Catch me if you can.......A real love ?... or... fake love...











この夜が なにかを変えてゆく


たとえひとつに なれなくても


ふたりだけを 守るよ


失うものなど なにもないとは


言えないよ  あなたを愛してしまった



言葉で繕うことはできない



奪い尽くしたい この想い いつか・・・













ACT.13...告白                                 








その日の朝、の携帯が、いきなり鳴り出した。
は俺の方をチラっと見て慌ててテラスの方へと出て行く。


(ああ、きっと、あの男からなんだ…)


俺はそう気づき、心の奥底でどす黒い感情が湧きあがってくるのを感じていた―







「うん…元気にしてるよ?」
『そう、良かった。なかなか電話出来なくてごめんな?いつも夜中まで教授と一緒で起こすのも悪いと思ってさ。
だから今日は早起きして電話したんだ』
「そんな…無理しないで?疲れてるんでしょ?」
『暫く会えないんだし無理くらいさせてよ。それに俺もの声が聞きたかったしさ?』
「ダニー…」


そう言われて私は言葉に詰まった。


(胸が痛い…嘘をつくのが辛い…)


『…?どうしたの?眠かった?』
「あ…ううん。大丈夫…」


私はそう言うと部屋の方をチラっと見た。
レオはソファーに座り、今日のシーンの台本を読んでいる様子。
多分、この電話がダニーからだという事は気づいているんだろう。
それでも何も言わないレオに、私は少しだけ不安になった。


(勝手な事だって分かってるけど…レオの気持ちが分からない)





「あ、あのダニー…。友達が起きてきたの…だから…」
『ああ、そろそろ俺も用意しないと…朝一番で講義があってさ?俺も発言する事になってるんだ』
「そうなの…。頑張ってね?」
『ああ、サンキュ。じゃ、もあまりハメ外すなよ?』
「う、うん…。 ―あ、ダニー!」
『え?何?』
「あ、あの…いつ…戻るの?」
『あっと…再来週の真ん中辺りかな?どうして?は来週末だろ?』
「うん…」
『戻ったら、すぐ新居探ししような?もう時間ないしさ?』
「あ、あの…」
『あ、ヤバイ…部屋の電話が鳴ってるからそろそろ切るね?多分、のパパだよ。 ―また電話する!』


ダニーは笑いながらそう言うと携帯を切った。
ツーツーっという音が聞こえて来て、私はすぐに終了ボタンを押すと軽く溜息をつく。
テラスの白いテーブルに携帯を置くとアトランタの街並みを眺めた。


「はぁ…」


"帰ったら話があるの…"


さっき、そう言おうとした。
そう言えば…ダニーも気づくだろうか…
私が別れ話をしようとしてるという事を。


そんな事を考えてると急に後ろから抱きしめられた。


「わ…っ」
「何、考えてるの?」


レオは私の肩越しから顔を出し、ちょっと笑いながら頬にキスをする。


「な、何でもない…。レオ…用意しなくていいの?」
「ん…。今日はスタジオだからね?そんな早く出なくてもいいんだ」
「そう…。あ…じゃ、食事にする?」
「う~ん…にする」
「な、何言ってるのよ…っ」


レオの言葉に私は顔が熱くなり少しだけ後ろに顔を向けた。
するとレオに唇を塞がれ驚いて顔を離そうとするとお腹に回っていたレオの手が私の頬を押さえる。


「ん…っ」


すぐにその温もりは離れたが最後に軽く唇を舐められ、顔が赤くなるのが分りすぐに俯いてしまった。
レオはちょっと笑うと、「まだ慣れない?」と聞いてきてドキっとする。


「な、慣れるって…そ、そういう事じゃ…」
「うそ、うそ。そういうが好きなんだ、俺」


レオはそう言うと私の頬にチュっとキスをして、「じゃ、ルームサービスでいい?」 と部屋の中に戻って行った。
私は、「うん」 と返事をして少し息を吐き出すと、もう一度朝のアトランタの街を眺める。


レオ…やっぱり何も言ってくれない…
どうしてダニーと別れろって言ってくれないのかな…?
このままの関係の方がいいの?
いくら愛を囁かれても…優しくされても…
その事を思うと何故か不安でいっぱいになる。
私から言えば…
そう思ったりもするけど困った顔をされたら…と思うと怖くて言い出せない…


ねぇ…私は…どうしたらいい?




私はその事で頭がいっぱいで…レオの心の変化に気づいていなかった――















ぶほ…っ
「汚い…っ」


俺はコーヒーを吹いたジョーに顔をしかめた。


「あのさぁ…ジョーまでそれやめてくれる?トムと同類だな…?驚くと口から飲み物吹くの…。かかりそうで怖いんだけど…?」


俺が横目でそう言うと、ジョーは慌てて濡れた顔をハンカチで拭きながら、「お、お前が突然、変なこと言うからだろう?!」と目を吊り上げた。


「何だよ?変な事って。俺は至って真面目だけど?」
「な…だ、だからってなあ!…婚約者から彼女を奪うって…。まだ別れてなかったとは…っ。マ、マズイ…非常にマズイ!」


ジョーは一人オタオタとしながらその場を歩き回った。


「あ?何でマズイの?ジョーだってのこと気に入ってただろ?」
「バカ!それとこれとはまた別問題だ!」
「何がだよ?」
「だ、だからだな…っ。お前とそうなる前に別れてたのならまだしも…。これから婚約解消だと?!
そんなマスコミが飛びつきそうなネタじゃないかっ!ああ…目に見えるようだ…!
ゴシップ記事の一面に


"レオナルド・ディカプリオ(27)婚約者のいる女性を略奪愛!相手は一般人の美人看護婦(22)!"


