Big brothers who panic at scandal...#プロローグ〜ドムの嫉妬は鬼より怖い〜








○月○日○曜日。俺様はものすっごい機嫌が良かった。
まあヴィゴのプレミアってこともあるが、そこには必ず愛しい愛しい俺の――ここ大事――が招待されてるからだ。
そう、俺様は彼女に会えれば何でも幸せなのだ。(いやヴィゴへのお祝いの気持ちはあるけれど)

「よし、と!こんなもんでいいかな!」

鏡の前で髪の毛と俺様の顔を飾る髭を軽く直すと、ニヤリとして振り返った。
すると、そこにはヴィゴとビリーの呆れたような視線…

「な、何だよ?」
「いや…ほんと分かりやすいよね、ドムって」
「ああ…ほんとだな…」
「むっ!何が言いたいっ」
「別に〜。あ、そろそろオーリィ達も来るんじゃない?」
「そうだな、そろそろだな」

二人はそんな事を言い合いながら時計を見ている。
俺もそれには若干、緊張してきた。

いや…に会えるというのは嬉しい事だが・・・その前に立ちふさがる、あの恐ろしい兄貴ども…
俺がと言葉を交わそうとするだけで、あの"視線だけで殺すつもりか光線"を放ってくるからな…(ああ、恐ろしい…!)
最近、オーランドまでが俺様に対して、"諦めろ"などと、たわけた事を言いやがるし、親友なら快く祝福しろってんだ!(何ヲ)
あ、いや待てよ…?今日はオーランドに女の子を紹介する事になっている。
ということは邪魔な兄貴は一人減るわけだ…(そっちの方に気がいってるだろうしな)
リジィはまあ、それほどうるさくもないし――時々すっごい突っ込みが入るが――大丈夫だろう……
問題は………あの兄弟の中でも一番恐ろすぃ、長男と……その長男を受け継ぐのか?と思うほど凄みの増してきた三男……
あの二人をどう交わしてと楽しくおしゃべりしようか……小学生か、アンタ)

俺様が一人、作戦を考えていると、そこにコンコンっとノックの音が聞こえてきた。
ヴィゴが立ってドアを開けに行く。

「―――やあ、待ってたよ」

「ヴィゴ〜〜〜!!お久し振り〜ん!」

「うぉ!」

ドアを開け放った瞬間、ヴィゴに抱きついた(飛びかかった?)のは言うまでもなくハリソン家の二男、オーランドだった。
それには慣れているヴィゴでさえ、驚き、それでも嬉しそうにハグを交わしている。
その後からリジィが顔を出した。

「外、すっごい人で溢れかえってたよ!今日は凄そうだね〜!あ、ヴィゴ!久し振り!」
「やあ、イライジャ。久し振りだな!」

二人はそう言い合うと頭突きで挨拶を済ませて互いに、その痛さで苦笑を洩らしている。
そしてその後からひょこっと顔を出したのは何と、俺様の愛しいハニーだった!(違)

「あ、ヴィゴ!お久し振りです!」
「や、やあ、。今日はわざわざ来てくれてありがとう」
「いえ!凄く楽しみだったんです」

彼女は今日も素晴らしく奇麗で、艶やかなドレスを着て、まるで何処かの国のお姫様のようだ!
ヴィゴも見惚れているのか、余裕の微笑みを見せながらも、ちょっと顔を赤くしている。
俺もついついボーっとに見惚れていて隣にいるビリーにぷっと噴出された。(何がおかしいっ)(口が開いてたから)
だがしかし!次の瞬間、俺様の体が一瞬で固まった。

「あれ…君は確かの…」
「どうも。スタンリーです」

「―――ぬっ!!」


(―――OH! NO! 何でお前がここにいるんだっ?!Why?!)

の後から何故かレオやジョシュと中へ入って来たのは、あのモデル気取りヤロウののマネージャーだった!

「やあレオ、ジョシュも。よく来てくれたね」
「今晩わ」
「今日は楽しませてもらいますよ」

ぬ…レオもジョシュもヴィゴにだけは愛想がいいな…(俺とは大違いじゃないかっ)
いやしかし、その前に何故、あのマネージャーが来てるんだ?!誰が誘ったんだ、コラァ!

