The moment of seeing you so that even the cold body gets warm
My heart beat fast
Inside of spring rain In the inside of your arm It is ,
Aalthough she is smiling gently and can cook.....
Even it You
Being it my yearning....
貴方を見た瞬間 冷えた体まで温まるほど
私の胸が高鳴った
春の雨の中 貴方の腕の中には
彼女が優しく微笑んでいたけれど…
それでも 貴方は
私の 憧れなの…
その日も朝から雨が降っていた。
私はの家の前まで来て暫くウロウロと歩き回っていた。
緊張してしまって、なかなか門の中まで入ることができずにいる。
はぁ…やっぱり緊張しちゃう…の家に来るのも、こうして学校以外で会うのも初めてだし…
それに…あの卒業式から一週間…ずっと彼の事を考えていたし…。
アリーは、またドキドキしてくる胸を押さえると、そっと息を吐き出した。
今は学校で一番仲が良かったの家の前だ。
昨夜、卒業式以来、初めてから電話があり、
"明日からお父さんが仕事でニューヨークに行くの。
お母さんも弟を連れて観光もかねて一緒に行くって言うから家には私とジョシュだけになるし…
良かったら、アリー泊まりに来ない?夜、ジョシュとカウチポテトするの。アリーも一緒に映画のビデオ見ましょうよ!"
と言われて驚いた。
今までから、そんな風に誘ってきたこともなかったから。
それに…少し胸がときめいた。
だって私は…あの卒業式の日、のお兄さん…ジョシュを見て憧れに近い感情を抱いていたから――
あの日から…どうしても彼の優しい笑顔と暖かかった手の温もりが忘れられなくて…
でもに電話して家に行くと言うのも、動機が不純だしに悪い気がして出来なかった。
これじゃルイスと同類になってしまう。
そんな時、からあの誘い。
思わず驚いたけどが電話をしてくれたのも凄く嬉しくて、是非行くわ…!と言ったはいいが…
家の前まで来ると何だか緊張してきて、なかなかインターホンを押せないというわけだ。
時間は夕方の5時をまわるところ。
(ああ…約束の時間だわ…遅れるわけにはいかない…!)
アリーは傘を持つ手に、ギュっと力を入れると、思い切って可愛いお花が飾られてる白い門の扉を開けた。
玄関まで歩いて行きインターホンを押す。
更に胸がドキドキと凄い速さで打ち出すのが分かる。
(ああ…何だか胸が苦しいくらいに鼓動が早い…私、大丈夫かしら…?)
そんな感じで緊張したまま待っていると、すぐにドアが開いてアリーは慌てて笑顔を作り、「あ、…」 と言いかけた。
だが―
「やあ、アリー。いらっしゃい!」
「あ…っ」
出迎えてくれたのは、ではなく、アリーの心臓をドキドキさせている張本人、ジョシュ、その人だった。
てっきり、が出て来るものだと思っていたアリーは突然のジョシュの出迎えに、一気に緊張した。
「あ、あの…こんにちは…!」
何とか挨拶をすると、ジョシュは、あの日と変わらぬ笑顔で、「こんにちは! ―どうぞ?も楽しみに待ってるよ」 とアリーを中へと促す。
私は顔が赤くなるのを感じながらも、「お、お邪魔します…」 と言って中へと入って行った。
すると広い廊下の右のドアから、が顔を出した。
「アリー!いらっしゃい!」
「あ、…!こんにちは!今日は呼んでくれて、ありがとう、凄く嬉しいわ」
「私もよ?こうやって学校の友だちを家に呼ぶなんて初めてなんだもの」 と言うとは優しく微笑んだ。
そしてリビングへと案内をしてくれ、「今、紅茶入れるから座っててね!」 とキッチンへと歩いて行く。
私はソファーへ静かに腰をかけると、ホっと息を吐き出した。
そう。確かに私とは学校にいる間は仲が良かったほうだ。
だが、学校外で会ったことは一度もなかったし、電話をかけ合ったりする事も多くはなかった。
は…どこかで冷めているというか…自分の事をさらけ出さない所があり、誰にも気を許してなかったように見える。
それでも、アリーとは比較的、色々な話をした。
お互い、男の人が苦手だというのも、二人を親しくさせた理由の一つかもしれない。
アリーもほどではないが、男の子が苦手だった。
興味はあるのだが、周りにいたクラスメートの男の子の中に好きになれるような人もいなかった。
アりーはどちらかとい言うと、映画の中の主人公に恋をしてしまう夢見がちな女の子とも言える。
だからと言うわけではないが、アリーは、この18年間、恋人はもちろん、好きな人でさえ、まともに出来た事がなかった。
なのに…この前…ジョシュに会って体に電流が走った。
胸がドキドキして顔が赤くなるのが分かったくらいだ。
確かにのお兄さんが俳優というのを聞いて少し興味が沸いたし、雑誌などでジョシュを見ると、カッコイイとも思った。
それにから毎日のように、ジョシュの話をされていると会ってみたいと思ったのも事実。
だけど…想像してた以上に、ジョシュは素敵だった。
の話を聞いていて凄く優しい…というのは何となく分かってはいたが、あの優しい微笑みを実際に目の前で見たら蕩けるかと思ったほど。
優しくをコートで包んでいた姿にも胸がドキドキしてきて…の話以上に、二人は仲が良かったのに驚いたのもある。
…あんなにジョシュに大事にされてるんだ…と、アリーは凄くが羨ましくなった。
きっと私は、あの時からジョシュに憧れにも似た感情を抱いている。
さっき、また出迎えてくれた彼の笑顔を見て、それは更に強まった。
(この前よりもドキドキして…これって…初恋なんだろうか…?)
