文句は言わなかったようだ。
僕はオーリーと違って普段の行いがいいからね…。
はヘンリーの、そのナイトぶりが、あまりに酷いと(特にグラントへの浣腸とドムの靴にウンチ事件)
その都度怒ったりしてるんだけど、ヘンリーも、その辺は頭が良く(ずる賢く?)
素直に、「ごめんなさい…が心配だったから…」 と謝るので、も許してしまうのだった。
だからも他の人達と仕事以外で一緒に行動することを避けるようになった気がする。
今日だって僕をランチに誘いにきたのも、きっとヘンリーが僕の事だけはそんなに敵視していないからだろうと思った。
も、ここまでなつかれてると大変だろうな…
僕は、ふとの横顔を見て、そう思った。
が、その時、突然を見ていた視界の中に、ヘンリーのドアップが、ヌっと現れ僕はギョっとした。
「フロド…に見惚れてたでしょ?」
ヘンリーが上半身だけ起き上がって僕を見ている。
(ヤバ…何か言われるかな…"僕のを見つめるな"とか何とか…)
僕は顔を引きつらせて、「え…あ、いや…」 と何とか笑顔を作った。
すると意外な事にヘンリーは、ニッコリ微笑み、また寝転がると、
「見惚れるの分るよ~。、奇麗だもんね!」
と言うので僕は驚いてしまった。
(ど、ど、どうしたんだ?!ヘンリー…!!!絶対に怒鳴られるかと思ったのに…!!)
僕は驚いた顔を隠すように何とか、
「あ、ああ…。そうだね…。ヘンリーも、が好きなんて見る目あるよね?」
と何故か誉めてしまった(!)
僕のその言葉にヘンリーは嬉しそうに微笑むと、「だろ?」 と得意げな顔。
それを聞いてたが恥ずかしそうに、「何言ってるのよ?二人して…」 と顔を赤らめている。
そんなを見て、僕とヘンリーは顔を見合わせると、「へへヘ」 と笑いあった。
ヘンリーと仲良く微笑みあうなんて変な気分だけど…。
「あ、そうだ」
その時、が思い出したように体を起して僕を見た。
「あのね、リジーにも参加して欲しいんだけど…今度、リヴの婚約を祝って皆でサプライズパーティーを開こうと計画してるの」
「え?!サプライズパーティー?!」
僕も驚いて体を起す。
「ええ。リヴの婚約をお祝いしたいって言ったら、"じゃあ、せっかくだし皆でリヴに内緒でサプライズパーティーしようよ"って…」
僕はその話を聞いて少しだけ疑問に思った事をすぐ聞いた。
「…それ、誰に言われたの?」
「え?あ、オーリーよ?夕べ、部屋に電話がきて…話してたら、そんな方向に流れていっちゃったの」
そう言うとは苦笑している。
僕は一瞬、眩暈がした。
オーリーめ!ちゃっかりの部屋にまで電話してたなんて!!!
まあ…オーリーはロケに出てるから、毎日と会えなくなって寂しいんだろうけどな…。仕方ないか…。
「で…サプライズって具体的には、どうするの?」
「一応、リヴにバレないように、共演者の人達とか、手が空いてる人が、それぞれ準備をしていくようにして…
プレゼントとか料理の手配とか…オーリーは花束係りで…
私は個人的にも、お祝いのプレゼントをあげたいんだけど…何を買おうか迷ってるの。
あ、参加する人はロケ班の人にはオーリーから話が言ってると思うし、スタジオの方の人達には私が言う事になって…
あとでビリーとドム達がいるスタジオにも行こうと思ってたのよ」
「そうか!何だか楽しそうだね!もちろん僕も参加させて貰うよ!
リヴにお祝いしたいしさ!それに色々と手伝うから何でも言ってね」
僕は笑顔でそう言うと、も嬉しそうに微笑んだ。
「…ありがとう!私、トロイしそういうサプライズパーティーってした事がないから何をどうすればいいのか分からなくて…」
「え?サプライズパーティーした事ないの?」
「うん…アメリカとかでは結構、主流なんでしょうけど日本では当事者に内緒で友だちとかが
準備をしてパーティーするって事があまりないわ。
前もって本人にも、誕生日パーティーするからとか、お祝いするからって伝えてしまうものなの
。だから…こっちの人からみると面白みもないんでしょうね」
「へぇーそうなんだ!そんな前もって分かってたら感動も半減だよなぁ…。ま、でも驚かせたりするのが好きなんだよ、アメリカ人は」
僕はそう言って苦笑すると、
「で…いつやるの?パーティー」
「えっと…次のオフの時かな?ロケ班もスタジオでも完全にオフにする日があるでしょ?」
「ああ!えっと…明々後日だっけ…」
「うん。それまでに準備しないといけないの」
「そっか!そりゃ大変だな…仕事もしながらだしね?じゃ、まずは人集めだし…ドムとビリーには後で僕から話しておくよ。
それでは自分のプレゼント、ゆっくり考えて…っていうか僕も考えないとな」
「ありがとう、リジー」
「いいんだって!協力するって言ったろ? ―それよりは何をあげたいの?」
「あ…私はやっぱり…フィアンセの人と御そろいの…例えば…パジャマとか?」
「ああ、いいね!それ!貰ったら嬉しいかも!パジャマは、どっちにしろ使うしさ!」
「そう…かな?じゃ、そうしようかな…。あとはケーキを焼きたくて…」
「え?ケーキ?」
「ええ、私、お菓子とか作るの苦手なんだけど…今回、ちゃんと手作りであげたいなって…」
は少し照れくさそうに微笑む。
僕はの優しさに感動してしまった。
「そっか…。じゃ、僕にも何か手伝わせてよ!材料買いに行ったりするだろ?荷物もちでも何でもやるよ?」
「ええ?そ、そんな…リジーに、そんな事させられないわ?」
と、は苦笑しながら僕を見る。
「そんな事ないよ?気にしないで!」
僕が笑顔で、そう言うとは少し遠慮がちに、
「…あ、そうだ…。じゃあ…あの…早速お言葉に甘えても?」
と少し上目遣いで僕を見た。
「え…なに?なに?何でも言って?」
僕は少しドキっとしながらも、それを顔には出さず、に微笑みかける。
「そのプレゼントのパジャマなんだけど…私、男性の好みのパジャマって分からないし、
リジー、一緒に行って見立ててもらえないかな?」
「ああ、そんなこと?全然、構わないよ!」
「ほんと?ありがとう!明日は夕方に撮影が一時終るでしょ?だから、その時に行こうかと思ってるんだけど…いいかな?」
「うん、いいよ!じゃ、休憩入ったら、すぐコンテナまで迎えに行くよ」
「ありがと!私もメイク落とす準備しておくわね?」
と、は嬉しそうに言って僕に微笑みかけてくれた。
僕は、その向日葵みたいな笑顔に、つい顔がニヤける。
と一緒に買い物へ行けるのも嬉しかった。
それで…あまりに嬉しくて、つい存在を忘れてたヘンリーを見てみると…
何と気持ち良さそうに、スヤスヤと眠っていた(!)