レオとジョシュの情報によると、があいつを結構気に入っちゃってるって事だった。
俺としては、まさかそんなバカな事はあるわけない!と思いながらも、実は少し心配になってしまっている。

何故かというと、モデル気取りヤロウは何故かレオやジョシュに可愛がられてるようだし、オーリィだって友達ヅラして笑顔で話しかけている。
だいたいを掻っ攫うかもしれない相手なのに、何で皆はあいつには優しいんだ?!俺には囚人のような扱いをするクセに!(ずるい!)

一人ジト〜っとモデル気取りヤロウを睨んでいると、不意にレオと目が合い、俺は蛇に睨まれた蛙の如く固まってしまった。

「どうした?ドム。顔色悪いけど」
「い、いえ、お兄様!そのようなことは!」 (オイオイ)

(――何で俺がレオに超〜敬語なんか使わないといけないんだ!)

内心そう思いながらもやっぱりレオを目の前にすると顔が自然と笑顔を作るように俺の体は出来ているようだ(!)
(ほら、よく言うじゃないか!長いものには巻かれろってさ!)

そんな俺を見てレオはちょっと肩を竦めるとジョシュと二人でコソコソ話している。(かなり感じ悪い)
そこへイライジャが歩いて来た。

「よ!ドム」
「お、おう……」
「あれ?昨日と違って元気ないね〜。どうしたのさ?」
「べ、別に……つか、ちょっと来い」
「何だよー?」

俺はイライジャを控室の隅に連れて行くとチラっと皆の方を見て声を潜めた。



――ここからは、超小声で話してます――



「何であいつがここにいるんだよ!」
「え?ああ、スタンリーくんのこと?」
「ああ!よく知らないヴィゴがあいつを招待するはずない!何で連れて来た?!」
「あーそれは…が呼んだらしいけど」
「はっ?!」
「ちょ…汚いなぁ…顔に唾飛ばさないでくれる?」
「あ、ああ悪い。つか唾くらい我慢しろっ」(理不尽)
「やだよっ」
「そ、そんな事より!かか彼女があいつを呼んだってどういう事だ?!」(俺様はだんだん目が血走り、口がどもってきた)
「さあ?彼がヴィゴの映画見たいって言ったんじゃない?」
「な、何だと?!あいつはヴィゴのファンなのかっ?」
「汚な!知らないよ!もーまた唾飛ばして……」

イライジャはブツブツ言いながら自分のハンカチで顔を拭いている。
だが俺はそんな文句も耳に入らないほどのショックを受けていた。

俺のがあいつを呼んだ……(何か違っ)
俺のがあいつを呼んだ………?!
俺のがあいつを――!!

「うわ、ドム!顔怖いって!ジャンキーみたいになってるよ?!」

俺様が一気にモデル気取りヤロウに殺気を飛ばすと、イライジャは怯えたような顔で体を縮こめた。
そこへが最悪な事にスタンリーと一緒にこっちへ歩いて来る。
俺様はそこで一気に釣りあがった目をタレ目に戻す。(いや勝手に下がっただけ)

「ドム!今晩わ!」
「や、やあ!!きょ、今日も凄いっっ奇麗だよ!!」(力みすぎ)
「あ、ありがと…。えっと彼は知ってるわよね」
「え!あ!う、うん!ええっと――」(知りたくもなかったぜ、チッ)
「スタンリーです。前に彼女の家のパーティで何度かお会いして――」
「(か、"彼女"だとぉぉぅ?! 馴れ馴れしい!) あーそうだったねー」(棒読み+ちょっと睨みつける)
「あら…ドム、顔色悪いけど大丈夫?」
「な!何でもないよ!俺なら大丈夫さ!(ハニーv)」(瞬時にデレデレ)
「あ、でも、ほんと顔、青いですよ…?若干、目も血走ってるし――」
「(誰のせいだよ!) 何でもない!」(ちょっと睨んでみたり)

ニコニコ(デレデレ?)したり、目を吊り上げたりと、この短い会話の中で、かなり顔の表情筋を使い、俺は疲れてきた。
だが目の前にがいるのだから!と頑張る。
この時ばかりは邪魔な兄貴どももヴィゴやビリーと楽しげに話し込んでて俺との楽しい二人だけの時間が持てそうだった。

(…まあイライジャとモデル気取りヤロウがいるけど)

そんな俺を見てイライジャもイライジャで楽しそうに含み笑いしてやがるからタチの悪い親友だ!

