Catch me if you can.......~A
real love ?... or... fake love?...~
寂しくて眠れない夜は 僕に言って
朝まで 君を 抱きしめているから
夜が怖いなら 僕を呼んで
君の全てを包んで一緒に眠るから
これからは僕が 君を 守るよ…
ACT.21...誓い
「これにて記者会見は終了とさせて頂きます」
ジョーがかしこまった顔でそう言うと集まった記者からはブーイングにも似た声が上がった。
「待って下さい!レオナルドは彼女とヨリを戻したと言う事ですよね?それは相手の女性が婚約者を捨てたということですか?」
「それは先ほどレオナルドが説明した通りです!捨てたという表現はやめて頂きたい」
ジョーが記者を一喝すると今度は他の記者から声が飛んだ。
「では近日、その女性とは結婚…という事もあるんでしょうか?」
「それも先ほど説明したでしょう?婚約したからと言ってすぐに式を挙げるとかはまだ決まっていません」
「彼女は婚約者から逃げるために結婚式当日に自殺をはかったと書いてた雑誌がありましたが事実ですか?」
「そのような事は一切ありません!あれは事故で起きた事です。それに婚約者の方も彼女の気持ちを全て理解したからこそ別れたまでです」
「ではレオナルドは彼女と今は一緒に住んでるんですか?」
「それは…っ」
ジョーが顔を顰めて話そうとしたのを俺は手で静止した。
「彼女とは近々一緒に住む予定です。その前に彼女や両親とも相談して結婚するつもりですので…
その時はまた皆さんにも報告させて頂きます。
それまで僕たちの事はそっとしておいて欲しいんです。彼女も色々とあってまだ精神的にも参っていますので…」
俺がそう説明するとしつこく聞いてきた記者達も頷いて椅子に座った。
それを見てジョーが、もう一度、「では、これで終わります」と告げ、俺の肩を抱いてスタッフの間を擦り抜け裏へと連れて行く。
すると今度の作品の共演者達が俺の背中をバンバン叩きながら、
「今回はレオに質問が集中したな?作品の事より質問が多かったんじゃないか?」
とからかってくる。
俺は苦笑しながら、「すみません。婚約の話は別の機会にと思ってたのにどこからか嗅ぎ付けたみたいですね」と言った。
監督も笑いながら俺の肩を抱いた。
「まあ、そんなもんだ。どうせ指輪を買ったってのがバレてそこからだろう?こうなれば映画も話題性があってヒットしそうだ」
「そうだといいんですけどね?」
俺が笑いながら答えると、監督はニヤニヤしながら、
「愛しい彼女にはなかなか会えなくなるかもしれないけど寂しいなら連れて来てもいいぞ?話題の彼女にも会ってみたいし」
と言ってきたので俺は笑ってしまった。
「じゃあ、お言葉に甘えて連れて行きますよ?まあ、言われなくてもそのつもりでいたんですけどね?」
「こりゃ参ったな。ベタ惚れという噂は本当のようだ」
「そうですね。とことん惚れてますよ…。彼女が傍にいないと夜も明けない」
「おぉ…っ。思い切りノロケられたな…っ。と言うか、その台詞いけるな…。今度の脚本にいれてもらおうかな…」
監督はブツブツいいながらすでに仕事の事で頭がいっぱいのようだ。
俺はその姿を見て笑いを堪えていた。
そこへジョーが声をかけてきた。
「おい、レオ。そろそろ戻るだろ?今夜はちゃんの手料理が待ってるんじゃないのか?」
「あ、もう、そんな時間?やべ…。ジョーさっさと車まわせよ」
「はいはい。もう回してありますよ!ったく偉そうに…」
ジョーはブツブツ言いながらエレベーターに乗り込み地下のボタンを押した。
俺は共演者やスタッフに軽く挨拶をしてからエレベーターに乗り込み時計を見る。
「ああ、もう…。質問がオーバーしたせいで時間が予定より遅れたよ…。早く帰らないと」
「仕方ないさ。新作発表って言ったって記者の奴らはお前の恋愛がどうなったか気になって仕方ないんだからな?」
「そんな人の恋愛事情を知ってどうすんだっての。まあ婚約した事がバレてたんだから仕方ないけど…他の皆に悪い事したよ」
俺はそう言って扉が開くと同時にエレベーターを降り、車の方へ歩いて行った。
ジョーはリモコンでキーを開けると、
「まあ、でも他の皆も興味あったようだぞ?ニヤニヤしながら聞いてたからな?」
と笑って車に乗り込む。
俺も助手席に乗り込むと、「まあ、監督にを連れて行く事を頼む手間が省けたし、良しとするよ」と言ってドアを閉めた。
車が発車してホテルの駐車場から出た時、俺はすぐにに電話を入れた。
「Hello??」
『レオ?もう終ったの?』
「ああ、今はもう車の中。今からすぐ帰るからね?」
『うん。もうすぐ料理も出来上がるの。お養父さんも、お母さんも、お待ちかねよ?』
「そっか。楽しみだな。 ―あ、、体の具合は?どう?」
『今日は気分もいいし大丈夫よ?昼はお母さんと海までドライブに行って来たの。久し振りに海が見れて楽しかった』
「そう…。今度は俺が連れて行ってあげるよ」
『うん。じゃ、気をつけて…早く帰って来てね?』
「ああ、に早く会いたいし飛んで帰る」
『アハハ。待ってるね?』
「ああ、じゃ…」
そこで電話を切ると、ふとジョーの視線を感じた。
「…何、見てんの?」
「え?ああ…いや。相変わらずラブラブで」
「当たり前だろ?ジョーもそろそろ彼女見つけろよな?心配で夜も眠れないよ」
俺が笑いながら、そう言うとジョーは、
「余計なお世話だ!それに、お前が眠れないのはちゃんが傍にいない時だけだろが!」
と顔を真っ赤にした。
俺は笑いながら少し窓を開けると気持ちのいい風が頬を撫でて行く。
「そう言えば探してた家、見つけたぞ?」
思い出しようにジョーが口を開いた。
「え?どこ?」
「マリブの方だ。お望み通り目の前が海だよ?」
「そう。家の感じは?」
「真っ白で、かなり大きいな。あそこは敷地が広いし住みやすいんじゃないか?治安もいいしな」
「そっか。じゃ見に行くかな」
「ああ、後で地図やるよ。不動産屋には話してある。 ―しかし…お前もたいがい優しいな?
