Catch me if you can.......A real love ?... or... fake love...













僕を遠ざける  君は怖がりなままで




傷ついたって  傷つけたって




終わりにできない  心 引き裂かれたって







君を 君を  泣かしたって…















ACT.20...守ってあげたい…                                 










「さあ、ついたぞ?


ショーンはそう言って車を止めた。
俺はすぐにドアを開けて車を降りるとの手を引き寄せ、そのまま抱き上げる。


「じ、自分で歩けるよ?」
「ダーメ!部屋まで運ぶよ?」


俺が笑いながらそう言うとは照れくさそうにモジモジしている。
きっと両親が一緒だからだろう。
だがショーンは俺とを見ながら、「君もかなり心配性だな?」と笑っている。


「ええ。自分でも、そう思います」


俺は苦笑しながらそう答えての頬にキスをした。


「レ、レオ…あの…」
「何?…ああ、恥ずかしい?」
「だ、だって…お養父さんとお母さんが…」


は真っ赤な顔で呟くと視線を泳がせている。


「ああ、気にするな。私達は見てないから」
「お、お養父さん…っ」


ショーンが笑いながら言った言葉にはますます真っ赤になる。
ジーンが家のドアを開けて、「さあ、どうぞ?」と俺の方へ声をかけた。
俺は玄関から中のホールへ入り、「玄関から、まともに入ったのは初めてだな…」と、の耳元で小さく囁いた。
それにはもクスクスと笑って俺の胸に頬を寄せている。


今日は一ヶ月半ぶりにが家に戻って来た。
俺はが意識を取り戻してからすぐ撮影隊に合流して仕事に戻ったが、殆ど毎日に会いに行っていた。
一ヶ月もするとの怪我もだいぶ良くなってきて傷口も塞がり、丁度その頃には俺の映画もクランクアップした。
それからは暫くオフにしてくれとジョーに頼み、今日はを病院まで迎えに行って帰ってきたところだ。


「少し寝る?」


ベッドに彼女を寝かせてそう聞いた。
だがは軽く首を振って体を起こすので俺はクッションを取って背中に入れてあげた。


「眠くない…。レオがいるのに寝るのもったいないし」
「これからはずっと一緒だよ?」


俺はベッドの端に腰をかけての頬を撫でた。
はその言葉に嬉しそうに微笑みベッドの後ろへ視線をやる。


「この花束…お母さんが世話しててくれたの…。まだ咲いてて良かった…」


それは俺がの結婚式の日に送った向日葵の花束だった。
ベッドボードの上に飾ってある。


「これ…ほんとにありがとう…。凄く…嬉しかった」


は頬に置いてた俺の手を掴みギュっと握って、そう言った。
俺はちょっと微笑むとを抱き寄せ頭に口付ける。


「この約束だけ…守りたくてさ…。あちこち探したんだ」
「…ん。嬉しい…」


は俺の胸に顔を埋めてそう呟くと体を離した。


「レオ…私、もう離れたくない…。このまま…レオの傍にいたい」
「俺もだよ?離す気はないから覚悟してて…?」


俺はそう言っての額に口付けるとノックの音が聞こえた。


、レオ?入っていいかしら?」


ジーンの声だ。


「どうぞ?」


が俺からパっと離れて答えると静かにドアが開いた。


「紅茶、持って来たの」
「あ、すみません」


俺は立ち上がるとジーンからトレンチを受け取った。


、どう?久々の家は」


ジーンはテラスの方に歩いて行くと窓を開け、部屋の中に風を入れてから振向き微笑んだ。


「うん。やっぱりホっとする…」


が笑顔でそう言うとジーンは俺の方を見て、「それは彼も一緒だからかな?」とクスっと笑った。


「お、お母さん…っ」


その言葉にはも頬を少し染めて恥ずかしそうに俯いてしまう。
俺はちょっと笑うと紅茶のカップを取り、に手渡した。


「はい。熱いから気をつけて」
「ありがと…」


はカップを受け取り、ふぅ~っと吹きながら紅茶を一口飲んでホっとした顔をしている。
それを笑顔で見ていたジーンがふと思い出したように口を開いた。


「そうだ。レオ、今夜は泊って行くでしょう?」
「「えっ?!」」


突然のジーンの言葉に俺とは驚いて顔を見合わせた。


「あら、どうして、そんなに驚くの?」


ジーンは楽しげに言いながら俺とを交互に見てくる。


「だ、だって…急に、そんなこと言うから…」
「いいじゃない。それにショーンだってそのつもりみたいよ?」
「え?お養父さんが?」


は更に驚いた顔で俺を見た。
ジーンはクスクス笑いながら、「だって今も今夜はレオと男同士で飲むかな…な~んて言ってたもの」と肩を竦めている。


「お養父さんったら…。すぐ飲みたがるんだから…。レオ、お養父さんと飲んだら疲れちゃうよ?」
「別にいいよ?色々と話したい事もあるし」
「え?話したいことって…?」


が首を傾げて俺を見た。
ちょっと微笑みの頬にキスをすると、「そりゃ、もちろん今後の事とか…。結婚の事とかだよ?」と言った。


「レオ…」
「ん?何、俺と結婚するの嫌になった?」


俺が横目でを見るとは頬を赤くして慌てて首を振った。


「嫌なわけないじゃない…」
「良かった。それ聞いて安心した…」


俺はそう言うとポケットから箱を取り出しの手のひらに乗せた。


「え…?」
「…指輪…遅くなったけどが退院してから渡そうと思ってさ…」


そう言って箱からダイヤの指輪を取り出しの左手を取った。
それをジーンも驚いたような顔で見ている。
俺はちょっと深呼吸をしてに微笑んだ。


「前にプロポーズした時は…あんな状況だったからさ…。もう一度…ちゃんとにプロポーズしたかったんだ」
「レオ…」


は瞳に涙を溜めて俺を見つめた。
俺は彼女の手をギュっと握り、頬に口付け、そして――






…。俺と…結婚して欲しい」





と言ってを見つめた。


プロポーズの言葉にの頬を涙が一粒零れ落ちていく。
それを拭うこともせず、は笑顔で頷き、「……はい」と答えてくれた。
それだけで胸がいっぱいになり、強くを抱きしめて彼女の頭に頬を寄せた。