そんな事を考えていると、が紅茶を入れて、アリーへと出してくれた。
「はい、紅茶」
「あ、ありがとう…」
私は目の前のテーブルに置かれたカップを持つと、入れたての暖かい紅茶を一口飲んだ。
そこにジョシュが、「また雨が強まってきたよ…」 と言いながらリビングへと入って来た。
アリーは少しドキっとすると、顔を窓へと向ける。
さっきより雨粒が少し強めに窓に当たってパチパチっと音を立てている。
が、「はい、ジョシュ、紅茶」 とテーブルへと置くと、
「あ、ありがとう」と、ジョシュは嬉しそうに微笑み、アリーの向かいのソファーへと腰をかけ紅茶を飲んでいる。
もジョシュの隣へと腰をかけ、自分の紅茶を飲みながら、
「ねえ、アリー。夕飯は外に食べに行こうってジョシュと話してたんだけど…それでもいい?」
と聞いてきた。
「え、ええ。私は構わないわ」
と笑顔で答えると、チラっとジョシュの方へと視線を向ける。
ジョシュは紅茶を飲みながら何かの本を読んでいた。
「じゃあ、何食べようか?アリーは何が好き?イタリアン?中華?和食?」
は楽しそうな顔で問いかけてくるが、ジョシュが読んでいた本から顔を上げると、
「…そんな一気に聞いたって答えられないだろ?」 と苦笑した。
「あ、そっか」 とも舌をペロっと出して笑っている。
私もちょっと笑いながら、「私はどれでも大好きよ?が決めてくれていいわ」 と言った。
「でも…私や、ジョシュが決めちゃうと…スシかイタリアンになっちゃうよ?ね?ジョシュ」
「ああ、確かに!アリーはそれでもいい?」
「あ、は、はい。…あの私もスシもイタリアンも大好きですから…」
と何とか笑顔で答えるも、鼓動が早くなり顔が熱くなる。
(アリーって名前を呼ばれたくらいで、何で、こんなに鼓動がうるさいの?妹の友だちの名前くらい誰だって呼ぶわよ…)
アリーはそっと息を吐き出し二人の方を見ると仲良さそうに、今夜食べに行く店を提案しあっていた。
「じゃ、決まり!"SAKURA"ね?「アリー、"SAKURA"に決まったわ!アリーも知ってるでしょ?ピーターストリートの…」
「ああ、知ってるわ!スシバーね?ミネソタ・ワイルズの選手が来るってんでお母さんに何度か連れて行かれたわ?」
と笑いながら答える。
「ああ、アリーのお母さんってばホッケーも好きなの?」 とも少し笑いながら聞いた。
「うーん。まあ好きなんだろうけど半分はミーハー心ね。
ワイルズの試合を観に行った後は必ず、"SAKURA"でディナーなの。選手も試合後に来るから」
「ああ、そうよね!前にジョシュとワイルズの試合後、"SAKURA"に行った時、選手が来た事があったわ?
体が大きいから、すぐ分かるもの!ね?ジョシュ」
「ああ、試合後だったから、ちょっと感激だったな。なんて憧れのFWの選手が来た時は涙目になってたもんな?」
とからかうようにの頭を撫でながら、ジョシュが笑って言った。
「だって…あの日は彼のゴールで勝ったから余計に感動しちゃって…」
「まあな!あのゴールは今思い出しても凄いよ!あの難しいコースからパス受けてのゴールはな〜!ああ〜サイン貰っておけば良かったな?」
と、ジョシュは悔しそうな顔で言っている。
も残念そうな顔で、「ほんと…!他にファンが群がってたから遠慮しちゃったのよね…」 と溜息をついている。
アリーは、少し驚いた。
俳優をやっているのに気さくに憧れの選手のサインをもらえば良かったと言って残念がっているジョシュに…
何だか気取らない所も素敵な人だな…とアリーは思っていた。
「じゃ、アリーも、"SAKURA"でOKね?」
「あ、うん。スシは久し振りだから行きたいわ」
「じゃ、決まり!」
「じゃあ行く時、タクシー呼ぶ?ジョシュが車出したら飲めないでしょ?」
「ああ、そうだな…。タクシー呼ぼうか」
「うん。じゃ、今、5時半になるから…6時頃に来るように電話しようっと」
は、そう言うと、ジョシュの携帯を借りて電話をかけ始めた。
「Hello?あの車を一台お願いしたいんですけど…」
アリーは、その二人のやりとりを聞いていてなんだか分かり合えてるって感じでいいな…と思った。
(私も…こんな優しくてカッコイイ、お兄さんなら欲しかったわ…)
アリーは電話しているを優しく見つめるジョシュへと視線を向けて、そう思っていた。
は電話をかけおわると、「アリーの荷物、私の部屋へ持っていこうか?」 と笑顔で声をかけてくる。
「え?あ、そうね…着替えだけだけど」
「じゃ、ジョシュ、ちょっと部屋行ってるね?」
「ああ、車来たら呼ぶよ」
とジョシュも、の頬へキスをして微笑んだ。
それを見てアリーは顔が赤くなるのを感じた。
(な、何、赤くなってるのよ…私ったら…お兄さんが妹へ軽くキスしたってだけなのに…)
それでもアリーは心臓がドキドキするのが聞こえないかと心配になるほどだった。
「アリー?いこ?」
が俯いてたアリーに声をかける。
「あ、うん…」
返事をするとアリーは急いで立ち上がり、の後をついて行った。
チラっとジョシュの方を見ると、また本に目を通している。
その横顔にも胸がドキドキしてくるのを感じ、アリーは慌てて階段を上がっていくの後を追った。
二階の奥の部屋がの部屋だった。
奇麗なオレンジ調のカーテンやベッドカバーで揃えてて女の子らしい部屋だ。
「適当に座って?…荷物はこの辺に置いておこうか」
「あ、うん。ありがと」
アリーはそう言うとセミダブルベッドの隅へと腰をかける。
も隣へと腰をかけると、そのままベッドへ上がり窓を少し開けて顔を出している。
「また小雨に変わったよ?卒業式の日から雨降ったり止んだりだよね?」
「…雨好きなの?」
アリーは嬉しそうな顔をしているを不思議に思って聞いてみる。
するとは笑顔のまま振り向き、
「うん。私、雨の日って好きだから別に続いても苦じゃないんだ」
その言葉に頷きながら、アリーはちょっと疑問だった事を思い切って聞いてみた。
「ねえ、」
「なぁに?」
「あの…何で今日…私を誘ってくれたの?今までだっての方から遊ぼうとか誘って来たことなかったでしょ?」
