Big brothers who panic at scandal!#4それぞれの事情....【ジョシュ&オーランド&





「はぁ? そんな事があったのか?」

ジョシュはそう言うと驚いたように顔を上げた。
混乱の一夜が明けた日の昼頃、やっと起き出して来たジョシュにとって、その話を聞けば嫌でも目が覚めてしまった。

「そ、それでは大丈夫だったのか?」
「うん、まあ。熱は上がっちゃったけどさ」

そう言って肩を竦めたイライジャにジョシュは丸く目頭を抑えて溜息をついた。
ジョシュが帰宅したのぱ結局、朝方。
撮影が押しに押して、かなり疲れきって帰ってきた。
なのでリビングにも顔を出さず、そのまま自分の部屋へ行って寝てしまったのだ。
その前にの寝室をそっと覗いたが、スヤスヤ寝てたので、そんな事件があった事など分からなかった。(当たり前だが)

「そっか…。まあ、今日までオフだから、ゆっくり休ませなきゃな…」
「うん。でも明日もし撮影に行けても、あまり無理させない方がいいね」
「ああ、その辺はちゃんと見てるよ」

ジョシュはそう言って大きく息を吐き出すと、ゆっくりと紅茶の入ったカップを口に運んだ。
そこへ眠そうな顔をしながらレオが入ってくる。

「ああ、おはよう、レオ。夕べは大変だったようだな」
「よ、やっと帰ってきたか…。もう大変って言うか…疲れたの一言だな…」

レオはそう言うと、「はぁ…」と溜息をつきながらソファに座った。
そんな彼を見てジョシュはちょっと苦笑を洩らすと、

「そう言えば久し振りに父さんが帰って来たんだろ?」
「ああ…オーランドのバカのせいでね。ったく!暴走した父さんを宥めるのが大変だって分かってるクセに混乱するようなことするんだ、あいつは」
「まあ、そこがオーリィのオーリィたる所以でもあるしね」

イライジャがそう言って笑うとレオは顔を顰めてガックリと頭を項垂れた。

「で…?オーリィはフテ寝してるのか?どうせ制裁加えたんだろ?」
「まあな…。おかげで手が痛い…」

ジョシュの言葉にレオは軽く肩を竦めて手を擦る。
その仕草にイライジャがぷっと噴出した。

「まあ、顔を殴らなかっただけ優しいよ。オーリィにも一応、俳優という仕事があるしね」
「そこはお互いプロだからな。オーリィが顔腫らすのは俺的に関係ないけど仕事で関ってるスタッフが可愛そうだ」
「………………」

レオの言葉に思わずジョシュも、「なるほど…」と大きく頷く。
だがレオはふと思い出したようにジョシュを見ると、

「そうだ、ジョシュに頼みがあるんだけどさ――」










「おぅ、ジョシュ。久し振りだな」
「やあ、父さん。生きてたんだ」

俺は今まさに出かけようとしている父に向かって嫌味たっぷりに笑いかけた。
するとハリソンはドアノブにかけた手を外し、目を細めて振り返る。

「久々に会った父親に対して言う事はそれだけか? もっと優しい言葉があるだろう?」
「へぇ、例えば?」
「"やあ、父さん!会いたかったよ!"とか、"体、壊してないかい?"とか、そういう心遣いがないか、と言ってるんだ!」
「うん、ない」(きっぱり)
「…………っ!」 (内心→ ガ━━━━━━━━(゜Д゜;)━━━━━━━━ン!)

満面の笑みでそう言いきったジョシュにハリソンはハニワのように固まり、そして、ちょうどエントランスに出てきたエマに泣きついた。

「エマァ〜〜!聞いてくれ!このバカ息子ときたら冷たいにもほどがあるんだ…!だんだんレオに似てきたぞ…っ?!」
「そうねぇ…。それが寂しいなら、いつもの半分は家に帰って来たら?」
「エ、エマ!!」