「必ず…幸せにするから…。一生、傍にいて欲しい…」
「…うん…いるよ?ずっと…。 ―ありがとう、レオ…」


が小さな振るえる声でそう言うのを聞き、ジーンもちょっと涙を拭いて静かに部屋を出て行った。
ドアが閉まるのを確認すると俺はそっとを離し、顔を覗き込んだ。


「やっと…二人きりになれたね?」
「…え?ん…ぅ」


顔を上げたの唇を優しく塞ぎ、そのまま何度も離しては唇を重ねた。
まだどこかで不安な思いが残ってるからか、知らず彼女を抱く腕にも力が入る。


「ん…っレ…オ…」


その声を聞いて俺は名残惜しい気持ちが残るもの唇をゆっくりと解放して、額にもチュっと口付けた。


がもう少し元気になったら…俺の親にも会いに行こう…?」


の瞳を見つめながらそう言って微笑むと彼女も恥ずかしそうに微笑んで、「…うん」と頷いてくれた。





それから数日間、は自宅で静養し、少しづつ体力も戻って行った。
キャシーも見舞いに来て泣きながら俺達の事を祝福してくれていたがダニーとの結婚式にも出ているので変な感じだと言って笑ってた。
病院の仲間も皆が喜んでくれていると聞いてもホっとした様子だ。
そして今日は誰が見舞いに来たかと言うと…




ちゃ~ん、久し振り!会いたかったよぉ~っ」
「キャ…っ」
「こら、トビー!から離れろよっ」


俺は庭先のチェアーに座っていたに飛び掛った(!)トビーを必死に引っ張った。


「何だよ~、少しくらい貸してくれたってさぁ~」


口を尖らせてトビーもやっとから離れると、「あ、どうも。レオがいつもお世話になって!」とジーンに挨拶している。

「いいえ、こちらこそ」


ジーンはトビーの存在自体(!)がツボなのかクスクス笑っている。
俺は少し顔が赤くなり、トビーの頭をぺシっと殴っておいた。


「ぃたっ!もう何で殴るんだよっ」
「うるさいっ。お前に言われたくないんだよ。お世話になって…なんてっ」
「何でだよ?それも友人の勤めだろおぅ?」
「そんな勤めがあって堪るかっ」


俺はトビーを睨みつつの膝にブランケットをかけてやった。


「あ、ありがとう、レオ」
「まだ肌寒いからね?」


そう言っての頬に軽く口付けると、トビーがニヤニヤしながら向かいの椅子に座った。


「相変わらず仲がいいねぇ~?」
「うるさいぞ…」
「あ、そんなこと言っていいわけ?ちゃんの結婚式の日にレオってば凄い落ち込んでた事バラしちゃおっかなぁ~」
「バ…っ、やめろって!」


トビーの言葉に慌ててそう言うと、トビーはますます得意げな顔をした。


「どうしようかなぁ~?」
「お前…っ。後で覚えてろよ?!」


俺が怖い顔で睨むとトビーは苦笑しながら肩を竦めた。


「ほんと怖いだろ?ちゃんも気をつけた方がいいよ?レオって案外、嫉妬深いからさ?」
「そうなんですか?」
「お、おいトビー! ―も、こんな奴の言うことは聞かなくていいから…っ」


俺がそう言うとはクスクス笑っている。


「私も焼きもち妬いちゃうから同じだね?」
「…え?」


その言葉にドキっとした。


「え?何?何?ちゃんも焼きもち妬くの?可愛いねぇぇえ?」


トビーはそう言いながらの頭をナデナデして顔が緩んでいる。
俺は慌てて、その手をパシンと引っぱたくと、「気安く俺のに触るなよっ」と忠告してやった。
それにはトビーも苦笑いをしている。


「ほぉらね?言ってる傍から妬いてるだろ?」


トビーの言葉には少し頬を赤らめて笑った。
そこへジーンがお茶を運んで来た。


「はい、コーヒーで良かったかしら?」
「はーいっ。ありがとう御座います!」
「あ、お養母さん、こんな奴に出さなくても…」
「いいえ、いいのよ?レオのお友達でしょう?」


ジーンはクスクス笑いながら庭先のテーブルにカップを置いた。


「そうだよ、レオ。友達だろぉ?」
「うるさい!」


俺がそう言って睨むとトビーは済ました顔で、「お母さんの淹れたコーヒー美味しいなぁ~っ」とヘラヘラ笑っている。
それにはジーンも更に、「…ぷっ」と吹き出した。


「ほんと、おもしろい方ね?レオのお友達って…」
「い、いや、こいつは単にバカなだけで…。 ―ってかトビー!お前のお母さんじゃないだろう?!」


俺はの隣に座りトビーを睨むが、トビーは意味深な顔で俺を見ると、


「いや~?解らないよ~?もしかしたら俺とちゃんが最終的には結婚してるかもしれないし」


と俺に宣戦布告をしてきた(!)


「はい、は紅茶ね? ―あら、でも、それも面白そうね?」


ジーンまでがそんな事を言って俺の方をニヤニヤ見てくる。
俺は慌ててを抱きしめた。


「ダ、ダメですよ?は俺と結婚するんだから…っ。な?…トビーなんて嫌だろ?」
「レ、レオ…苦し…」
「あ、ご、ごめん…っ」


俺はパっと腕を離すとが頬を赤くして俺を見た。


「も、もう…変なこと聞かないで…」
「だ、だって、こいつが…」
「私は…レオだけよ?」
「……え?」


は顔を赤くしながらもそう呟いて俺の方を見た。
その言葉に胸が熱くなる。
そしてもう一度抱きしめようとした瞬間、俺の目の前からが消えた(!)


「そんなぁ~~ちゃん、それはなくない?」
「キャ…っ」


驚いて視線を向けるとトビーがを抱き寄せていて俺は急いで立ち上がると思い切り奴の後頭部をグーでパンチした(!)


ゴンっ!!