「それにしてもスタンリーってスーツ似合うよねぇー。さすが元モデル!」
「そんな事ないよ…俺、スーツとか堅苦しくて嫌いなんだよね」
「そうなの? もったいない。普段も時々着ればいいのに!すっごいカッコいいしさ。ね? 
「え?う、うん…まあ…」

ぬ!リジィめ!余計な事を言うな!に振るな!そして俺を見てニヤリとするなーーーっっ!

でも――――――――――ほんとに似合ってる…………(つか足長ぇな、こいつ!!そこもムカツク!)

イライジャの言う通り、スタンリーは普段はラフな格好なのに今日ばかりは何だかブランド物のスーツをビシっと着こなしていて、
どこかの雑誌から抜け出たようなほどにカッコい………いやいやいやいや!!!俺様には負けるけどなっ!!
俺だって今日は新調したスーツをビシっと着こなしてるさ! (クソ……足の長さは微妙に負けてるけど…)(ほんとに微妙か?)
いやでも!男の価値は足の長さなんかじゃないっ!
ハートさ!この熱い想いを秘めたハートで勝負だ、このヤロウ!!(でもでもぉ!その足を生まれ持ったお前が憎い……憎いぃっ!!)


「………ドム顔怖い」

「――ぬっ!」


次第に目が血走っていった俺様に、イライジャが半目で呟いた。
だが、そんな親友を無視して俺はモデル気取りヤロウの方を見た。


「おい、お前」

「え?」

「後で家の住所、教えろ」

「―――は?」


俺がスタンリーにそう言った時、はキョトンとし、イライジャは思い切り俺の足を蹴飛ばした。(いぃ痛いな、このヤロウっ!)


俺が"何をする気"なのか、親友のイライジャにだけはバレてしまったようだ……(チッ)












イライジャ





(あー危なかった…。全くドムのバカめ……スタンリーにまでストーキングかよ…)

僕は未だ目を血走らせ、スタンリーを威嚇しているドムを見て軽く溜息をついた。
は気づいていないがドムの全体から滲み出てる殺気にスタンリーも薄々気づいたのか、極力、ドムの前ではと話をしない。
まあ、あのままじゃ確実に彼にも被害が及ぶだろうし、スタンリーも本能で危険を察知したんだろう(!)

(――ったく・・・困った悪友だよ、ほんと)

思い切り肩を落とし溜息をつくと、そこへ我が家の疫病神ことオーランドがバタバタ走って来た。(ウンザリ)

「おいこら、ドムゥーー!に話しかけるな!バカが移るだろうっ?!」
「ぬぬぬ!何だとぅ?お前にだけは言われたくないっ!」

ごもっとも……。
オーリィにだけはバカなんて言われたくないよね。(!)
ま、僕に言わせたらどっちもどっちなんだけどさ。

そんな事を思いながら僕はスタンリーに頼んで二人からを離してもらった。
レオとジョシュのところにいれば、まあ安心だしね。
ドムとオーランドはが行ってしまうと悲しげな顔をしながらも、互いに互いのことを罵り合っている。

「ほら見ろ!が行っちゃったじゃないか!」
「うううるさい!お前が変な事を言うからだろう?!」
「何だよーほんとの事じゃないか!」
「何をぅ!お前の方が数倍アッフォーだね!」
「俺はアフォじゃない!人より感受性が強いだけだ!」
「はあ?感度がいい?お前、何考えてんだ、バカだろ!」
「そういう意味じゃないよ!このドミニク・エロハンめ!」
「む!人の名前を勝手に変更するな、バカ者がぁ!!」
「ぬ!バカって言うな!このエロ!ハァ〜ン♡」 (頭悪そう)
「変なとこで切るな!そして色気を出すな!つか俺はエロハンはじゃない!モナハァァァーーンだっ!!」
「エロエロエロハハァァーーーン♪大魔王〜〜〜♪」(どこの国の歌だよ)
「変な歌を作るな!そして歌うな!!お前はコメディアンか?あぁん?!」
「それはドムだろ!まあ笑いのセンスもないけどね!」
「バーーッカ言うな!そりゃお前だろ、このノータリンブルームめっ」
「人の名前を勝手に改名するなよ!しかもファーストーネームを!!」
「お前が先にやったんだろうが!しかも俺の場合はファミリーネームだぞ?!父ちゃんに失礼だろっ!」



………皆さん、本物のバカがここにいます……………。しかも二人も………切なかとです……



……って言ってる場合じゃないよね、僕!!!ってか、誰だよ、このキャラ!
はぁ…なんて幼稚なんだろうね、この二人は……(深い溜息)