俺と父さんの会話をすでに聞いていたのか、エマはアッサリとそう言うと父さんのネクタイを直し、ニッコリ微笑んだ。

「行ってらっしゃい」
「………………」

エマにまで見捨てられた父さんは悲しそうな顔をすると、トボトボと歩いて行こうとした。
だが、すぐにぐりんっと振り向くと(首がゴキっと鳴った気がするが)突然、俺の方に歩いて来てガシっと手を握ってくる。
それにはギョっとして一歩、後ずさった。

「な、何だよ、父さん」
「今日は取材だけなんだ。だから夜には帰って来る!」
「は?」
「そうだ!土産は何がいい? の好きなレモンタルトか? それともダイヤ?」
「…………その組み合わせは何か意味あるわけ…?」

俺がまたしても目を細めて、そう尋ねると父さんは心外といった顔で、こう言った。


「当たり前だろう!の好きなものだ!」

「…………………」


どうやら父さんの頭には以外、入っていないようだ。

(冷たくされるのが嫌なら少しは息子も可愛がれってんだ!)






――コンコン!

アホ全開な父さんを見送り、(追い出し?)俺はの部屋のドアをノックした。
すると中から、「どうぞ」と返事が返って来る。
俺は静かにドアを開けると、中をひょいっと覗いた。

「おはよう、。体調はどう?」
「あ、ジョシュ。うん、もうだいぶいいわ」

は笑顔で答えるとバッグを持って歩いて来た。
夕べやっと熱が下がり、今日からロケに参加できる事になったのだ。
俺はの頬に、おはようのキスをすると一緒に下へと下りて行った。
リビングに行くと、レオはすでに出かけたのか誰もいない。
いや……。一人、仕事前なのにフテ寝しながらテレビを見ているオーランドがいる。
ったく何をしてるんだか……

「オーリィ、おはよう!」
「あ!〜〜!!もう大丈夫?!」
「うん。心配かけてごめんね」
「いいんだよーが元気になれば!」

オーランドは何だかフラフラと歩いて来ると、の頬にチュっとキスをした。
だが、いつもなら、ここで抱きつくクセに今日はキスだけでニコニコしているだけ。
それを見て俺は内心、苦笑した。きっと昨日、レオにやられたせいで体中が痛いんだろう(!)

「今日から仕事?」
「うん。午後からね。オーリィは?」
「俺はこれからなんだー!でも、ちょっと体の節々が…」
「え?」
「な、何でもないよ!あ、じゃあ俺、行って来るね!」
「行ってらっしゃい」

はオーランドの頬に軽くキスをすると笑顔で見送り手を振った。
そして少しだけ首をかしげて俺を見上げてくる。

「ねえ、ジョシュ。オーリィ、何か変じゃなかった? いつもなら必ず抱きついてくるのに」
「ああ…何か変なものでも食ったんだろ」

澄ました顔でそう答え、の頭にポンっと手を置く。
それでもは、「そうかなぁ…」なんて言ってソファに座った。
俺も笑いを堪えつつ、隣に座ると、時計を見た。

「そろそろ…スタンリーの代わりの奴が来るな」
「そうね…」
「どんな奴?そのジョージって」

この状況で今だけ担当を代わるのは仕方ないとして、今回も男だと言うし、どんな奴か聞いておかないと心配だしな…
そう思いながらを見れば、彼女は軽く息をついて肩を竦めた。

「凄く優しい人かな。そんなに話した事もないけど…まあフェミニストって感じかしら」
「へぇ…」

それを聞いて俺は一瞬、不安になったが、まあ男と見ちゃ誰もかれも疑うってのもよくない。
とりあえず会ってみない事には分からないな。
そう思いながら俺は腕時計を見た。
するとキンコーンとチャイムの音が聞こえて来た。

「あ、来たかも…」
「俺が出るよ」

ソファから立ち上がろうとするを再び座らせ、俺はエントランスへと歩いて行った。
エマがインターフォンに出たのだろう。
すぐに顔を出し、「の事務所の方よ」と教えてくれる。
それを聞いて俺はすぐにドアを開けた。

「はい?」
「やあ、おはよう、ジョシュくん!」
「ど、どうも…」

開けた瞬間、何だか爽やかな挨拶をし、目の前にニコニコしながら立っている男性は見るからにキザを絵に描いたようだ。
ベルサーチのスーツに身を包み、何だか香水の香りまで、ほのかにさせている。