「ああ。何だか静かだと思ったら寝ちゃってるよ…」
笑いながら僕が言うと、も、
「ほんと…おなか一杯で眠くなっちゃったのね」
と言ってヘンリーの頭を撫でてあげている。
そんなが、マリア様のように見えて(!)ちょっと見惚れてしっまっていた。
でも…サプライズパーティーか!何だか楽しそうだな。
さすがオーリー、こういう事を思いつくのはオーリーしかいないよな…
まあ、オーリーの頭が毎日、サプライズだしな(!)
でも…人を祝う事は素晴らしいし、とも、こうやって話せるから…オーリーに感謝だよ、うん!
僕はと買い物へ行ける喜びと、その時は必ずヘンリーもついてくるだろうな…という少しの憂鬱の中、
この気持ちのいい昼下がりに、と一緒にいられたことにも神様に感謝していた…。
「え?パーティー?」
ドムが驚いた顔で聞き返してくる。
「うん。オーリーが計画立てたらしくてさ。大勢で参加して貰った方が盛り上がるだろ?」
「もちろんだよ!リヴのお祝い何にしようかって考えてたとこだし!サプライズかー!よし、やろうよ!」
「ビリーも参加するだろ?」
「ああ、もちろんさ!楽しそうだな~」
僕は撮影の合い間に昼間、と話してたパーティーのことを知らせるべく、隣のスタジオに顔を出して、
ドムとビリーに協力を仰いでいるところ。
「じゃ、二人とも参加って事だね?具体的には、まだ決まってないけど…それぞれ役割分担して行こうよ」
「そうだなぁ…。場所は?どこでやる?ホテルの部屋じゃ大勢来るなら狭いし…」
ドムが両腕を組んだまま考え込む。
その時、ビリーが、ポンっと手を叩いて、
「ねえ!ここは?スタジオの開いてる場所で出来ないかな?」
「ああ!そっか!スタジオなら広いし何かと便利かも!」
僕もスタジオ内を見回して言った。
「よし、じゃあ、監督にも話を通して聞いてみよう!どうせ借り切ってるんだし一日くらい撮影以外に使ったって大丈夫だろ?」
ドムも張り切っている様子。
「飾りつけとかもやろうか?垂れ幕とかさ」
「じゃ、ビリーとドムに、それやってもらっていい?僕はがケーキを焼くって言うからそれ手伝うことになってるんだ」
僕がそう言うと、微妙に二人がニヤっとしたのを感じた。
「…何だよ?二人してニヤニヤしちゃって…」
僕は、そう言うと少し顔をしかめた。
するとドムが今以上にニヤリと笑いながら、
「と二人でケーキ作りなんて何だか夫婦みたいだよね?」
「そうそう!何だか最近、いい感じじゃないの?」
と、二人から、いきなり、そう言われて僕は顔が赤くなってしまった。
「な、な、何が夫婦だよ…!そういうんじゃないだろ?一人で仕事の合間にプレゼント買いに行ったり、
ケーキを焼くって言うから手伝うだけだって!」
僕は必死になって言い分けをすると、
「あ…時間だ、戻らなくちゃ…!ま、またね!二人とも!宜しくね!」
と言いつつ、その場から走って自分のスタジオへと戻った。
自分のスタジオにつくと入る前に軽く深呼吸をする。
はぁ…全く…あんな事くらいで動揺してちゃ、僕もまだまだだよなぁ…
もっと大人にならなくちゃ…!
じゃないと一生、に男として見てもらえないよ…。
まあ、と夫婦みたいなんて言われて悪い気はしないけどさ!
僕は少しニヤケながらスタジオ内へと入っていくと、すでにスタッフが撮影の準備を整えていた。
「おい、リジー」
「ああ、アスティン」
「どうだった?ドムとビリーも参加するって?」
「ああ、あの二人が参加しないわけないよ。こういうイベント大好きだろ?」
「それもそうだな…で?役割は?」
「それがさ、パーティーの場所、このスタジオ内でやろうかって話になってさ。だからそれで飾り付けとか頼んだよ」
「へぇーここでやるのか…。それいいな!じゃ、俺もアンディと飲み物調達班で頑張ろうっと」
「ああ、頼むよ」
あとはオーリーとヴィゴの方か…ちゃんと計画進めてるのかなぁ…
言い出しっぺはオーリーなんだから、ちゃんとして貰わないとな。
僕は明日、と二人(ヘンリーもいると思うが)で買い物へ行くのを楽しみに次の撮影のリハーサルを頑張ったのだった。
一方、ロケ隊の方では――
「オーランド」
ヴィゴが強風の中、髪を抑えて歩いて来た。
「ああ、ヴィゴ、どうだった?」
「ディヴィッドが何かと手回ししてくれてスタッフとかには話が回ったようだよ?もちろんリヴには内緒でね」
「ほんと?じゃ、準備にかかれるね!ああ~楽しみだな~!」
オーランドは、そう言うと、う~んと伸びをした。
「…しかし…も大変だろう?料理の手配とか…買い物に行くのだって仕事の合間だろうし。
料理は私も手伝ってあげようかな」
「そっか、ヴィゴも料理得意だもんね!じゃ、花束確保の仕事は俺とディヴィッドでやるよ。そんな手はいらないし。
ヴィゴはを手伝ってあげて?料理は当日の前の晩から準備始めるって言ってたしさ」
「そうか、分かったよ。買い物は…大丈夫かな…?かなりの量を買い込むだろうし…」
「そうなんだけどねぇ…。僕らロケ隊だから途中抜け出して一緒に行ってあげるって事も難しいからさ…」
オーランドは少し溜息をつく。
「ああ、でもスタジオの方で誰かが手伝ってあげてるかな?イライジャやドム達もいるんだし」
ヴィゴがそう言うと、オーランドは明らかに悲しそうな顔をした。
「ああ…!何でロケ隊のメイクはじゃないんだ…!!」
オーランドはそう叫ぶと空に向って、おりゃー!っと両手を伸ばしている。
それを見ていたヴィゴは苦笑すると、こりゃ今頃イライジャが一歩リードしているかもな…と一人ほくそえんでいた。
多分…買い物へはイライジャが付き合う事になるだろう。
その時くらいは、ヘンリーを離してやろう…
ヴィゴは、そう思いながらも、まだブツブツと言っているオーランドの肩をポンと叩くと、
「さ、次のシーンはベテラン勢も来るからな。顔引き締めろよ?」 と言ってニヤリとした。
「うわぁ…凄い人ね?」
「うん…」
僕とは今、クイーンズタウンのキャンプストリートにある"オコーネルズ・ショッピングセンター"に来ていた。
ここは街の中核とも言えるショッピングセンターで4階建てのビルの中にはブティックや、ショップだけじゃなく、
コピーセンターやら、マッサージ、インターネットのサービスまでがあり何かと利用する事の多いビルだ。
地下一階はフードコートになっていて、日本料理はもちろん、韓国料理、タイ料理、エスプレッソ・バー、マクドナルドなどがある。
僕とは人ごみの中を潜り抜けて寝具関係や洋服ものがある4階へとエスカレーターで上がって行った。
今日は僕らが買い物へ行くと聞いたヴィゴが気を利かせてヘンリーを、またロケ現場へと連れて行ってくれたので、と二人きりで買い物をする事になった。
これには僕も朝から顔が緩みっぱなしになったんだけど、オーリーの事を考えると少し同情してしまう。
いや…でも僕だって、ここんとこ、ずっとヘンリーの、お守をしたりして気を使ったんだ。
今日くらいはオーリーに、お守(イジメられる?)するのを我慢してもらおう…。
「…ねぇ…リジー?」
僕はに話し掛けられ、すぐに笑顔になる。
「ん?なに?」
「私、まだリヴのフィアンセの人に会った事なくてパジャマ買うのにイメージが湧かないからディビッドに聞いてみたの。
リヴのフィアンセって、どんな感じの人?って」
「ああ、そうか…! ―それで?どんな感じだって?」
「そしたらディヴィッドが、そのフィアンセの写真を見せてくれて、やっぱりリヴより年上だけあって大人の男の人って感じで素敵だったわ?
