Celebrity......Love only of ten days











「ふぁぁぁ・・・」

大欠伸と共にカーテンを開けた。
外は快晴。
気持ちのいい朝だ。

「ん~・・・、起きたかな・・・」

伸びをしながら時計を確認すると、まだ午前10時。
夕べは映画観賞後、ホテルで立食パーティに向って色々な人達と挨拶をした。
に通訳のフリをさせて連れまわし、一緒に食事を取ったりしていたが比較的早く帰って来て寝たはずだ。
そろそろ起こしてもいいだろうか。


今日はオフ。
一日、と過ごすつもりだった。

「どこ行こうかな・・・」

煙草に火をつけ、ソファに座り手にしたガイドブックを捲った。
そして、ふとレンタカーの紹介を見てそこをパンっと指で弾く。


「これだな・・・」


そう呟いて俺はソファから立ち上がった。













The third day...Dream...








―11月2日。この日は少し早めに目が覚めた―







「はぁ・・・もう少し寝ようかなぁ・・・」

時計を見てまだ午前中だと知ると欠伸が出た。


夕べは、それほど遅くはならなかったが別に起きたって何もする事がない。
まあ、せっかく東京にいるのだから観光くらいは行きたいけど・・・・
どこに行けばいいのか分からないし・・・

そんな事を考えながらベッドでゴロゴロしていると、部屋の電話が鳴り出しドキっとした。
だが、この時間に電話をしてくる奴は一人しかいない事に気づき少しだけ起こした頭をガクっと垂れる。

「うぅ~・・・絶対、レオだ・・・・。もぉぉ・・・何の用・・・・?」

ブツブツ言いながらも気だるい体を起こそうとしたが途中で挫けた(!)

(いいや・・・寝てるフリしちゃえ・・・!)

再びベッドに寝転がると頭まで布団を被ってヌクヌクとしていた。
すると電話も鳴り止みホっとする。

(フフフ・・・諦めたな・・・)

ちょっとだけニヤニヤしながらフワフワのベッドの感触を楽しんでいると、突然けたたましいチャイムの音が聞こえてきた(!)




キンコーン、キンコーン・・・・・



「・・・・・・っ」


チャイムの音に、ガバっと起き上がると、またすぐにキンコーンと鳴り響く。


「嘘でしょぉぉぉ・・・・・・」


そう呟いた瞬間・・・・




~?起きろよ、~!」

「うぅ・・・・・・っ」


能天気に名前を呼んでくる声に、私は小さく唸ると渋々ベッドから這い出てリビングに向う。
もう髪がクシャクシャだろうが、パジャマだろうが気にせず、ドアを少しだけ開けるとすぐにレオが顔を出す。

「おっそい!」
「・・・・・・・・・」

口を尖らせ文句を言うレオを無視して溜息をつくと、私はもう一度ベッドルームへと戻り布団の中に潜り込む。



「おい、?」
「・・・・・・・・・・(無視)」
「お~い、~?」

レオが追いかけて来て布団の上から揺さぶってくる。
ゆっさゆっさと揺さぶられ、私は堪えられずノソっと顔を出した。

「うるさい・・・レオ・・・・」
「何だよ、それ」
「もう少し寝かせてよ・・・」
「はぁ~?まだ寝る気?もう10時過ぎてるよ?」
「いいじゃない・・・。何もする事ないもの・・・」
「何でだよ。俺、オフなんだけど」
「・・・・・・・・・・・」


(それが私と何の関係が・・・・・・・・・?)


そう思いながら目の前で膨れっ面のレオを見上げる。
するとレオはベッドの端に腰をかけて、いきなり私の頬を両手で挟んだ。

「な・・・何すんのよ・・・っ」

ムニュっと押されて自然に唇が尖る形になり、彼の手を慌てて振り払おうとした時、レオがニヤっと笑った。


「デートしよう、
「・・・・・・は?」
「いい天気だしさ。デートしよう」

突然、この状態でデートの申し込みをされて、私は唖然とした。

「な、なひ言って・・・・」

頬を挟まれてるので変な言葉になりつつも、その手を何とか外した。

「何がデートよ・・・。一人で行ってよ・・・っ」
「デートは一人じゃ出来ないだろ?ほら、早く起きてシャワー入って来いよ」

腕を引っ張られ、私はベッドの上に起こされた。
引っ張っれた勢いでベッドに腰をかけているレオの胸に顔がぶつかりそうになってドキっとする。

「ちょ、ちょっと・・・っ」
「ドライヴ行こう?」
「・・・・・・・・・はぁ?」

次々に勝手な事を言ってくるレオに呆れて顔を上げると、目の前には奇麗なブルーグリーンの瞳・・・

(マズイ・・・ベッドの上で、この状態はマズイわ・・・っ)