「えっと…」
「今日からスタンリーの代わりにくんにつく事になったジョージ・ファレルだ。宜しくね」
「此方こそ、宜しく…」

ガシっと握手をされ、俺も慌てて笑顔を作る。

(何だか侮れない奴…)

ニコニコした顔からは何となく本心が見えず、俺は頭をかきつつ、彼を中へ入れた。

「いやあ、光栄だな。ハリソンファミリーの家に入れるなんて」
「…そうですか?」
「いや、よくテレビでは見てたんだけどね」

ジョージはそう言いながら「ハッハッハ!」と一人で笑っている。
何だか調子が狂うな…と思いつつ、リビングに戻った。

。ミスターファレルが来たよ」
「あ、ジョージ。おはよう御座います」
「やあ、くん。今日も一段と奇麗だね!もう体調の方はいいのかな?」
「はい。おかげさまで…」

ジョージは、さっき聞いた通り、かなりのフェミニストなのか、の頬に軽くキスをしたりして馴れ馴れしい。
俺は少しムっとしつつ、ジャケットを持って出かける準備をした。

「じゃあ行きましょうか。ミスターファレル」
「ああ、ジョシュくん」
「はい?」
「私の事はジョージと呼んでくれ」
「はあ…」

爽やか〜な笑顔で、そう言われ俺は少々顔が引きつった。
そんな俺を見ては笑いを噛み殺しているようだ。

(ったく…朝から、こんなにテンション高い男と、これから毎日顔合わせるのか…?)

それには、ちょっとウンザリしながら俺はの肩を抱いて軽く溜息をついた。









「あら、。もう熱は下がったの?」

ロケ場所につくなり、デライラがこっちへ歩いて来て、俺は今朝、レオから聞いた話を思い出した。
その話には、ちょっと驚いたが、まあレオならありえる(本人には言えないが)と俺はデライラを出来る限り見張っておくと約束したのだった。

「デライラ!何とか下がったの。この前はお見舞いに来てくれて、ありがとう」
「いいのよ。ちょっと仕事が入っちゃって勝手に帰ってごめんなさい」

デライラは何とも愛想のいい笑顔でに、そう言うと俺とジョージを交互に見た。

「ジョシュ、おはよう。この方は?」
「おはよう、デライラ。彼はスタンリーの代わりに暫くについてくれるジョージ」
「まあ、そうなの?宜しく、ジョージ。私はデライラ・バーンズよ」
「やあ、これはまた奇麗な人だね。どうぞ、宜しく、デライラ」

ジョージは、ここでもフェミニストっぷりを発揮させ、俺は思わず半目になった。
だがデライラは軽く交わすと、すぐにを見て、

「もしかしてスタンリーが外された原因はあの雑誌…?」
「え…あ…実は…そうなの」
「そう…あんな記事、信じるなんて事務所も困ったものね」

デライラはそんな事を行って溜息なんてついている。
それを聞いていて俺は開いた口が塞がらなかった。

(ったく…よく言うよ!あの雑誌にレオの話をリークしてた一人のクセに!だいたいスタンリーだって、本人同士のゴシップより、家族とのゴシップまで書かれるからって外されたのに…)

俺は聞いていて胸くそが悪くなり、そっぽを向いて煙草に火をつけた。

「大丈夫?
「ええ。それに…完全に代わるわけじゃないから大丈夫」

はそう言って微笑むと、ジョージに促され一旦、衣装に着替えに行った。
それを見送り、俺も着替えに行こうとするとデライラに腕を掴まれた。

「ねぇ、ジョシュ」
「何?」

あからさまに嫌な顔をして振り向けば、何だか彼女はニヤニヤしながら俺を見上げてきた。

「レオに……何か聞いた?」
「え…っ?」
「だってジョシュ、昨日までと随分、態度が違うもの」
「………………」

(何でもお見通しってわけか………。まあ…俺はレオみたいに上手く感情を隠せないからな…)