ちゃんの為に家を買い換えるなんて。今の家だって3年くらいしか住んでないだろ?」
「まあね。でも…の事を考えると…海の近くの静かな場所の方がいいと思ってさ」
「そうだなぁ…。住むなら海の近くがいいだろうな」
ジョーの言葉を聞きながら俺は窓から顔を出して風にあたり目を瞑った。
と結婚をしたら今の家に住むつもりだったが、やっぱり海の好きな彼女の為にもサンタモニカ辺りに引越した方がいいと思った。
それに精神的にもビバリーヒルズに住むより、少し静かで自然がある場所の方がいい。
は体の方は少しづつ体力も回復して今は元気になってきたが、やはり精神的なダメージに方が大きかったようで時々魘されている事があった。
その度に俺はを抱きしめる。
彼女が不安に飲み込まれないように…
何度も、何度でも…傍にいると言ってあげる。
そうするとは安心したように、また眠りにつくのだ。
ただ最近はそれが落ち着いてきていた。
だからか彼女も仕事に復帰したいと言っている。
その方が家に篭っているよりも精神的にもいいだろうと、ショーンも承諾した。
俺としては…まだ心配なんだけど…
ただ俺もそろそろ仕事も始まり、今までのように毎日傍にいてあげられなくなるし、一人で待たせておくよりはいいとも思った。
の仕事が休みの時なら撮影現場に連れて行くのもいいだろう。
そういう事を少しづつ二人で決めていけばいい。
二人の生活とか時間をゆっくり作り上げていければ…
「レオ、ついたぞ」
「ああ…」
俺が顔を上げると車はゆっくりとの家の門に入って行った。
「じゃ、お疲れさん」
「ああ、お疲れ」
俺が車を降りてドアを閉めようとした時、玄関の扉が開いた。
「お帰りなさいっ」
「!ただいまっ」
笑顔で抱きいついてきたを抱きしめて額にチュっとキスをした後に彼女の薄いショールをかけなおしてあげる。
「エンジンの音が聞こえたから」
そう言って微笑むに俺も笑顔になりながらまだ後ろにいるジョーへ振り返った。
「何見てんの?」
「いやぁ…。何だか、すでに新婚さんだなぁと思ってな…」
ジョーは半目になりつつも少し羨ましげに呟いた。
「あ、ジョーさん、お疲れ様です」
「やあ。すっかり顔色も良くなったね?」
「そうですか?やっと体重も戻って来て…。あ、ジョーさん、まだ仕事あるんですか?」
「え?あ、今日はもうないけど…」
―俺は少し嫌な予感がした…
「じゃあ、一緒に夕飯どうですか?夕飯まだでしょう?」
「え?いいの?」
俺の予感は当たり、思った通りジョーは嬉しそうに車から降りてきた(!) ―早いっつーのっ―
「大勢の方が楽しいし。ジョーさんにはいつもお世話になってるから」
は下りてきたジョーにもったいないくらいの可愛い笑顔で、そう言った。
何気にジョーの鼻の下が伸びている。
俺は軽く溜息をつくとを抱き寄せた。
「…別に、お世話にはなってないだろ?」
「レオ…っ。また、そんなこと言って…。新居探しだって頼んじゃってるのに…」
「ああ、そうそう!いい家が見付かったみたいなんだよ」
俺は話を即座にすりかえての肩を抱いたまま家の中に入っていくとジョーは慌てて追いかけてきた。
そしてバッグの中から何か資料を出しに見せる。
「この家だよ。ちゃん」
「わぁ、真っ白!素敵っ」
は目をまん丸にして喜んでいる。
俺も写真を見てこの雰囲気なら良さそうだと思った。
「じゃあ、明日にでも見に行ってみよう?」
「え?明日はオフ?」
「朝から雑誌のインタビューが数件入ってるけど午後には帰ってこれるよ。な?ジョー」
俺が横目でジョーを見ると仕方ないという顔で頷く。
「撮影に入る前の仕事は一日の中で10個だけってお達しなんでね。何とかスケジュール調整するのに一苦労だよ」
「だって撮影に入ったら一日中かかるんだから今のうちくらいいいだろ?」
「レオ…。ジョーさん困らせたらダメじゃない…」
見ればが少し怖い顔で俺を見上げていた。
その顔すら可愛らしくて俺は笑顔になると、
「いいんだよ?マネージャーってのは苦労するのが仕事なんだからさ?」
と言って頬にキスをする。
「何だとぉ?俺は苦労するのが仕事じゃないぞ?!レオの担当になったのが俺の不幸の始まりなんだよっ」
「へいへい。すみませんね、わがままで」
「解ってるなら宜しい」
「…偉そうに…」
「ん?!何か言ったか?!」
「別に! ―ほんとうるさいおじさんだよなぁ?」
そう言っての頭にキスをしているとリビングからジーンが顔を出した。
「あら、帰ってたの?そんな玄関口で何を…。あら!ジョーさん!今晩わ!」
ジーンは何故かジョーを見た瞬間、クスクス笑いながら歩いて来た。
「あ、ど、どうも!今晩わ!」
「あ、お母さん、夕飯にジョーさんも誘ったの。いいでしょ?」
「ええ、もちろん!大勢の方が楽しいもの」
ジーンもと同じ事を言って微笑んだ。
そして俺の方を見ると、「それに…今夜はもう二人ほど、お客様がいるのよ?」と言ってクスクスと笑っている。
俺は何だか嫌な予感がして顔を顰めた。
「だ、誰ですか…?」
「それはリビングに行けば解るわ。ね?」
俺がを見ると彼女も笑顔で頷いている。
「驚かそうかと思って黙ってたの」
「え…な、何だろう…」
俺はになるべく笑顔を見せるも頬が引きつってしまう。
そしてリビングに歩いて行くと中から何やら楽しそうな声が聞こえてきた。
「やだわっ。ショーンったら上手いんだからっ」
「いやいや。イルは本当にお若いですよ」
(…!!!な…何…?イ…イルだって?!)
俺はその名を聞いてリビングの中に飛び込んだ。
「おぉ、レオナルド、お帰り!」
ショーンが俺に笑顔を向けてそう言った。
しかし俺の目はショーンの前に座って紅茶を飲んでいる女性を見て目が飛び出しそうになった(!)
「あら、レオ、お帰り。お久しぶりね?」
「か、母さん?!」
ニッコリ微笑んで立ち上がったその女性…イルメリン…俺の母親は笑顔で俺の方に歩いて来て急に抱きしめてきた。
「元気そうじゃない?」
「な、な、な…何してんだよ?ここで!」
俺はぐいっと母さんを離した。
「あら、何って息子の奥さんになるちゃんとそのご両親に挨拶を…と思ったのよ?
あなた先週の電話でここにいるって言ってたでしょ?」
「言ってたって…だからって来るか?普通!こんな連絡もしないで!