さすがリヴが好きになるだけはあるって感じ?」
僕は笑顔で、そう言うに、心がかすかに痛んだ。
ああ…やっぱりは大人の男ってやつが好きなのかなぁ…。
まあ…女性なら・…そっちの方がいいに決まってるよな…
僕はちょっとへこんでしまった。年齢だけは、どう頑張ったって増やせるものじゃない…(!)
「それでね…フィアンセの人は色とかが…やっぱりグレーとか紺系のものがいいと…」
はそこで言葉を切った。
「リジー?どうしたの?具合でも悪い?」
はそう言うとイライジャの腕を軽く掴んだ。
僕は暫く頭の中で色々と考え込んでいたので、急に腕を掴まれて驚いてしまった。
「…えっ?!」
「どうしたの?ボーっとして…。あ…疲れてる?」
心配そうな顔で僕を見上げるも可愛くて、しかもまだの手がしっかり僕の腕を掴んでいる事で顔がニヤケてしまうも、
「い、いや!ごめんね?疲れてないよ?ちょっと僕もプレゼントの事で考え事してて…ほんと!」
と、慌てて言い分けをしてに微笑んだ。
「そう?なら…いいけど…。撮影後で疲れてるのに付き合ってもらっちゃたし…」
「そ、そんなのいいんだよ?僕もたまにはスタジオの外に出たいしさ!こうやっての手伝いできて嬉しいよ」
「そう?息抜きになるならいいけど…疲れてる時は気を使わないで、ちゃんと言ってくれていいからね?」
は優しい笑顔で僕を見上げる。
僕はドキドキしながらも、
「大丈夫だよ?僕だって男なんだし…こんな買い物付き合うくらいで大変に思ったりしないからさ!」
―少しムキになってしまった。
に年下として扱われるのも嫌だし、やっぱり"男"として頼られたかった。
それでもは僕の言葉に、ニッコリ微笑むと、
「ありがと。ほんと優しいね、リジーは。頼りにしてる」
と言って、4階に近付いて来たエスカレーターを登ると、そのまま降りて歩いて行く。
僕は一瞬ボーっとが言った一言を必死に頭の中で考えていた。
え…?今、は…何て言った?!
―頼りにしてる…?!頼りに?!!ぼ、僕を?!
の一言は、たちまち僕のへこんだ心の中に染入ってくる。
そっか、僕はに頼られているんだ!!やった!!アンビリーバボー!!いやアメ―ジング!!
まさにアメ―ジングだ!!
あまりの嬉しさにエスカレータが上に到着した時、足を上げるのを忘れて、けつまずいたが気にならなかった。
すぐにの後を追う。
はすでに色々なパジャマが置いてある売り場の前にいて、「リジー!こっちよ」 と笑顔で手を振っている。
僕は急いで走っていくと、がクスクス笑いながら、
「もう…リジーが後ろにいるもんだと思って一人で話してて振り向いたら知らない人なんだもの…恥ずかしかったわ!」
「ご、ごめんね!またボーっとしちゃっててさ…!」
僕は苦笑しながら頭をかいた。
も笑いながら売り場を見渡して、
「一応、この辺がパジャマ売り場みたいなの。
"キャサリン・ハムネット"とか、"マリ・クレール"があるんだけど…その辺がいいかなと思って…どうかな?」
が可愛い顔で僕の顔を覗いてくるので、僕は少し顔が熱くなるも平静を装った。
「そ、そうだね…!その辺がいいんじゃないかな?リヴにも似合いそうだよ?」
「そうかな?じゃ、デザイン選ばなくちゃ!」
は、そう言うと沢山のパジャマを一つづつ見ていく。
「…これは…ちょっとジミよね…。 ―あ、こっちのは?」
「ああ、いいね!リヴも、この色なら新妻っぽくていいんじゃない?」
僕は笑いながら、そう言うと、「新妻って何だか、初々しくていい感じね?」 とも笑った。
は、その淡いピンクのシルクのパジャマを手にとって、しばし悩んでいる様子だ。
そして、そのデザインのメンズも取って見ている。
「う~ん…。フィアンセの彼には…やっぱり、こういう濃紺の方がいいかな?」
「うん、そのデザインなら着る人も選ばないし色も好みそうだよね?」
「そう思う?」
そう訊いてくるが可愛くて僕は思わず口元が緩むも、「うん、それがいいと思うな」 と微笑んだ。
するとが、そのメンズのパジャマを僕の方に向けて、
「ちょっと…当ててみてもいい?雰囲気とか見たくて…」
「うん、いいよ?」
僕が笑顔でOKすると、は、「ありがと」 と言って手に持っている濃紺のシルクのパジャマを僕の胸へと当ててきた。
そして真剣な顔で見てくる。
僕は、それだけで何だか妙に照れくさくなり、顔を横へと向けて顔が赤いのを悟られないようにする。
何だか…二人で、お互いのパジャマを買いに着たみたいで凄く照れくさいや…
でも・…こういうのっていいな…。
もし…が僕の気持ちに答えてくれたりしたら…こうやって一緒に二人のものとか買い物に来たりするのかな…
うわ!それ…かなりいいかも…!!