う~わ…こりゃ売れそうだな~…っ」


慌てている割にはアホな事を言っているジョーに俺は苦笑した。


「別にいいだろ?そんな記事なんて気にしない。も俺が守る。マスコミからね?」


「そ、そう簡単に決めるな!イメージというものがあるだろ?!お前、一般人の、しかも婚約までしてる女性に手を出したなんて、
世間の人から見ればお前が悪者になるんだっ。それに、もし訴えられたらどうする気だ?相手の男から!」
「ああ、受けてたつよ?人の気持ちが変わるのは仕方ない事だろ?」
「そうかもしれないが…。彼女もそう言ってるのか?婚約解消してお前と付き合って行くって…」


そう聞かれて俺は言葉に詰まった。


「…それは…まだ聞いてないけど…」
「な、何だって?!まだ彼女の気持ちも聞いてないのに何を勝手に決めてるんだっ」
「やっぱりをあいつの元へ返すのは嫌なんだって心の底から思ったんだよっ」
「だ、だからって…。それにお前…彼女の結婚をダメにして…どうするんだ?お前は彼女とこのまま付き合って行くだけか?
彼女にだって未来はあるんだ。お前の勝手な嫉妬で婚約を破棄させて、お前は今のままなんて…
もし何かあってお前達が別れた時、彼女は後悔するかもしれないんだぞ?
あの時、結婚していれば…ってな?それとも、お前は責任をとってやることが出来るのか?」


いつにも増してポンポンと言ってくるジョーに俺は閉口した。


「あのさぁ…そうポンポンと早口で言わないでくれる?それに俺だってちゃんと考えてるよ…」
「な、何をだ?まさか…彼女と、け、結婚するとか言い出すんじゃ…」
「あれ?よく分ったね?」


俺が済ました顔で答えると、ジョーは、驚いてますます目を剥いている。


「け、結婚って…!気は確かか?!一時の気の迷いじゃないのか?!」
「失礼だな…。俺だってそれくらい考えて決めたんだよ!さえOKしてくれるなら俺は彼女と結婚したい。いいだろ?」
「い、いいだろって、お前…。結婚なんてそう簡単にいかないぞ?彼女の親にだって反対されるだろうし…」
「分ってる。説得するよ。両親だってが幸せになるのが一番の願いだろ?ちゃんと分ってくれるって!」
「でもなぁ…。彼女がもうその婚約者を好きじゃなくなったって聞いたわけじゃないんだろ?大丈夫か?」
「それは…ちゃんとこれから聞くよ…」
「あ、あと…!だったら彼女が婚約解消するまでは絶対マスコミにはバレるような事はやめろよ?」
「え?」
「考えてもみろ!相手の男だってまだ何も聞かされてないのに先にゴシップ記事でお前と自分の恋人のことが載ってみろ。
ショックが更に大きくなるし、騒ぎが大きくなりかねない!」
「ああ…それはそうだね…。OK…分った」


そう言いながら俺は少し胸が苦しくなった。


「はぁ~あ…最近、ちょっと情緒不安定かも…」 
「お前なぁ…。仕事に影響するのはやめてくれよ?」
「分ってますよ!」


俺は少しヤケクソ気味に言ってソファーから立ち上がった。


「そう言えば…ちゃん、どこまで買い物に行ったんだ?」
「え?あ、ここの目の前の本屋だよ。時間潰すのに何か雑誌買いたいからって…。ったくさ~、一緒に行こうと思ったのに…」
「それはダメだっ。すぐ撮影始まるんだからな?」
「はい、はい!分ってるよ。だから、こうして残ってるんだろ?」


俺は苦笑しながらコーヒーをカップに注ぐとまたソファーに座った。
ふと今朝の電話の事を思いだす。
の気まずそうな顔を見ると俺は何だか凄く悲しくなってしまう。
あいつと別れる気があるのかどうか…今まで怖くて聞けなかったけどそろそろ俺も限界だ。
選ぶのはだけど…その前に気持ちを聞いてみたいと強く思った。


もし…あいつと別れると言ってくれたら…俺はどんな事でも頑張れる気がする。
マスコミから叩かれようが、あいつから訴えられようが…そんなもの大した事じゃない。
さえ…傍にいてくれれば…


「おい、レオ。そろそろスタジオに移動しろよ?」


いきなりジョーに声をかけられ俺は我に返った。


「ああ…OK。あ…が帰って来たらちゃんと連れてこいよ?あと手を出すな」
「バカなこと言ってないで早く行け!それにお前のハニーに手を出すなんて、そんな恐ろしい真似するわけないだろう?」




苦笑しながらそう言うジョーの肩をポンと叩くと、俺は撮影が行われるスタジオへと歩いて行った―












「やあ、お帰り。面白そうな雑誌はあったかい?」
「あ…マネージャーさん…。はい、何冊か買って来ました」


私は控室に入るとマネージャーのジョーだけしかいないのを見て、「あの…もう撮影に?」 と聞いた。


「ああ、さっきね?スタジオに行ったよ」
「そうですか。あ…じゃあ…私、ここで待ってます」
「え?撮影見に行かないのかい?」
「だって…邪魔だと思うし」
「レオにそんなこと言ったら怒られるよ?」


ジョーは苦笑しながら私にコーヒーを淹れてくれた。


「あ、ありがとうございます」


そう言ってソファーに座ると、ジョーも自分の分のコーヒーをカップに注いで向かいのソファーへと腰をかけた。


「えっと…あのさ?」
「え?」


ジョーが何かを言いたげに私の方をチラチラ見ている。


「何ですか?」
「あ、いや…実は…ちょっと気になったんだけどね? ―君…まだ婚約解消してないんだってね?」
「―――っ?!」


ジョーの言葉に私はドキっとした。
一瞬で胸の鼓動が早くなるのを感じる。


「あ、あの…」
「ああ、いや…君を責めてるわけじゃないんだ…。ただ…レオの事を考えるとね?心配と言うか…」
「はい…」
「もし君が恋人と婚約解消して…レオと一緒になりたいと言うなら…それはそれで応援したいんだが…
そうなるとマスコミが黙っていない。きっとレオの奴が君を婚約者から奪ったと書きたてる。まあ、実際その通りだしね?」
「……っ」
「それに…君の婚約者だって黙ってはいないだろう?最悪、レオを訴えるかもしれない」
「そ、そんなことは…」
「ないと言えるかい?」