それに来週辺りにでも新居見に行くついでに会いに行くって言ったろ?!」
「だってぇ…。ちゃんに会いたくて待ちきれなかったんですもの」
母、イルメリンはスネた顔で口を尖らせている。 ―ったく子供かっ!この人は何歳になっても少女のままだ―
「と、とにかく…座ったら?ね?」
が俺の腕をそっとつかんで微笑んでくれたおかげで少しだけ落ち着いてきた。
「あ、ああ…。あの…どうも、すみません。母が急に押しかけたようで…」
俺はショーンとジーンに謝ると、二人とも笑顔で
「何言ってる。挨拶に行く手間が省けたよ」
「そうよ?こんな早くに会えて嬉しいわ?」
と言ってくれた。
俺は頭をかきつつ、ソファーに座った。
母は俺の隣に座り、
「雑誌で読んでて心配してたのよ?あなたが振られたって聞いた時は母さん、驚いちゃって」
「はあ?何でだよ?」
「だって、いつもは貴方が振ってるじゃないの」
「バ…っ!こ、こんなとこで、そんな古い話出すなって!!」
俺は焦りに焦りまくって変な汗が出てきた。
だがそれにはショーンが大笑いして、
「そうなんだってな?君を待ってる間に過去の恋人話をいくつか聞かせてもらったよ?」
と、すでにブランデーなんて飲んでご機嫌の様子だ。
だが俺はその言葉に軽い眩暈を起こした。
「母さん…!何の話してくれてんだよ!と両親の前で!」
「あら…だって、貴方のことよく解って貰うにはいいかな?と思って…」
「いいかな?…じゃないよ!よくないだろ?!に余計なことは言うなよっ。また振られたらどうすんだ?」
俺は顔が真っ赤になりつつそう言うとがクスクス笑いながら、俺の傍に歩いて来た。
「ほーんと。結婚考え直そうかな?」
「えぇ?!」
その言葉に一瞬で青ざめた。 赤くなったり青くなったりと忙しい…。
「う、嘘だろ?」
「だって…レオったら噂以上のことしてるんだもの…。ショックだわ?」
は少し頬を脹らませて顔をぷいっと横に向けてしまい、俺は慌てて彼女を抱き寄せた。
「、母さんの言う事は信じるな。母さんはいつも話を脚色して面白おかしく大げさに話すんだっ。俺はそんな酷い事は―」
「いやあ、結構凄かったぞ?お前」
「ジョーは黙ってろよ!これ以上、話をややこしくすんな!」
俺は向かいに座ったジョーを睨みつけてそう言うと母さんは呑気に笑っている。
そこにジーンが、「いけない。お鍋、彼に任せたままだったわ?」と呟いてキッチンの方へ歩いて行った。
俺はの方を見て、「そう言えば…客がもう一人いるって言ってたけど…誰?」と聞いてみた。
すると今まで頬を脹らませていたがニッコリ微笑むと、「私の新しいフィアンセよ?」と言って俺の腕からスルリと逃げていく。
その言葉に俺は自分の耳がおかしくなったんじゃないかと思った。
「あ、あのさ…」
「なぁに?」
「俺、今、聞き間違えたようなんだけど…。もう一回言ってくれる?キッチンにいるのは誰だって?」
「だから―」
とが言いかけた時、騒々しい声が聞こえてきた。
「ハニ~~!!シチューは俺が死守しといたよ~!」
(げ…っっ!!!)
「ト、トビーっっっ?!!」
俺はほんとに気絶しそうなど頭の奥に衝撃が走った。
「お、お前、な、何して…っ」
「あれ?レオ?お帰りぃ!何ってレオママと一緒にハニーに会いに来たんだよ?ね?ハニー?」
「そうね?」
トビーはそう言ってニカっと笑うと事もあろうに俺のの頬にチュっとキスをしやがった!
「何してんだよ!」
俺は慌ててトビーの腕の中にいるを取り返してそう叫ぶとトビーは肩を竦めた。
「何ってマイハニーにキスしただけだけどぉ?」
「だけだけどぉ?じゃない!マ、マイハニーって?!は俺のフィアンセだ!」
「ああ~でもハニーはレオの過去を知って"やっぱりレオとの結婚はやめようかな?"って言ったから、
じゃあ俺と結婚しよう!ってさっきプロポーズしたばかりなんだ。ね?」
「うん」
「まで、うんって…っ」
これは何かの悪夢かと俺はほんとに頭がクラクラしてきた。
「母さん!何で、トビー連れてきたんだよ!!」
「だって…母さん方向音痴じゃない?ここの場所が解らなくて困って彼に電話したの、行き方聞こうと思って。
そしたら今日はオフだからって飛んで来てくれて案内してくれたのよ?ね?トビー」
「ね?レオママっ」
二人は何だかニコニコと微笑みあっている。(だいたい、この二人は前から何だか仲がいい)
「道が解らないなら来るなよ!ったく!それで何で俺の過去の話なんて持ち出してんだ?!
しかも人のフィアンセにプ、プロポーズまで…っ」
俺は本当に眩暈がしてソファーに座り込んだ。
するとが慌てて俺の方に飛んで来て顔を覗き込んでくる。
「レオ?大丈夫?」
「…嘘だろ?過去の事なんて気にするなよ…。今の俺にはだけなんだ…」
俺はの手を握って真剣にそう言うとの頬がかすかに赤くなった。
その時、ぷ…っっと噴出すのが聞こえて突然トビー、母さん、そしてショーンまでもが爆笑しだした。
「レ、レオの顔ったら…ぷー…っ」
「アハハハハ…っ。あの焦りよう見た?」
「ま、まさか、ここまで焦るとは…っアッハッハ…っ」
「あんなレオ、初めて見た…アハハハっ」
何だかジョーまでが笑い出し、俺は何が何だか解らなくて目の前で困った顔をしているを見た。
「え?な、何笑ってんの?」
「あ、あの…レオ…ごめんなさい…。ちょっとしたジョークだって言うから…」
「え?」
俺がキョトンとしていると母さんが俺の肩をバシバシと殴ってくる。
「嘘に決まってるでしょ?ちょっとあんたをからかったのよ?ね?トビー?」
「そうそう!ちゃんにプロポーズなんてしてレオに殺されたくないからね~っ」
トビーもヘラヘラと笑いながらそう言ったのを聞いて俺は顔が真っ赤になった。
「お前ら…っ」
「まあ、でも?レオの過去話でちゃんが驚いてたのは確かだけどね?」
「えぇ?!お前、そこは嘘ついていいよ!」
バカ正直なトビーに思わずそう突っ込むとがぷぅっと頬を脹らませて俺を見上げた。
「何よ。レオ、私に嘘つく気なの?」
「え?ち、違う…っ。だって過去は過去だろ?た、確かに若い時とか…と出会う前には色々とあったけどさ…
でもこんなに好きになったのはだけだよ?!」
俺が慌ててそう言うとその場がシーンとなり、は顔が真っ赤になってキッチンに走っていってしまった。
「あ…?」
追いかけようとするとトビーが俺の隣に無理やり座ってきて肩を抱いてくる。
「うひょーっ。さすがレオ!こんな大勢の前で愛の告白とは恐れ入ったね?ね?ショーンパパ!」
「ああ、いやあ、若いっていいですな?イルメリンさん」
「ほんとにねぇ。我が息子ながら男らしいわ?」
この際…ショーンと母さんの事は置いておいて……
何故、トビーがの父親をパパと呼んでいるのか俺には解らない…理解不能だ…
ジョーはジョーで何だか流れについて行ってるし…何なんだ、この変な集まりは…っ
この時…俺は未来の家族に軽く不安を覚えた…。
その日のディナーは何だか変な面々でとることになったが俺はさっきの件で食欲減退…
せっかくのの手料理なのに…と思いつつ、彼女が作ってくれたのだけはしっかり食べたんだけど…
ディナーもうるさいまま終り、(ショーンも、かなりノリのいいオヤジと見た…)食後に軽く飲んだ後、
母さんとトビー、そしてジョーがやっと重い腰を上げた。
「じゃあ、そろそろ私達は帰るわ?」
「そうだね。レオママ、送るよ」
「あら、嬉しい。トビーに送ってもらえるなんて!良かったら一杯飲んでく?」
「おぉ、いいねぇ~!」
俺はこの二人の会話を軽く無視しておいた(!)