レオの瞳に吸い込まれそうになりつつも私はパっと目を伏せ、掴まれたままの腕を放そうとした。
その時、少しだけ腕を引っ張られたと思ったら不意に額に温かい感触・・・

「ちょ・・・何して・・・っっ」
「何って、おはようのキス。早くベッドから出ないとそれ以上のことしちゃうけどいいの?」
「・・・・・・っっ」

その言葉に顔を赤くして視線を上げればそこには得意げなレオの顔・・・

「早くしないと俺の理性も、あと残りわずかかなぁ~?」
「バ、バカなこと言わないでよ・・・っ」
「だってベッドの上で女の子と、こうして見つめあってたらやましい気分になるのは普通だろ?」
「・・・な・・・・っ」

ケロっとそう言いのけたレオに私は耳まで赤くなってしまった。
レオはそんな私を満足そうに見つめるとクスクス笑いながらベッドから立ち上がる。

「ジョークだよ!とにかく早く用意して!分かった?」
「わ、分かったわよっ。行けばいいんでしょ?行けばっ」
「そういう事。じゃ、俺は部屋で待ってるから用意出来たら来いよ」
「・・・・ったく何で私が・・・」
~?」
「はいはい!行きますっ」

目を細めて見ているレオに私も立ち上がってそう言うと、彼はニッコリ微笑んだ。
そして少し屈んだかと思うと私の頬にチュっとキスをして、

「じゃ、なるべく早くね?ハニー」
「んな・・・っっ」

慌てて手で頬を押えた私にレオはウインクすると部屋から出て行ってしまった。

「な・・・な・・・何で私がハニーなのよ!私はレオのハニーじゃないんだからっ!ロスに恋人がいるんだからねー!!」

誰もいなくなってからやっと我に返りそう怒鳴ると、少しグッタリしつつバスルームへと向う。

はぁ・・・何なのよ、あいつは・・・っ!
絶対、からかわれてるわ・・・・。
昨日は確かに映画を見てやっぱりカッコいい・・・なんて思っちゃったけど、前言撤回!
普段のレオなんてただのセクハラ男だ!
こうなったら週刊誌に売ってやる・・・
昨日の様子だとかなり人気があるみたいだし、どこの週刊誌だって高値で買ってくれるに違いない・・・ふふふ(悪魔)

そんな恐ろしい事を考えつつ、シャワーを浴びて出るとこの前レオに買ってもらったデニムのワンピを着てみる。

「わぁ・・・可愛い・・・」

一瞬、私には似合わないと思ったけどそうでもなかったみたい・・・
大人すぎず子供過ぎず、丁度いい感じだ。
やっぱレオってセンスいいんだなぁ・・・
仕方ない・・・多少のセクハラは許してあげよう・・・・・・(偉そう)

新しい服を着て少し気分の良くなった私はさっさと髪を乾かし、簡単にメイクをする。
昨日、レオにナチュラルメイクで充分だよ・・・と言われたのを思い出し、いつもなら3するとこを2までにしておいた。

「子供っぽくないかなぁ・・・」


プルルルル・・・プルルル・・・


「・・・はぁ・・・」


鏡を見てちょっと考えてると部屋の電話が鳴った。
どうせレオだろう、と溜息をつきつつ電話に出る。




『まだかよ~』


「・・・・今、行くわよ・・・」



やはり電話はレオからで、どうやら待ちくたびれてる様子だ。
大きな溜息と共に電話を切ると、私はすぐにレオの部屋へと向った。
チャイムを鳴らすと、すぐにドアが開く。

「遅くなってごめ―」
「待ちくたびれたよ」

そう言って苦笑しているレオを見て私は一瞬、言葉を失った。

?どうした?」
「・・・え?あ、ううん・・・何でもない・・・」
「そう?じゃあ行こう」

レオはそう言って手に持っていたサングラスをかけると私の肩を軽く抱いた。
その感触にドキっとする。
と言ってもレオを見た瞬間からドキドキしていて、すでに胸が苦しい感じだ。
レオは昨日のスーツ姿とは違い、今日はラフな感じの服装だった。
黒のジップアップ・プルオーバー(ヒューゴボス)に黒のパンツ、
そして上には寒いからか細身のコートを羽織り、黒のマフラーを首から垂らしている。
コートもフード付きのデザインで、ヒューゴボスだと分かった。
(かすかに香ってくる香水もヒューゴボスだ!)
それが嫌味じゃなくサラリときこなしてる辺りはさすがという気がしたし、あまりにカッコ良くて照れくさい気持ちになる。
(でも見た目だけね)