ジョーにそう言われて私は言葉に詰まってしまった。


「まあ…人の気持ちと言うものは変わるんだし仕方がない。恋愛なんてものは他人がどうこう言う事でもない。
それは分ってるんだが…レオの仕事は特殊だ。常に人の目に曝されてる…人気商売でもある。
俺はレオを昔から担当してきたから人より思い入れもあるんだ。彼の才能にも惚れてる」
「…はい」
「それを壊したくはないんだ」


ジョーの言葉にズキズキと胸が痛んだ。


「分ります…。私も彼のファンだったから・…」
「そうだってね?なら…レオのイメージが壊されるのは嫌だろう?」
「はい」


そうとしか言えなかった。
私には…何も言い返せない。


「レオは…君に夢中だ。俺が何を言ったって聞きやしない。だが君がもし…レオの事を考えてくれるなら…」


ジョーはそこまで言うと言葉を切った。
私は苦しいのを我慢してその続きを言った。


「私から…レオに別れようって言えばいいんですか?」


私の言葉にジョーは一瞬、黙ったが軽く首を振って息を吐き出すと、


「いや…別れてくれとは言ってない…」
「じゃあ…」
「あ、いや…変な事を聞くけど…君は恋人と婚約解消する気があるのかい?まずはそこからだ」
「…それは…あります」


私が思い切ってそう言うとジョーは少し嬉しそうに微笑んだ。


「そうか…。なら…良かった」
「え?」
「あ、いや…。まあ、で…ここからが本題なんだが…。君が婚約解消して、すぐレオと…となると…さっきも言ったように
マスコミが黙っちゃいない。だから…解消後は暫くレオと会わないで欲しいんだ」
「え…?暫くって・…どのくらいですか?」
「うん、まあ…短くても…半年ってとこかな?」
「半年…」
「そのくらいならレオと君が付き合ってるとバレても君が過去に婚約解消したのがレオのせいだと繋げて考える事はないと思うんだ。
だから…君の口から…レオにそう言ってはもらえないだろうか?きっと俺が言っても聞いてくれないと思うしね?」


私はジョーの言葉を聞いて少しホっとしていた。
"別れてくれ"と言われたら…私はきっと断れなかった…。


「はい…。分かりました」


私は少し深呼吸をしてそう答えた。


「そ、そうか!…ありがとう!」


ジョーはホっとした様子で微笑んだ。
だが私は気になっていた事を思い出し、


「あ、でも…レオは…私が婚約解消するって決めた事を知らないんです…。だから…」
「ああ、その話は…後で二人でするといい。ちゃんと素直に思ってる事を言ってやってくれないか?」
「はぁ…」
「その後に色々と決めたりしたらいいさ」


ジョーはそう言うとソファーから立ち上がって、


「じゃ…俺はスタジオに行くけど…君はどうする?一緒に行くかい?レオには君を連れてきてくれと頼まれてるんだが…」


と言ってきた。
私は軽く首を振ると、「ここにいます…」 とだけ言った。
ジョーもそれ以上何も言わず、「そうか。じゃ…俺は行くよ」と言って控室を静かに出て行った。
私は一人になってホっとした。
今でも胸の奥が苦しくて軽く息を吐き出す。


「暫く会わないで欲しい…か…」


そうだよね…?それしかない気もする。
私が婚約解消したすぐ後にレオとの交際がバレれば…必ず、ジョーの言った通りになる。
いつまでも隠して置けるはずもない。
レオはバレたっていいと言っているし…隠す気はないんだろう…。
だけど…ダニーだってどう出るか私にも分らない。
ジョーの言ったとおり…レオを訴える…とは思いたくはないけど…心配するのは分かる。
そうなれば嫌でもマスコミに私との事がバレるし、もっと凄いスキャンダルになってしまいかねない。
人の婚約者を奪って、あげく相手の男性から訴えられたとなれば…かなり叩かれるだろうし…


「ただ…人を好きになるだけでも…こんなに大変なことなのね…」


何となくそんな言葉が口から零れた。
好きになった相手も相手だし…しかも自分には婚約者がいて…
私だって、どうしていいのか分からない…。
でも、まずは…レオに自分の正直な今の気持ちを伝える事が先だ。
レオが何て言ってくれるかは分らないけど…私の気持ちに変わりはない。
この思いがあれば…半年くらい我慢してみせる…。


本当は…レオと離れるのが一分一秒でも嫌なのは私の方なのに…
ロスに帰るまでの時間が私とレオが一緒にいれる最後の時間にならないように…


そう祈るだけだった――














?どうして来なかったの?」


控室に戻るなり、レオはそう言って私を抱きしめた。
一緒に戻って来たジョーがチラっと私を見る。


「ご、ごめん…。あの…ちょっと居眠りしちゃって…」
「そう?あ、眠い?」
「ううん、もう平気…」
「そっか…。でも…じゃ、今日はもうホテルに戻る?これからトム達と食事に出かけるんだけど…」
「え?あ…ううん。大丈夫よ?」
「そう?ほんとに?」


レオは少し体を離して私の顔を覗き込んできた。
私は何とか笑顔を見せると、「平気だったら!レオ、心配しすぎだよ?」 と言った。
それにはレオも苦笑する。


「そりゃの事になるとねっ」
「な、何よ、それ…」


私がクスクス笑うとレオは優しく微笑み頬にキスをして、「…のこと、愛してるからさ」と言うと今度は額に唇で触れてくる。
私はドキっとして俯いてしまった。


「す~ぐ俯いちゃうんだから…最後に唇にキスしようと思ったのにな?」
「な、何言ってるのよ…っ」


私は顔が赤くなってコホンと咳払いしているジョーの方を見た。


「おい、レオ…。俺の存在、忘れてないか?」


ジョーは苦笑いしながら言った。
それにはレオも、「ああ、いたんだ?ほんと忘れてた!」と済ました顔で答える。
それにはジョーも肩をすくめると、


「じゃあ俺は先に行くけど、トム達とハメを外しすぎるなよ?それと!外ではそうやってイチャイチャしない事!分ったな?」


と最後にレオの背中をつついた。
レオは顔をしかめると、「うるさいなぁ…。分かりましたよ!俺の理性が持つ事を祈ってて?」 と言った。


「な、何?お前…!それはどういう意味だっ」


レオの言葉にジョーはすぐ反応して顔を真っ赤にしている。
レオはちょっと笑うと、


のあまりの可愛さに理性が飛んだら…外でも何でも構わずキスしちゃうかもしれないからね?」


と肩をすくめる。
その言葉に私は顔が赤くなり、ジョーは目を剥いた。


「お、お、お前という奴は…!少しは自分の立場を考えろ!まだバレる訳にはいかないんだからな…っ」


ジョーのその言葉にレオの表情が一瞬曇った。


「その事は…分かってるよ…っ」
「だったら食事に行っても極力、離れてろ。いいな?」
「ええ?離れてろって…どのくらい?」
「だ、だから…彼女とスタッフを一緒に座らせるとか…色々あるだろ?」
「やだねっ。冗談じゃない」