アリーがそう言うとは少しだけ驚いた顔をしたが、すぐに「そう…だったね。迷惑だった…?」と寂しそうな顔をする。
「え?ち、違うわ?逆よ?凄く…嬉しかった。 私…に友だちとして見てもらえてるか…いつも不安だったから…」
アリーが少し悲しげにを見て言った。
「え?そんなこと…」
「だって…はいつも学校が終ると真っ先に帰っちゃうし…休みの日もお兄さんの家に行くとかで忙しいって思ってたし…なかなか、こうして学校以外のとこで会う事もなかったから…」
「あ、そうか…そうだったね…。ごめんね?何だか…アリーが、そう思ってたなんて…知らなくて…」
「ううん!いいの…。今日は…こうして家にまで呼んでもらったし…凄く嬉しかったの」
とアリーは微笑んだ。
するとも少し微笑み、
「あのね…この前の卒業式の帰り…アリー、最後に、"卒業しても、たまには会いましょうね"って言ってくれたでしょ?私…あの一言が凄く嬉しくて…私も…きっと友だちと見てもらえてないと思ってたから…」
そう言われてアリーも驚いた。
「…」
は少し微笑むと言葉を続けた。
「あのね、私…今までジョシュだけいてくれればいいって思ってたの。他に何もいらないって…。
でもね、今回の休み中に…ジョシュの映画の撮影現場に一緒に行って…他の共演者の人達も…最初はあまり話せなかったりしたんだけど…皆、凄くいい人達ばかりで優しくして貰って少しづつ打ち解けていったの。今までジョシュ以外の男の人と接する事もなかったのに、最後の方は、イライジャと二人で買い物にまでいけるようになったし…。ACTRESSの皆とも色々な話をしたし、色々な事を教えてももらった。
そこで気づいたの。いつまでも自分の殻に閉じこもってちゃいけないなって…もっと周りの人を理解して見てみようって…でも、そう思って見ると今まで思ってたのと印象も違って見えてくるから不思議。
学校の人達でも今まで慣れ慣れしいと思ってた子が本当は人なつっこいだけだったんだって分かったり…
アリーのことも…アリーは優しいから、クラスで浮いてる私を気にして仲良くしてくれてるのかなって思ってたりして…
でも最後の言葉で本当のアリーが見えたっていうか…だから…もう一度…これから改めて友達になりたくて…電話したの…」
そこまで言うとは真っ直ぐアリーの瞳を見つめて、
「ごめんね?今まで…私、きっと知らないうちに、アリーのことも傷つけてた…」
と謝った。
その言葉にアリーは胸がいっぱいで涙が出そうになりながら首を振ると、
「ううん…そんなことないよ?は…優しかったよ、凄く…。初めてとクラスメートになった日の帰り…
急に雨が降ってきて、帰るに帰れず玄関のとこで立ちすくんでたら、が声をかけてきて…自分の持ってきていた折畳式の傘を出して、"使って?私、お兄さんが車で迎えに来るから傘、いらないの"って微笑んでくれたでしょ?覚えてる?」
「…うん」
「私、驚いちゃって…まだ話したこともないのに、そう言ってもらって…。"でも…"って躊躇したけど、は私の手に傘を握らすと、"お兄さんの車が来たから"って言って雨の中、校門のとこまで走って行っちゃったのよね…。私、ほんとに嬉しかったの、あの時…だから、が寂しそうな顔をしてると、つい声をかけるようになってしまって…おせっかいよね?」
とアリーは少し微笑みながら言った。
「ううん、そんなことないわ…、アリー…。 ――ありがとう…」
も嬉しそうに微笑むと、アリーの手を掴んで、そう言った。
胸の奥に仕えてた部分を、お互いに打ち明けると二人は心が軽くなり暫く学校での思い出話に花を咲かせた。
「…そんなこともあったね。結局、あの後にどうなったんだった?」
が笑いながら言った。
「ほら、最後は、またルイスが、つい口を滑らしちゃって…結局サプライズにならなかったじゃないの」
アリーは苦笑しつつ肩をすくめた。
「あ!そうだった!せっかく驚かせようと思ってたのに台無しになっちゃったのよね!ほんと…ルイスにも困ったものだわ…」
「ルイスといえば…この前の卒業式で、達が帰った後、大変だったのよ?」
「え?」
「もう目をハートにして、"私、お兄様に恋しちゃったわ!お兄様の追っかけやろうかしら?!"なぁ〜んて張り切っちゃって…」
アリーは困った顔で、またも苦笑いしているがは嫌な顔をして溜息をつく。
「ほんと…?やだ…。あれから何度か家に電話があったのよ…。
お母さんも、あの騒ぎようを目の前で見てたから、居ないって言ってくれたりしてるんだけどしつこくて…。そのうち家にまで来そうだわ?」
「うわあ…。ほんと、そういう事にかけたらルイスも積極的よね?そのうち、お兄さんの家まで突き止めそうで怖いわ」
「そうよね!今はオフだから家に帰って来てるけど…そろそろ戻ると思うし…。
あ、でも少ししたら今度の映画のプロモーションで、またロスに行くとか話してたから…大丈夫かなぁ…。
ルイスも、放っておけば、そのうち熱も冷めるんじゃない?」
「…ほんとに変わったね…」
アリーはを見ながら、呟いた。
「え?そ、そう?変わったかな…」 が首をかしげる。
「変わったわ?前は…お兄さんがミネアポリスから離れる時は凄く悲しそうで…行って欲しくないって何度も言ってたじゃない?
あの時は私…つい"ブラコンね"なんて言ってしまったけど…。二人の仲の良さを見ると今なら、あの時の気持ちが分かるわ。
でも…今のは、そうやって、お兄さんが仕事でいなくなるのを普通に話してるし…どうしたの?何かあった?」
アリーが、そう言うとは少し驚いた様子で、
「な、何もないわ?…ただ…もう高校も卒業したし…いつまでもジョシュに甘えてばかりじゃいられないって思って…
ほんとは寂しいけど…前ほど絶望的に悲しいってわけでもないの。
二度と帰って来ないとかじゃないし、ジョシュにも心配かけたくないって言うか…私…強くなりたいの…」
真剣な顔で、そう言ったに、アリーは思わず胸を突かれた。
(ああ…本当に…大切に思ってるんだ、ジョシュのこと…)