心の底からアフォな二人に疲れきってグッタリしているとポンっと肩に手が乗せられた。

「あ…ジョシュ…」
「あんな頭の悪い会話聞いてたら脳細胞が破壊されるぞ?離れてろ」

ジョシュはそう言って目を細めながら未だギャーギャー罵り合ってるアフォ二人を見た。


「だいたいお前と会話してると、ドンドン頭が悪くなって行く気がしてならないんだよっ」
「いいだろ?もともと頭悪いんだからさ!」
「悪くないよ!お前だろ?もともと脳細胞が一種類しかなくて生まれてきたのは!」
「あはははーーそりゃドムだろ?」
「きぃぃ!ああ言えばこう言いやがって!ムカツクーーっっ!」


「……このまま帰って欲しいかも…」
「ああ…俺も今、同じ事、思ったよ……」

ジョシュと顔を見合わせ、二人して大きな溜息をついた。
今まで黙って見ていたビリーも今ではすっかり他人のフリを決め込んでいるし、
ヴィゴにいたっては軽い眩暈がしたのか、目頭を指で抑えている。
でしきりにヴィゴに謝っているから、ヴィゴもあまり嫌な顔を出来ないみたいだ。
レオとスタンリーは、もうすでに二人はいないものとして普通に談笑している。(これも、ある意味怖い)

ま、オーリィに至っては、もうドムをからかう領域に入っていて、本気で怒ってるドムを軽く流しては、また彼の血圧をアップさせているようだ。
オーリィは頭悪そうで、結構、狡賢いからね。
ドムみたいに、すぐ熱くなる性格じゃオーリィにアゲアシとられて終わりかも。
そのうち怒鳴りつかれて……なんて思ってる間に、ドムの声がガラガラになってきたよ…オイオイオイ…。



う、うるさい、オーラン・・・ゲホッゲホッ!



(…ノドぬ〜るでも貸してやろうかな…(世界共通?パートU?)

そんな事を呑気に思っているとスタッフのお声がかかり、もうすぐプレミアが始まるとの事だった。

あーヴィゴ、あんな始まる前から疲れちゃって大丈夫かな……
テレビ局だって、わんさか入ってるし、グッタリしたヴィゴの映像なんか世界に流れてしまったら可愛そうだ…
まあ、でも…二人のお陰でと話せたし、案外幸せかもな。

僕はそんな事を思いながらヴィゴに、「頑張って」と声をかけて皆で控室から会場へと移動した。
すると隣にオーランドが歩いて来る。(凄く嫌だ)

「はー♪ドムの相手は疲れるねー。一気に神経すり減らしたよ〜」
「…………それドムの方なんじゃない…? (ボソ)」
「え?何か言った?」
「いや、別に……」

溜息も出尽くしたからか、何も出やしないけど、この脱力感は一体何なんだろう…
なんて肩を落としているとオーランドは前を歩くの様子を伺いながら、僕の耳元に顔を近づけてきた。


「…そんなことよりさー。その女優さんには、いつ会えるんだよー」

「(何も、そんなコソコソしなくたって…) パーティの時じゃない…?」

「そっかぁ……♪紹介なんてドキドキしちゃうねっ。しかも俺のファンなんてさv」

「(自慢かよ…) でも、その子、レゴラス見てオーリィのファンになったようだし、あまり普段の姿は出さない方がいいと思うよ…」

「むむ!何でだよ?俺はいつでもほんとの自分をさらけ出して勝負するんだっ!じゃないと相手に悪いだろ?」

「(いや出した方が相手も迷惑だし)  また振られたいんなら出せば……?」

「………………」


僕のキツイ一言でオーランドの口は静かに閉じた。(良かった…)

しっかし……レゴラスでファンになったんだろ?まずいよなぁ……絶対。
オーランドとレゴラスをかぶせて見てるだろうし、あげくオーリィはマスコミの前でも演じてるから、ほんとの本性はきっと知らないんだろうなぁ……
あーあ。また振られてに泣きつくのだけはやめて欲しいよ。

隣でウキウキしているオーランドを見て、僕はちょっとだけ未来を想像して気分が落ちて行った。










ヴィゴ





「今日はこんなに集まってくれて本当に嬉しいよ」

私はそう言って集まった報道陣に、にこやかに笑顔を見せた。





「ヴィゴ〜〜!映画、面白かったよ!」

「うぉ!」

いきなり抱きついて来たオーランドに私は手に持っていたシャンパンをこぼしそうになってしまった。
相変わらず、この男はスキンシップジャンキーのようだ。

「お、おい離せ!暑苦しい!」
「何だよ、ヴィゴ〜〜冷たいなぁ!」

オーランドは少し酔っているのか、顔を赤くしつつ口を尖らせている。
その後ろで呆れたように溜息をついているのは彼の兄と弟達、そして溺愛されている妹―私の想い人だった。