レオがキッパリそう言うと、またもジョーは顔を赤くして怒り出した。


「やだじゃない!今の時間を大事にしたいなら言う事を聞け。何も別れろとは言ってないだろ?」


私はジョーの言葉にドキっとして顔を上げた。
レオは明らかに不機嫌な顔になり、


「例え、そんなこと言われたって別れないよ。もう…分ったから早く行けよ…」


とジョーの背中を押した。
ジョーは私の方をチラっと見ると溜息をついて、「じゃあ…なるべく大勢で行動しろよ?」 と呟いて控室を出て行った。
レオはドアを閉めると思い切り溜息をついて、「はぁ~ほんと、うるさいハエみたいだろ?」 と私に微笑んだ。
私はぎこちない笑顔で首を振ると、「でも…彼の言う通りよ?気をつけよ?」と言った。
するとレオは少し悲しそうな顔で私を抱きしめ、「は…バレるのが怖い?」 と聞いてくる。
その言葉にドキっとして顔を上げるとレオは真剣な顔で私を見ていた。


「私は…レオと一緒にいたいだけよ?マスコミにバレたら…今のように会えなくなるでしょ?」
「そんなことは…」
「ううん。きっとそうなる。だからマネージャーさんの言う通り、外では少し離れてよ?」


私がそう言うとレオは悲しそうな顔をしたがすぐに笑顔を見せると、「分った」 と頷いてくれた。
そしてそのまま優しく口付けてくれる。


「ん…レオ…?」
「今のうちにキスしておくんだよ。外じゃ出来ないから…」


少し唇を離し、レオはそう言うともう一度優しく唇を塞いだ。
私はレオの唇を受け止めながら今夜…返事は怖いけど婚約解消の事を話そう…と思っていた。


そして…その後には…暫く会えないと言う事も…。


レオは…なんて言うんだろう―


その事だけが少し不安だった…。













皆で集まったのは宿泊先のホテルの72階にあるレストランだった。
円筒の形の建物らしく360度、ガラス張りで夜景が奇麗に見える。
俺達は窓際の席を何席かに分かれて座った。


「ささ、飲んで、飲んで?ちゃん」
「あ、ありがとう御座います」


そんな声が聞こえて俺は心配になり、そっちの方へと視線をやる。
するとメイクのダンがのグラスにワインを注いで上げていた。


(む…ダンの奴…鼻の下伸ばしやがって…っ)


少しイライラしながらそっちを見てると隣のトムが俺の肩をポンと叩いた。


「おい、顔が怖いぞ?レオナルドくん」
「え?ああ…だって…これじゃあ一緒に食事に来てる意味ないし」


俺がそう言うとトムも苦笑しながらシャンパンを呷った。


「仕方ないだろう?マネージャーの言う事も一理ある。今は少し我慢するべきだ」
「まぁね。分ってるんだけどさ…」
「まあな…彼女に婚約者がいなければ…そう過敏にならなくてもいいんだろうけど」
「もちろん。もし、そうだったら俺は堂々とをマスコミに招介でもしてるところだよっ」


俺の言葉にトムが笑った。


「おぉ。男らしいじゃないかっ。まるで昔の俺のようだな!」
「はい、はい! ――あ~あ~ダンとスティーブの奴、にベタベタしやがって…っ」


俺はトムのアホな発言は軽く無視してがダンとスティーブにはさまれ食事をしてるのをハラハラしながら見ていた。


は今、俺やトム、俳優陣のいる席とは別のスタッフが座っている席へ座っていた。
俺は隣じゃなくても同じ席に…と言ったのにはスタッフの方達と一緒でいいと、そっちへ座ってしまったのだ。
俺は仕方なく頷いたものの、まさかの隣にダンと小道具のチーフ、スティーブが座るとは思わなくて心配だった。

どうせならメアリーとか女性スタッフの隣が良かったよ…っ
まあ、俺の前でダンだってスティーブだって変な真似はしないだろうけど…
さっきからチラチラと俺の方を見てるから半分わざとやってるな?ありゃ…。


「これ美味しいよ?ちゃんも食べてみて。はい、あ~ん」
「え…っ?!い、いいです…自分で食べられますから…っ」
「いいから、いいから。食べさせてあげるよ。ほら、口開けて!」
「あ、あの…」


が困ったような顔をしてるのを見て俺はさすがにブチ切れて立ち上がった。


「おい、そこ!何やってるんだよっ」
「何だよ、レオ。目立つから座れよ。あそこの奇麗どころがキャーキャー言ってるぞ?」


ダンが済ました顔で指をさした。
そっちの方を見てみると確かに若い女の子数人が食事をしていて俺が顔を向けると、


「キャーっ。こっち見たわ?!カッコイイ~」


などと声を上げているのが分る。
俺は仕方なく椅子に座るともう一度ダンを見て、


「とにかく…っ。にそう言う無理強いはするなっ。それに肩にも腕を回すな!スティーブっ」


と二人を睨みながら言った。
スティーブは苦笑しながらの肩へ回した腕を避けると、


「はい、はい。ほんと嫉妬深いダーリンだな?ちゃんっ」


と言って、こともあろうかの頬にチュっとキスをした(!)