「じゃあ、ジョー、明日の朝、迎えに来て」
「OK。イチャイチャしすぎて寝坊するなよ?」
「それは約束できないな?」
「お、おい!ったく…。 ――ちゃん、こいつに何か言っても無駄だ。君に任せるよ」
ジョーは俺を軽く睨み、仕方なくに頼んでいる。
は笑顔で頷いた。
「解りました。ちゃんと起こしますから」
「いいの?そんなこと言って。今夜は寝かさないって言ったらどうする?」
俺が笑いながらの顔を覗き込むと、彼女は顔から火が吹きそうなほど赤くなってしまった。
「し、知らない!」
「ごめん、ジョークだってば」
俺が苦笑しながらの頬に軽くキスをすると母さんがこっちに歩いて来た。
「じゃあ、またね?家が決まったら連絡して?」
「ああ、解ってるよ」
「式はまだ?」
「式は…まあ考えてるよ?って言っても大げさにする気はないんだ。が嫌がるからさ…」
「そう。私もその方がいいと思うわ?」
母さんは急に真面目な顔で俺を見た。
「ちゃんの前の婚約者の方を…傷つけて一緒になるんだから…その辺、解ってるわよね?」
母さんの言葉にそっとの方に視線をやると彼女はトビーと何やら楽しそうに話している。
俺は母さんの方に視線を戻すと軽く息をついて頷いた。
「うん。解ってる。だから…式も身内だけにしたいんだ。友達と一部の仕事仲間と…家族だけで…」
「ええ、好きにしなさい」
母さんはそう言って微笑んだ。
「じゃあ…母さん行くわ?トビーとデートだし」
「はいはい。あんま二人で飲みすぎんなよ?」
俺は苦笑してそう言うと母さんは笑いながら、「ま、襲わないように気をつけるわ」と言ってトビーに声をかけた。
「トビー。もう行きましょ?ちゃんをレオに返してあげて?」
「は~い。レオママ!じゃ、ハニー、レオが浮気したらすぐ俺の元へ飛んで来てね?」
「バ…おいトビー!誰が浮気するんだ、誰が!」
俺はトビーの言葉にそう怒鳴った、がはクスクス笑っている。
「はいはい。お休みなさい」
「お、おい…はいはいって…」
俺がそう言いかけてのとこへ歩きかけた時、トビーのバカは調子に乗って、
「じゃ、おやすみ!ハニー」
というとの頬にまた性懲りもなくキスをした(!)
俺は慌ててを抱き寄せるとトビーの尻を軽~く蹴っておいた…。
「はぁ…急に静かになったね?」
が皆を見送った後、そう呟いた。
俺はの肩を抱き寄せて頭に軽くキスをすると、
「静かな方がいいよ。特にトビーなんていたら何を言い出すか…」
と言って溜息をつくとが苦笑している。
「もう…レオが蹴るからトビー、お尻擦りながら帰っていったよ?」
「ああ、トビーのケツなんて放っておいていいって。あれでも足りないくらいだよ?俺のにキスするなんて…」
「だ、だって…ほっぺだよ…?」
が少し恥ずかしそうに俺を見上げてくる顔が可愛くてちょっと顔が綻んだ。
そのまま優しくの頬を両手で包む。
「ホッペでもダメ!にキスするのは俺だけでいいよ…」
そう言っての頬を服の袖で軽く拭いてあげた(!)
「ん…な、何?」
「え?ああ…消毒しないとね?」
俺は笑いながらそう言うとの頬にチュっと口付けてそのまま軽く唇を重ねた。
「あら?皆、帰ったの…?」
「「―――っっ?!」」
とキスをしていたら背後でジーンの声が聞こえて俺達は慌てて離れた。
「あ、あの…今さっき帰りました」
「そう。二人とも中へ入ったら?」
ジーンはドアの隙間から顔だけ出すと何だかニコニコしている。
「は、はい。今…」
俺はそう言いながら顔が引きつるがはちょっと恥ずかしそうに俺を見上げていた。
「部屋に戻ろうか?」
「う、うん…」
俺とはそう言って静かに家の中へ入って行った―
その家は申し分なかった。
大きな敷地も然ることながら門を抜ければ目の前は海。
緑も多く、庭先も広かった。
「ここにする?」
俺がの頬にキスをしながら聞くとは驚いたような顔で見上げてきた。
「でも…ほんとにあっちの家は売っちゃうの?」
「うん、どうして?あっちがいい?」
「あの家には…思い出があるから…」
はそう言ってちょっと微笑んだ。
そう言われて俺も思い出す。
初めてが家に来たのは大雨の日…二人でNBAの試合を見に行った帰りだったっけ。
その後に…が俺のシャツを届けてくれた。
あの時は…もうのことが好きだと気付いた直後だったな…。
その次が…突然の夜の訪問…
まさかから何もないのに俺に会いに来てくれると思わなくて…凄く嬉しかったのを覚えている。
あの頃は…少しづつ…が近づいてきてくれるようで…でも遠くて…苦しい毎日だった。
婚約者のダニーに…嫉妬ばかりしていたな…。
でもその後のクリスマスイヴ…俺がに初めて真剣に告白をしたんだ。
映画の真似なんかして…今思えば恥ずかしくなってくる。
プライベートで、まさか自分のやった役になりきり告白するなんて思わなかった。
それでも…も俺の事を好きだと言ってくれた。
約束した通り、家まで来てくれて…
本当に幸せを感じた夜だったと思う。
そういう思い出が短い間に沢山つまってしまった家だ。
その家が人の物になってしまうのをは寂しいと感じてくれてるんだろうか。
「…海に行ってみようか?」
「え?あ…そうね。せっかく海が目の前にあるんだし…散歩しよ?」
はそう言って微笑むと俺の手を引っ張っていく。
「待ってよ。そんな走ったら転んじゃうってば」
ぐいぐいと引っ張りながら走って行くに俺は苦笑しながらついていった。
家の大きな門を抜け、少し坂道になっている道を真っ直ぐ下りていくと目の前には真っ青な海が広がっている。
「潮風が気持ちいい…」
は波打ち際まで歩いて行くとそう呟いた。
俺も隣に立つと両手を伸ばして大きく伸びをした。
「う~ん…ほんと…何だか寝ちゃいそうだな…」
そう言って少し下がると砂の上に座って青い空を見上げる。
は、その場に立ったまま、ジっと海を見つめていた。
彼女の長い髪が潮風に吹かれてサラサラと流れていく。
それが凄く奇麗だ…と思った。
「…」
「ん?」
「髪…伸びたね?」
俺がそう声をかけるとはやっと振り向いた。
「そう言えば…そうかな?ちょっと邪魔になってきちゃったし…少し切ろうかな…?」
はそう言って歩いて来ると俺の前にしゃがみ込んで微笑んだ。