「悪いね、ヴィゴ…。―――ほら、オーリィ、離れて!」
「ぬ!何だよ、リジィ〜〜!」

四男の割にシッカリしているイライジャが呆れながらもオーランドを引き剥がしてくれた。

「いや……まあ…慣れてるさ」

と苦笑を洩らせば、そこへ久し振りに会えたが歩いて来た。

「ヴィゴ、映画とっても面白かったわ!」
「ありがとう、
「撮影、大変だったでしょう?」
「ああ、でも楽しかったよ。は最近、ジョシュと共演する映画を撮ってるって?」
「ええ、そうなの!思った以上に照れくさいんだけど」

そう言ってはにかむように微笑む彼女に年甲斐もなくときめいてしまった。

「今度は是非、私とも共演願いたいね」
「えっ。そんな光栄だわ!ヴィゴと共演なんて」
「――え♡そんな光栄だわ♡ヴィゴと共演なんて♡」

「……………オーランド…ふざけるな…」

オウムのようにのモノマネをしてふざけた事を言ったオーランドを軽く睨めば、奴はニヤンとした顔で私の背中をバンバン叩きながら抱きついてくる。

「まあまあまあ☆」
「く…っ。そのニヤケ顔はやめろ……(にバレるじゃないかっ)」
「ヴィゴ、どうしたの?顔が赤いけど…ワイン飲みすぎた?」
「い、いや、大丈夫だよ。まあ、ちょっと、この男がくっついてくるから暑いだけだ」
「あ、もうオーリィ!ヴィゴを解放してあげてっ」
「はいはーい♪」

鶴の一声じゃなくの一声でオーランドはアッサリと私から離れ、呑気にワインを飲んでいる。
イライジャはと言えば、コッソリとこの場から逃げていくのが見えた。(どうせならオーランドも連れて行ってくれっ)

「ごめんなさい、ヴィゴ…。いつもオーリィが……」
「いやいや…そんな事はない」
「でも家出した時もお世話になってるし…」
「いや、世話なんて。ただ餌と寝床を与えただけだよ」
「え…?」
「むぅー!酷いよ、ヴィゴ!俺は犬っころか!」
「犬よりタチが悪いぞ、お前は」
「ぬっ!もういいよ!家出したってヴィゴの家になんか行ってやらないんだからなっ」
「そうしてくれ。私も助かる」
「む……っ」

澄ました顔でそう言えばオーランドは子供のように口を尖らせ、はと言えばクスクス笑い出した。

「ヴィゴってオーリィの保護者みたい」
「いや、それだけは勘弁して欲しいね…。ヘンリーだけで手がいっぱいだ」
「俺だってごめんだねー!ヴィゴ、すーぐ怒るんだからさ!」
「お前を相手にしてて怒らない人間などいるのか?」

私が苦笑しながら、そう言うとオーランドはブーブー言いながら他のテーブルに料理を取りに行ってしまった。
そこで、やっとと二人きりになれた…と思った時、共演していた新人女優の子がやってくるのが見えた。

「ヴィゴ」
「やあ、メリッサ。楽しんでるかい?」
「ええ。―――あ!さん…?」
「ああ、そうだ。紹介しよう。彼女はハリソン家のお姫様だ」

私がそう言ってを紹介するとメリッサは嬉しそうに彼女と握手を交わした。

「私、大ファンなんです、皆さんの!」
「ありがとう…。あ、映画の役、素適でした」
「い、いえ、そんな!まだまだで、よくヴィゴにも助けられました」

メリッサはそう言って肩を竦めると恥ずかしそうに微笑んだ。そこにドムとビリーまでがやってくる。
きっとオーランドの紹介のことだろう。(まあドムはを目ざとく見つけたのだろうが)
そう……このメリッサが、オーランドのファンで紹介して欲しいといってきた子なのだ。