「キャ…っ」
「おい、スティーブっ!」


これには俺も我慢出来ずに腰を浮かせたものの、トムに腕を掴まれた。


「おい目立つってっ。 ―それとスティーブ!お前もからかうなっ。ちゃんが可愛そうだろう?!レディを困らせるなんて男じゃないぞ!」
「へいへい…っ。俺が悪かったよ」


スティーブはそう言って両手を上げてホールドアップすると頬を押えて怖い顔で睨んでいるに、


「ごめんね?ちゃん」


と言って謝った。
もそれには渋々、「いいえ…」 と言って俯いてしまう。
俺は心配になって声だけかけてみた。


?大丈夫か?嫌なら席を変わってもらえよ」
「ううん。平気だよ?気にしないで?」


はそう言って笑顔を見せる。
俺はそんな彼女を今すぐ抱きしめたくなった。


「おい、スティーブ…ほんとだったら今頃お前はに引っぱたかれてるところだからな?」
「え?!」
「ちょ、ちょっとレオ…っ」


俺の言葉にスティーブは一瞬青ざめ、は頬を赤らめた。


「俺の仕事仲間だと思ってるからきっと我慢してるけど、に気軽に手を出したら平手くらっても文句は言えないからな?」


それにはスティーブは少し怯えたような顔で、の顔を見た。
それにはダンは笑いながら、「そうだったね?そういうお前だって最初は平手くらったんじゃないか」 と言った。


「まぁね、強烈だったからなぁ?あれは…」


俺も苦笑しながらを見るとは真っ赤な顔をしながら、「も、もういいから…」 と言って俯いてしまった。
すると今まで黙って食事をしていた衣装係のメアリーがクスクス笑いながら、


「レオを引っぱたくなんて、やるじゃないの。気に入ったわ?」


などと言いながらのグラスにワインを注いで上げた。


「あ、ありがとうございます」
「そんな男どもと飲まないで私と飲まない?こっちの席へいらっしゃいよ。
あ、ちょっとリンダ、あんたはあっちへ行ってダンとスティーブの相手でもしてあげてよ」
「は~い」


リンダと言われた衣装係でメアリーの部下は言われたとおり席を立ちの方へ移動した。
は代わりにリンダの席、メアリーの隣へと座る。


「おじゃまします…」
「さ、女同士で飲みましょ?」


メアリーはそう言うとチラっとレオの方へ視線をやった。
"これで安心でしょ?"と言うような微笑を見せるとレオも片手をあげて、"サンキュ"と口だけ動かしている。
それを見て、ああ彼女は気を使ってくれたんだな…と思うと嬉しくなった。


ちゃんは…看護婦さんなんですってね?」
「え?あ、そうです。あの…子供病院なんですけど」
「そう!私にも9歳の子供がいるのよ。幸い、うちの子は元気に育ってくれてるけど…」
「そうですか。それは何よりです。子供が病気で寝たきりなんて…見てると本当に胸が痛いですから…」


私はワインを飲みながらちょっと息を突いた。
メアリーは優しく微笑むと、「あなた…きっと子供たちからも好かれてるんでしょうね?」 と言った。

「え?あ、そ、そんな事は…。いつも怖いって言われてますよ?」


私はクスクス笑いながらマークの事を思い出していた。


マーク…元気かなぁ…
病院から電話が来ないってことは…大丈夫って事だろうけど…
こんなに会ってないと…凄く会いたくなる。
一緒にバスケしたいな…


そんな事を思いながら料理を取り分けてくれているメアリーを見た。


彼女も子供がいるんだ…。
そんな風に見えないくらい若々しいけど…年齢は…30代後半か、40代前半かしら。
きっと好きな仕事をしてるからいつまでも若いんだろうなぁ…。
私もそうなりたい。
私もいつか…彼女のように母親になる日が来るんだろうか…。
それでもこうして好きな仕事をして…


前なら…ダニーとの結婚を思い描いて、きっとこんな旦那さんになるだろうなとか、
私はいい妻でいられるだろうかと考えたりもしていた。
でも今はダニーとの未来が思い浮かばない…。
頭に浮かぶのは…レオとの未来だけ。
レオはこんな素敵なスタッフに囲まれて俳優という凄い大きな仕事をしていて…世界的にも有名な人だ。
一緒にいるとつい忘れがちになるけど…こういう場所や撮影現場を見て、つくづく思い知らされた。
自分だってレオのファンだったのに今はその事が少し寂しくも感じてしまう…
はぁ…人間ってほんと勝手よね…


そう思いながら、今夜…レオに私の今の気持ちを素直に話したら…
彼はどう答えてくれるんだろう…と心配になるが、このままじゃいけない…とも思う。
こんな中途半端な関係のままじゃ何も進まない気がして…
レオに…重荷に感じられるのは怖いけど…言うだけ言ってみよう…



ちゃん?どうしたの?酔っちゃった?」


ふいにメアリーに声をかけられ、ドキっとした。
それでも私は笑顔を見せて、「いいえ。何でも…」 と答える。


「そう?じゃ、ほら、飲んで?明日は午後からで遅いから今日はバンバン飲みましょう?」
「はい。ありがとう御座います」


私はグラスを持ってワインを、ぐいっと飲み干した。
それを後ろの席で見てたレオは心配になったのか、「お、おい。メアリー…あまり飲ませるなよ?」と声をかけてくる。
その言葉にメアリーは豪快に笑いながら、


「あらあら。ちゃんが酔いつぶれたらベッドに連れこめないって心配なの?」 


と過激な事を言って私は思わずワインを吹きそうになった。
それでもレオは済ました顔で、「ああ、そうだよ?俺は毎晩、を抱かないと発作が起きちゃうからさ?」と言って笑っている。
私は一気に顔が赤くなって後ろを振り向くと、「レ、レオ…!変なこと言わないでよ…っ」 と文句を言った。
それにもレオは堪える様子もなく、ちょっとイタズラっ子のように微笑むと、


「後で帰ったら、いっぱいしようね?」 


と小声で言った。
私は本当に顔から火が噴出したんじゃないかと思うほどに耳まで赤くなる。
幸いレオの発言は男連中には聞こえず、メアリーだけに聞こえたようでッ彼女は必死に笑いを堪えている。
私はぷしゅ~っと湯気が出るくらいに顔が熱くて俯いたまま、