「どうした?急に黙り込んで・・・」
「え・・・?」
「まだ眠いの?」
「う、ううん・・・。そんな事ないよ・・・。でも・・・普通に出歩いて平気・・・?見つかったら大変なんじゃない?」

二人でエレベーターに乗り込み、ロビーへと下りていきながら私は気になっていた事を聞いてみた。
だがレオは笑いながら肩を竦めると、

「大丈夫だよ。結構、バレないもんだから。それに今日はドライヴだし平気だろ?」
「へ?ドライヴ・・・?」
「そう。車を借りて東京見物」
「は・・・?レオ、運転出来るの?」

驚いてレオを見上げた時、エレベーターがロビーについた。
するとレオが私を先に下ろし背中を押しながら肩越しに顔を寄せて来る。

「バカだなぁ。運転するのは。決まってるだろ?」
「・・・・な・・・っ!何を・・・」
「ほら、もうフロントにレンタカー借りておいてもらってるからキー受け取ってきてよ」
「ちょ・・・レオ・・・っ」

レオはそう言って私の背中を押しながらフロントへ歩いて行く。
するとフロントにいる男性が笑顔で挨拶をして来てその後キーを差し出した。

「駐車場の345番にある車です」
「ああ、ありがとう。ほら、、おいで」
「ちょ、ちょっとレオ、私、運転なんて無理よ・・・っ」

車のキーを受け取ると私の手を引っ張り、駐車場の方に歩いて行くレオにそう言えば彼は笑顔のまま、

「何で?だって夕べ、免許持ってるって話してただろ?」

と呑気に言っている。

「そ、そうだけど、ここ何年も運転してないもの・・・それに右ハンドルだって久々で・・・」
「大丈夫だって!やれば出来る」
「そ、そんな問題じゃ・・・っ」

どこまでも呑気なレオに軽い眩暈を起こしつつ、気付けば車の前に立っていた。

「これだ。へぇ、カッコいいじゃん」
「嘘でしょ・・・・何よ、この車・・・」
「何って四駆だろ?俺、車、頼む時、大きくてカッコいいのって言っておいたんだ。これ日本のメーカー?」
「そうね・・・四駆で有名な某T車だわ・・・。何も、こんなレンタル代が高くて無駄に大きい車借りなくても・・・」
「無駄じゃないじゃん。カッコいいだろ?ほら早く乗ろう」

レオは子供のように嬉しそうな笑顔を見せると運転席のドアを開けてくれた。
どうやら本気で私にこの四駆を運転しろと言ってるようだ。

(そう・・・ここ数年、ペーパードライバーの、この私に・・・)(!)

「事故っても知らないからね・・・」
「大丈夫だって!ほら早く行こう」

私が運転席へ乗り込むとレオはすぐに助手席へと乗り込んだ。

「へぇ、中も奇麗だな。さすが日本車だ」

レオは嬉しそうにはしゃいでるが、私は運転席へ座ってこのドライヴは本気で事故りそうな予感がしていた。
四駆の運転席はかなり高く、前が見えにくいし、しかも座るとアクセルやブレーキまで足がギリギリなほどに広い。
これには更に不安になっていく。
仕方なく椅子をグっと前にいけるだけ持って行くと、レオがそれを見て「ぷっ」と吹き出している。

「何がおかしいのよ・・・」
「い、いや・・・ってほんと小っちゃいよね」
「・・・・・・なら運転変わる?」

「うぷぷ・・・」と隣で笑いを噛み殺しているレオに引きつった笑顔を見せれば、彼はすぐに笑うのをやめた。

「俺、無理!右ハンドル運転した事ないし、日本の道なんて知らないし」
「私だって知らないわよ、東京の道なんて!」
「標識とか見れば分かるだろ?」
「む・・・っ」

レオは澄ました顔でそう言うと、満面の笑顔で、「さ、出発~!」と叫んでいる。
私は諦めたようにエンジンをかけて恐る恐るアクセルを踏んだ。


ガコン・・・っ


「うぁ・・・」
「キャ・・・っ」



お約束の"あれ"をやってしまい、レオに白い目で見られるも軽く咳払いをしつつ、もう一度ゆっくりとアクセルを踏む。
二度目は何とか車もスムーズに動き出したが何と言っても四駆。
ハンドルがやたら重たい。