アリーは、その気持ちが少しだけ分かったような気がした。
「それに…私、大学…やっぱり行こうかと思って…」
突然、の口から、そう聞かされ、更にアリーは驚いた。
「え?!だって…前は親の手前、私と同じとこ受験はしたけど…行きたくないって行ってなかった?ニューヨークの大学だし…。
受かったのは知ってるけど…私、てっきり行かないものだと思ってたわ…?」
そう言うとは微笑みながら、
「最初はね…。そう思ってたし、親にもジョシュにもそう言ったわ。…でも、やっぱり大学くらいは行かないとって…。
ほんとはジョシュのマネージャーのロイにも、うちの事務所でアシスタントしてくれって言われてるんだけど…
そうなるとジョシュの側にいれるだけに、また甘えちゃいそうな気がして…。それに今の私じゃ何も出来ないもの。
その仕事に凄く興味はあるけど、やっぱりやる前にもっと色々な事を経験して…それからって言うか…」
の顔は真剣だった。本当に強くなろうとしてる目だ。
そんな彼女を見てアリーは、そっと微笑むと、
「そう…。が、そこまで真剣なら私は応援するわ。それに同じ大学に行けるななんて嬉しいもの!」
アリーはの手を取り強く握ると、は嬉しそうに微笑んで「ありがとう…」 と呟いた。
「…それで…もう、お兄さんには言ったの?」
「ううん…。まだ…何だか言い出せなくて…凄く心配性だから…」
と、は少し寂しげに微笑む。
「…そう。そうよね…でも、もうすぐ大学の方にも知らせないといけないんじゃない?私も昨日のうちに申し込んだの」
「実は…もう申し込んだの…。お母さんにだけは卒業式の夜、話して…。そしたら手続きとかやってくれてたの」
「そうなの…?じゃあ…あとは言うだけなのね…」
その時―
「?車来たから、もう出かけるよ?」と、ジョシュが下から呼ぶ声が聞こえた。
「はーい!今、行くわ!」と、は返事をすると、コートを持って、
「じゃ、行きましょうか?」
「うん」
アリーもすぐコートを着ると、と一緒に下へと降りて行った。
セントポールミシシッピ川付近にある、日本料理店"SAKURA"は内装も日本の寿司屋と、ほぼ変わらず明るい雰囲気のお店だった。
入り口から、真正面の所に、カウンターがあり、中には日本人の寿司職人が数人いて、寿司を握っている。
中の棚にはズラリと日本のお酒のボトルが並んでいて、食事に至っては定食や丼ものまであり、ランチでも$8・95〜からとリーズナブルだ。
ディナーの寿司一人前でも、$16・95ほどでボリュームもあり、味付けも美味しい。
アリーが話してたように、ミネソタのアイスホッケーチーム・ミネソタ・ワイルズの選手達が試合後に利用するのでも有名な店で、
選手の好きなオリジナル寿司ロールがメニューにも並んでいる。
私達3人は窓際の比較的広いテーブルへと案内されて席へとついた。
私が座ると隣にが来たので、「はお兄さんと一緒にどうぞ!」 とおどけた顔で言うと、は、「え?だって…」 と困った顔をするが、
私はの背中を押しやると、「いいから、いいから!」 と無理やり、をジョシュの隣へと座らせ、
「仲のいい二人を見てるのが好きなの」 と微笑んで私も向いに座る。
ジョシュは少し照れくさそうに笑いながら、メニューを見て、「今日は何にする?」 と声をかけ、メニューを広げて見せてあげている。
私も自分のメニューを見ながら、仲良さそうにメニューを覗き込んでいる二人に視線をやり、
ちょっと羨ましく思いながらも、ほんと…この二人、離れても大丈夫なのかなぁ…と心配になるのだった。
そこに、ピピピ…とジョシュの携帯が鳴り、ジョシュは慌てて出ると小声で、「Hello?」と話し出した。
私はが少し心配そうな顔をしていたのが気になり、目で、"どうしたの?"と合図すると、は少し微笑んで軽く首を振った。
すると、いきなり電話で話していたジョシュが、「ええ?!」 と大きな声を出して、慌てて手で口を押さえる。
私とも驚いてジョシュの方を見た。
「…嘘だろ、おい?今、どこだって?リジー」
そのジョシュの一言に、が目を丸くして、「え?リジーから?」 と呟く。
私は、どこかで聞いた名前だと考えるも、どうにも出てこなくて黙って、メニューを見ているフリをしていた。
「マジで?ショーンもいるの?うわぁ…」
ジョシュは驚いた顔をしつつ頭を抱えている。
それにはも気になったのか、「ねぇ、ジョシュ…どうしたの?」 と問い掛けた。
それにジョシュは顔をあげると、「今さ、リジーとショーンが迎えに来いって言ってるんだ…」 と言った。
「え?!迎えに来いって…ど、どこに?」
「それが…今、セントポール空港に着いたから空港まで迎えに来いって…」
「ええ?!い、今…二人、空港に来てるの?!」
「ああ…あ、もしもし?リジー?あのさ…今、とセントポールにいるんだ。戻ってきてから実家に来てるからさ…。
うん、そう。…え?だって本気だとは思わないだろ?普通…!ああ…。今?今は家じゃないよ。食事に来てるんだ。
と、の友だちと。ああ…。だから…あ、そうだ。空港からならタクシーで来れば近いんじゃないか?うん…」
アリーはジョシュの話を聞きながら、、まだ驚いた顔をしているに、「ね…誰が来てるって?」 と小声で聞いてみた。
「あ…あの…この前、ジョシュが撮ってた映画の共演者で…ほら、ルイスが騒いでたイライジャよ?
あとショーンって面白い人(!)も一緒に今、空港に来てるんだって。驚いちゃった!遊びに来るとは言ってたけど…こんな急に来るなんて…」
と、そう言いながらも嬉しそうな顔で微笑んでいる。
私は、ああ、さっきが仲良くなったと話してたイライジャ?!…と思い出した。
そして彼の映画は見ていたので、ちょっと驚く。
「タクシー乗り場行った?じゃ、そこで運転手と代わって。俺が道を説明するからさ」
ジョシュは、まだ電話で話している。
「あ、もしもし。えっとその二人をですね、セントポールのピーターストリートまで乗せてやって下さい。ええ。
道分かりますか?はい、そうです。あ、えっと"SAKURA"って店なんですけど…あ、知ってますか?