「もう…知らないっ。レオのバカ!」 と呟いた。


後ろではレオがクスクスと笑っている声が聞こえる。
レオの隣に座っているトムにも聞こえたのか、シャンパンを一気飲みしてるようで他の共演者の人から、


「あ、トム…口から垂れてる!」 


と言われて慌てて拭いてる様子だ。
私の目の前ではダン達が、「レオの奴…何やらかしたんだ?」 と首を傾げていた。




今夜、大事な話をしないといけないのに…っと頬を脹らませているとメアリーが笑いながら私を見た。


「ほんと…愛されてるわね?あなたは…。レオのあんな姿は初めて見たのよ?」 
「え?」
「レオとは何度か仕事した事あるんだけど…こんな風に撮影現場に恋人を連れてきたりした事もなかったし…
ましてや皆の前でノロケたりした事もなかった。それに今日はキスシーンがあったんだけどレオったらなかなか出来なくてね?」
「え?キスシーン?」
「ええ、まあ、そんな凄いのじゃないけど?前ならすんなりOKもらうようなシーンだったの。
でも今日は何だかソワソワしちゃって、どこかぎこちなかったと言うか…
後で聞いたら"以外の子とキスするのが嫌だった"って言うのよ?可愛いと思わない?」
「……っ?!」


メアリーは大笑いしながら私の肩をポンポンっと叩くも私はその話に驚いて唖然としてしまった。
レオは…そんな事を気にすると思わなかった…。
仕事だから…と割り切るだろうと思ってたから…


――でも…


レオが…そんな風に思っててくれてるって事が凄く…嬉しい…と思った。




私は…さっきまでの不安が少し解消されていくのを感じていた――



















「大丈夫か?
「う、うん…大丈夫…」


そう言いながらもフラフラとする私をレオはいきなり抱き上げた。


「ひゃ…っレオ…お、下ろして…っ」
「もうホテルの中なんだし、部屋はすぐそこなんだからいいだろ?廊下には誰もいないよ」


レオは笑いながらそう言って部屋の前まで私を抱えて歩いて行った。
部屋の前に来ると上手くカードキーを出してドアを開ける。


「も、もう、いいよ…?」
「ダーメ!このまま寝室直行だよ?」
「え…っ?!」


レオの言葉に私は慌てて、「あ、あの…シャワー入ってスッキリしたい…っ」と言った。


「えぇ?こんな酔ってたら危ないよ…。なんなら一緒にお風呂入る?凄い広さだし」


レオはニヤニヤしながら私を見る。


私はぶんぶんと首を振ると、「い、いい…っ。一人で入るから…っ」と言って腕から降りようと体を動かした。


「ああ、危ないよ…。全く… ―はいっ」


レオは苦笑しながら私をソファーの上に下ろすと隣に座って抱きしめてきた。


「す~ぐ俺の腕から逃げようとするんだから…。目が離せないよ…」


そう言って私の額に唇を押し付けると、そのまま唇を瞼、頬と這わせて、最後に軽く耳を噛まれた。


「ん…っ」


驚いたと同時に唇を塞がれ、そのまま深く口付けられる。


「んぅー…っ」


私が体を捩るも、レオはギュっと抱きしめてきて離してくれない。
私の頬を両手で包み、愛しむかのように口付けてくる。
そして体の力が抜けそうになった頃、そっと長い口付けを終らせた。
レオは唇を離すと私の額にコツンと自分の額をつけて、「…お風呂…ほんと一人で大丈夫?」と微笑む。
私もちょっと微笑むと、「うん…。大丈夫だよ?」 と言った。
するとレオは私の手を引いてバスルームまで歩いて行く。


「はい、じゃあ…何か困った事があったら呼んでね?すぐ飛んでくから」
「え?だ、大丈夫だもん…」


私は苦笑しながらバスルームへ入り、服を脱ごうとしてふと手を止めた。


「あ、あの…」
「ん?」
「…お風呂入るんだけど…」
「ああ、気にしないで脱いでいいよ?俺、ここで無事に入れるかどうか見届けるからさ?」


レオはニヤっとしながら言うとドアの所に寄りかかって私を見ている。
私は顔が赤くなりバスタオルをレオの顔に向かって放り投げた。


「うゎぷ…っ」
「もう!レオのエッチ!出てって!」


そう怒鳴るとレオは両手を上げて笑いながら、「もう~ジョークだろ?そんな本気で怒るなよ…」 と言いながら出て行った。
私はすぐにドアの鍵をかけると(!)ぶつけた時に落ちたバスタオルを拾ってシャワールームの方にかけておく。


「もうっ。いっつも人をからかって…っ。そういうとこは前と変わらないっ」


私はプリプリしつつ服を脱いでシャワールームに入った。
熱いので少し温く調節して顔に思い切りシャワーを浴びる。
メアリーに、かなり飲まされ少しクラクラした。


はぁ…ほんと皆お酒強いのねぇ…
あれから、まだ飲みに行くって言ってホテルのバーへ行っちゃったくらいだし…
一緒にって誘われたけど、私は断った。
今夜は…酔いつぶれるわけにはいかない…


レオに…自分の気持ちをきちんと話さないといけないからだ。
私は素早く髪と体を洗うと最後に少し冷たい水を浴びて頭をスッキリさせる。
バスタオルで手早く拭くとバスローブを羽織り、少しだけ深呼吸をした。


「ふぅ~…」


緊張してるのが分る。
それでも気を取り直し、リビングへと戻って行った。


「レオ…?出たよ…?」


そう声をかけるもレオの姿が見えず、変わりにテラスへ出る窓が開いていた。
私は歩いて行ってそこからテラスへ出ると、レオはアトランタの夜景を見ながら煙草を吸っていた。
どこか顔が寂しげだった。