「それで・・・どこに行きたいの・・・?」

何とかホテルの駐車場を出たところで前を見たまま聞いてみる。
すると地図を見ていたレオが笑顔で、「えっと・・・ヨコハマ!」と声を上げた。

「はぁ?よ、横浜って・・・遠いじゃない・・・」
「いいじゃん、今日は時間もたっぷりある事だしさ」
「そ、そうだけど・・・。ジェームズには断ってきたの?」
「ああ、さっき電話で言ったよ?彼もデート楽しんで来いって」
「・・・・デート・・・・この恐怖のドライヴが・・・?」

私が呆れたようにそう言うとレオは楽しそうに笑って車についてるCDプレイヤーに持参してきたCDを入れている。
すると昨日の映画の主題歌が流れ、私は、「あ・・・」と声を上げた。

「これ・・・」
「"タイタニック"のサントラ。スタッフが持ってたから借りてきた」
「そう。いい曲よね」

少し行くとやっと運転してた頃の感覚が戻って来て、ゆっくりながらも安定した走りになった。
だからか音楽を聴く余裕も出てきて、私はその奇麗な歌声に浸っていた。

「ね、煙草吸っていい?窓開けるから」
「え?ああ、うん」

私が頷くとレオは窓を開けてから煙草に火をつけ少しだけ顔を出している。
ふわりと顔に触れる冬の冷たい風が今は少し気持ちいいくらいだ。
でも・・・この曲を聴きながら隣にいるレオを見ると、本当にドキっとしてしまう。
映画の中の"ジャック"が傍にいるような錯覚を起こしてしまいそうだ。
それにあの感動も同時に押し寄せてきて少しだけ胸が切なくなってくる。

「また・・・見たいな・・・」
「え?」
「この映画・・・・」
「・・・・ほんと?」
「うん・・・。この曲、聴いてると感動した気持ちが蘇えってきて、凄く見たくなるわ?」

私がそう言うとレオは少しだけ笑ったようだった。
やっぱりまだ怖いので前を見たまま運転してた私には、今レオが、どんな顔をしているのか分からないけれど、
でもきっと嬉しそうな顔をしてるだろうな、と思った。










「そろそろ横浜だよ?」
「ほんと?」

俺はの言葉に窓から顔を出した。
この最新型の車には当然カーナビがついてた事から思ったよりもスムーズに到着したようだ。
運転手のはヒヤヒヤしたみたいだけど。
はハンドルを切って人が多い場所を避けるように駅前を通り過ぎて行った。

「レオ、横浜のどこに行きたいの?一回下りる?」
「そうだなぁ。ちょっと歩いてみたい」
「じゃあ駐車場を探さないと・・・」

そう言ってるとすぐに"パーキング"の文字が見えて、はそこに車を何とか停車した。

「はぁぁぁ・・・寿命が縮んだ・・・・」
「そんな大げさな・・・」

俺が苦笑するとジロリと睨まれ、すぐに口を閉じる。

「あのねぇ・・・私だって日本で大きな道とか運転したことなかったんだから!」
「ロスと似たようなもんだろ?まあ、日本の道路は狭いけどさ」
「ロスの方が簡単だったもん。日本では田舎でしか運転した事ないのっ」

はそう言うとサッサと車を降りてしまい、俺もすぐに後を追いかけた。

「さて、と。どこ行く?」

の肩を抱いてそう聞けば、彼女も困ったように見上げてくる。

「私、横浜、来た事ないもの。横浜のガイドブック買おう?」
「OK。じゃあ、どこに売ってる?」
「コンビニかなあ」

はそう言いながらキョロキョロと辺りを見渡した。

「あ、あった!」

少し歩くとそのコンビニとやらがあり、は店の方に走って行った。
そしてすぐに本を手に出て来る。

「これ。これ見れば分かるわよ。きっと」
「ふ~ん。じゃあ、が決めてよ」
「えぇ?レオが来たいって言ったんでしょ?」

はそう言いながらも本を捲りつつ、

「あ、ここなんてどう?中華街」
「中華街?」
「うん。あ、でもチャイナタウンと似たような感じかも」
「ああ、そこでいいよ?が行きたいなら」
「・・・・そうじゃないけど・・・私も初めてだし」

そう言って困ったように見あげて来るは子供のようで可愛い。
今まで付き合った子達は皆それなりに大きかったから、こんな風に見上げられた事がないし余計にそう思う。
それに・・・・・