そんな空想に浸りすぎて、僕は顔がニヤケてきてしまった。
するとがパジャマを僕から離した。
「リジー?どうしたの?」
僕はドキっとして、
「え?!あ、いや…どう…?雰囲気とやらは…。ま、僕じゃ、リヴのフィアンセの代わりは無理だけどさ」
「そんな事ないわ?リジーも、このパジャマ似合ってるわよ?」
「そ、そう…?」
「うん。それに雰囲気つかめたわ?ありがとう」
は笑顔で僕を見ると、「じゃ、これ包んで貰ってくるね?」
とレジの方へと歩いて行く。
僕はちょっと息を吐き出すと、目の前に飾られている、色々なパジャマを見ていった。
はぁ~…と御そろいのパジャマが欲しいな…。
そんな事、今は言えやしないけどさ…。
僕は軽く溜息をつくと、レディースもののパジャマを見出した。
どれが、に似合いそうかな?なんて初めは時間潰しのはずだったんだけど…
一度、見出すと真剣に考え込んじゃって、あげく手に取って手触りまで確め出してしまう。
色々な色もあるけど…はやっぱり、これ…。真っ白なシルクのパジャマかな?
うわ、これ凄く似合いそうだ!
僕は一つ、にピッタリのパジャマを見つけて、手にとり、暫くジーッと見ていた…らしい。
突然、後ろから、
「…リジー?」
との声がして、僕は慌てて振り向いた。 ―手には…レディースのパジャマを、"持ったまま"。
「あ、…。買ってきたの?」
「うん…。 あの…リジーも誰かに…プレゼント?」
が首をかしげながら僕を見ている。
そこで僕はやっと自分の手に持っているパジャマに気づき、
「うわ!い、いや…!別にそうじゃなくてさ…!これもリヴに似合いそうかな?って…」
明らかに動揺している僕は何だか下着泥棒をして見付かった(!)男の気分だった。
―いや、した事がないから分からないけどね?―
それでもは僕の言葉を信じたようで、
「そうね!それも可愛いなぁ…。でもリヴのは、もう買っちゃったし…それ私が買おうかな?」
僕はのその一言に驚くも自分が、に似合いそうだと思っていたパジャマを、買おうかなって言ってくれて嬉しくなった。
「そ、そう?これ、にも凄く似合うと思うよ?」
と言って僕は、そのパジャマをに軽く当ててあげた。
は少し恥ずかしそうに、「…どう?似合うかな…?」 と訊いてくる。
僕は一瞬、その返事すら出来なくて、白いパジャマを当てたに見惚れてしまっていた。
(やっぱり!凄く似合う!ほんと初々しいというか…凄く可愛い…!)
とは口に出せないが心の中で大いに叫んでいた。
「リジー?」
不安げな顔でが僕を見ているのに気づき、僕はすぐに笑顔を見せた。
「すっごく似合ってるよ!いいよ、それ!」
「そう?じゃ…買おうかな!」
がそう言ってレジの方へと行きかけたので、僕は慌てての腕を掴んだ。
「あ、待って!それ僕がにプレゼントするよ!」
「え?何で?」
「僕がプレゼントしたくなったから!」
と言っての手からパジャマを取り上げて微笑んだ。
「で、でも…」
「いいから、いいから!アメリカの男はプレゼントしたくなったら、すぐしちゃうってのも当たり前なんだよ?」
と軽くウインクすると、が吹き出した。
「アハハ…そ、そうなの?」
「そうだよ?別に何かイベントがなくたってね!」
と言いながらレジの方へと歩いて行った。
それでもは慌てて追いかけて来て、「で、でも…ほんとにいいの?」 と僕の服を掴んできた。
そんなが可愛くて、僕は若い女の子へ貢ぐオヤジの気持ちが少しだけ分かった気がした(!)
―いや、僕の方が年下なんだけどもね?―
「いいんだって!それより今度はが僕のリヴへのプレゼント見立ててよ?」
と言って、彼女の頭を軽く撫でると、
それにはも笑顔で、「もちろんよ?…ありがとう、リジー」 と言って微笑んでくれる。
やっぱり…の、この笑顔が好きだな…。
ずっと…僕に笑いかけていてくれたら、どんなに幸せなんだろう…。
へのプレゼントとしてパジャマをラッピングして貰うと、に先に行って見て貰ってた雑貨売り場のある2階へと急いだ。
僕はリヴが前々から欲しいと言っていた日本のティーカップセットをあげようと決めていて、
色々なデザインのある中、日本人のに見立てて貰いたかったのだ。
僕は二階へ行くと、はどこだろうとキョロキョロ周りを見渡しながら歩いて行った。
すると一番奥の「こいまり」という日本の陶器専門店の所に真剣にカップを見ているが見える。
僕はちょっと微笑むとのとこまで歩いて行った。
「、お待たせ」
「あ、リジー、見て?これ…凄くいい陶器なんだけど…二人にどうかしら?」
僕はが差し出した、その日本のカップ(正式には湯のみというらしい)を手に持つと、その手の感触に驚いた。
「へぇ…!凄い手触りがいいし、見た目よりも随分と軽いんだね!日本のカップって全部こんな感じかい?」
「ううん。普通のは、そうでもないのよ。これは…有田焼といって日本でも結構いい器に入るから…
いい陶器は手に馴染むものが多いわね」
「そうなんだ!このペアのカップ…いいなぁ…」
「ね?色も凄く深くて奇麗だと思うの。ここの模様なんて出すの難しそうだし…」
は凄く嬉しそうな顔で、その"湯のみ"とやらを見ている。
「じゃ、僕はこれにしようかな?」
「そうする?」
「うん。が選んでくれたんだし、それに僕もこれ凄く気に入ったよ。きっとリヴも喜んでくれると思う」
「そうかな?じゃ、良かったわ!」
も嬉しそうに微笑んだ。
「じゃ、これ買ってくるね?、ここで待ってて」
「うん。…あ、リジー待って!」
いきなりは僕の腕を掴んで僕が持っていた荷物(へのプレゼントやが買ったリヴプレゼント)を手に取った。
僕は驚いて、「え?」 というと、はニッコリ微笑んで、
「レジでお金払う時、これ持ってたら邪魔でしょ?私が持ってるから行って来て?」
「え…そんな女の子に荷物なんて持ってもらえないよ…」
「何言ってるのよ!私の荷物まで持ってもらってたのに…
私、そっちの方が気になっちゃうもの…。それに私は男の人に荷物を持ってもらうの苦手なの」
はちょっと笑いながら僕の手から荷物を取ると、「じゃ、あっちで待ってるね」 と言って、サッサと歩いて行ってしまった。
僕は少し驚いて、カップを持ったまま呆然と立っていたが、後ろから店員に、
「Hello? May I help you ?」
と声をかけられ、慌てて、「あ、これ…贈りものなんですけど」 と言った。
店員はニッコリ微笑むと、僕の手から、そのペアカップを受け取り、奥へと入っていく。
僕は、そこで軽く溜息をついた。
(、前々から思ってたけど…少し変わってるよなぁ…いや…変わってるとかじゃないな…)
とにかく僕の周りには今までいなかったタイプだ。