軽く息を吐き出し、俺はそっとデライラの腕を外した。

「分かってるなら気安く話し掛けるなよ」
「あら、ジョシュでも、そんなこと言えるのね。凄く優しい人だと思ってたけど」
「あいにく…俺だって優しくする価値もない奴にはレオと一緒で冷たいんだよ」
「へぇ、言ってくれるじゃない。ケイトにも聞かせたいわ」
「は?」
「ケイトは優しいジョシュにお熱のようだから」

デライラはそう言ってニヤリと笑いながら、監督と話し込んでるケイトを見た。
やっぱり、この手の女は他人の恋愛沙汰まで興味があるらしい。

「そんな事より…あんた、何を企んで、この映画を受けたんだ?に何かしようってのか?」
「まさか…そんな気はないわ。ただレオがあんなに大切にしてる"妹"さんと一緒に仕事がしたかっただけ」
「嘘つくな!を気遣うフリして家にまで来て…!何が目的だ?こんな事したってレオの気持ちは――」
「いいのよ」
「……っ?」
「私を……憎めばいい。そうしたら嫌でもレオの心に私が残るから」
「…あんた…」

彼女の言葉に俺は唖然とした。そこまでしてレオの心を乱したいのか?

「二度と家には来るな。それとに友達ヅラして色々言うのはやめてくれ。あいつは純粋なんだ。あんたの事をいい人だって思ってる」
「それは嬉しいわね」
「ふざけんな…!あんたの本性知って傷つくのはだ。いいか、には仕事以外で話し掛けるなよ」

俺はそう言ってデライラを睨むと、そのままスタッフの方に歩いて行った。
あんな言葉くらいで、あのデライラが引き下がるとは思えないが言わずにはいられなかった。
自分の気持ちを満たす為にを利用するなんて許せない。

「ジョシュ…?」
「…あ……っ」

その声にドキっとして振り向けばは着替えが終ったのか、衣装のまま走ってくる。
俺はすぐに強ばった顔を隠し、笑顔を見せた。

「どうしたの?まだ着替えてなかったの?」
「あ、ああ…今からすぐ着替えるよ。は監督のとこ行ってて。 ――あ、ジョージ」

の後から、ジョージが歩いて来て、俺はすぐに声をかけた。

についててもらえますか?」
「え?ああ、任せてくれよ。ちゃんと見てるから」
「お願いします」
「何だ、大げさだな。ちょっと着替えに行くだけだろう?それともくんには危ないストーカーでもついてるのかな?ハハハ!」
「い、いや、そんなんじゃ……」(じゃなくてレオにだけど…)
「ジョシュは心配性だから。私なら大丈夫よ?熱も下がったんだし」
「ああ…でも…あまり一人になるなよ。病み上がりなんだし、また具合悪くなったら大変だからさ」
「うん、分かったわ」

素直に頷くの頬に俺はちょっと笑って軽くキスすると、後はジョージに任せて着替え用の車へと向った。

(はぁ…全く笑い事じゃないっての…。危ないストーカーはにじゃなく、レオについてるんだって言えれば、どんなにいいか)

「あーあ…ほんと最近、問題ばかり起こる…」

一人ボヤいて、チラっと後ろを振り返れば、はジョージに何かと話し掛けられ、困ったような顔をしている。

(なーんか、あいつもトボケすぎてて心配なんだよな…。スタンリーだと安心して任せておけるのに…)

そんな事を思いながら俺は車の中へと入って行った。










「カット!OK!じゃあ次はジョシュとケイトのシーンから」

監督の声で俺は抱きしめていたを放し、ついでに額にチュっとキスをした。
とのラブシーンは未だ慣れず、いわば照れ隠しのようなものだ。

「じゃ、俺は、もうあと1シーン撮ってくるからは車で休んでろよ」
「うん、じゃあ戻ってるね」
「ああ、何なら少し寝てていいぞ。後で起こすから」
「大丈夫よ。今日はそんなに疲れてないから」