「…っったぁ!」
「何してくれてんだ、お前は!!を俺の目の前で抱きしめるなんて、いい度胸してるな?!」
「ちょ、タ、タンマ!ジョークだってば!イッツジョーク!」
「していいジョークと悪いジョークの区別くらいつくだろ?!ったく油断も隙もあったもんじゃない…」


俺はブツブツ文句を言って自分の腕の中にを取り戻すと再び椅子へ座った。
それを見て一人笑い転げてるのはジーンだ。


「アハハ、おかしいっ。いいコンビね?」
「……お養母さん…。こいつとだけは、いいコンビなんて言われたくありませんよ…?」


俺は少しだけ半目になって呟いた…。





















?用意はいい?」
「うん、もういいよ?」


私は着替え終わると返事をして帽子を被った。
すぐドアが開いてレオがひょこっと顔を出す。


「わ、可愛いよ、


レオはそう言って私を抱きしめ、頬にチュっとキスをした。
そしてそのまま私を抱き上げるとベッドへと座り私は膝の上に乗せる。


「あ、あのレオ…?」


私は突然のその行動に驚いて抗議する間もない。
レオは何だかニコニコと嬉しそうに微笑みながら私の顔を見つめている。
何だか照れくさくてちょっと俯こうとした時、レオが顔を近づけて来て私の唇にチュっとキスをした。
そして額をコツンとつけて微笑むともう一度、今度は優しく唇を重ねてくる。
私の腰をそっと抱き寄せ、少しづつ啄ばむようなキスから求めるようなキスへと変わっていった。


「ん…っ」


唇が少しだけ離れた時にそのままぺロっと舐められ舌で上唇をなぞられる。
その感触に体がピクっとなってレオのシャツをギュっと掴むとレオは私をそのままベッドへゆっくりと押し倒した。
その拍子に被っていた帽子がパサっと落ちる。


「ん…レオ…?」


私は驚いてレオを見上げようとした時、また唇を塞がれた。
レオは口付けつつ時折チュっと水音を立て下唇を軽く噛んだりしながら優しく愛撫をしてきて私は体が熱くなってくるのを感じる。


「ん…っっ」


そっと舌が入って来て口内を愛撫されると掴んでいた手の力も抜けてきて放しそうになった、
その時、廊下で母の声がした。


「二人とも?お迎えが来たわよ?」


その声にドキっとしたのは私だけでレオはゆっくりと唇を離すと、最後にチュっと口付け優しく微笑んだ。


「残念…。このまま抱いちゃおうかと思ったのにな」
「な…っ何言って…」


私はレオの言葉に一気に顔が赤くなるのが解った。
だがレオは少しスネた顔で私の腕を引っ張り体を起こすと、


「だって俺、ここ3ヶ月近くに触れてないんだよ?」


と言って私の顔を覗き込んだ。
その言葉に私は耳まで熱くなって俯くとレオが頭に帽子をかぶせてくれた。
そして頬にチュっとキスをすると


が元気になるまで待ってたんだから…。もう我慢しないで抱いちゃうよ?今夜辺りにもね?」


と言って今度は唇にチュっと口付ける。


「レ、レオ…っ」


私は真っ赤になって立ち上がったレオを見上げると、彼は出会った頃のような余裕の顔を見せ、


「覚悟しといてね?今夜は眠らせないからさ?」


と言って私を立たせるとギュっと抱きしめた。


「も、もう…っ。レオの…」
「エッチ?」
「……っ」


レオはクスクス笑いながら私を離すと、


「それはが悪いって前にも言ったろ?可愛すぎるのも罪だよね?」


と言って反論しようと口をパクパクさせてる私の手を繋ぐと、


「そろそろ下りないと変に勘違いされるし行こっか?ジョーもうるさいしさ」


と微笑んだ。
私は余裕のレオを見て、「悔しい…」 と呟き、頬を脹らませるとレオは噴出して笑っている。


でもね?こんな些細な会話でも私は今、凄く幸せに感じるんだよ…?
つい、この前までは…絶望の中にいたから…
生きてるのに死んでるような毎日だったから―


こうしてレオの笑顔を見ながら体温を感じていられるのが…ほんとに夢みたいなの…。




これで…マークとさえ仲直り出来たら…


マークとは未だ連絡を取っていなかった。
何だか気まずい気持ちが残ってるからだ。
マークに嘘をついた自分が…恥ずかしくて…
レオの事を好きじゃないと言ってしまったあの時の自分が恥ずかしくて、あの真っ直ぐな瞳を見られるのか自信がなかった。


?どうした?」
「え?あ…何でもないよ?」


心配そうに私の顔を覗き込むレオに微笑みそう言うと、レオは安心したように私の手を引いて階段を下りていく。
すると玄関先にレオのマネージャーのジョーがイライラしたようにウロウロ歩き回っていた。


「遅いぞ!また二人でイチャイチャしてたんだろう?!」
「あれ?よく解ったな?」


私達が降りていくのを見て真っ赤な顔で怒っているジョーに、レオは澄ました顔で答えた。


「何をヌケヌケと!早く行くぞ?時間がない」


ジョーはプリプリしつつ、母に、「では、お嬢さんをお借りします」なんて言ってから外へと出て行く。
それには母もクスクスと笑っている。
私は母さんって、こんなに笑い上戸だったかな?と首を傾げた。


「じゃあ、お母さん行って来ます」
「ええ、気をつけて?を頼むわね?レオ」
「はい。そこだけは任せて下さい」
「やだ…レオってほんと面白いのね?レオの友達も面白いし、あのマネージャーさんだって…」


母は何かツボにでもハマったのか、まだ笑いながらレオを見た。
だがレオは母の言葉に顔を顰めて、


「いや…トビーやジョーと同類にするのは勘弁して下さいよ…」


と泣きそうな顔になり、ますます母の笑いを誘っている。


「もう、お母さん笑いすぎ!トビーだってジョーだって凄く良い人よ?お笑い芸人じゃないんだからねっ」
「わ、解ってるわよ?ご、ごめんなさいね?レオ」
「いえ。俺のことはともかく、あいつらの事なら気が済むまで笑ってくれて構いませんよ?」
「レオ…っ」


レオが肩を竦めて言った言葉に私はぷぅっと頬を脹らませた。
するとレオは優しく微笑み、私の脹れた頬にチュっとキスをする。


「ごめん、ごめんっ。もう言わないよ?じゃ、お養母さん、行って来ます」
「行ってらっしゃい!久々のデート楽しんで来てね?」
「はい」
「はーい、行って来ます。お母さん」


私も笑顔で手を振るとレオと手を繋いで外へと出た。
目の前にはジョーの車が止まっていてレオがドアを開けてくれる。


「はい。
「あ、ありがと…」


私はちょっと微笑んで車に乗り込んだ。
レオもすぐに乗り込むとジョーが怖い顔で振向く。


「遅いなぁ?試合始まっちゃうぞ?」
「はいはい。そう言ってる時間すらもったいないだろ?早く出せって」
「はいよっ。 ―ったく…。自分が遅れてきたクセに…」
「何か言った?」
「べ・つ・に!じゃ、行くぞ」


レオの突っ込みにジョーは諦めたのか文句を言うもをやめると車を発車させた。
私はシートに凭れると隣のレオの肩にそっと頭を寄せる。
するとレオが私の肩を抱き寄せてくれた。
私がレオの方を見ると優しい笑顔と目が合った。


(はぁ…安心する…)


