「もぉーオーリーってば信じられないっ」
彼女はいつものように頬を膨らませて怒っている。
これは彼女のクセで、怒るとだいたいはこんな感じだ。
きっと相当、怒っているに違いない。
だって今日は顔までそっぽを向いて、さっきから僕の方を見てくれはしないんだから。
だけど僕は、そんな彼女が可愛くて仕方がない。
「ごめん。俺が悪かったよ」
「嘘ばっかり」
「ほんと悪いって思ってる」
「それ前も聞いたもん」
彼女はそう言ってますます頬を膨らませる。
それが凄く可愛くて僕は思わず吹き出してしまいそうになり、必死に堪えて静かにベッドの端に腰をかけた。
(ここで笑ってしまえば、きっと彼女は更に怒ってしまうからね)
「? こっち向いて?」
「いや」
「・・・もう、しないからさ」
「嘘。また誰か男友達と会えば私をほったらかして遊びに行くんでしょ?」
むむむ・・・今日は手強いな・・・
はベッドの上で体を丸めて座っている。
当然、僕に背中を向けて。
かけていたであろうタオルケットは彼女が肩からかけていて、寝起きという事が伺える。
いや、彼女が寝てるところを起こしてしまったのは僕なのだけど・・・
まあ、彼女の怒っている理由は・・・
夕べ久し振りにオフを取って彼女とデートを楽しんでいた。
一緒に映画を見て、その後にレストランで食事。
その後は二人で家に戻って仲良くベッドに入るはずだった。
だけどレストランで思いがけず、あの僕を有名にしてくれた作品で共演したショーン・ビーンに会ってしまった。
彼とも凄く久し振りの再会で、少しアルコールも入っていた僕は嬉しくて、いつもの様に抱き付き挨拶を交わしたんだ。
そこで少しの間、一緒に飲んでいたんだけど、ついつい盛り上がってしまって、
これから一緒にバーにでも行かないか?という話になった。
もちろんも一緒に、と思ったんだけど、彼女はその時点で機嫌が悪く、一人で帰ると言って帰ってしまった。
そこで追いかければ良かったんだけど僕もショーンと久々に飲みたいという衝動を抑えられず、
気を使うショーンを半ば無理やりバーに連れて行き、結局、朝まで飲む事になった。
で・・・先ほどコッソリ帰ってきたんだけど・・・時間は朝の6時過ぎ。
当然も寝ていたんだけど、僕の気配で起きてしまったようだ。
そして朝帰りがバレたっていうわけ。
まあ浮気をして朝帰りじゃないんだから、と僕も呑気に、「ただいま」なーんて笑顔で言ったら・・・
はさっきのようにプンプンと怒り出したってわけだ。
彼女が怒る理由も分かるんだよ?
久し振りにロケから帰ってきて、やっと二人の時間をもてたのに、
僕は彼女をほったらかしてショーンと飲み明かしたあげく朝帰りしたんだから。
全く男って困ったもんだ、と自分でも思う。
彼女と恋に落ちた時、絶対に泣かさないって決めたはずなのにさ。
は子供のようにくるくると、よく表情の変わる子で僕はそんな彼女を見ているのが、とても好きだった。
当分、恋人なんて・・・と思っていた僕の心にすんなりと入って来て、
それが当たり前だったかのように僕は彼女に一瞬で恋をしたんだ。
きっと気づけなかった 君と初めて出会うその瞬間までは一人で生きていけると思って歩いてたんだ
じっと抱え込んでた どんな迷いも どんな心残りも あどけない微笑みが全部吹き飛ばしてくれた
の笑顔が見たくて僕は後ろからそっと彼女を抱きしめた。
すでに腕に馴染んだ細い体がかすかに震えて困ったような、でも少し怒った顔のまま彼女は振り向いた。
うーん・・・この顔は・・・もう一押しで許してくれそうな感じかな?
早くキスしたいんだけどな。
不謹慎にも、そんな事を考えながら抱きしめる腕を強める。
じわじわと彼女の体温を感じてくると、このまま押し倒してしまおうかとすら思ってしまった。
ダメ、ダメ。
ここはちゃんとお許しを貰わないと。
「オーリーのバカ・・・」
「うん・・・そうだね」
少し怒りの表情が納まったけど、彼女は口を尖らせつつも、僕を睨んでくる。
でも、それすら僕にとっては愛しくて、ちょっとだけ笑顔になった。
「反省してない・・・」
「してるよ」
「だって笑ってるじゃない・・・」
「それはが可愛いから」
「・・・・・・わ、私は怒ってるの!」
「うん。でも怒ってるも可愛いよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言うと膨らませてた頬が薄っすらと赤く染まった。
ほら、ね。だから君が愛しくて・・・・可愛くて仕方がないんだ。
出逢った時から、ずっと・・・そう思ってる。
「・・・・・・ほんとに・・・もうしない?」
「うん。もうしない」
「デート中に誰と会っても・・・?」
「うん」
「・・・・・・例えば・・・ヴィゴに会っても?」
「・・・う・・・」
「ほら!困った顔した!」
あらら・・・せっかく怒りが収まってきた思ったのに。
は僕の腕を振り払うようにしてタオルケットを被ったままベッドに横になってしまった。
このままだとお許しのキスは、まだ先になりそうだ。
こうなれば実力行使で行くしかないかな?
そう決めて僕はタオルケットをとって、すぐに彼女の上に覆い被さると驚いたような瞳と目が合う。
「な、何よ?」
「んーにキスしたいから」
「ダ、ダメ!」
「何で?」
「何でって・・・・・・」
「俺は・・・いつでもを想ってるよ?」
「・・・・・・え?」
「どこにいても誰といてものことだけは、いつもここで想ってる」
そう言って彼女の手を取り自分の胸へと当てるとは驚いたように顔を上げて僕を見上げた。
「出会ってからずっと・・・俺がに溺れきってるのが分からない?」
「・・・オーリィ・・・・・・・」
これだけの偶然の中で たった一つ 二人の中に生まれたものは 奇跡なんかじゃないから
「今日も明日もあさっても どれだけの時が経っても・・・これだけは変らないんだ。 僕は君だけ見つめてる」
すでに涙を溜めてるの瞳を見つめながら僕はそう言ってゆっくり彼女の唇を塞いだ。
その柔らかい感触に胸の奥も体も一気に熱くなる。
例えば、またこうしてケンカをしたとしても・・・・・・変わらないものがあるんだ。
それは僕の心の奥にある、君が思ってるよりもずっと強い想い。
これからも、間違いをくり返すかもしれないけど、その時はまた伝えたい言葉をぶつけあったらいい。
「・・・・・・これからもを・・・・・・誰よりも強く愛してる・・・・」
「オーリィのバカ・・・・・・」
「うん」
少し照れたように睨んでくる彼女に僕は思わず笑顔になった。
確かに僕は大切な君を怒らせて泣かせてしまうけど・・・・・・これからも、ずっと傍にいるよ。
だって・・・・こんなにも君が愛しい――
ずっとずっと君の傍で 誰より近いこの場所で
何より強い気持ちで僕は君を守りつづける
きっと分かってたんだ 君に初めて出会ったその瞬間には
探しつづけてたんだ 僕は君を探してた
僕は君を探してた
She Side>>
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