「レオ…?」
「わ…っ」


私が声をかけるとレオは驚いて持ってた煙草を落としてしまった。


「あ~…落ちちゃった…?」


笑いながら近づいていくとレオは笑顔で私を抱きしめた。


「まあ、下に落ちるまでに消えてる…かな?風に飛ばされて誰かに当たらない事を祈ろう」


レオはそう言って笑うと私の頬にキスをしてくれた。


「ん…いい匂い…。 ―風呂場で転ばなかった?」
「だ、大丈夫よ…っ」
「アハハ…す~ぐ口を尖らせるんだから…。キスしちゃうよ?」


レオにそう言われて私は慌てて口を手で押えるとレオは苦笑した。


「そんなキスされるの嫌?傷つくなぁ…」
「そ、そういう事じゃ…」
「じゃ、して欲しい?」
「ぅ…っ」


そう言われると恥ずかしい…。
それを分ってるかのようにレオはニヤニヤしている。
私はその顔を見て最初に会った頃のレオを思い出していた。


(そう言えば…いつも私をからかう時、こういう顔をしてた…何だか悔しい…)


そこで私は思いつき、そのレオの顔を思い切り両手に挟んでグイっと引っ張った。
そして初めて私からレオの唇を塞いだ。


「ん…っ」


レオが驚いた顔で目を見開くのを片目を開けて確認すると私はすぐに唇を離してクスっと笑った。


「驚いた?いっつもレオが私をからかうから…んぅ?」


今度は私が唇を塞がれて驚いた。
腰を抱き寄せられ、首の後ろに腕を回されたから動こうにも動けない。
レオはそのまま最初から舌を無理やり入れて私の口内を愛撫するように貪りつづける。


「んぅぅ…っ」


私は苦しくて講義するもののレオはどんどん求めるようにキスを深める。
舌を吸われて私は頭の奥がジーンとしてくるのを感じた。
体の力が抜けてレオの腕に体を預けた時、やっと激しい口付けから解放される。


「ん…っ」


最後に唇を軽く噛まれて驚いた。
レオは顔を離すとちょっとイタズラっ子のような笑顔で私を見て、


からキスされたの初めてだからちょっと欲情しちゃったよ…」 


と言って頬に口付けた。


「も、もぉーっ。…そんなつもりでしたんじゃないものっ」


私はそう言うと部屋の中に戻った。
するとレオは嬉しそうな顔で後ろから歩いてくる。


「何?じゃあ何でしてくれたの?」
「し、知らない…っ」


私は今更ながら恥ずかしくなってそっぽを向いてソファーに座った。
レオは隣に腰をかけて私の肩を抱き寄せると顔を覗き込んでくる。


「何で怒るんだよ?変な…。俺は嬉しかったのに…」


レオはそう言って少し悲しげな顔をした。
私はその顔に弱い。


「あ、あの…別に怒ったってわけじゃ…」
「うん、分ってるよ?も俺が好きだからキスしてくれたんだろ?」
「……っ!」


急にニコニコしながらそう言われて私は顔が赤くなった。


(も、もう…レオったら確信犯ね…っ?そういう顔したら私が困るの知ってて…っ)


そう思うもニコニコと嬉しそうなレオを見てるとちょっと苦笑してしまった。


「何、笑ってるの?」
「何でもない…」


そう言ってレオの胸元に頬を寄せた。
するとレオは私の頭にキスをして、「もう寝る?」 と聞いてきた。
私はそこで思い出し慌てて顔を上げた。


「あ、あの…レオ…?」
「ん?何?寝る前に俺に抱かれたい?」
「……っっ! ―ち、違うわよ…っ!」
「アハハ、ジョークだって! ―で?何?」


優しい顔でそう聞くレオの顔を見て私は少し息をつくと思い切って口を開いた。


「あ、あの…ね?」
「うん」
「わ、私…レオと…ずっと、こうやって一緒にいたいの…」
「……俺もだよ?」


レオは嬉しそうに微笑んで私の頬にキスをするとそう言った。
私はすでに涙が出そうなのをグっと堪えると、「そ、それで…あの…ダニーのことなんだけど…」と切り出した。
それにはレオも少し驚いた顔で私の顔を覗き込む。


「ん…。彼が…何?」
「あの…だから私…」


何て言おうかと言葉を選んでいるとレオが小さく溜息をついて、「やっぱり…結婚するの?あいつと…」と呟いた。


「え…っ?!」


その言葉に驚いて顔を上げるとレオはさっきとは違い、本当に悲しげな瞳で私を見ていた。
その瞳にハっとして私は慌てて首を振った。


「ううん…っ。違うの!あの…私…彼と…婚約を…解消しようと思ってる…の…」


何とかそう言って、もう一度レオの顔をそっと見上げた。
するとレオは口を開けたまま驚いた顔で私を見ている。


「あ、あの…レオ…?も、もし…それが重荷だって言うなら私…。そ、それに別に責任とってか言うつもりもないし、その…」


私はレオに"何で?"と言われるのが怖くて、しどろもどろになりながら説明しようとすると、
急に強い力で抱きしめられて驚いた。


「キャ…っ。レ、レオ…?」


あまりの腕の強さに苦しくて思わず顔を顰める。
それでもレオは力を緩めず抱きしめたまま、


「…ほんと?」


と小さく、震えるような声で問い掛けてきて私はハっとした。


「え…?」


「ほんとに…あいつと…別れるって…?」


またしても小さな声でそう呟くレオの体も気づけばかすかに震えている。
私は驚いて、「あ、あの…レオ…。く、苦しいよ…」と言って軽く体を動かした。


「あ…ごめん…っ」


レオはそこで慌てて体を離すと、私の顔を覗き込むようにして、「ごめんね?大丈夫?」 と言った。
私は軽く頷くと、


「あの…大丈夫…。 ―それと…さっきの話だけど…私は…もうダニーとは結婚できないって思ったから別れるけど…
別にそれでレオに責任とってとか言う気は―」


「何言ってるんだよ…っ」


「――ッ?」


急に大きな声を出されて私はビクっとなった。
それでもレオは真剣な顔で私の頬を両手で掴むと、


「そんなこと言うなよ…。俺は…があいつと別れるって言ってくれるのを…ずっと待ってたんだから…」
「レオ…」


驚く私を見てレオは軽く息をつくと優しく微笑んでくれた。


「嬉しい…。ほんと嬉しいよ…。俺…このまま結婚するとか言われたらどうしようかと思ってたから…」
「ま、まさか…そんな…」
「だって…不安にもなるだろ?は何も言ってくれないし…俺からあいつと別れてくれなんて勝手なこと言えないからさ…」