俺はの腕を引っ張って抱き寄せるとの髪をそっと撫でた。
「切らないでよ…。凄く奇麗なんだから…」
そう言っての髪を手で掬うとそっと唇をつけて、そのまま指を髪に通していく。
サラサラの黒髪が指の隙間から逃げていくのをは恥ずかしそうに見ている。
俺はちょっと微笑むとの頬にチュっとキスをして優しく抱きしめた。
「…」
「…え?」
「あの家には…確かに俺との思い出があるんだけど…でも俺は過去じゃなく…これからのとの未来が必要なんだ」
「…レオ…」
はちょっと驚いて顔を上げた。
俺は顔を傾け彼女の唇にそっと自分の唇を重ねる。
触れるだけの口付けを交わし、ゆっくり離すとの長い睫毛が震えた。
「これから…新しい家で二人の思い出いっぱい作ればいい…」
俺がそう言って微笑むとも嬉しそうに微笑んで俺の胸に頬を寄せてくる。
彼女を足の間に入れるようにして後ろからギュっと抱きしめながら暫く二人静かに海を見ていた。
その時、ふと思い出した。
そう言えば…前に…二人で海を見た時は…凄く悲しい気持ちだった気がする。
を抱きしめながら…誰にも渡したくないって…初めて思ったんだ。
ずっと一緒にいたくて…を帰したくなくて…でも…その一言さえ言えないままだった。
でも…
今は、こんなに近くにいる。
あの絶望的だった恋が実のって…今は未来への希望で満ちているのが不思議なくらいだ。
ここまで来るのに…色々とあったけど…二人で乗り越えた。
と出会う前の頃の自分がどんなだったのか思い出せないくらい今の俺は彼女だけを想って、彼女の為だけにここにいる。
こんなに愛せる人は…他にいない。
俺はの頭に頬を寄せると抱きしめている腕に力を入れた。
「レオ…?どうしたの?」
が心配そうに声をかけてきた。
俺はの頭に頬を寄せたまま、もう一度ギュっと抱きしめ、「が…もう、どこにも行かないように…と思って…」と呟いた。
「レオ…私は…どこにも行かないって言ったでしょ?いるよ?ずぅっと…レオの傍に…逃げたって追いかけてくんだから」
がクスクス笑いながらそう言って俺もちょっと笑ってしまった。
「追いかけるのは俺の方だよ?最初からを追いかけてた。いつ俺に捕まってくれるのかなって思いながらね?」
「…もう…捕まってるよ?」
はそう言って少し後ろを向くと俺の顔を見上げてくる。
目の前のは出逢った頃のまま、真っ直ぐな瞳で俺を見つめた。
俺は愛しさで溢れてちょっと微笑むとの額に口付けながら言葉にならない想いをの唇に返した…。
式の当日は見事な快晴―
マスコミもシャットアウトし、仕事関係の人も仲のいい人達だけで身内だけの静かな式にしてはなかなか賑やかだった。
「?用意出来てる?大丈夫?落ち着いてる?」
「うん。大丈夫よ?お母さんこそ何だか緊張してない?」
私はクスっと笑って落ち着きなくウロウロと歩き回ってる母を見つめた。
「そ、そうね…。だって…何だか俳優さん達が色々と来てるからお母さん緊張しちゃって…色紙買って来たら良かったわ…?」
「何よ、それ…。それに今日来てるのはレオの友達ばかりだから…いつでも頼めるわよ?」
「そ、そうね…。じゃあ…サインは後で頼むわ」
母は何だか頬を紅潮させて微笑んだ。
それを呆れ顔で見ているショーンの苦虫を潰したような顔に私は笑いを堪えると、「お養父さん…」と声をかけた。
「ん?何だ?私は大丈夫だぞ?き、緊張なんてしてないからな?うん」
汗を拭きながらそう言いきる養父に私は微笑んだ。
「お養父さん…お母さん…。今日まで…私のことを育ててくれてありがとう…。色々と心配かけてばかりで…ごめんなさい…」
「…そんな事はもう…」
「そうよ?そんなのはいいから…」
涙ぐむ二人に私はちょっと微笑み養父を見た。
「それと…お養父さんは…本当の娘じゃない私を実の娘のように育ててくれて…本当に感謝してる…。私…幸せだった」
「…何…何言ってる…。お前は本当の娘だぞ?私の…本当の娘だ…。私の方が幸せだった…」
養父は私をそっと抱きしめてそう呟いた。
頬には涙が零れて必死にハンカチで拭っている。
私も涙が浮かんできて慌てて手で押えた。
「幸せになるのよ…?がいつも笑顔でいてくれたら…私達はこれからだって幸せでいれるんだから…」
「そうだぞ?それに…家が近いんだからいつでも帰って来い。レオナルドとケンカしたとか…
あいつが浮気した時は俺が怒ってやるから…」
養父は感極まったのか、何だか余計な事まで言い出して私と母を驚かせた。
「ちょっと、ショーン…結婚式前に縁起でもないこと言わないの…っ!あのレオが浮気するはずないでしょ?」
「む…。解らないぞ?レオナルドはモテるからな?お前だって聞いただろう?あいつの恋愛遍歴を!」
「何言ってるの。それ聞いた時は"昔の俺みたいだな、俺の息子になるに相応しいっ。アッハッハ!"なんて言って笑ってたクセに!」
「あ、あれは酔ってただけで本心では…っ」
「ああ、そうですか。じゃあ、後で"昔の俺"とやらをジックリ聞かせてもらおうじゃありませんか」
「ジーン…っ。そんな娘の結婚式でする話じゃないだろう?!」
「あら、最初にしたのは、貴方ですよ?」
「そ、それはだな…」
何だか二人は夫婦ケンカを始めて私は小さく溜息をついた。
(もぅ…どうして、こうなるかな…せっかく最後の挨拶してたのに…)
私は二人の犬も食わないケンカを見てさっきの涙も引っ込んでしまった。
そこにノックの音が聞こえて返事をするとひょこっとマークが顔を出した。
「マーク!」
「うわあ、奇麗…っ」
マークは嬉しそうに飛び込んでくると私に抱きついた。
マークは子供用のタキシードを着ていて凄く可愛い。
「、凄く奇麗だよ?!」
「ありがとう、マークも紳士で素敵よ?。お父さんは?」
「あ、忘れてた!お父さん!早く!」
マークがドアの方に顔を向けてそう呼ぶと、おずおずとスーツ姿の一人の男性が入って来る。
前に何度か顔を合わせた事のあるマークの父親のアランが顔を出した。
「どうも…さん。お久しぶりです」
「こんにちは!今日は来ていただいてありがとう御座います」
私は彼の方に歩いて行くとアランと握手をした。
「いえ…こちらこそ、いつもマークの面倒を見ていただいて…本当に感謝しています。