僕の付き合ってたガールフレンドなんて男が荷物持ったり気を使うのが当たり前って子ばっかりだったし、
僕もそれが当たり前だと思って接してきた。
でも、はそれが苦手だと言う。
これも文化の違いなんだろうか。今度、聞いてみよう…
僕は奇麗にラッピングされたカップを受け取りお金を払うと、が歩いて行った方へと行ってみた。
そしてすぐに見つける。
は大きな荷物を持ってエスカレーター手前の壁に寄りかかって待っている。
僕は遠くからでも、すぐにを見つけられる自分に苦笑した。
全く…どこにいても僕の中のコンパスがに向いているようだな…
まるでエターナルフォースみたいだ…
どこに行っても必ず同じ方向を指し示すコンパス…。
その時、が僕に気づいて手を振ってきた。
僕もニッコリ微笑むと急いでの元まで走って行った。
「お待たせ。じゃ、次は食料かな?」
「そうね…何を作ろうかしら。大勢いるんだし食事の方はホテル側で作って貰えるけど、何かつまむものとか用意しようかな?」
「え?ケーキだけじゃないの?」
僕はの手から半分荷物を受け取ると、驚いて問い掛けた。
「うん。他にも何か軽いものでもって思って。ほら大勢で気軽につまめる…例えばタコスやフライドポテトみたいなのとか?」
「ああ!そっか…!それもいいかも。立食パーティーっぽくなりそうだしなぁ…」
「ね?そう考えると…食事だけじゃ足りないし、他にも何か出来るものがあればいいかなって思って…
バイキング方式に出来ないかな?」
「でも…一人じゃ大変だろ?僕も手伝うけど…他にも誰かに手伝って貰った方がいいね」
「そうねぇ…。あまりリヴと絡みのないひとがいいかもしれないね」
「そっか。そうだよね。じゃないとリヴも何事かとついてきちゃったらバレちゃいそうだし」
「あ、ミランダとジーンに頼んでみるわ!」
「あ、そうだね!ミランダはリヴとの絡みは今回はないし一緒に撮影はしてない。
ジーンもロケ見学ばかりじゃ暇だろうし…今日、戻って来たらヴィゴの部屋に行って頼んでみるよ」
「ほんと?ありがとう。じゃ、私はミランダに話してみる」
僕らは話しながら一階へと下りてきていた。
「、疲れない?少し休んでお茶でも飲もうか?」
「え…でも時間が・…。リジー戻った後も撮影残ってるじゃない?」
「まだ時間はあるよ。少し休むくらい大丈夫だって」
僕はそう言って笑うと一階のフードコート内にあるエスプレッソ・バーへと入っていく。
も慌ててついてきた。
僕はカウンターまで行くと、に、「何にする?」 と聞いた。
「えっと…私、喉渇いちゃったから…アイスティーにするわ」
「じゃ、僕もそれにしようっと。 ―あ、アイスティー二つ」
注文を済ませると、は僕の分まで荷物を取り、空いてる席を見つけて自分の持ってた荷物と一緒に置いた。
僕はアイスティーのグラスを二つ受け取ると、席まで運んで椅子へと座った。
「はい、」
「ありがとう」
は美味しそうにアイスティーを飲み始め、ふうっと溜息をついている。
「大丈夫?だって仕事してるんだし疲れただろ?色々と計画練ってるようだし…ちゃんと寝てるの?」
「う~ん・…。ちょっと寝不足気味かも」
はちょっと笑いながら、またグラスを持った。
「ダメだよ、それじゃ…。また倒れたら、どうするの?」
僕は心配になって、そう言ってみた。
「大丈夫よ?あの時ほどハードじゃないし…。もう皆に迷惑かけないわ」
「…もう…はすぐ"大丈夫"って言うけど…無理してるんじゃない?
それに…迷惑なんて皆も思ってないよ?心配してるだけ!」
僕は少し強く言ってみた。
は驚いた顔をして、「無理なんて…してないわ?でも、ありがとう」 と少し微笑むと僕の手をそっと握った。
僕はドキっとしたが、その手の温もりが嬉しくて、僕も軽く握り返す。
「…僕にも…もっと甘えていいよ?」
―僕は、つい、そう言ってしまって顔から火が出そうになった。
もちょっと驚きつつも顔を赤くして僕を見つめている。
僕は慌てての手を離すとストローでアイスティーをグルグルかき回し、
「あ、いや…だからさ、あの・・・はいつも一人で頑張りすぎるからさ…
僕や、周りの…例えばオーリーとかヴィゴにも、もっと甘えていいんだって事!皆だって心配してたしさ」
そこまで言うと僕はアイスティーを一気に飲んで息をついた。
それを見てたは少し微笑むと、
「ありがとう、リジィ…。でも…私はスタッフよ?スタッフが俳優の皆に甘えるなんて出来るワケないわ?」
僕は、それを聞いて心臓がギュっと縮むような気がした。
「え…何で?何でスタッフがACTORに甘えちゃダメなの?!そんな事は…!」
と言いかけた時、いきなり声をかけられた。
「あのぉ~…」
その声に、僕とは顔を上げた。
すると、そこには二人の女の子が立っている。
「イライジャ…ですよね?」
僕は、何でこんな時に…!!と思ったが、少し笑顔を見せると、「・…はい」と答えた。
「やっぱり!撮影で来てるって聞いてたから…!嬉しいです、会えて!」
女の子二人は、何だか喜んで騒いでいるが、僕はとの話の方が大切だった。
「あの…握手して下さい」
「あ、私も」
二人に手を出されて、僕はそれで行ってもらえるならと、「いいよ」 と快く手を差し出した。
「うわぁ、ありがとう御座います!」
「ありがとう御座います~!」
僕は、「いえ…」 と答えながらも、の方をチラっと見た。
するとは、「じゃあ、もうすぐ撮影が始まるし行きましょうか?」 と急に、よそよそしい口調で僕を見た。
きっとファンの子に気を使ってスタッフだと言う事をアピールしての事だろう。
そういう子なんだ…って子は。
咄嗟の機転を利かして僕にもファンにも気を使ってくれる…。
僕はちょっと溜息をつくと、「…そうですね」 とわざと敬語で言って席を立った。
女の子二人は、満面の笑顔で、
「これから撮影ですか?頑張って下さいね!映画、楽しみにしてます!」
僕もそれには笑顔で、「ありがとう…。じゃ…」 と返事をして荷物を持とうとして驚いた。
すでにが全部の荷物を持ってレジの方へと歩いて行っていたからだ。
僕はまだニコニコと僕を見ている女の子に、笑顔を見せたまま、「それじゃ…」 というと慌てての後を追った。
店を出て、前を歩いているを追うと腕を掴む。
「待って…!」
は少し驚いた顔で振り返った。
「何で…先に行っちゃうの?それも荷物全部一人で持っていくなんて…」
僕は悲しくて、つい、そんな事を言ってしまった。
「え…だって…スタッフが、まさか俳優に荷物もちなんてさせないでしょ?」
「そりゃ…そうかもしれないけど…。は女の子なんだ…。そんなに気を使わなくていいよ?」
「フフフ…そんな気を使ったってわけじゃないわ?