私はレオの言葉に驚いた。


「そんな…。私だってレオが何も言ってくれないから凄く不安だったもの…っ
レオは…私が婚約者がいたままで付き合ってくのがいいのかなって…そう思ったりして…」


私の言葉に今度はレオが驚いた。


「な…っ。そんな事あるワケないだろ?!惚れた女に婚約者がいたまま付き合っててどこに喜ぶ男がいるんだよっ」
「だ、だってレオはハリウッドスターで周りには奇麗な人が一杯いて…私なんて今まで付き合った人のうちの一人に過ぎなくて…
そんなレオと一緒にいるだけで私は自分に自信がなくなってくのよ…っ
私がダニーと婚約解消したらレオにとっては重荷かなとか…色々と悩んだんだから!」


私は今までの不安な気持ちを一気に言いながら何だか涙が溢れて来た。


「何よ…人の気も知らないで…。私だって…レオに別れてくれって言って欲しかったのに…
他の事は強引なクセに、そういうとこで何で強く言ってくれないのよ…っ」


私は涙が止まらなくなってきてレオの胸を殴ってしまった。
レオは困ったような顔で私を見つめるとちょっと微笑みそのまま優しく抱きしめてくれた。


「俺だって…同じだったよ?何では別れるって言ってくれないんだろうって…ずっと不安だった…。
でも…俺から別れろなんて…どうしても言えなかったんだ。の気持ちを大事にしたかったから…
選ぶのはだって思ってた…。 ―でも…そんなに不安にさせてたなんて…ほんとごめんな?泣かないで…?」


レオの言葉が私の心にスーっと入って来て、今までの不安な気持ちが全て消え去るのを感じていた。


「私…結婚したくない…彼と別れる…。こうして…レオと一緒にいたいの…ずっと一緒にいたいの…それでも…いい…?」


私がそう聞くとレオは少し体を離して涙を唇で掬うと、


「俺の方がそうして欲しいんだよ…。あいつと別れて…俺と…ずっと一緒にいて欲しいから…」


と言って優しくキスをしてくれた。
そのキスは少しだけ私の涙の味がした。
レオは私の体をギュっと強く抱きしめると軽く息を吐き出し、もう一度真剣な顔で私の顔を見た。




…」


「…え?」


「ロスに帰って…があいつと別れたら…俺達…。一緒に住まないか…?」


「え…っ?」




突然のことで私は一瞬、頭が回らなくなった。




「一緒にって…え?」




するとレオはちょっと微笑んで私の頬にキスをした。


そして――





「俺…と結婚したいんだ…」




「―――ッ」






(い、今、レオってば…何て言ったの…?!け、結婚…?!私と…?!)





私は驚きのあまり何も言えないままでいると、レオは悲しそうな顔で私の頬を両手で包んだ。


「俺と結婚するのは嫌…?」


そこで一気に頭が回転しだして、私は慌てて首を振った。


「う、ううん…!い、嫌なんかじゃ…あ、あの驚いちゃって…」
「じゃあ…結婚してくれる?」


いつも以上に優しい顔でそう聞かれて私は胸がドキドキしてきた。


「で、でも…私なんかで…いいの?け、結婚って…だって…」


しどろもどろのまま必死にそう言う私に、レオは一気に怖い顔になった。


「私なんかって…そんな事言うなって…。俺はがいいんだ…。別に責任とろうとか、そういうのじゃないよ?
本気で俺はと結婚したい…。 ――は?」
「わ、私?…私は…」


まだ驚きが残ってるのか、かすかにボーっとしながらも必死に考えた。


(私は…レオとずっと一緒にいたい…)


答えは一つしかなかった。










「わ、私も…レオと…結婚したい…」


何とかそう言うとレオは嬉しそうに微笑んで私に抱きついてきた。


「わ…っ」


「嬉しいよ…っ。 ―絶対、幸せにする…大切にするから…ずっと俺の傍にいて?」


「う、うん…ずっと…傍にいる…」




私はレオの言葉にまた涙が浮かんできた。
胸が一杯で今はレオの事意外、何も考えられない。
するとレオがいきなり私を抱き上げた。


「わ…な、何…?」


私が驚いた顔をするとレオは素早く私の唇にチュっとキスをして、


「何ってプロポーズしてOKもらったんだから二人で愛を確認しあわなきゃね?」 


と言ってウインクした。


「え…え?!な、何言って…っ。ちょ、レオ?!」


私の抗議の声も空しく、レオは私を寝室まで運んでいくとそっとベッドへ押し倒した。
頬を優しく撫でながらジっと熱い瞳で見つめられ、私は顔が赤くなるのを感じる。


「あ、あの…レオ…まだ話が…んぅ…」


その時、レオに唇を塞がれ言葉が途切れてた。
唇で唇を擦するように触れ合わせ何度も口付けを交わしながら、少しづつ啄ばむように深くなっていく。
時折、チュっと水音をたてながら唇を愛撫され軽く舐められる。
そのうち呼吸をするために少しだけ開かれた隙間からレオの舌がそっと入ってきて私の舌に絡まり吸い上げられた。


「ん…レ…オ…。ん…っ」


何とか体を動かしてみてもレオの口付けで次第に力が抜けていく。
そのまま口付けながらレオは私のバスローブの紐を解いていった。
その開いた場所から手が滑り込んで来て腰から胸元までなぞるように撫でられる。
ゾクリと私の体に電気が走り、胸元に軽く刺激を感じた時、私の思考回路は途切れた。
首筋から鎖骨にかけてレオの熱い吐息を感じ、耳元で名前を呼ばれ愛を囁かれると一瞬でレオの愛撫に溺れて行ってしまう。




もう一つ大事な事を言わなければならないと思っていたことさえ、今は考えられない。




この瞬間だけは…幸せな二人のままでいたかった――

















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ACT.14...心と体と…>>


とうとう二人の気持ちがほんとの意味で通じましたv
し、しかもプ、プロポーズ・・・vv
そろそろ・・・かしらねぇー


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


C-MOON...管理人:HANAZO