こいつはさんとレオナルドくんの事になるといつも嬉しそうに話してくれるんですよ」
「そんな…私もレオも…マークとは友達ですから。ね?マーク」
私がそう言ってマークの前にしゃがんだ。
「うん! ―でもさぁ、僕、今だから言うけどほんとは大きくなったらをお嫁さんにしたかったんだ」
「…えっ?」
「こ、こら、マーク!まだそんなこと言って…ほんと、すみません…」
アランは慌てて謝っているが私は嬉しくてマークをギュっと抱きしめた。
「いいんです。 ―ほんと?マーク…」
私はアランに向かって首を振り、マークの頬を両手で包むとマークは少し恥ずかしそうに笑顔を見せる。
「うん。ほんとだよ?でもお兄ちゃんと会ってにはお兄ちゃんがお似合いだなって思ったんだ。
だからお兄ちゃんに譲ってやろうと思ってさ?」
「そう!嬉しいわ?ありがとう、マーク…」
私はマークの言葉に、ちょっと笑いながらも嬉しくて涙が浮かんできた。
「今ね?お兄ちゃんのとこにも行ってきたんだけど…。僕がそう言ったら得意げになってたよ?大人気ないよね?」
「えっ?」
マークがクスクス笑いながら言った言葉に私は顔が赤くなってしまった。
「な、何て言ってた?」
「うんとね。僕が"をお嫁さんにしたかった"って言ったら"は俺のものだからいくらマークでも譲ってやらなーい"だって。
ほんとあの肉のおじさんの影響受けちゃってんじゃないの?ヤバイよ?マネージャー変えて貰った方がいいって」
マークは肩を竦めてそう言うので私は思わず吹き出してしまった。
「や、やだ…。レオてば、そんなこと言ってた?おかしい…アハハ…」
「だろ?お兄ちゃん、にベタ惚れだからなぁ…。の事になると大人気なくなるのかな?他は寛大なのにね?」
「こ、こら、マーク! ほんとすみません、こいつマセてて…」
アランはしきりに母や養父にまで頭を下げているが二人ともマークの言葉に笑いを堪えているようだ。
「マークはほんと難しい言葉知ってるのね?これからは学校でも勉強ができるし、そしたらもっと楽しい事が待ってるわよ?」
「うん。僕いっぱい勉強してフランクみたいなドクターになるんだ」
「え?マーク、お医者さんになるの?」
私は驚いてマークを見た。
するとマークは得意げに胸を張る。
「うん。僕、フランクみたいにいいドクターになってみたいな看護婦さんと結婚するんだ」
「え…?わ、私みたいって…」
そう言われて、ちょっと照れくさかったが凄く嬉しくなった。
そこに、「あ~ら。私みたいな看護婦がいいんじゃない?マーク」マークと私は声のする方へ顔を向けた。
「キャシー!」
「Hi!!」
キャシーが笑顔で控室に入って来た。
「来てくれてありがとう…っ」
私はキャシーに抱きついてお礼を言った。
キャシーは私の背中をポンポンと叩くとそっと体を離してニッコリと微笑む。
「ほんと奇麗よ?…。おめでとう…」
「ありがと…。キャシーには色々と心配かけちゃって…」
「そんなのいいのよ!この前も言ったでしょう?それに…二度も式に呼ばれたんだし今度こそブーケは貰うわよ?」
「も、もう…キャシーったら…」
「アハハ、ごめん。この話は禁句ね!」
相変わらずケロっとしてるので怒るに怒れない。
「今、レオにも挨拶してきたんだけどやっぱり彼、カッコイイわよねぇ…。何で、あんなにタキシードが似合うのかしら…
もうジャックに見えて思わず目がハートになっちゃったわ?」
キャシーはそう言って私を恨めしそうに見ると、「今度、一回貸してよ。デートさせて?」とイラズラっ子のような顔を見せる。
その言葉に私は慌てて首を振った。
「ダ、ダメよ…っ。デートなんて…キャシー恋人出来たじゃないの!」
「だってぇ…。レオよりは劣るじゃない?」
「ま、またそんなこと言って…」
私が口を尖らせるとキャシーが笑い出した。
「嘘よ、嘘!だいたいがいいって言ってくれたとしてもレオが来ないわよ。
レオったらずーっと"のドレス姿早く見たいな~"なんて言ってるんだもの」
「…え?」
「そんな事ばかり言ってるレオなんか口説けないわ?あ、ジョニーとかトビーも来てたけど皆にからかわれてたわよ?」
「そ、そう…」
私は何だか恥ずかしくなり顔が赤くなってしまった。
すると、そこへホテルの人が私を呼びに来た。
「そろそろ新婦と父親の方はスタンバイして下さい」
「はい、今行きます」
母がそう返事をして養父のネクタイを軽く直すと、「大丈夫?ちゃんとヴァージンロード、歩ける?」と聞いている。
「む…っ。歩くくらいできるさ!問題はつまずかないかって事だけだ」
「何を偉そうに…。はい、じゃ私達は席の方に行ってるから…頑張ってね?」
「わ、解った」
養父はまた汗を拭きながらコクコクと頷いている。
それを心配そうに見つつ、「じゃ、…先に行ってるわね?」と微笑んだ。
「解った」
私が頷くとキャシーやマーク達も、
「じゃ、僕らも席で見てるね?お兄ちゃんとの誓いのキッス、頑張って!」
「マ、マーク…っ!」
「アハハ。言うじゃない?ま、その辺、ハンカチ握りしめてみてあげるわ?じゃ、後で」
「あ、ありがと。キャシー、またね?アランさんもありがとう御座います」
「どうも。あ、あの頑張って下さい!」
アランまでが何故か緊張した面持ちでいきなりそう言うと私の手を握り締めた。
「は、はい…。頑張ります…(?!)」
いったい何を頑張ればいいのか私は首を傾げたがそこは返事をしておく。
皆が控室から出て行くと養父と二人だけになった。
「お養父さん、行きましょうか?」
「あ、ああ…」
私は笑いを堪えて何だかガチガチな父の腕に自分の腕を通した。
一方、新郎の控室では…
「ったくさぁ~。大人気ないよなぁ?レオはっ。子供にまであんな言い方しちゃって」
「うるさいぞ。トビー…お前を招待した覚えはない。帰れ」
「な、何だよ!その言い方は!俺はママに招待状、送って貰ったんだからね!」
トビーは似合わないスーツでギャーギャーと言い返してくる。
俺は煙草に火をつけながら溜息をついた。
「でも…やっとだな?レオ」
ジョニーが俺の隣に座って肩を叩いた。
何だか普段以上に派手なスーツのような気がするのは俺だけか?