私はレオの体温にホっとしながらそっと目を瞑った。


今日は退院してから初めて外出をする事になった。
もう体力も食欲も戻って来たし、少しは気晴らししないと…と養父から許可が出たのだ。
するとレオからまた一緒にNBAの試合に行きたいな…と言われて私もそれには賛成した。
帰りにはディナーに行こうと決めて、それが何故かジョーまで来ることになった。
まあ、お目付け役みたいなものだろう。 ―レオがブツブツ言っていた―


レオと初めて一緒に行った試合から…5ヶ月ほど経っている。
あの頃は…まさかこんな日が来るなんて思ってなかった。
私は薬指に光る指輪にそっと触れてみる。


あの時はレオの事なんて好きでもなくて…ただ私を振り回す彼が腹立たしくて怒ってばかりいた。
それでもめげずに会いに来るレオが…少しづつ気になりだして…
気付けば怒りながらも考えるのはレオの事ばかりになっていった気がする。


今では…こんなにレオの事を愛してしまって…
彼がいない生活は地獄のように感じた。
レオさえ傍にいてくれれば…マスコミから何を言われようと気にならない。
そう思っていたのに私が結婚式まで挙げたダニーと結局、婚姻届も出さないまま別れ、
レオの元へ戻った事を知ったマスコミはバッシングするどころか"21世紀の純愛…"などと騒ぎ立てレオも私も批判される事はなかった。
どこからか私の事故の事を聞いたのだろう。
私はレオの事を愛しながらも泣く泣く婚約者の元へ戻り、それでもレオの事が忘れられず、あの事故に至ってしまった…と美談として雑誌に載った。


結局…ダニーを傷つけただけだった…
彼の愛情を裏切り…そしてあんなに人が変わるほど彼を追い込んだのは私だ。
私はどうしてもダニーを恨む気にはなれなかった。


怪我をした私を…必死に助けて…レオまで呼んでくれた。
そして何も言わず、私の前から姿を消してしまったのだ。
助けてくれてありがとう…それだけ言いたくてダニーの携帯に電話をしたがすでに番号は変わっていた。
カナダの病院にかけても出てくれない。


このまま…そっとしておいて欲しいと養父にだけ連絡をくれたらしい。


きっと…お前の事を忘れようとしてるんだ。だから、もう連絡はするな…と養父に言われた。
私はそれに頷き、それ以来、ダニーに電話をするのをやめた。


彼を傷つけた分、私はレオと二人で痛みを共に感じながら生きていく。
幸せにならなければ…そう思った。






…?ついたよ?」
「…ん…」


私はゆっくりと目を開けた。
どうやら少し眠ってしまったらしい。
私が体を起こすと、レオが顔を覗き込んでくる。


「大丈夫?」
「うん。ちょっと久し振りに車乗ったし眠くなっちゃったみたい」


私がそう言って微笑むと、レオも笑顔になった。


「車乗って眠くなったなんて子供みたいだ」
「こ、子供って…バカにして…」


私は口を尖らせてレオを睨むとレオは何だか嬉しそうに顔を綻ばせる。


「バカにしてないよ?可愛いなぁって思ってさ?」
「……っ」


恥ずかしくて言葉に詰まるとレオはチュっと頬にキスをしてきた。


「さ、行こうか?」
「…うん」


レオは、そう言うと車から降りて私の手を引っ張った。
ジョーは車を駐車場に入れると降りてきて前にもレオと来た関係者用の入り口の方に歩いて行く。


「凄い久し振り…」
「ああ…。あの日は…雨が降ってたっけ?」
「うん。凄い降ってた日だった」


私は懐かしさが込み上げてきて空を見上げた。
今日は天気も良く、奇麗な夕日が空を赤く染めている。
私とレオは手を繋ぎながら入り口の方へと歩いて行った。


「よぉ、レオ!久し振り!」
「ジョージ!元気だった?」


レオは前にも会ったガードマンの男性と抱き合っている。


「何だよ。色々と騒がしてくれてたじゃないか」
「ああ、まぁね。映画を実生活で体験出来たよ」


レオはそう言うと肩を竦めて私に微笑んだ。


「お?こちらが、お前のジュリエットか?」
「そうそうっておいっ。縁起でもない…。彼女がだよ。前にも会ったろ?」
「ああ、覚えてるよ。俺が"新しい彼女か?"って聞いたらお前"この子は、そんなんじゃない"なんて言ってたクセに」


ジョージという男性はそう言いながらレオの肩をバンっと叩いている。
レオはちょっと顔を顰めて、


「相変わらずバカ力だな…。あの時は本当に付き合ってなかったんだって。俺はに嫌われてたんだからさ。 ―な??」
「え…え?!」


レオが苦笑しながらいきなり私にふるので驚いた。
するとジョージはマジマジと私の方を見た。


「前より凄く奇麗になった…と言うか大人っぽくなったね?これもレオの愛情の賜物かな?」
「え?そ、そんな…」
「そうかもなぁ~?俺が毎晩、に愛を注いだからさ?」
「ちょ、な、何言って…っ!」


私は真っ赤になってレオの手をパっと離した。
レオはクスクス笑いながらジョージを見ると、


「俺のフィアンセは照れ屋だからさ?すぐ怒られるんだ」


と言って私の赤くなった頬に素早くキスをした。


「レ、レオ…?!」
「ほらね?」


レオはジョージに肩を竦めてみせると、ジョージは何だか驚いた顔でレオと私を交互に見ている。


「どうした?ジョージ…」
「え…?え?フィアンセって…。レオ、婚約したのか?!」


ジョージは唖然とした顔だ。
それにはレオも驚いていたが、ちょっと笑うと、


「ああ、やっと俺の腕の中に戻って来たからもう誰にも奪われないように薬指を予約しちゃったよ?」


レオはそう言って私の左手を持ち、ジョージに見せた。


「うお!そ、そのキラキラと輝く石は…っっ。ダ、ダイヤモンド?!」
「まぁね?の細くて奇麗な指に似合うだろ?」


レオは顔を緩ませてヌケヌケとのろけている。
それを後ろで聞いてたジョーが小さく溜息をついてるのが聞こえて私は恥ずかしくてレオの腕を引っ張った。


「レ、レオ…もぅいいから…。中に入ろう…?」
「ん?あ、そうか。も体しんどいよな? ―じゃ、ハニーが中に行きたいっていうから通してくれない?」


レオが笑いながらそう言うとジョージが呆れたように苦笑した。


「はいはいっ。何だかノロケで終りそうだしな?とっとと中に入れよ」


ジョージはそう言うと関係者用の入り口を指さした。


「サンキュ。じゃ、またな?」
「ああ。お幸せにな!世間を騒がせるのを楽しみにしてるよ!」
「アハハ…その前に誰にもバラすなよ?」
「努力してみるさ!」


二人はそんな事を話しながら手を振り合っている。
私はちょっとおかしくて笑いを噛み殺した。


「さ、入るよ?」
「う、うん」


レオはそう言うと私の手を繋ぎ、前にも通った事のある通路を歩いて行く。
後ろを歩くジョーはしきりに、「久々だし燃えてくるな~っ」と呟いて応援する気満々の様子だ。
私は、そんな時、ふとマークの事を思い出した。