じゃあ、そこまでお願いします。ええ…。―あ、リジー?運転手さん、今俺たちがいる店知ってるって言うからさ、
店の前まで乗せてくれると思うから…。ああ、"SAKURA"って日本食の店だから。ああ、分かった。待ってるよ…じゃ」
ジョシュは電話を切ると、思い切り息を吐き出した。
「はぁぁぁ…!ビックリした!」
「ね?ジョシュ、リジーなんだって?ショーンと二人で来たの?」 とは待ちきれなかったと言わんばかりに聞いている。
「…ああ…。それがさ、夕べ、リジーから電話があって話してたらさ、撮影終った後はロスに戻って来たから今、ショーンと遊んでるって言ってて。
俺も、つい今は両親がいないから、と二人で遊びに出かけようかな…って言っちゃったんだ。
そしたら、じゃ明日にでもショーンとミネアポリスに行こうかな!なんて言い出すし冗談かと思ってさ。
好きにしろよって答えたんだけど…。まさか本当に来るとは思わなかったよ…」
と苦笑しながら、に説明した。
それを聞いて、も嬉しそうに、
「ほんと?!じゃ、今から本当に来るのね?わぁー嬉しい!ペンシルバニアで別れたきりだもの!」
と興奮した様子でアリーにも、「ほんとに、いい人達だし一緒にいると楽しいのよ」 と微笑む。
「そう!大勢だと食事も楽しいし、私もご一緒できるなんて嬉しいわ」 と私も笑顔で答えた。
ジョシュだけは、「うわぁー、あいつら、どこに寝かせる?俺、一緒に寝たくないよ…ショーンうるさそうだしなあ…」と苦笑していた。
その後、料理を注文し、軽くお酒を飲みながら、から撮影時の話や、イライジャ達の話を聞いていた。
「それでね、またショーンが落ち込んじゃって大変だったのよ?」 とは本当に楽しそうに話している。
「ああ、あの落ち込みようはなぁ…。二度と恋はしないとか抜かしてたけど、どうせ、またすぐ新しい彼女のノロケ話とか聞かされそうだよ」
と、ジョシュも笑いながら、日本酒をロックで飲んでいた。
そこに、「いらっしゃいませ!」 との声が響き、彼らが来たのかとアリーもふり返り入り口の方へと視線をやると…
「うわ…!…ルイスだよ、ほら…!」
「え?!ああ・…やだ・…。何で、こんな時に…」 とも顔をしかめた。
ルイスは両親と弟の4人で店内へと入って来て、アリー達のテーブルとは反対側の壁際の奥に案内されている。
「良かった…あそこからなら…何とかバレないんじゃない?」
私は小声でに、そう言うと、「でも…彼女、凄く目ざといわよ?」 と不安げな顔だ。
ジョシュは、「ああ…この前の子?」 と少し苦笑いしている。
「今からリジー達が来るのに…どうしよう・・・?見つかったら大騒ぎされて周りの人達にも気づかれちゃうわ…」
は心配そうに、ジョシュを見上げて言った。
「そんな気にすることないよ…。リジー達が来るまで動けないし…」
とジョシュは優しくの頭を撫でている。
そこに、また「いらっしゃいませ!」 との声が響き、3人で入り口の方へを目をやると、男の人二人が入って来てキョロキョロしている。
一人は黒のレザーハットを目深にかぶり、色の薄いサングラスをしていて、
もう一人もサングラスこそはしてないが黒のキャップに皮ジャンというスタイル。
何だか怪しい二人だわ…と思った瞬間。
「リジー、ショーン!こっちよ!」
とが席を立って、その怪しげな二人に手を振っている。
「…!」
とサングラスをかけた男の子も嬉しそうに手を振りながら、もう一人の男の子を促し、こちらのテーブルへと歩いて来た。
「久し振り!」
「元気だったか?」
と、ジョシュも立ち上がって、彼らとハグしあっている。
そして、「お前ら、驚かすなよな、まったく!」 とジョシュはキャップの男の子の頭を軽くこづいた。
「おいおい、相変わらずだな?ジョシュは…」
「お前がだろ?まったくさ…いきなり、"今、空港着いたから迎えに来てよ"って言われたら誰だって驚くよ」
ジョシュはまた座りながら彼らへ言った。
「そして、あ、座れよ。まだ夕飯食べて無いんだろ?」 と言って、
「あ、ショーンはの隣には来るなよ?隣のテーブルでいいし」
と言って笑っている。
「うわ!ひでぇ!わざわざ来てやった友人に対して!…やっぱり相変わらずデビルマンだよ!な?」
「はあ?来てやった?誰が"来てくれ"って頼んだよ?お前も相変わらず、バカの王様だよな?」
「アハハ。懐かしいノリ!ほんと久し振りね?元気そうだわ、二人とも」
は自分の隣に座ったイライジャと、アリーの隣へと座ったショーンに笑顔で言った。
「あ、私の高校の時の友だちで、アリー。 アリー、彼がショーンで、彼がイライジャよ?」
「どうも、アリー!宜しくね!」
とショーンが手を出してきたので、アリーも笑顔で、「宜しく…」 と握手した。
ついで、「初めまして、アリー。イライジャだよ」 とイライジャもアリーと握手をした。
「どうも…初めまして…」
私は、映画で見ていたイライジャ・ウッドが今、目の前にいるというだけでも信じられなくて固まってしまった。
(何だか俳優さんに囲まれてるなんて…変な気分だわ…!)
アリーは緊張を解そうと、自分のワインをぐいっと飲んで息をついた。
「ほんと、昨日、あれだけ行くよって言ったのにさぁ。信じてないとはねぇ…」
とイライジャが苦笑しながら呟いている。
「あ、ねぇ?ロ−ラ達は?撮影後に会った?」 とがイライジャへ聞いている。
「ああ、それがさ、女性陣は戻ったら暫く恋人と二人で旅行だとか何とか言ってたしさ、会ってないんだ。
だから恋人のいない可愛そうな僕と、"振られたばかり"で悲惨なショーン二人寂しく遊んでたってわけ」
と苦笑しながらイライジャは肩をすくめている。
「おい、リジー!振られたばかりってのは余計だろ?俺の傷をえぐるなよな…」 とショーンは口を尖らせて呟く。
「アハハ、本当のことじゃん! ―そっか、寂しい二人が遊びに来てくれたんだしまあ、歓迎してやるか?」
ジョシュは笑いながら、の頭を撫でると、も笑顔で、「そうね!大歓迎しちゃうわ!」 と二人に言った。
「ああ、は相変わらず天使のようだな…!兄気は悪魔だけど」
「うるさいぞ、バカキング! あ、アリー、そいつにあまり近付かない方がいいよ?バカがうつるから」
と、ジョシュが優しい笑顔で声をかけてきたので、アリーはドキっとしつつ、ちょっと笑ってしまった。
「うわ!これだよ…。アリー、悪魔のいうことに耳を貸したらダメだよ?自分の目を信じるんだ」
とショーンは真剣な顔で、アリーに訴えている。
「あ、悪魔ですか?」 とアリーは目を丸くした。
「そう!ジョシュは、優しく見えるけど、あれは外見だけ…いや、"にだけ"の優しさだからね?他の奴には恐ろしいほど…うゎぷ!」
話の途中で、ショーンの顔におしぼりがストライクでぶつかり、そのまま落ちた。
「いた!何するんだよ?ジョシュ〜…」
「お前が変な嘘を吹き込んでるからだろ?誰が悪魔だ、まったく…。ごめんね?アリー、いっつもこうなんだよ」
と、ジョシュは笑いながら言った。
「い、いえ…凄く楽しいです」 と私は微笑むと、「ほんと楽しい人達ね?」 とへ言った。
「そうでしょ?撮影現場は、いっつも、こんな感じだったのよ」 と微笑んだ。
その後は皆も料理を注文して、お酒を飲みながら撮影の時の話で盛り上がった。
「それがさぁ〜クランクアップして、気づけばジョシュがいないから、皆でビックリしたよ!