、今日、ナチュラルメイクだな?」
「・・・・こ、これは・・・レオが急かすから時間がなかったのっ」
「ふ~ん。でもそっちの方がやっぱり可愛いよ」
「・・・・・・・・・・っ」

は俺がこういう事を言うとすぐに赤くなって黙ってしまう。
そこが何とも新鮮で俺も嬉しくなるんだ。

「は、早く行こう?」

は赤くなった顔を見られたくないのか、ずんずんと先を歩いて行ってしまった。
笑いを堪えつつ、ついて行くと"ヨコハマステーション"という文字が見えてきて駅前なんだと分かる。

「うわ、すっごい人・・・」
「ああ。今日って日曜日だったっけ」
「あ、そうか・・・・。だからだ・・・」

溢れんばかりの人ごみに二人で顔を見合わせ、ちょっとだけ苦笑する。

「曜日の感覚なんて気にした事なかったしなぁ・・・。これじゃどこ言っても人が凄いぞ?」
「うん。ちょっと駅から離れようか」
「だな・・・」

そう決めて二人でガイドブックを見ながら歩いて行く。

「ねぇ、レオ、このコース歩いてみない?」
「どこ?」
「これ。ほら、電車に乗らなくても、ちょっと歩けば海の方に行けるよ?」
「ああ、ほんとだな・・・。でも、ちょっとじゃないだろ?これ、結構、歩くよ」
「いいじゃない。時間あるんでしょ?」

はそう言って笑うと、そのまま人ごみを離れ歩き出した。
俺も苦笑しつつもついていくとそっとの手を繋ぐ。

「な、何・・・?」
「何って今日はデートだろ?」
「・・・それはレオが勝手に・・・・私は観光に来たんだもん」
「いいじゃん。手繋いでないとはぐれそうだしさ」

そう言って笑うとも諦めたのかムスっとしつつも大人しく俺の手に引かれている。
こうして歩いていると本物の恋人同士に見えるんだろうか。
まあ日本でもアメリカ人と日本の女の子が歩いているのをチラホラ見かけるし別に目立ちはしないだろう・・・(と思うは本人だけ)



暫く歩いて行くと小さな路地を見つけてがそっちへ歩き出した。

「ここの通り、小さなショップが色々あるみたい。これ抜けると海の見える公園だって」
「へぇ。そこって有名なの?」
「うん、横浜じゃデートスポットだって」
「じゃあ俺達にピッタリだな?」
「・・・・・・・・・・・・・」

そこは返事がなくちょっと寂しい。
でも・・・まあ仕方ないか。
にしたら俺達と会った事はハプニング以外の何者でもなく、足止めさせられてしまってるんだから迷惑だと思ってるのかもしれない。
こうして無理やり連れ出した事だってほんとに迷惑なのかもしれないしな・・・

ふと、そう思うと何だか自分だけ浮かれてるのが空しくなってきた。

俺はと会えた事は嬉しいハプニングだったんだけどな・・・
こんな風に異国の少女と出会う機会も滅多にないし、俺の事を知らない子だから特に構える必要もない。
素の自分で接する事が出来るなんて今の俺には結構大事な事だったりする。
こうして自然に出歩く事もそうだし、いつも以上に我がまま言えるのだってそうだ。
こんな仕事をしているとそんな事すら出来なくなっていた。
どこかで普段の自分も演じてる事がある。
また、そうしなければやっていけない時だって・・・・・
だからなのか、ここ最近の俺はハッキリ言ってかなり疲れていた。
映画のヒットは嬉しいがこんなノンビリした時間なんて持てなかったし、女の子とふらっと出かけることさえ叶わない。
だいたい近づいてくる子は皆、俺の立場だったり名前だったりに惹かれて寄って来るだけで、本当の俺を好きなのかどうか・・・
だから俺も構えて気取ったデートばかりしていた。
そんな息抜きになるはずもなければ癒される事もない恋愛ばかりだ・・・




「レオ・・・?どうしたの?」
「・・・え?」

ボーっとしていると不意にが立ち止まり、俺を見上げてきた。

「急に黙るから・・・。疲れちゃった?」
「ああ、いや・・・何でもないよ?ごめん」

は心配そうな顔をしていて本気で気遣ってくれているのが分かり、自然に笑顔になる。

「あれが公園よ?ほら」
「え?ああ、ほんとだ。この真っ直ぐ行ったとこに見えるあれだろ?」
「うん。で、ああ、こっちに行けば外人墓地みたい」
「外人墓地?」
「そう。日本のお墓じゃなくて外人さんの墓地よ?ほら、あれ」
「ああ・・・。あれはアメリカでよく見るね」