マークも試合に来たがってたっけ…
今度一緒に…と約束してたのにな…。


その事を考えると少しだけ寂しくなった。


通路を通り会場内の廊下に出ると、派手な音楽が会場内に響いている。
指定席の客はすでに入っていて何やら音楽に合わせて踊ったりと騒いでいた。


「わぁ…。ほんとこのノリが懐かしいくらい…」
「そうだなぁ…。俺もと来て以来かな?」
「おい、俺、飲み物を買ってくから二人は席に行ってろ」


ジョーがそう言って売店の方に歩いて行った。


「じゃ、飲み物等はジョーに任せて俺達は席に行こっか」
「うん」


レオは私の頭にそっとキスをするとそのまま手を引いて席へと歩いて行く。
私は会場を見渡しながら、もう…誰の目を気にすることもないんだ…と思うと胸が熱くなった。


「前と同じ席だから見やすいよ」
「そうね?ここからならベンチまで見えるし楽しかったわ?」


私は椅子に座ると、コートの方を見てみた。
すると試合前のイベントのようなものが始まり、蝶ネクタイをつけた太っちょのおじさんがマイクを持って出て来る。



「レディースエーンドジェントルメーン。今夜のラッキーバースデーは誰かなぁ~?」


その声に一際大きく歓声が上がる。


「レオ…?これ…前にもやってた?」
「ああ、そうそう。その日の誕生日の人が最初に申請しておくと好きな選手と一緒にフリースローを打てるんだ」
「そっかぁ。いいなぁ~」
は小さいから選手に肩車して貰わないと打てないだろ?」


レオがクスクス笑いながら私の頭を撫でた。


「む…。どうせチビですよ…」
「アハハ。そんな口尖らせたらここでキスしちゃうよ?」


その言葉に私は慌てて手で口を隠した。
それを見てレオもまだクスクス笑っている。


(も、もう…ほんとにレオはしかねないわ…っ)


私はそう考えただけで恥ずかしくなり視線をコートに向けた。
いつの間にか今日の誕生日という人達が3人ほど、コートの上に出ている。


「あ…今から?」
「うん、そう。もう少ししたら彼らに指名を受けた選手が出て来る…ああ、ほら、出てきた」


レオが指を指した方を見ると2人ほど選手が出てきた。


「あ…彼…コービーだわ?マークの好きな…」


私はそう呟き少しだけ身を乗り出した。
コービーはコートの上に走ってくると誕生日で選ばれたお客さん達と握手をしている。
その中に小さな男の子がいてコービーは大きな体を屈ませ、その子とも握手をした。


「…え…?あれって…」


私は自分が見たものが信じられなくてレオの方を見てみた。
するとレオはちょっと微笑んで私の唇にチュっと素早くキスをする。


「レ、レオ…?」


私はレオの表情に違和感を感じ、問いかけようと口を開いた、その時―






ーーーっ!!!」


突然、大きな声で名前を呼ばれ、私は驚いて声のする方を見てみた。
そこは先ほど見ていたコートの中で、しかもコービーが肩車をしている男の子がこっちに向かって大きく手を振っている。


「マ…マーク…っ?!」


私は思わず立ち上がってしまった。
マークは前に見た時よりも顔色も良く、体重も増えたように見える。


ーー!!今から、僕がシュート打つから見ててよ?!」


私を指さしてそう叫ぶマークの姿が涙で歪んだ。


「レオ…。もしかして…知ってたの…?」


私が涙を拭きもせずそう聞けば、レオも私の隣に立ちそっと肩を抱き寄せた。


「ああ。俺が呼んだんだ。今日、誕生日だって聞いてたし…お祝いしてやりたくてさ?それで…これを思い出して…」
「だから…今日、出かけようって…?」
「うん…。ごめん、内緒にしてて…。驚かそうと思ってさ?…マークに会いたがってただろ?」
「もう…驚きすぎたわ…」


私はそう呟いて涙を拭った。
レオはちょっと微笑むと、「マークさ…。凄い後悔してるんだ、に言った事…」と言って私を見た。


「え…?後悔…?」
「ああ…。最後に…酷いこと言っちゃった…って…かなり落ち込んでてさ。マークにも…事情を話したから…」
「そう…。でも、あれは私が…」
「いや…マークはそう思ってないよ?が嘘をついたのは…全部、俺のためだったって…
マークも解ってるからさ?あいつも…に会いたがってた」


レオのその言葉を聞いて私は涙がポロポロ零れてくるのを止められなかった。


…泣かないで…マークの上達したシュート見てやれよ」
「ん…うん…」


私は手で涙をグイっと拭くと順番がまわってきたマークに視線を向けた。
マークは小さいからかゴールに届かないので、コービーが肩車をしてある程度まであげてくれている。
それを嬉しそうにしながらマークは大きな試合用のボールを思い切りシュートして見事、ゴールの中へと入れた。
そこで観客からも歓声が起こり、ピュ~っと口笛の吹く音が響く。
マークはその観客達に笑顔で手を振った。
そしてコービーがマークを下に下ろすともう一度二人は握手をしている。


「マークが着てるユニフォーム…。あれ前にレオがあげたやつね…?」
「ああ。やっと着れるって喜んでたよ?」
「そう…。マークの嬉しそうな顔…あの笑顔が見たかった…」
「ああ、俺も…」


レオはそう言って私の頬にキスをした。
そこへイベントのゲームも終り、マークがコートから席へと走ってくるのが見える。


…!!」
「マーク…!」


私は飛びついてきたマークを力いっぱい抱きしめた。


「マーク…会いたかった…」
「僕もだよ?ごめんね、…!僕、何も事情を知らないクセにあんな酷いこと言って…ほんとごめんね…っ」


そう謝りながら顔を上げたマークの瞳には涙が浮かんでいて、それを見た瞬間に胸が熱くなる。


「ううん…。私も悪いの…ごめんね?嘘ついて…」
「いいんだ…。お兄ちゃんのためだったって…ちゃんと聞いたよ?
それに今こうしてと、お兄ちゃんが仲良くしてくれてれば僕はそれでいいんだ…」
「マーク…ありがとう…」