監督に聞いたら一足先に帰ったって言うし、またビックリ!その後に、ああ、の卒業式に行ったんだって気づいたけどね」
と、イライジャが笑った。
「そうそう!皆で打ち上げしたかったのにさぁ〜。何だか悪魔…じゃなくてジョシュがいなくて、いまいち盛り下がったよなぁ?」
と、ショーンがジョシュに睨まれつつも苦笑しながらビールを飲んだ。
「私も驚いたわ!だってきっと間に合わないって口ぶりだったのに来てくれたから…」
とも嬉しそうにジョシュを見ながら微笑んだ。
「間に合いそうだったけど…万が一ってことがあるからな。期待させて、当日に行けないってなったら、にも悪いと思ってさ」
ジョシュは優しくに微笑むと、「…そろそろ行く?レンタルビデオ店に行くんだろ?」とへ聞いている。
「あ、そうね!もうお腹いっぱいだし…」
「え?何?ビデオ借りるの?」 とイライジャが聞いた。
「そうなの。今夜はジョシュとアリーでカウチポテトしようって言ってたのよ?」
「そうなんだ!楽しそうだね!」
「だから、早く借りに行こ?面白い映画、借りられちゃうわ」
が早くもイスから立って、ジョシュの腕を引っ張ると、ジョシュも苦笑しながら立ち上がり、
「はいはい。じゃ、そろそろ行こうか?」 と皆に声をかけた。そして、「は何が見たい?」 との頬にキスをして聞いている。
アリーは、それを見てドキっとした。
(な、何だか恋人同士みたい…)
「あーあー!相変わらずラブラブなんですね!」と、ショーンも席から立つと笑って言った。
「当たり前だろ?」 とジョシュが澄ましている。
嬉しそうにジョシュの腕を組みながら笑っている、を、見て、アリーは本当に、彼女が羨ましく思った。
こんなに素敵なジョシュと、こんなに楽しくて良い人達に囲まれて可愛がられてるが羨ましい…
私は一人っ子だったから、大勢でこんな風に食事する事もなかっったもの…。
ちょっと感傷に浸っていると、いきなり後ろで騒がしい声が聞こえてきた。
「わ!?!…とお兄様!!」
(げ…ルイスだ…)
私とは一瞬で顔を見合わせて、目で合図しあった。
「キャー!もう一度会いたかったんですー!」 とルイスが、いきなりジョシュの方まで駆け寄って来て言った。
「あ、こんばんわ…」 とジョシュも少し苦笑いしている。
「あの、とお食事ですか?」 と聞いて、他のメンツを見回すといきなり、
「あれ…?え?!も、もしかして…イライジャとショーン?!うっそぉーー!」
と二人にも気づいて途端に大きな声で騒ぎ出し、これにはイライジャとショーンも驚いている。
「あ、あの…今度の映画も楽しみにしてます!来年ですよね?公開!もう撮影終ったんですか?!」
黄色い声で、話し掛けまくるルイスに、アリーはウンザリした。も嫌な顔を隠しもしていない。
「あ、ああ、うん…。もう…撮影は終ったよ…」 とイライジャも優しいので何とか笑顔を作って答えている。
「そうなんですか?!雑誌では、まだ撮影中だって書いてたのに…ここにいるから驚きました!あ、あの!握手して下さい!」
とまた両手を出してイライジャの手をしっかり握っている。
そして、ショーンにも、「握手して下さいぃ!」 と、もう勝手に手を握りぶんぶんと握手をした。
私は溜息をついて、「ルイス…こんなとこでやめなさいよ…」 というと、ルイスは今気づいたかと言うような顔で、
「アリー?何で一緒にいるわけ?」 と少し責めるような口調で言ってきた。
「私は…今日はの家に泊まりに…」
「ええ?!何で?ずるいわ!皆で一緒に食事してるし…!」 と急にスネた顔で文句を言っている。
私は呆れて、もう何も言う気がしなくなった。
「ジョシュ…行こう?」 とも少し怒った顔でジョシュの腕を組んだまま入り口の方へと歩来出す。
「あ、ちょっと待ってよ、…!」とルイスは声をかけるもはそのままスタスタと歩いて行く。
ジョシュは、「いいのか…?」 と心配そうな顔で、の顔を覗き込んでいるが、は、「いいの…!もう卒業したし関係ないから」 と一言呟いた。
大騒ぎしたルイスを取り残し、皆で外へ出ると、まだ雨が降り続いていた。
ジョシュとは二人で相合傘をしながら仲良く腕を組んで歩いている。
私は、その後姿を見ながらついていった。
すると、隣にショーンが並んで、「あの二人、ほんと仲いいよね?」 と声をかけてきた。
「え?え、ええ…ほんとに」
「アリーは…とクラスメートだったの?」
「あ、はい。そうです」
「そっかぁ。、学校でもモテただろ?」
「ああ…そう言えば何人かに告白されてたわ…その場で断ってたけど…男の子が苦手みたいで…」
「ああ、そうみたいだね。でも、そんなことジョシュに言ったら、その男も命が危なかったかも…悪魔だから!」
と、ショーンは、おどけて笑った。
アリーも思わず吹き出して、
「そ、そんなに怖いんですか?お兄さんは…」
「ああ、もう俺たちには、いつでもデビルマンだったよ!な?リジー?」
後ろを歩いていたイライジャも笑いながら、「ああ、確かにね!以外には怖いんだよ!ま、でもいい兄貴分かな?」 と言った。
アリーは皆に好かれているジョシュは、やっぱり素敵な人なんだ…と思った。
(こうやって好きなこと言い合えるのは、それだけ分かり合ってるってことよね…)
アリーは楽しそうに話すイライジャとショーンを見ると、来年公開と言ってた映画を早く見たいと思った。
途中タクシーを捕まえて、グランドアベニューの一角にある大きなビデオ店"MR.・MOVI"まで来ると、
とジョシュは慣れた感じで店内まで入り、カウンターのところで何やら店員と仲良く話し始めた。
「おお!ジョシュじゃないか!」
「お久しぶりです、店長」
「すっかりACTORっぽくなりやがって!見たぞ?今月号の映画雑誌!かなり出まくってたな?」
「ああ…そんな見ないで下さいよ…」
とジョシュも恥ずかしいのか頭をかいている。
アリーは、「あの…知り合いのお店なの?」 とジョシュの隣でニコニコしていたへと聞いてみた。
「ええ、ジョシュは高校の時、ここでアルバイトをしてたの。だから今でもビデオを借りる時はここに来るのよ?