はそう言って笑うとメイクさんの方に走って行った。
それを見送り軽く息をついてると、これから一緒のシーンを撮るケイトが歩いて来る。

「良かったわね、妹さん元気になって」
「ああ、まあね。でも皆に迷惑かけたって言って、その分、張り切っちゃってるから心配だよ」
「迷惑だなんて、そんなことないのに。誰だって具合は悪くなったりするものだし…でも、ほんとジョシュって心配性ね」
「それは否定しないけどね。と言うより俺も含めて家族全員が心配性だよ」

そう言って苦笑すると、ケイトもクスクス笑いながら歩いて行く。
俺も彼女の後から歩いて行き、スタッフが準備している間、椅子に座って待つ事にした。

「今日はこれで終わりよね?」
「そうみたいだな。明日のスタジオの方が遅くまでかかるってさ」

俺がそう言って肩を竦めるとケイトはちょっと笑って、ふと目を伏せた。
その顔を見て、さっきのデライラの言葉を思い出す。

"ケイトは優しいジョシュにお熱のようだから"

彼女―ケイトが俺に気があるのは何となくだけど分かっていた。
自惚れと言われればそうかもしれないが、彼女はどうも俺に対してだけ接し方が他の人と違う。
やたらと気を使うし、ちょっとでも俺が困っていると、すぐに助けてくれる。
最初は世話好きなのかな、とも思ったが、どうやら、それは俺に対してだけらしい。
一度、監督にもからかわれたことがあった。デライラも、その辺で気づいたんだろう。

何となく沈黙になり、少し重たい空気が流れ俺はマズイかな、と立ち上がり、飲み物を取りにいこうとした。
するとケイトが先に立ってスタッフから冷たい飲み物をもらってきてくれる。

「はい」
「あ、ああサンキュ…」

それを受け取り、微笑むとケイトもまた嬉しそうに微笑み、再び椅子へと座った。
また、ここで会話がなく気まずい空気になるのも嫌だなと思っていると最初にケイトの方から口を開いた。

「ねぇ、ジョシュ」
「ん?」
「今日…撮影が終った後…何か用事ある?」
「え?いや…特にないけど…」
「じゃあ…。一緒に食事でもどう?」
「…え?」

ケイトの言い方は"皆で"というものではなく、明らかに"二人きりで"というニュアンス。
それには何て答えようかと少し考える。――いや、別に食事くらい行くのはいい。
ケイトはいい子だし奇麗で話していても楽しい。だけど……

「あの…無理ならいいの」
「え、あ…いや、そうじゃなくて…」

俺の態度にケイトは誤解したのか少し悲しげに目を伏せてしまい、俺は慌てて首を振った。
が、まだ返事を考えてる途中なのを思い出し、ヤバっと思ったがすでに遅かったようだ。
ケイトはすぐに笑顔で顔を上げると、

「じゃあ大丈夫なのね?」
「あ、いや…うん…」

何て煮え切らない男なんだ…!と、この時自分でちょっと思ってしまった。
中途半ぱにOK出すなんて最悪だ。

「じゃあ…終るまでに行くとこ考えておくわ」
「…ああ…」

ケイトは笑顔でそう言うと、ちょうど助監督から呼ばれ歩いて行ってしまった。

「はぁ…」

一人になり少しだけ落ち込む。

俺って前からこうなんだ。前にも何度か似たような事があった。
こんな風に誘われ、食事をして、その後もまた何度か会おうという事になる。
そして何となく付き合うようになって、最後は振られる。(殆どのこと)
だいたいパターンが読めるから、さっきも返事に困ってしまったのだ。

(相手の子の事を嫌いなら、キッパリ断れるのに…)

どうしても好意(人として)を持ってる相手だと断りにくいし、悪いかなと思ってしまう。
それに何度か二人で会ううちに俺も相手の事を好きになったりするから困るのだ。
こいういう時、はっきり断れるレオがちょっと羨ましいと思う。

「あ…に何て言おう…」

その事を考えると、また憂鬱になってきた。別に事実を言えばいいのだが何となく気が重い…

「ジョシューそろそろスタンバイしてくれ!」
「…はい!」

あれこれ考えてる内に用意が出来たらしい。

俺はちょっと憂鬱になりつつ、重い足取りで皆の方へと歩いて行った。










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