私はマークの小さな体をギュっと抱きしめて頭に口付けた。
そしてそっと離すとマークとレオは笑顔でハイタッチしている。


「良かったな?マーク。に会えて」
「うんっ。僕も何度も電話しようと思って…でも出来なくてお兄ちゃんに電話しての様子だけ聞いてたんだ。
もう怪我はいいの?大丈夫?少し痩せたよ…?」


そう心配してくるマークの言葉に私は思わず笑顔になった。


「前は私がそうやってマークに聞いてたのに…。随分、元気になったのね?おめでとう」
のおかげだろ?ずっと僕の面倒見てくれてたし…」
「うわ、そういう嬉しいこと言ってくれちゃうの?」


私は笑いながらマークの額を指でつついた。
マークとレオは笑いながら、


「さ、仲直りもしたことだし…。応援に気合入れないとな?試合後はレストランでマークの誕生日パーティだからな?」
「わーいっ!やった!」
「マーク…お父さんは仕事?」
「ううん、さっきまで一緒だったよ?でも今夜は友達と食事行くから遠慮してくれって言ったんだ」
「うぁ、ませてるっ」


私はそう言って笑いながらマークの頭をクシャっと撫でた。
マークも笑いながら私とレオの間に座った。
そこへグッタリした顔でジョーが戻って来た。


「はぁ~~凄い並んでて、なかなか買えなかったよ…」
「おぅ、お帰り!もう試合始まるぞ?」
「解ってるよっ。だから急いで戻って来たんだろ? ほら、ビール」
「サンキュ!」
「ありがとう」


も笑顔でビールを受け取るとジョーがマークにオレンジジュースを渡している。


「サンキュー!おじさん!」
「む…っ。おじさんじゃないだろう?お兄様だろう?」
「だって、おじさんはお兄ちゃんよりおじさんだろ?だからおじさんなんじゃないの?子供に嘘教えちゃダメだよ?おじさんっ」
「うぬ…っ。お、おじさん、おじさんと連呼するなっ」
「だって、おじさんはおじさんだろ?」
「うぐぐぅ…っ。なんて口達者なガキなんだ…っ」


ジョーは顔を赤くしてブツブツと文句を言いながら帰りも運転しないといけないのでコーラを飲んでいる。
私はそれに笑いながらレオの方を見た。


「ジョーも…マークがいること知ってたのね?じゃないとジュースを事前に買ってこないでしょ?」
「ん?ああ、まぁね」


レオはちょっとイタズラっ子のような顔で私に微笑んだ。


「何ぁんだ。知らなかったのは私だけかぁ…」


ちょっとスネたように呟くとレオがマークに場所変わって…と言って私の隣に座った。
そして急に顎をグイっと掴まれ横に向けられたと思った瞬間、唇を塞がれる。


「ん…っ」


その温もりはすぐ離れ、私は固まったままレオの奇麗な瞳を見つめた。
するとレオはニッコリ微笑んで、


「そんな顔されると、キスしたくなるって前にも言ったろ?」


と言ってまたチュっとキスをした。
私は顔が一気に熱くなってきて周りを見渡した。
すると指定席の客から口笛を吹かれて更に恥ずかしくなる。


「レ、レオ…っ。こんな目立つとこでキスしないで…っ」
「何で?いいだろ?だってもう少ししたら婚約発表するんだからさ?」
「で、でも…」
「気にするなよ。お兄ちゃんはいつでもにキスしたいんだからさ?ね?お兄ちゃんっ」
「そうそう。よぉく解ってるよな~?さすが俺とのキューピッドをやってくれただけあるよ」
「だろ?」


二人はそんな事を言い合ってパチンとハイタッチをして笑っている。
私は恥ずかしいものの、この光景を何度も夢見ていたので今日は何されても怒らないでおこうと思った。


こんな日が来るのを…ずっと願っていた―














「ではでは!マークの9歳の誕生日と…本日のレイカーズの勝利を祝しまして…Cheers!!」


「「「Cheers~~!!」」」


俺の言葉に皆でグラスを持ち上げてそのまま口に運んだ。
俺とはシャンパンで運転しなくちゃならないジョーと子供のマークはオレンジジュースだ。


「さ、マーク。ケーキの蝋燭吹き消して願い事しな?」
「うん!」


マークは笑顔で頷くとふぅーっと一気に蝋燭の火を吹き消した。
そして目を瞑り何かを祈っている様子。
そしてパっと目を開けるとニッコリ微笑んだ。


「皆、ありがとう。僕、こんな誕生日凄く嬉しいよっ」
「おめでとう、マーク」
「おめでとう!」
「おめでとさん!」


皆でそう言うとマークは嬉しそうに微笑み、「ほんと、ありがとう」と言った。
そのままケーキが一旦下げられ、料理が運ばれてくる。
今日はマークが希望したダウンタウンにある、"しゃぶしゃぶハウス"に来ていた。
店の奥の個室を借り切ったのだ。


「わ~美味しそうなお肉!僕、一度でいいからこれ食べてみたかったんだ!」
「俺も久々だな~~!さあ~食うぞぉ~う!」
「おい、ジョー…今日の主賓はマークなんだからな?少しは遠慮しろよ?」


張り切って肉を入れようとしたジョーに俺が、そう言うと、


「解りましたよっ!肉をいつもの半分にしたらいいんだろ?」


と不貞腐れている。
それにはマークも笑いながら、「おじさん、大人気ないよ?」と突っ込んだ。


「ぬ…っ。ほんとに小生意気なガキだな…」
「自分だってガキみたいだろ?いいからジョーは黙ってろよ」


俺が呆れた顔で言うとジョーはますます不貞腐れている。


ったく…。マークより子供に見えるよ…
我がマネージャーながら恥ずかしい…


俺は心の中で溜息をつきながら隣でマークにお肉をとってあげているを見た。


やっと…前の笑顔が戻って来た…
相当マークの事を気にしてたからな…


俺はホっとしながらシャンパンを飲んだ。


「はい、レオ」
「あ、ありがと。


取り皿に肉や野菜をとってくれたにそう言って彼女の頬にチュっとキスをした。


「も、もうレオ…」
「いいだろ?もう婚約したんだしさ?」
「だ、だけど…」
「ほんとのシャイなとこは変わんないよね?」
「マ、マーク?!」


マークに突っ込まれてはすでに頬が赤くなっている。
俺はちょっと笑いながら、「きっとは一生、こうだよ」とマークに言った。


「そうだね~?きっとはこれから先もお兄ちゃんに振り回されるんだろうね?」
「お、おい、マーク…何だかそれ人聞き悪いぞ?振り回して…なんてさ」
「あら、ほんとの事よね~?マーク?」
「うん、そうそう。最初の頃なんてほんと凄かったもんね?お兄ちゃん強引だしさ?」
「何?そんな凄かったのか?」
「うん。もう病院に会いに来ては口説いてたよ?」