それより…この荷物一端車に置いてから食料買出しに行きましょうか?」
僕はそれ以上、何も言えなくなってしまって、軽く息を吐き出した。
「…そうだね…。そうしようか。 ―じゃ、ほら、荷物貸して?一人でこんなに持って重かったろ?」
「あ、ありがと。そんなでもないよ?」
はそう言って微笑むと、荷物を半分僕に渡した。
僕は少しホっとして駐車場へとエレベーターで向う。
今日はスタッフが乗っている車を借りて僕が運転してきていた。
荷物を車の後部座席へと入れ身軽になった僕らは、またエレベーターに乗って店内へと戻って行く。
僕はさっきの話をもう一度したかった。
スタッフが俳優に甘えるわけには行かないと言われて…凄くショックだった。
何だか突き放されたような気がして…
僕との間にラインを引かれたような気がして…
何で…こんなに側にいるのに…凄く遠く感じるんだ?
心の距離が少しは縮まった気がしていたのに…ちっとも近付いていなかった。
は真面目な子だから・…きっと自分も立場を弁えての言葉だったんだろうけど…
の事を、こんなに好きな僕にとっては…アッサリ振られたような感覚だ。
僕はと色々な食料を買いながら、笑顔は絶やさなかったけど本当は…胸が苦しいのを必死に我慢していた…。
「はぁ…」
アスティンは隣で14回目の溜息をついたイライジャを見て首をかしげた。
リジーのやつ…どうしたんだ?買い物に行って帰って来てから、ずっとこんな調子だ。
と何かあったのかなぁ…。
アスティンはイライジャのへの気持ちに気づいていた。
どんなに鈍感なアスティンでも最近のイライジャの行動を見ていれば嫌でも分かる。
ビリーやドムも気づいているようで、イライジャをからかっては反応を見て楽しんでるようだ。
オーランドもに気があるのは前から分かっていたが、イライジャまでもがそうだとなると…
その三角関係に、皆が興味津々だった。
気づいていないのは当事者だけだろう。
「はぁぁぁ…」
(まただ…。これで15回目…そろそろ記録作れるぞ?)
アスティンは、ちょっと苦笑すると、台本を閉じて、イライジャの肩へと腕を回した。
「おい、リジー…。どうしたんだ?そんな溜息ばっかりついてさ。疲れたか?」
アスティンが、そう声をかけるとイライジャは虚ろな瞳でアスティンを見た。
「ショーン…力が出ないや…この後の撮影…ちゃんと出来るかな…」
「…って一体どうしたんだよ?何かあったの?」
「別に…何もあるわけないだろ?僕なんかに…」
そう言って少しふっと笑うと、また溜息。
アスティンは何だか、その溜息の渦に自分まで憂鬱な空気に飲み込まれそうになってきた。その時―
「ねえ、ショーン…」 とイライジャが声をかけてくる。
「何だい?」
「ショーンはさ…立場が違う相手には…やっぱりそれ以上の感情って持てなかったりする…?」
「え?どういう意味?」
「う~…だから…。例えば~…そうだな…。会社とか言うと…上司と部下…じゃないな…。
あ、社長と秘書?これも違うか…?…」
何だかブツブツと言っているイライジャの言わんとすることが何となく分かってアスティンは苦笑した。
「ああ…何となく…その関係は分かったよ」
「え?そう?…じゃ、どう思う?」
イライジャが上目遣いでアスティンを見る。
「そうだなぁ~…。上の方はともかくとして…まあ、下の立場の方が気は使うとは思うけど…」
「そうなの?!だって!上とか下とかないだろ?一緒に仕事してる仲間じゃないの?!」
いつになくムキになっているイライジャにアスティンも驚いたが、多分に何か言われたのだろうと察して、そこは優しく言った。
「そう…だけどさ…。そう割り切れる人ばかりじゃないって事だよ。
こっちは、そう思ってたり、相手にも、そうであって欲しいとは思うけど、
相手にだって考えはあるし、皆が同じ気持ちで入られないときもあるさ…」
「そ、そうなのかな…」
イライジャは見た目にもはっきり分かるほど、ガックリと項垂れている。
アスティンはイライジャの頭を撫でながら、
「でもさ…相手に心を開いて欲しいなら…こっちが本気でぶつかっていけばいいだろ?」
と言った。
その言葉にイライジャは少し顔を上げると、さっきよりは瞳が生き返っていて輝いてくる。
「…そうか!相手に分かって貰うには…こっちが本気で接していけばいいんだ!」
その変わりようにアスティンは荷が笑いしつつ、「ああ!そうだよ!」 と
イライジャの頭をクシャっと撫でると、そこにスタッフから、お呼びの声がかかった。
「さ、撮影再開だ!もう大丈夫か?リジー」
「うん、ありがとう、ショーン!何だかすっきりしたよ、胸の辺りが。これで撮影も出来そうかな!」
イライジャはニコニコと、そう言うと、う~んと伸びをして自分の剣を持つ。
その顔は、さっきの溜息ロボットのようなイライジャではなかった。
アスティンは、そっと微笑むと、
「さ、じゃあ、ゴラムでもイジメてくるかな!」
と独り言のように言って元気よくスタッフの方へと歩いて行くイライジャへと続いた。
「ええ、喜んで協力させて頂くわ」
ジーンは優しく微笑むと、イライジャの手を握った。
「ありがとう御座います!えっと料理は明日から少しづつ用意していくみたいなんで…当日も朝早いかもしれませんけど…」
「大丈夫!体力にだけは自信があるもの。それにも大変だと思うし、お手伝いしたいわ?」
「そうだな…。は頑張りすぎるとこがあるから…誰かがフォローしてあげないと」
ヴィゴもワインなんぞ飲みつつソファーで寛ぎながら微笑んでいる。
その隣で、ヘンリーも、「僕もを手伝うよ!」 と張り切りだした。
僕は、それだけは、ご遠慮願いたかった(!)が、ヴィゴは、
「そうか!偉いぞ?じゃあ、お前は自分が出来る事だけやれ。出来ない事を無理にしたら返って迷惑になるからな」
と言いながらヘンリーの頭をクシャクシャと撫でた。
「もう!ダディ、髪型が崩れるだろ?―分かってるよ、僕だってそれくらい…洗い物とか、そういう出来る事だけするよ」
と口を尖らす。
それにはヴィゴも嬉しそうに微笑んでいる。
僕は料理を作るときにも、ヘンリーが来るのかと思うと、ちょっと切なかった。
だけど…これで今週末の準備は何とか皆で協力して出来そうだ!