「ヴィゴ、オーリィは?」
「ああ、あいつなら……ちょっと苛めたらプリプリしてやけ食いに行ったよ。その辺のテーブルで料理を漁ってるんじゃないか?」

そう言って他のテーブルに視線を送る。(すでに犬扱いになっている)
するとメリッサがニコニコしながらを見て、

「実は今日、オーランドを紹介してもらうんです」
「えっ?紹介?」
「はい!私、皆さん好きなんですけど特に"ロード・オブ・ザ・リング"を見てからオーランドの大ファンになって…」
「そ、そうだったの…」

はそう呟いて少しだけ複雑な顔をした。
いや…彼女だけではなく、その場にいたビリーとドム、そして私も…(少なくとも全員が同じ思いだったんだろう)

「あ、じゃじゃあ…オーリィ探してくるわ?」
「い、いやそんな!はゆっくりノンビリしてていいよ!あのバカは―――い、いや、オーランドは俺が探してくるからっ」
「ドム…でも…悪いわ…。オーリィ、落ち着きないから、きっと同じ場所には一分といないと思うし…」
「だ、大丈夫!俺、人探しは得意なんだ!それにオーランドのいる場所は必ず何か騒ぎが起きてるからすぐ見つかるよ。任せておいて!」

ドムはそう言うとカッコつけたのか軽くウインクして、すぐにオーランド探しに出かけて行った。

(――と言うか、あんな爽やかに笑うドムを見たのは初めてだぞ…?!)

ビリーもそれを見て少し目が点になりつつ私に視線で合図をしてくる。

"今のほんとにドムか?!"

きっと、そう言いたかったんだろう。
しかし…確かオーランドは紹介の件はに内緒にしておいてって言ってたような………まあ、いいか(!)

そんな事まで気が回るほど、私にも余裕はない。を目の前にしてしまえば―――


「ヴィゴ、次のプレミアはどこでやるの?」
「あ、ああ…ええと…次は…日本かな?」
「え?日本?そう!いいなぁー。私も前に皆で行ったけど、ほんと楽しかったの」
「ああ、そうだったね。確か私もオーランドからお土産をもらったよ」
「え?何を……?」
「ええと、あれは確か………カブキ…?で使うウィッグ(!)だったような……」
「…………………」


私の言葉にはちょっと複雑………というような顔をした。(そんな彼女も可愛い)

まあ………きっと、"オーリィってば、そんなのヴィゴにあげて、どこで使えって言うんだろう…"とでも思ったのだろう…

ああ、いや、その気持ち痛いほどによく分かるよ、…。
私も、オーランドから爽やかな笑顔で、アレを渡された時………"私にこれをどうしろと?"と思ったものだ。
仕方がないから寝室の壁に飾って(引っ掛けて)あるが………時々、夜中にアレを見ると、ちょっと怖かったりする。
全く…もっと実用的なものとか買って来て欲しかったよ……。

そんな事を思い出していると、そこへ彼女のマネージャーをやっているスタンリーという若者が歩いて来た。
彼は私の作品のファンのようで、さっきも私が出した写真集の話で盛り上がった。
なかなか若いのにシッカリしているし、性格もいい本当にナイスガイな男だと思う。
だが、だからこそ複雑なもので、そんな男がの傍に四六時中いるとなると、どうも心配になってしまうのだ。
今もはスタンリーに何やら楽しそうに話し掛け、料理なんぞ小皿に取ってあげている。
彼は遠慮しているようだが、は「今は仕事じゃないでしょ」なんて言って、せっせとスタンリーの為に動き回っていて、何となく羨ましい気持ちにさえなってきた。(年甲斐もなく嫉妬だろうか、この気持ち…)
まあ…二人は歳も近いようだし気も合うんだろう…(ちょっと落ち込むが)
ま、この辺の話でも今度、ハリソンに聞いてもらうことにしよう………


「ヴィゴ?どうしたの?」
「ん、いや何でもないよ、メリッサ。それより…客に挨拶に行こうか」
「そうね。でも楽しみー!あのオーランドに会えるなんて!」
「…………まあ…あまり期待するな…。前に話したとおり、あいつは―――」
「あら!可愛いじゃないですか♡あのオーランドの趣味が家出なんて!」
「いや、それだけじゃ……」
「私、母性本能くすぐるような人も好きなんです。ギャップがある方が魅力あるっていうか♪」

彼女はそう言って本当にウキウキしているようだ。だが私は何ともいえな気持ちになり、口を噤んだ。
あのオーランドの見事なほどの"アフォ伝説"(!)を短時間では語り尽くせない……

私はそう思いつつ、他の招待客に挨拶に向った――








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