その会話に入ったジョーにまでそう説明するマークに俺は少し顔が赤くなった。


「おい、マーク…。余計なことはいいから!」
「はいはい!お兄ちゃんの名誉のためにバラさないでおいてあげるよ?」
「…お前…ほんと生意気度が増したな…?」


俺は半目になりつつ呟くもマークはすでに肉の方に気を取られている様子だ。


「ちょっと、おじさん!それ僕のお肉だよ?!」
「何?どこにお前の名前が書いてるんだ?ん?」
「…名前なんて書いてあるはずないだろ?これ、お肉だよ?バカじゃないの?おじさん」
「ふぐっ。お、おじさんと連呼するなと言っただろう?って、ああ!俺の肉を…っ」
「ん~美味しい~!!」


口をもぐもぐさせてそう言うマークにジョーはムキになり、さっと肉をダシに入れると箸で掴んだまま、


「これは俺のだからな?お前のじゃないぞ?!」


とアホ丸出しな事を言っている。


「おじさん、ほんっと大人気ないね?そんなんじゃ、お嫁さんは来ないんじゃない?」
「ぬーーっ!人が気にしてる事を…っっ!」
「あ、その前にそのお腹を何とかしないとね?おじさんもバスケやったらいいのに」
「ううるさいよっ!俺はダイエットなんてしないんだ!食べたい物を食べたい時に食べる!これが健康なんだぞ?!
――というわけで、この肉は俺がゲーッツ!!」


マークが食べようとしていた肉をジョーは最悪にも取って食べてしまった。
これにはマークも、「あーーっ僕が食べようと思ってたのに!!」と本気で怒っている。
それでもジョーはもぐもぐと口を動かし、「あ~美味しい~!」と、さっきのマークの真似をした。


「ねぇ…レオ…」
「ん…?」
「彼…36歳よね・・…」
「ああ……多分(!)」
「そう…何だか目の錯覚かしら…。マークと同級生くらいに見えて仕方がないのよ…」
「ああ、俺も…。あまり見るな…。巻き込まれるぞ…?」
「う、うん…」


俺とは向かいでギャーギャーと言い合い&肉の取り合いをしている9歳と36歳の二人を尻目に、仲良く食事を始めた―











「じゃあ、今日は、ご馳走様~!またね、、お兄ちゃん! ―ついでに、肉のおじさんも!」
「ああ、またな?マーク!」
「おやすみ、マーク」
「クソガキ…」


「え?何?おじさん?」
「何でもないよっ!さっさと家に入れ!」
「解ってるよ! ―じゃ、おやすみなさい!」


マークは、そう言って手を振り家の中へと入って行った。
それを見届け、ジョーが車を出しの家に向かう。


「おい、レオ。今夜もちゃんの家に泊るのか?」
「ああ。お養父さんも帰ってこいって言ってたしね。どうして?」
「ああ、いや…何だかお前、婿入りしたみたいだな?」
「はあ?」


俺はジョーの言葉に溜息をついた。


「あのなぁ…。今、俺がの家に泊ってるのはが元気になるまで心配だったからで…
が元気になったんだからすぐ一緒に住もうと思ってるよ?
お養父さんもそうしていいって言ってくれてるし。ま、俺の家も近いしね」
「ああ、まあ会おうと思えば会えるしな?親御さんも」


ジョーはそう言ってからは黙って運転に集中している。
俺はの肩を抱き寄せ、頭に口付けた。


、いつ引越したい?そろそろ決めないとな?」
「うん…。私は、いつでもいいよ?ほんと実家と近いし…」
「そうだな…。 ほんとなら…今すぐにでも連れて帰りたいけどさ?」
「え?」


は首を傾げて俺の顔を見上げた。
俺はちょっと微笑んでの額に口付ける。


「だってさ…。近くに両親がいると思うとに手を出すのも気が引けるし?」
「な…何言って…っ。そ、それにレオなんて気にしないで養父や母さんの前でもキスしたりするじゃない…」
「まあ、そうだけどさ。気分の問題だよ?」


俺はそう言っての唇に素早くキスをすると車がゆっくり止まりジョーが振り向いた。


「イチャついてるとこ悪いが…到着しましたよ?お二人さん」
「あ、サンキュ!」
「ありがとう。ジョーさん」
「いえいえ。このくらいはマネージャーの仕事の中でも軽いうちだよ?レオのお守をするよりね?」
「おい、ジョー…っ。俺のお守って何だよ…。俺は子供か?」
「ああ~手に終えないからな?似たようなもんだ」
「うわ、よく言うよ。自分だって9歳のマークと対等にやりあってたクセにさ」
「あれはマークに合わせてあげたまでだ」


真面目腐った顔でそう言ったジョーに対し、俺とは顔を見渡せ微妙~な表情で首を傾げた。


「ま、そういう事にしておいてやるよ…。じゃ、おやすみ!」
「おやすみなさい」
「ああ、お休み。 ―ああ、レオ。来週から仕事が入るからな?」
「ええ?もう?」


俺は車を降りて顔を顰めた。


「仕方ないだろ?次から次に入ってくるんだから…。スキャンダルがあったのに減るどころか増えてるんだから感謝しろよ?」
「スキャンダルって言うなよっ。何だか遊びっぽいだろ?」