俺がそう言って笑うとは反対側を見て笑顔になった。

「あ、カフェ!」
「え?」
「ほら、普通の家かと思えば、あれ・・・カフェよね?」

の指さす方を見れば、確かに一瞬、人の家かと思うような建物がある。
だが広い庭には、いくつものテーブルが置かれ、ウエイターらしき男がテーブルにクロスをかけているのが見えた。

「ああ、ほんとカフェだな・・・。こんな住宅街にあるんだ」
「やっぱり横浜ってお洒落だなぁ。東京よりも雰囲気が凄くいいしここは山の手だからお金持ちの住む場所だから周りも奇麗」
「へぇ、高級住宅街って感じだったけどやっぱそうなんだ。ロスで言えばビバリーヒルズとかと同じかな」
「まあ、あそこまで規模は大きくないと思うけど」

は笑いながらそう言うと、「ね、あのカフェで・・・ちょっと休んでいかない?」と言ってきた。
その"どうしても入りたいの"と言わんばかりののキラキラした瞳を見てしまったらダメなんて言えるはずない。

「いいよ。俺もちょっと休みたいなって思ってたし」
「ほんと?じゃあ、行こ?行こ?」
「お、おい、そんな慌てなくてもカフェは消えないよ・・・?」

グイグイと手を引っ張って行くに苦笑交じりでそう言うも、彼女はどんどん歩いて行ってカフェの中に入っていく。
まだ開けたばかりなのか客は誰もいない。
ここは住宅街と言う事もあってノンビリした時間に開けてるのかもしれないなと思った。

『いらっしゃいませ。テラス席と店内の席、どちらが宜しいですか?』

すぐにウエイターが笑顔で歩いて来た。

『えっと・・・じゃあテラス席で』

が日本語で返事をするとウエイターは俺達をテラス席へと案内した。

「おい、。寒くないの?」
「うん。こんなにいい天気だしいいじゃない?外でお茶するのも」

は嬉しそうな顔でそう言いながら椅子に座った。
その笑顔には逆らえない。

「まあ、いいけど。風邪引いても知らないぞ?」
「そんなヤワじゃありません。寒いとこで育ってますからねっ」

は得意げに、そう言ってからウエイターに紅茶を頼んでいる。
俺も同じ物にしてもらうと煙草に火をつけた。

「はぁ・・・何だか、こうしてノンビリするのって久し振りかも・・・」
「そうなの?」
「ああ・・・。ここ最近は、かなりハードだったし・・・あちこち飛び回ってるからさ・・・」
「そう・・・プロモーションも大変だね?行った国でもこんな風にオフとかないの?」
「ああ、あるにはあるけど結局、外に出ないでホテルで過ごしてたなぁ・・・」
「えぇ?もったいない。どうして?」
「だって一人で出歩いてもつまんないだろ?まさかジェームズに観光付き合ってよとか言えないしさ」
「ああ・・・それも、そうね・・・・」
「彼も色々と忙しいし、まあ夜は一緒に飲みに行ったりはするけどそれは仕事相手も一緒だしね。息が抜けないよ」

溜息をつきつつ、そう言って伸びをするとは驚いた顔で俺を見ていた。

「そうなんだ・・・。大変ね?華やかな世界だし・・・でもレオも今の状況を楽しんでるのかと思ってた・・・」
「・・・楽しんでるよ?好きでやってる仕事だし。でもそれ以外にも色々とついてまわるから時々逃亡したくなるけどね」

苦笑して肩を竦めれば、は少し考えてる様だったがふと顔を上げた。

「じゃあ今日はどこでも付き合ってあげるから息抜きしてよ。ね?」
「え?」
「レオの行きたい場所に行こう?普段出来ない事とかいっぱいやろうよ」
・・・・・・」

笑顔で見を乗り出し、そう言ってくる彼女に俺はガラにもなく胸が熱くなったのを感じていた。
だって・・・彼女の顔は笑顔だけど瞳が真剣で、本気で俺の事を考えて言ってくれてるんだと分かったから・・・

「サンキュ・・・」
「べ、別に、そんなお礼を言われる事じゃないよ?どうせ私は暇なんだし」

素直にお礼を言ったのに、はどこまでも照れ屋なようで、少し顔を反らして素っ気無い事を言う。
だがそんなもまた、可愛いと思う自分がいた。
そして、ふと思いつき俺もテーブルに身を乗り出し肘をついて彼女を見つめる。