「ああ…やっとを俺だけのものにできるかな…?」
「あ~あ~独占欲丸出し!言っとくけどね?レオがちゃんを泣かせたりしたら
すぐに俺がレオを"ちゃんの夫の座"から引き摺り下ろしちゃうんだからね?!」
「はいはい…って、俺がを泣かせるわけないだろ!!」
「いやぁ…解らないぞぉ~?」
「な、何だよ。ジョニーまで…。俺が何でを泣かせるんだ?」
俺はこの面々を式に招待したのをすでに後悔し始めていた(!)
ジョニーは被っていた"派手なハット"を被りなおすとニヤニヤ笑いながら俺を見た。
「とびきりのいい女と共演したりして誘われたりしたらお前だってフラフラ~って行くんじゃないか?」
「はぁ?ないない!あるわけがない!だいたいよりいい女っているの?どこ?」
俺はツラっとそう言って煙草の煙を目の前のトビーにかけてやった。
「うわ、煙いよ!新郎のクセに式の前に煙草を吸うな!」
「うるさいなぁ…。お前は俺のマネージャーか?うるさいマネージャーはジョーだけで充分なんだよ!」
俺は顔を顰めてそう言うと煙草を灰皿に押しつぶした。
「…うるさいマネージャーで悪かったな…」
その声にドキっとして振り返るとジョーが何だか、ちんちくりん(!)なタキシードを着て立っていた。
「ぶ…っ。そ、それ何のつもりだ?皇帝ペンギンか?」
「「「ウハハハハハハ…っ」」
その場にいたジョニーやトビーも爆笑している。
「う、うるさい!腹回りがちょうどいいのがなかったんだよ!」
「ハハハ…腹痛い…っ!だ、だったら普通のスーツ着て来いよ!」
俺は笑いながら膨れっ面のジョーを指さした。
「うるさいな!着てみたかったんだよ!」
ジョーはそう言いながら口を尖らせソファーに腰をかける。
その時…心なしかビリ…っと音がした気がしたが俺は黙っていた…(!)
その時、ノックの音が聞こえてドアが開いた。
「レオ!」
「あ、トム!来てくれたんだ!」
俺は久し振りのトムに笑顔になった。
「ああ、悪い!遅れて…。何とか撮影早めに切り上げてきたんだ。よぉ、ジョニー」
「おぅ!久し振りだな!」
ジョニーとトムも笑顔で抱き合っている。
そこに後ろからトビーも抱きついた。
「俺も混ぜてよ!」
「「うっとぉしい…っっ」」
二人にそう言われてトビーは口を尖らせている。
「ああ、レオ」
「ん?」
「"Catch me if you
can!"のスタッフも先に席の方で待ってるってさ」
「嘘。皆、来てくれたんだ!監督はさっき顔出してくれたんだけどさ?」
「ああ、スピルバーグにも今、廊下で会ったよ?何だかウキウキしてたぞ?人の結婚式なのに」
「彼は少年みたいなとこがあるからね。だからああいう映画も撮れるんだろ?」
「だな?」
俺とトムは笑いながら顔を見合わせた。
「でもスタッフの皆まで来てくれて嬉しいな…。もう現場もバラバラなはずだし招待状は送ったけど半分諦めてたんだ」
俺が苦笑しながらトムを見た。
「ああ、でも…あの映画のスタッフはお前達を見守ってきたのもあるからな?来たかったらしいよ?」
「そっか。アトランタでは、お世話になったしな…」
あのアトランタでの日々も今なら懐かしく感じる。
「ちゃんは?会ったのか?」
「いや…まだなんだ。俺は早くウエディングドレス姿が見たいんだけどさ。先に見ちゃったら感動がないでしょって言われて…
教会で初めて見せたいらしいよ?まあ、その方が感動しそうだけどね?でも早く見たいなぁ…きっとすっごく奇麗だよ」
「泣くなよ~?」
「な、泣かないよ…っ。いや…まあ、解らないけどさ…。色々とあったから…」
俺がそう言って苦笑するとトムは真顔で俺の肩を抱いた。
「これから今まで以上に幸せになれ。辛かった分も全部埋めてな?」
「トム…。サンキュ…」
トムの気持ちが嬉しくて俺は胸が熱くなった。
そこへ、うるさい声が飛んでくる。
「そこ!二人で浸るなよ! ―あ、レオママ!」
ノックもせずにドアを開けて入って来たのは…俺の母さんだ。
「レオ、用意はいいの?そろそろよ?」
「ああ、大丈夫」
「あら、いい男ね?さすが私の息子!」
母はそう言って俺のネクタイを直してくれる。
「よく言うよ…。ほんと」
俺が肩を竦めると母は笑顔で俺を抱きしめた。
「…幸せになるのよ?」
「母さん…」
「好きな子を一生守ってあげてね?」
「……ああ、解ってる」
母を抱きしめ返し、俺はちょっと微笑んだ。
そこへノックの音がしてホテルの人が顔を出した。
「そろそろ教会の方へ移動して下さい」
「はい。 ――じゃあ、行こうかな」
俺はちょっと気を引き締めてタキシードのジャケットを直すと皆も立ち上がった。
「さてさて。レオナルド・ディカプリオの新郎っぷりを拝みに行きますかぁ!」
「トビー…やっぱ、お前帰れ…」
「えぇ~?!やだよぉ!レオママ、何とか言ってよ!あのバカ息子に!」
「はいはい。バカは一緒だからね?行くわよ、トビー」
「えぇ~~レオママまで酷いよ~」
トビーは大騒ぎしながら母に手を引かれて行く。
(ほんとのバカはお前だろう…?トビー…)
俺はそう思いつつ気持ちを切り替えた。
ジョニーやトム、ジョーも俺の肩をポンポンと叩いて先を歩いて行く。
教会には最後に入ると新郎側の招待客の席に懐かしい面々を見つけた。
「あ、レオ!」
「おぉ、ダン!来てくれてサンキュ!皆も!」
「わぁ~レオ!素敵よ!」
あの映画の衣装担当のメアリーも俺を見て笑顔で手を振ってきた。
大道具のスティーブも今日は一応スーツでビシっと決めている。
「ああ~!ちゃん狙ってたのにな~?」
「うるさいぞ?スティーヴ!は一筋縄じゃいかないからお前には無理だったよっ」
俺がそう言って笑うとスタッフの皆が、「「「That's
right!」」」と言って笑い出した。
「な、何だよ、皆してさぁ…ほんと意地悪なのは変わらずか」
スティーヴはそう言って苦笑すると肩を竦めた。
その時、神父が入って来て俺は前の方に歩いて行く。
その途中、マークやキャシーが手を振ってくる。
俺も小さく手を振り返すと、マークが口だけ動かして、
"お 兄 ちゃ ん が ん ば れ "
と言ってくれた。
それには俺も笑顔で頷き、そのまま神父の前に立ってが来るのを待った。