「あ、ヴィゴ、ちょっと部屋の電話借りていいかな?に、ジーンもOKだって教えてあげたいんだ」
「ああ、いいよ、早くかけてやれ」
僕は笑顔で頷くと、すぐにの部屋に電話を入れる。
だが…何度かけても、ツーツーツーっと話し中だ。
(あ…!もしかして…オーリーか?!きっとそうだ!)
僕はこうしちゃいられないと、
「あ、ヴィゴ、話し中のままだし、今から直接部屋に言って話してくるよ!」
と言うと、ヴィゴが、「お、おい?!」 と呼んでるのも振り切ってヴィゴの部屋を飛び出した。
僕は急いで下の階まで行くと、の部屋の前で一度深呼吸をした。
(大丈夫…!口実はあるし…何とかなるさ!)
僕は思い切っての部屋のインターホンを押した。
すると少しして、「はい?」 と声が聞こえる。
「あ、?僕、リジー」
「…え?!リジー?ちょ、ちょっと待ってね!!」
何だかは慌てたような声で、そう言うと部屋の中で、バタバタかける音がして、バタンと何やら騒がしい。
僕は来ちゃまずかったかな…と一瞬後悔した。
が、その時、すぐドアが開く。
「あ、…こんな時間にごめ…」
と言い掛けて僕は言葉を切った。
目の前には、どう見ても、お風呂上りだとしか思えないが恥ずかしそうに立っている。
長い髪が濡れてて、普段のとは少し雰囲気が違って見えて僕はドキドキした。
「ごめんね?お風呂上りのまま電話しててバスローブ姿だったの…」
「あ、うん!あ、いや…こっちこそ、ごめん!こんな時間に…電話したら話し中だったから…」
「あ、どうぞ、入って?」
とが笑いながらドアを開けてくれる。
「え…でも…いいの?」
「もう着替えたから大丈夫よ?」
あ、いや、そんな事じゃなくて…
よく考えたら、こんな夜に女性の部屋に来る事じたい間違ってたよなぁ…と僕は思っていた。
「リジー?どうしたの?どうぞ?」
「あ、うん…」
僕は悩みつつも、の優しい笑顔に甘えて、つい部屋に入ってしまった。
「あ、ソファーにでも座って?」
「うん…」
僕は何だか恥ずかしくなってきてソファーに、ちょこんと借りてきた猫の如く小さく座る。
部屋を見回すと、電話の受話器が上げられたままだと言う事に気づいた。
それにも気づき、慌てて、
「あ、いけない!まだ話してた途中だった!さっきオーリーから電話来てミランダの事も話してたのよ?」
はそう言うと、すぐに、「Hello?ごめんなさい、待たせて!」 と電話に出た。
僕は、心の中で、やっぱりオーリーかよ!と思ったが、そこは大人しく座って待っていた。
(だって…今は僕はと一緒にいるけど…オーリーは電話の向こうだしね)
「え?あ、今ね、リジーが来て…。え?何でって…だから、あの、え?ちょ、ちょっと?オーリー?!」
僕は、その只ならぬの声に振り向いて、「どうしたの?」 と聞いた。
するとは困ったような顔をして受話器を置くと、
「あの…今からオーリーも着替えて、ここに来るって言うの…」
「ええ?!何で?!」
僕はそう聞いたけど、実は理由は分かっていた。
きっとが、今リジーが来たと言ったからだ。それで慌てて…全く…邪魔しないでくれ!
「はい、紅茶…さっき頼んだの」
いつの間にかは紅茶を入れてくれて目の前のテーブルへと置いてくれた。
「あ、ありがとう…」
僕は笑顔でそう言うと紅茶を一口飲んだ。
そして、「あのさ、ジーンも協力してくれるって。今、ヴィゴの部屋に行って話してきたんだ」 と言った。
「ほんと?良かった!じゃ、もう準備するだけね?」
も向かいのソファーへと腰をかけて紅茶を飲みながら微笑む。
僕は何だか部屋の中で、こうして二人きりで向かい合った事などなかったので、かなり照れくさかった。
しかもはお風呂上り…今はバスローブから着替えてパジャマを着てるけど…
ん…?パジャマ…が今着てるパジャマって…今日、僕があげた…やつ?
僕はが着ているパジャマをマジマジと見つめてしまった。
上にカーディガンを羽織っているので、すぐには分からなかったが白いシルクのパジャマが見えている。
も僕の視線に気づいて微笑んだ。
「これ…リジーがくれたパジャマ…分かっちゃった?」
とも照れくさそうにしている。
「あ、やっぱり?そうかな?って…あ、あの…嬉しいよ、着てくれて」
僕は顔が熱くなったが何とか、そう言うと微笑んだ。
「そんな、こっちこそ、ありがとう」
僕はそのの笑顔に嬉しくて、顔がニヤケてきてしまう。
(何だか得した気分だな…パジャマだとあげても着てるとこ見せてとか言いにくいし…)(!)
「でも、ほんと今日は買い物付き合ってくれて、ありがとう、凄く助かっちゃった!」
「そんなのいいよ。僕も楽しかったよ?久々に女の子と二人で買い物に行ったしさ」
「ええ?そうなの~?」
と、は少しニヤニヤして僕を見てくる。
僕はそれに少し慌てて、「ほ、ほんとだよ?もうすっごい久し振り!」 と何だか弁解のようになってしまった。
はクスクス笑うと、「そんなムキにならなくたって…」 と紅茶を飲んでいる。
「だ、だってほんとの事だし…」
僕は顔が真っ赤になるのが分かって顔を伏せながらもを見る。
すると目が合ってしまって、またドキっとしてしまう。
は僕を黙って見つめると突然、僕の心を乱すような事を言った。
「リジーって…好きな人とかいるの?」
「ええ?!」
「そんな驚くようなことなの?」
あまりの僕の動揺ぶりに、が吹き出している。
「い、いや、そんな事はないけど…急に聞いてくるから驚いただけだよ?」
僕は落ち着こうと紅茶を飲んで答えた。
そして、「…でも…何で?」 と聞いてみた。
「だってリジーって優しいし…凄くモテるんじゃないかなぁって思って!
さっきみたいに声かけられたりして好みの子がいたら?誘ったりしないの?」
「そ、そんな事しないよ…!?僕は…そんなに積極的なほうじゃないし…運命的な出逢いとか…あると信じて待ってる方だからさ…」
と苦笑しながら言うと、も目を丸くしている。
「え?そうなの?私も結構、そういうタイプかも…!」
「え?ほんとに?!」
「うん、私もいつか運命の出会いとかするって思っちゃう方で…」
とは恥ずかしそうに微笑んでる。
「じゃあ、もロマンティックなんだね!」
「そ、そうかな?何だか、この歳でそんなのって笑われそうだわ…」
は頬を赤らめて笑った。
「そんな事ないよ?それなら僕は男のクセに…って言われちゃうよ」
そう言うと僕とは顔を見合わせて笑った。
「でも…は?」
「え?」
「その…運命的な出会いってやつ…。もうしたとか?」
僕は気になるので、そこは、やっぱり聞いておきたかった。
でもは首をかしげて、
「さあまだ、その運命ってのが分からなくて」
と微笑む。
僕はその言葉の意味が分からず、「え?それって…」 と言いかけた、その時―
キンコーン、キンコーン!