「ほんとに俺の行きたい場所、どこでも連れて行ってくれる?」
「え?あ・・・うん・・・。どこか行きたい場所ある?」
「うん。たった今、思いついた」
「・・・・どこ?」

俺の言葉に、は少し訝しげな顔を見せつつも聞いてきた。
そこで俺は思いついた事を口にする。

の実家」
「・・・・・・・・・・はぁ?」
の故郷?そこに行ってみたい」
「な・・・・!何言ってるの?」
の実家って温泉なんだろ?俺、温泉って入ってみたかったんだよねぇ?」
「だ、だからって無理よ、そんなの!今日、今から行けるはずないわ?」

は慌てたように首をぶんぶん振りながらそう言った。
俺はニヤっと笑うと、「何も今日、今から行くなんて言ってないだろ?」と言ってを見れば、彼女も口を開けてこっちを見ている。

「きょ、今日じゃないって・・・じゃあ、いつ・・・のこと?」
「ん~と・・・。明日は記者会見やらで忙しいし、次の日は夕方まで取材が入ってるだろ?
でも5日から実は俺、4日ほどオフにしてもらってるんだよね?」
「嘘・・・・・」
「ほーんと。ここんとこ他の国でもオフって一日しかなくてさ。最後の日本では長いオフくれってお願いしてあったんだ。
それで何をしようかなぁ?って思ってたんだけど、どうせなら疲れを取るようなオフにしたいし・・・どう?いいだろ?」
「い、いいだろって、でも・・・・」
の荷物は4日に届くんだし、次の日から俺はオフだから一緒にの実家に行くよ。
それでいいじゃん。あ、もちろんお客としてね?」

俺が笑顔でそう言うとは困ったような顔で視線を泳がせている。

、いいだろ?温泉に入って一日、泊まるだけだからさ。案内してよ」
「で、でも、うちの親、ビックリしちゃうよ、そんなレオなんか連れて行ったら・・・凄い田舎者だし・・・」
「大丈夫だよ。俺の仕事のことは黙ってればいいじゃん。ね?決まり!」
「そ、そんな勝手に・・・・・」
「だってが言ったんだろ?普段、出来ない事しようって。温泉なんか普段は入れないしさ」
「・・・・・・・・・・」

そこでは困ったように黙ってしまったが、軽く息をつくと小さく頷いた。

「わぉ!いいの?」
「・・・・仕方ないじゃない・・・。いいわよ・・・。後で親に電話して予約しとくわ・・・」
「やった!サンキュ、!」

俺は嬉しくて思わず椅子から立ちあがり身を乗り出すと、の頬にチュっとキスをした。

「キャ・・・!ちょ、ちょっと・・・っ」
「ああ、ごめん!嬉しくてさ」

一気に顔を赤くしたに睨まれ、俺は苦笑いしつつ肩を竦めた。
そこへウエイターが紅茶を運んできて、『ごゆっくり、どうぞ』と言って戻って行く。

は恥ずかしそうにカップに砂糖を入れながらスプーンで混ぜていたが、ふと顔を上げた。

「そう言えば・・・レオだけ行くの?ジェームズは・・・?」
「もちろん彼も一緒だよ?ジェームズもの家のこと聞いて温泉行ってみたいなって話してたんだ」
「そ、そう・・・。じゃあ・・・人数ハッキリ決まったら教えて?予約入れないといけないから・・・」
「OK!はぁ~楽しみだな。これで明日と明後日の仕事、頑張れるよ」

俺がそう言って笑うと、もやっと笑顔を見せてくれた。
そして遠くに見える海を黙って眺めている。
その横顔を見て一瞬、ドキっとした。
気持ちいいくらいの風に吹かれて、彼女の奇麗な髪がサラサラと揺れている。
そのの表情は少しだけ大人びていてどこか寂しげだった。

こんな表情を俺は見た事がある。
前に付き合っていた子が、時々、こんな顔で何かを考え込んでいたっけ。
それはきっと俺が辛い思いをさせてたからだって後から気付いた。

も・・・そうなんだろうか。
ロスにいるという恋人と上手くいってないのか・・・?
それとも恋人に内緒で俺とこんな風にデートをしているのが後ろめたいと思ってるとか・・・
まあ、デートって言っても本当に観光してるだけなんだけど・・・