暫く忙しくて来れなかったんだけど…。私もよくここに遊びに来てたの」
と、は教えてくれると、
「店長さん、何か面白い映画入ってきてますか?」
とカウンターの中にいる渋めの男性に聞いている。
「ああ、ちゃんも久し振りだね! えっと面白そうな映画か・…ちゃんもジョシュもホラーは苦手なんだよね?」
「僕は大丈夫ですよ?はダメだけど」
「あ!嘘つき!ジョシュだってホラー苦手じゃないの」
「いや?見るよ?あ…そうだ…!今度の"パラサイト"の脚本書いたケビン・ウィリアムソンの映画見たいと思ってたんだよ。今日、借りようかなぁ〜」
と意味ありげに微笑み、を見た。
「え?"パラサイト"の脚本を書いた人の映画?私も見たい!」 とは無邪気にジョシュの服を掴んで言った。
するとジョシュはニヤリとして、「そう?見たい?じゃ、それ借りようっと!店長、"スクリーム"全部貸して下さいよ」 と言うと、
店長も苦笑しながら、「はいはい。…いいのかなぁ…」 と言いながら奥へと入って行った。
は、"スクリーム"と聞いて顔が青ざめた。
「え…ジョシュ…。 もしかして…"スクリーム"ってホラーじゃないの?
あの…"Hello, Sydney 〜?Do you want to die tonight?" ってセリフ言う奴!」
「ああ、そうだよ?でも、見たいんだろ?」
とジョシュは笑いながら、の頭を撫でている。
そう言われると、もグっと言葉がつまり、
「…う…。み、見れるわよ?別に…今日は皆も一緒だし・・・大丈夫!」 と言い切った。
そんなを見て、ジョシュは愛おしそうに、の頬へとキスをすると、
「の好きな映画も借りておいで?リジー達も、向こうで探してるようだし…」
「うん。じゃ他には気分直しにコメディーでも借りようかな!」
と言って店の奥へと歩いて行った。
アリーは突然、その場にジョシュと二人きりにされて、急に心臓がドキドキしてくるのを感じた。
今のに対する頬へのキスを見て、すでに顔が赤くなっていたのだが、ますます火照ってきてしまう。
(ど、どうしよう…いきなり二人になると緊張しちゃう…私も、と一緒に何か映画探しに行こうかな…)
と思って俯いていると、「アリーは?どんな映画が好きなの?」 とふいにジョシュに声をかけられ驚いて顔をあげた。
「え…あの…そうです…ね。私はホラーも好きですし…コメディーも見ます。ラブストーリーも好きかしら?」
「そうなんだ。ホラーとか平気?は怖がるからあまり見ないんだけど…この前も俺のデビュー作の"ハロウィンH20"を見て泣いちゃったし…」
とジョシュは苦笑している。
「そうなんですか?あ、その映画、もうすぐ公開になる映画ですか?」
「ああ、そうだよ」
「あ、あの…じゃ、公開されたら…見に行きます…。きっと、その頃にはニューヨークですけど…」
「え?ああ…大学、ニューヨークだっけ?も確か同じとこ受けたけど…行きたくないって言ってたな…」
その言葉にアリーはドキっとしたが、が話すまでその事には触れない方がいいと思ってニッコリと微笑んだ。
「そうみたいですね…。一緒だと…楽しかったんですけど」
その時、とイライジャが騒ぎながら歩いてくる。
「もう!リジー、こっちの方が絶対、面白いわよ!」
「ええ?こっちだって!日本のアニメは凄いんだよ!映像奇麗だしさ!」
「映像奇麗なのより、私はこっちの動物ものが見たいもの!K−9、クラスの子が面白いって進めてくれたし」
「僕はこの宮崎駿の映画が見たいの!ほら、これにも黒猫が出て来るよ?可愛いよ?」
「む…リジーってば私より年下のクセに、私を子ども扱いしてない?私はもうすぐ大学―」
と言いかけて、は言葉を切った。
ジョシュはの異変に気づかず、苦笑しながら、「何、二人で騒いでるんだよ?」 と言っての頭を軽く撫でた。
「あ、ジョシュ…。 だ、だってリジーがアニメの方がいいって言うから…」
「なら、どっちも借りればいいだろ?どうせ今夜見れなくても休みはまだあるんだしさ」
「そうね…」
「そうしようか…」
と、それで二人も納得したのか、顔を見合わせて笑いだした。
アリーも、何だか、おかしくて吹きだした。
イライジャって、もっと大人しい人ってイメージがあったんだけど…かなりヤンチャみたいね…
「あれ?それよりショーンは?さっきから姿が見えないけど・…」
とジョシュが気づき、店内を見渡すも何個もビデオやCDが並べられてる大きな棚があるので全てを見渡す事は出来ない。
すると、ジョシュが何かを思いついたように、スタスタと店内の奥まった方へと歩いて行った。
それにイライジャも続いて歩いて行ったので、アリーとは顔を見合わせると、二人も、コッソリその後について行った。
するとジョシュは店の奥まった場所にある仕切られたスペースへと入って行く。
イライジャもそこに入って行ったのを確認すると、アリーとはそっと、その場所に近付いてみた。
すると中から、「やーっぱり、ここにいたのか?ショーン!」 とジョシュの呆れたような声が聞こえてきた。
そして、「ああ!ジョシュ…!」 という慌てたようなショーンの声と、「ア八ハハ!」 というイライジャの笑い声。
その様子にアリーは首をかしげて、「ね。…ここって…」 と言うと、は顔を真っ赤にして、
「し、知らない!」 と戻ろうとするので、「あ、待ってよ、!」 と呼び止めた。
すると、その声に驚いたのか、中からジョシュが出てきて何故か顔を赤らめている。
「あ!アリー?…もしかして…ついてきてた?」
「え?ええ…でも…今、カウンターの方へ戻って行っちゃって…」
「うわ、ヤバ!」
ジョシュは慌てての後を追って走って行った。
アリーは何だか分からず、その場に立ちすくんでいると中年の男性や若い男性がやたらとそのスペースの中へと入っていく。
そして、その入り口に立っているアリーを訝しげに見る人や、驚いて引き返す人がいたりと、
何だかそこにいてはいけないような気になり、アリーもカウンターの方へと戻ろうとした時、
中からイライジャと、ショーンが出てきて、アリーを見て驚いた。
「うわ!ア、アリー?!な、な、何してるの?ここで?!」
「え?あの…と皆さんの後をついてきただけで…」
「え?!も?!」
と、イライジャとショーンが顔を見合わせて焦っている。
「あの…ここって…何なんですか?」
アリーは素朴な疑問で聞いてみた。
すると二人は顔を赤くして、
「べ、別に何でもないよ…!ちょっと大人の映画ってだけで…な?リジー」
「え?う、うん…僕は未成年だから、ほんとは入っちゃいけないんだけどね!ハハハハ!」
と空笑いしている。
アリーは、その言葉の意味が何となく分かって顔が真っ赤になってしまった。
「あ、あの…私も戻ります…!」
と言ってカウンターまで走って行った。
イライジャとショーンは気まずそうな顔で、
「ショーンのせいだろ?だいたい、こんなの借りたって見れるハズないじゃん!」
「借りるつもりなんてなかったんだよ!ただ、ちょっと新作出たかな?って見に来ただけだって!リジーだってニヤケてたろ?」
「う…うるさいな!未成年を誘惑しないでよ!」
「うわ、都合の悪い時だけ未成年になるなよ!」
と言い合いが始まるも、まあ、どっちもどっちなのである…。
その頃、は顔を真っ赤にして店の店長に凄い剣幕で怒っていた…
「前に、店長が、"覚えておくんだよ?あそこに入った男は皆スケベなんだ"って教えてくれたとこに、ジョシュが入ったのよ!」
「あ、いや…その…」
店長はその剣幕に口をもごもごさせていて、の隣ではおろおろしたジョシュが、
「いや、だから…あれはショーンを連れ戻しに行っただけでさ…」 と弁解していた。
アリーは戻ってみて、そんな状態になっているので驚いたものの、宥めるように声をかけた。
「…そんな怒らなくても…借りたわけじゃないんだし…その…」
「それでもダメなの!だって入った男は…って店長も言ってたもの!そうでしょ?店長!」
「え?!あ、いや…どう…だったかなぁ?なあ?ジョシュ…ハッハハハ…」
店長はさすがにタジタジになり、ジョシュへとふった。
「全く…店長が余計なことを言うから…は何でも素直に聞いちゃうから…」
とジョシュは恨めしそうに店長を睨む。
そこへ気まずそうな顔で戻って来たイライジャとショーンはその現状を見て更に顔が赤くなった。
「…機嫌直して…な?別に俺はショーンを呼びに行っただけなんだからさ…?」
とジョシュは必死にを宥めている。
も店長に怒ってすっきりしたのか(!)