とけたたましくチャイムが鳴り、ずっこけた。
「あ、オーリーだわ、きっと」
も苦笑しながらソファーから立ち上がるとドアの方へと歩いて行った。
オーリィ…!!!何で、いつもいつも、あんたって人はタイミングが良すぎなんだよ!!
せっかく、いいとこまで聞いたのに…!!
僕は今度は怒りの方で顔が真っ赤になっていった(!)
「今晩わ、オーリー」
「!会いたかったよ!」
「キャ!」
オーランドは入ってくるなり、に抱きついて、も驚いている。
僕は驚いて立ち上がると、二人の方まで歩いて行き、オーランドの腕を引っ張った。
「おい、オーリー!離してあげなよ!」
はパジャマ着てるんだぞ!!
普段でも許せないのに、よりによってパ、パジャマ着てる時に抱きつくなんて絶~対!ダメったらダメだ!
「何だよぉ、リジー!俺は最近にまともに会ってないんだからな~!
少しくらいスキンシップしたっていいだろ?!今日はヘンリーのイジメで俺はズタボロなんだ…!」
それを聞いて、少しは同情するも僕は心を鬼にして、「ダメ!!いいから離れろって!」 と
ベッタリに張り付いている吸盤(!)のようなオーランドを無理やり引っ張って何とか引き剥がした。
「もう~リジーは、ほんとに…」
「じいちゃんって言うなよ?!」
僕は言われる前に釘を刺してやった。
「うへ…バレてるし…」
「もう、オーリーったら相変わらず元気よね?」
とは苦笑しつつ、紅茶を出してあげている。
「ありがと!。でもさ、の顔を見たから元気なんだよ?さっきまで元気なかったんだから…」
「またヘンリーとケンカでもしたの?」
が少し呆れた顔で聞いた。
「ケンカなんてものじゃないよ?あれはイジメだね、イジメ!全く監督よりダメ出しが多いんだからさ!」
オーランドは頬を膨らませて文句を言っている。
僕は苦笑しながら、
「ある意味、原作のファンだし監督と似てくるんじゃないの?それに個人的にも恨まれてるんだから尚更さ」
「リジーは人事だと思って!撮影の合い間中、ダメ出しされ続けてみてよ?もう、へこむより前に頭に血が上るんだから」
と、ますますオーランドはエキサイトしてきた。
「"エルフは、そんな、ヘラっとした口調じゃないぞ!"とか、"レゴラスは優雅に馬に乗るんだ!
エロフはカッコ付けすぎなんだよ!"とかさぁ~もう勘弁してって感じだよぉ~」
オーランドは、本当にまいってるようでソファーにずるずると埋もれていった。
僕とは顔を見合わせて、思い切り吹き出してしまった。
「アハハハ!それは大変だね!きっついよ、確かに…!」
「で、でも…オーリーだって言い返すから、ヘンリーもムキになるのよ?軽く聞き流せばいいのに…」
「な、何だよ、二人して笑うなんて…ひどいなあ…」
オーランドはフテくされて、ソファーの上にゴロンと横になる。
「それよりさ、ミランダに話しておいてよ?料理作るのだけじゃ大変なんだしさ」
と僕が言うとオーランドは、がバっと起き上がって、
「そうそう、その話なんだけどね、もう言っておいたよ?OKだって」
「あ、ほんと?じゃ、良かった!これで安心だね?」
「ええ!じゃ、明日の夜から仕込んで当日はジーンとミランダと…明日はリジーにも手伝ってもらえるんだ」
は嬉しそうに微笑むと、紅茶を入れなおしている。
「え?何?リジーも料理手伝うの?」
オーランドは驚いて僕を見る。
「うん、僕も出来る事はやるよ?料理好きだしさ。それに明日は夕方で撮影終る予定なんだ」
「ええ~ずる!俺らは夜中まであるかもしれないってのにさぁ~…」
オーランドはガックリと落ち込んで、またソファーに寝転がった。
人の部屋で寛いでいるとはオーランドらしい。
「何言ってんだよ…。こっちにはヘンリーも来る事になったんだからね?」
僕が少し皮肉ってやると、オーランドは笑顔で、
「うそ?うるさそうだな…。そりゃ。でも早めに終らせて俺も後でかけつけるよ」
「ええ?来なくていいよ…」
僕は嫌な顔をして言った。
「ええ?何でさ!ひどいな!」
「だってヘンリーとオーリーが揃ったらうるさそうだし作業もすすまなそうだろ?ケンカばっかになってさ!」
「あ、そか、ヘンリーもいるんだっけ。あ、でも別に、その日は仲良くするように気をつけるって!
大丈夫、大丈夫!って、もうこんな時間?」
オーランドは、そう呑気に言うと、パっと起き上がり、
「俺、明日の朝、早かったから…もう寝るね」
と珍しく素直に帰ろうとしている。
「え?あ、もう、こんな時間なんだ。じゃ、僕も戻るよ…」
そう言って二人でソファーを立ち上がると、
「そう?じゃ、色々とありがとう、二人とも…助かった」
とも微笑んでいる。
「そんなのいいって!じゃ、おやすみ、」
「おやすみ!」
「おやすみなさい!」
僕とオーランドは、に軽く手を振ると、廊下に出た。
そして、お互い欠伸をすると、それぞれ部屋へと戻るのに廊下を歩き出す。
「リジー、リヴのプレゼント、もう買った?」
ふいにオーランドに聞かれて、僕はドキっとしたものの、
「あ、うん。リヴが前から欲しがってた日本のティーカップをペアで買ったよ?」
「あ、そうなんだ。俺はさ~お花係だから当日、ディヴィッドと花屋めぐりなんだ」
「そうか…前もって注文しておいたら?」
「うん、それはしたんだけど…足りない分を直接花屋をめぐって仕入れに行く事にしたんだよね。
花は沢山あった方がいいだろ?」
「ああ、そうだね。婚約のお祝いなんだし」
「あ~あ~リヴも婚約かぁ~。寂しいよね?」
「うん…まあね…」
そこまで話すと、どちらともなく黙って自分達の部屋の前まで来てしまった。
「それじゃ・・・おやすみ!」
「ああ、明日もお互い頑張ろう!」
そう言って笑うと、お互いに軽く手を上げて部屋へと入って行った。
僕はやっぱり少し疲れていたのかベッドへ入ると、すぐに眠りについた。
その日の夢はと僕が楽しそうに手を繋ぎながら、夕飯の買い物をしている夢だった―
2nd
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