俺が思い切り顔を顰めるとジョーも苦笑した。


「はいはい。悪かったよ。じゃ、また連絡するから」
「OK」
「じゃ、」


ジョーはそう言うと窓を閉めて車を発車させた。
俺とはそれを見送ると家の中に静かに入っていく。


「もう遅いし寝たみたい…」
「ほんとだな…」


俺とは小声で話しながらそっと階段を上りの部屋まで行った。
の部屋は長い廊下の一番奥で孤立しているため、部屋に戻れば普通に話せる。


「はぁ~疲れたぁ~」


俺はベッドに寝転がってう~んと伸びをした。
も帽子を脱いでベッドまで歩いて来ると、「レオ、シャワー入っちゃえば?」と言ってくる。


「ん~。一緒に入ろうか?」
「え…?」
「一緒に入ろうよ…たまにはさ?」


俺が体を起こしてニッコリ微笑むとの頬が赤く染まった。


「い、嫌よ…」
「何で?」
「は、恥ずかしいから…っ!」


はそう言うとバスルームに入って行った。


「レオが入らないなら私先に入っちゃうから…っ」


そう声が聞こえて俺は苦笑しながらベッドから立ち上がり静かにバスルームへと近づいた。
そして一気にドアを開ける。


「キャ…っ」
「不意打ちしちゃったよ」


俺は笑いながらそう言うと服を脱ぎかけてたを抱きしめた。


「あ、あの…レオ…離して…」
「や~だ。一緒に入ろうって言ったろ?」
「え…?」


が驚いた顔で俺を見上げた。
俺はちょっと微笑むとをバスルームの中へと押しやりキュっとノズルでお湯を出した。


「キャ…っ」


いきなり頭からシャワーが振ってきては驚いて声を上げた。


「ちょ…レオ、何するのよ?服が濡れちゃったじゃない…っ」
「そうやって隠してるからだろ…?」


俺はそう言って自分の濡れた髪をかきあげるとの手に持ってるシャツを奪い下へ落とした。
そのままを抱き寄せて二人でシャワーを浴びる。


「レ、レオ…服濡れちゃってるよ…?」
「別にいいよ?」
「で、でも…あの…」


真っ赤な顔のまま胸元を隠してるの手を掴みそっと下ろすと、の唇を塞ぎ彼女を抱きしめた。


「ん…っ」


最初から深く口付け、口内を舌で愛撫しながらの下着をそっと外した。
パサっと足元に落ちたのも気にせず徐々に求めるように口付けを深くしていく。


「ん…レオ…」


は恥ずかしさの方が勝ったのか俺の胸元を押してきた。


「ん……?」
「あ、あの…こんな場所じゃ…風邪引いちゃうよ…?」
「暖かいから大丈夫だよ?」


俺はの首筋にも唇を這わせそう呟いた。
の体がビクっと反応して俺の体も熱くなる。


…」
「レ、レオ…やっぱり…」


がそう言った時、俺は顔を上げてちょっと微笑んだ。
そしてバスルームのライトを消し真っ暗にすると、「これで恥ずかしくない?」との額にコツンと自分の額を当てる。


「で、でも…危ないよ…」
「部屋の明かりで少し明るいだろ?」
「でも…」
「しぃ。もう何も言わないで?さっき言っただろ?俺、我慢が限界だからさ。を抱きたくて仕方がない…」
「―――っっ」


俺の言葉には体を硬くした。
俺は濡れたシャツを脱ぎ捨ててもう一度の唇を塞いで貪るように口付ける。


「ん…っ」


は俺の背中に腕を回してギュっと力を入れるのを感じた。
そのままをその場に押し倒し、余裕のないガキのように彼女の上に覆い被さる。


…愛してる…」


それだけ呟くと、俺は前以上に細くなったをきつく抱きしめた―











…?」


そっと声をかけるがはスース―っと小さな寝息を零し腕の中で眠ってしまったようだ。
さっきは久し振りにの肌に触れて胸が熱くなった。
一度は手放した温もりを何度も求めての存在を確認するように抱いた。


もう二度と…この腕の中に戻る事はないと思っていたから…


俺は静かにベッドを出るとテラスへと出た。
涼しい風が吹いていて少し汗ばんだ肌に心地いい。
一度空を見上げてからふと下を見てみた。
が退院してから…ここに立って下を覗き、体が震えたのを覚えている。
が…ここから落ちたと思うだけで…心が凍りいた。


(ほんとに…助かって良かった…)


俺はちょっと息をついてまた空を見上げた。
その時、部屋の中からかすかに声が聞こえた気がして俺は振り向いた。


「…オ…?レオ…?」
…?起きたの…?」


俺は急いでベッドの方へ戻るとの傍に行き、そっと抱き寄せ頭を軽く撫でた。


「レオ…?」
「どうした?何で泣いて…」


の頬に涙が零れていて俺は驚いた。
そっと指で拭うと、が俺にしがみ付いてくる。


「いない…から…どこかに行っちゃったかと思っ…たの…」


そう呟いて体を震わせるをきつく抱きしめた。


「どこにも行かないよ…?を置いて、どこにも行かない…」


そう言いながらの背中を優しく撫でて気持ちを落ち着かせる。
少しするとは落ち着いたのか体の震えが止まった。


「大丈夫…?」


俺はそっとの顔を覗き込むとは小さく頷いた。
少しホっとしてを抱きしめ頭を撫でると、俺の胸に顔を押し付けてきた。


まだ…心の奥に不安が残ってるんだろうな…
よっぽど辛い思いをしてたんだ…


そう思うと抱きしめる腕に力が入る。


「ん…レオ…?」
…心配しないで…。俺は…ずっとの傍にいるって言っただろ…?だから…安心して?」


そう言ってをそっとベッドに寝かせた。


「レオ…ごめんね…?…心配かけて…」


は頬を撫でてる俺の手を握ってそう呟いた。


「いいって…。は何も考えず…俺の傍にいればいい」
「うん…」


はやっと安心したような顔を見せて微笑んだ。


には…いつでも笑顔でいて欲しい…」


そう言って触れるだけのキスをした。
そのまま頬、そして額にもそっとキスをして最後に、もう一度唇を重ねる。


啄ばむように包むように優しく口付けているとの手が俺の腕からするっと離れた。
ゆっくり唇を離すとはまた眠りに落ちたようだった。
そっと額に口付け、の頭を撫でながら俺も隣に横になった。
を抱き寄せ、腕の中に納めると安心感で心が満たされてくる。


…不安なんて感じさせないくらいに幸せにしてあげたい。


きっと精神的に不安定な毎日を過ごしていたからまだ心の奥に不安が残っているんだろう。


(一人きりで…我慢してたんだな…)


そう思うと胸が痛む。
彼女の心の中の不安を全て消してあげたいと思った。




「もう…何も心配する事はないから…俺が…を守るよ…」





そう呟いてそっとの体を抱きしめた―





















>>Back




LAST.21...誓い…>>


前回で次が最終話かも…と書きましたが、
書いてるうちに長くなり、終わりませんでした…(笑)
自分でも、いつ終るか解らないので、もう何も言いません^^;
今回はレオが指輪をプレゼントしましたね~v
しっかしジョー大人気ないぞ…(笑)でも、そんなあなたが好きよv(笑)


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


C-MOON...管理人:HANAZO