(さすがにこの場所に立つと緊張もしてくるな…)
俺は軽く息を吐き出すと背筋を伸ばして扉の方へ視線を向けた。
パイプオルガンの音が響いてゆっくりと扉が開くと、そこに真っ白なウエディングドレスを着ているが見える。
遠いのではっきりと表情までは解らない。
俺は胸がドキドキしてくるのを感じ、彼女とショーンが歩き出すのを黙って見ていた―
私と養父が廊下に出るとホテルの人が立っていて教会の入り口まで案内してくれた。
「では、ここで、お待ちください」
そう言って歩いて行ってしまった。
やはり教会の扉の前に立つと私までが緊張してくる。
思わず養父の腕にギュっとしがみついた。
「大丈夫か?…」
「う、うん…」
「…」
「え?」
「お前は…ほんとにいい娘に育ってくれた…。医者の私を見て看護婦にまでなってくれた…。私の自慢の娘だよ?」
「お養父さん…」
養父の優しい瞳と目が合い、私は胸が熱くなった。
喉の奥が痛くてギュっと唇を噛み締める。
「私…お養父さんの娘になれて…幸せよ?」
涙を堪えながら震える声でそう言うと養父はそっと目頭を押えた。
その時、パイプオルガンの音が響き目の前の扉が開くと真っ赤なヴァージンロードが見える。
気付けば後ろに小さな女の子二人が花束を持って私のドレスの裾を持ち上げてくれていた。
「さぁ…行こうか…」
「…はい」
養父がゆっくりと歩き出し、私もそれに合わせて歩いて行く。
ドレスの裾を踏まないように気をつけながら、そっと招待客の方をヴェール越しに見てみる。
左右に視線をやると母やマーク、キャシー、親戚の人達…そして懐かしい顔もあり驚いた。
あ…ダンにメアリー…スティーヴまで…
あのクルーのスタッフが来てくれてるんだ…
私はメアリーが笑顔で、
「よく頑張ったわね!おめでとう!!」
と声をかけてくれて嬉しさで涙が出そうになったが何とか堪えて小さく頭を下げて微笑んだ。
その隣ではスピルバーグがハンディカムで撮影してるのが見える。
(やだ…彼ってやっぱり監督なんだなぁ…こんな場所でもカメラ回してる…)
そう思うと今度は噴出しそうにるのを何とか堪え、少しづつ近付いて来たレオのいる前方に視線を向ける。
レオは真っ白なタキシードを着ていて、そのキザっぷりは見事に似合っていた。
優しく微笑み、私が養父と近くまで行くとそっと手を差し伸べてくれる。
ショーンが私の手をレオに託すと少し引き寄せられた。
「…凄い奇麗だ…。ほんと奇麗だよ…?」
「レオ…」
レオは何だか感動したようにそう呟くと小さな声で、
「最初に会った時みたいに…天使に見える」
と言って私の手をギュっと握りしめた。
その時目の前で神父が静かに誓いの言葉を話し始めた。
「…を妻とし…病める時も健やかなる時も…敬い、愛する事を誓いますか?」
その言葉があまり耳に入らないくらいドキドキする。
だが不意にレオが、
「誓います」
と強い言葉で言ったのが聞こえ思わず顔を上げると今度は神父が私の方に問い掛けた。
「レオナルドを夫とし…病める時も健やかなる時も…敬い、愛する事を誓いますか?」
私は軽く深呼吸をすると真っ直ぐにレオを見つめ、
「誓います」
と答えた。
すると神父は微笑み、
「では…指輪の交換を…」
と言って結婚指輪を差し出した。
レオが私の左手の薬指に指輪をはめていくのを見ていると涙で視界が曇るのが解り慌ててギュっと目を瞑る。
そして今度は私が指輪を取り、レオの左手薬指にゆっくりとはめていく。
そこで二人でちょっと微笑みあうと、神父が言葉を続ける。
「では…ここで誓いのキスを…」
その言葉にドキっとして私は少し頭を下げた。
レオがそっと私のヴェールを捲り後ろへと回すとゆっくりと顔を上げる。
レオは優しく微笑んで私の頬にそっと両手を添えた。
「…」
「…え?」
そのままキスされるのかと思えば突然、名前を呼ばれて私は驚いた
目の前のレオを見つめると彼はニッコリ微笑んで一言――
「やっと……捕まえた…」
「―――っ」
その言葉に驚き目を見開いた瞬間、唇を塞がれた。
その時、後ろで歓声が聞こえたが私は胸がいっぱいでレオの口付けが熱くてクラクラする。
堪えていた涙が頬を伝っていくのだけが解る。
長い長い口付けのあと…レオは優しく私の涙を唇で掬い、
「愛してる…これからは…絶対に離さない。逃げても…また何度でも追いかけるよ?」
と言って私を抱きしめた。
それを聞いてまたも皆から歓声が上がる中、私もレオに抱きついた。
「愛してる…。もう絶対に離れない…逃げたりしないよ…?レオに…捕まっちゃったから…」
その言葉にレオは私の顔を覗き込み、嬉しそうに微笑むともう一度、唇を重ねた。
目の前に立っている神父もこれには驚いた顔をしていたらしいがレオが私を離さないのを見て、
「この二人は…神の前で愛を誓う必要はなかったみたいだな…」
と苦笑してたんだとか。
私とレオには、そんな事は解るはずもなく…
これは後で…マークから聞いたお話――
Fin...
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Extra
Story...Remembers
beginning...>>
やっと最終話を迎えられました!パチパチパチ~v
まあ式後の事は番外編を書いた時にでも…二人、無事に結婚する事が出来ましたねぇ^^
今回はレオママやマークパパも登場しました(笑)
もっと皆とも絡めたかったんですが長々になってしまいそうなので却下(笑)
こざっぱりと纏めた…はずです…(微妙)
このレオ夢の連載には沢山の嬉しいコメントを頂きました!
レオファンの方も、そうじゃない方からも沢山の感想を頂き、大変感激しております。
最後の誓いでレオに「やっと捕まえた…」と言わせたいがために思いついた安易なお話ですが、
ここまでの長い間、愛読して頂きまして本当にありがとう御座いました!
今後もまた精進して頑張りたいと思います。
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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