「…もう…それならいいけど…。二度とあそこへは近付いちゃダメだよ?」
と口を尖らせて言った。
ジョシュは、心底ホっとした顔で、「うん…!そうするよ」 と言うとを抱きしめ額にキスをした。
店長はその後ろで、「はぁぁあ…」 と安堵の息を洩らす。
「……ごめんね?」
と、ショーンが謝ると、「あ、スケベとは口を聞かない!」 とプイっとそっぽを向いてしまう。
途端に泣きそうな顔で、「ああ〜!そんな悲しいこと言うなよ〜。俺の天使だろ?〜ごめんってば〜」 と必死に謝り倒している、
その横ではイライジャも頭をかきつつ、苦笑い。
アリーはそれを見ながら少し笑うと、ほんと…皆から可愛がられてるんだな…と改めて思った。
「ねぇねぇ!マクドナルド寄って行こうよ!」
と、ショーンがマクドナルドの前で立ち止まった。
さっきはに謝り倒して、もそんなショーンの情けなさに、ついに吹き出してしまった。
それで許して貰えた途端にショーンは元気を取り戻したのである。
「ええ?さっき、あんなにスシ食べてただろ?まだ食べるの?」
とジョシュは呆れ顔で言うと、ショーンは呆れた顔で、
「何言ってるんだよ、買って帰るの!カウチポテトって言ったらやっぱりハンバーガーだろ?それにジョシュも好きだろ?ジャンクフード」
「まあ…好きだけど…。 ま、いっか!」
と笑いながら店の中へと入っていくショーンの後に続き、ジョシュと手を繋いでいたも一緒に入って行った。
アリーとイライジャも、「夜食でも買おうっか」 と行って店内に入る。
そこで全員がチーズバーガーとポテトを何個か買うと、その足で酒屋へ行き、ワインやらビールを買い込んだ。
もう家は近かったので、そのまま歩いて戻ると、また雨が本降りになってくる。
「うわぁ…凄いね…何だか大粒だわ…」
はそう呟くとジョシュの腕に、シッカリ自分の腕を絡ませ、ピッタリとくっついた。
ジョシュもの肩を抱き寄せ、家の鍵を開けると「どうぞ?勝手に入って」 とショーン達へ声をかける。
アリーは玄関に入ると、ハンカチで濡れたとこを軽く拭いていた。
そこにジョシュがタオルを持ってきてくれる。
「はい、アリー。これで、シッカリ拭いて?」
その優しい笑顔にアリーは顔を赤くしながらも、「ありがとう…」 と言って受け取り、髪も少し濡れたので素早く拭いた。
イライジャとショーンもタオルを借りて、ある程度濡れたとこを拭くと、「お邪魔しまーす」 とリビングへと入って行った。
アリーは皆が使ったタオルを片付けているに、「手伝うわ」 と言って、一緒に洗濯場まで行くと、
ジョシュが来て、「お二人さん!暖かい紅茶を入れたよ?早くおいで」 と呼びに来た。
またリビングへと戻ると、お酒を出して、すでに寛いでいるショーンとイライジャが、
「ビデオ、何から見る〜?」 と目の前に借りてきたビデオを並べて悩んでいる様子。
は一瞬いなくなったかと思うと、どこかの部屋から、沢山のクッション持ってきて、
床へと並べると、「私とジョシュは、いつも、ここに寝転がって見るのよ?」 と笑いながら言った。
最後まで悩んでたイライジャとショーンは、まだ決まらないのか、「う〜ん…」と唸っていた。
その時、イライジャがある提案をした。
「じゃあ、ジャンケンで決めようよ。何から見るか」
「よぉーし!負けないぞ!絶対、リーサル・ウエポン4、見るぞ〜!」
とショーンは大好きなアクションものを借りたので張り切って何故かジャンケンには全く関係のないシャドウボクシングをしている。
ジョシュは、「何を先から見たっていいよ…」 と呆れつつ、仕方なく歩いてくると皆で一斉にジャンケンをした。
「ジャーンケン…ポン!」
「うぁ!」
「あ〜あ〜…」
「ああ…何だよ…一発でジョシュの勝ちかよ…」
とぼやきが出る。
ジョシュは得意げに、「実は俺、ジャンケンが得意なんだ」 と笑った。
アリーは特に何も借りなかったので参加はせず、その光景を見て笑っていた。
「ジョシュは?何借りたの?」
イライジャが聞くと、
「ああ、"スクリーム"だよ。ケビン・ウィリアムソンの…前に会った時、是非見ますって言っちゃってさ。まだ見れてなかったから」
「あ、そっか!俺もだよ」
「僕も…何だか一人じゃ見れなくって」 とイライジャも苦笑いしながら言った。
「こんだけ大勢で見れば大丈夫だろ?1と2借りてきたから」
「ホラー二本立てか…今夜寝れるかな…」
とショーンが小さく呟いた…。