あれこれ考えていると、不意にが俺を見た。

「・・・何?ジィっと人の顔見ちゃって・・・・」
「え?ああ、いや・・・。ちょっと見惚れてた」
「バ、バカじゃないの・・・?そんな手には乗りませんっ」

はすぐに顔を赤くして口を尖らせた。
その表情はいつもの彼女に戻っている。

内心、何か心配ごとでもあるのかと心配になったが俺が口を出すべきことでもないか・・・と思い直し何も聞かないでおこうと思った。

「さ、これ飲んだら、次はどこ行こうか?」

俺は煙草を消して、そう言うと優しく彼女に微笑んだ。
















「ちょ、ちょっとレオ・・・!あまりスピード出さないでっ」
「何で?平気だよ、このくらい!」
「キャ~!レオ!やめなさいってば!!」

私はシッカリとシートベルトをしてドアにしがみ付いていた。
レオは楽しそうに声を上げながらどんどん車のスピードを上げて砂浜を走らせる。

散々、横浜を歩き回り、中華街で軽いランチ(歩きながら肉まんを食べた)を取った後、車に戻った時、
レオが近くのビーチに行こうと言い出したのだ。
すでに夕方になっていて、しかも冬だからかビーチ(こんな汚れた海じゃ砂浜と言った方が雰囲気は合うけど)には
人が全くいなかったせいで、レオが俺にも運転させてと言い出し今に至る。
日本の車を運転するのが楽しいのか、慣れない右ハンドルなのにどんどんスピードを上げていくレオに私は顔が引きつってきた。

「うぎゃー!レオ!海に寄ってる!ハンドル切りなさいよ、バカァ!」
「分かってるよ、うるさいなぁ!Yehaa~♪」
「うわ、ぃた!ちょ、レオ~っ!」

急にハンドルを切って海を回避したものだから、私はドアにゴンっ!と頭をぶつけてしまった。
それを見てレオは大笑いしながら運転を楽しんでいる。

こ、この男、エロだけじゃなくスピード狂かしら?!
もぉ~たかが車運転するだけで、何がそんなに楽しいのよぉ~!

そんな事を思いながらしがみついていると、レオがまたしても私を怖がらせるような一言を呟いた。

「ねぇ、。帰りは、俺がこのまま運転して東京に戻ってもいい?」
「はあ?な、何言ってんの?!ダ、ダメよ!レオ、こっちの免許は持ってないでしょ?!」
「あ、そっか。でも捕まらなければバレないって」
「つ、捕まるわよ、こんなスピード出してちゃ!日本のおまわりさんを舐めちゃいけないわっ。白バイは怖いのよっ?!」
「ああ、確かに日本の警察は優秀だって聞いたことあるなぁ~。じゃあ、仕方ない、が運転してよ」
「あ、当たり前よぅ・・・だから早く止めてってばーっ」

レオは右ハンドルにも慣れて来たのかすでに片手運転になっていて、私はと言えばいつ海に突っ込むかとヒヤヒヤしていた。
だがレオは散々走らせ満足したのか、海に突っ込むことなく車を止めてくれる。

「はぁ~楽しかった!やっぱ四駆はいいなぁ~」
「・・・・・・・・・」

(グ、グッタリ・・・・・その辺のジェットコースターより怖かった・・・・・)

「あれ?、どうした?グッタリしちゃって。あ、お腹空いた?」
「ち、違うわよ!全く・・・・レオってば運転したら人が変わるのねっ。子供みたいにはしゃいじゃってっ」
「え~そう?だってこの車かなり性能いいし楽しいんだって。これ買おうかな~。今乗ってるのより断然、静かで滑らかな走りだし」
「か、勝手に買えば・・・・・・?」
「何だよ、冷たいなぁ。あ、そろそろ、お腹空いたし都心に戻らない?」

(どこまでも勝手な男だ・・・・)

「はいはい・・・。分かったから運転席から降りてよ・・・・」
「OK!じゃ、運転、宜しくね」

レオは呑気に笑ってそう言うと車から降りてきて助手席へと周ってきた。
そこでドアを開けると下から両手を伸ばしてくる。

「な、何よ・・・」
「何って・・・ちょっと疲れてるみたいだし、この車足場が高いから抱っこして下ろしてあげようかと」
「い、いいわよ、そんな・・・・ひゃっ」

自分で降りようとした瞬間、小脇を抱えられ体がふわっと浮いた。
と思った瞬間、ポスンっと下ろされ気付けばレオの腕に納まっていた。

「ちょ・・・」
ってほんと軽いし小さいよね?俺の腕の中にスッポリ納まる」

レオはそう言って背中に腕を回し、ギュっと私を抱きしめてきた。

「わ・・・な、何よっ」
「ん~俺の飼ってる犬より小さい!抱きごこちいいな・・・」

レオはそう言うと私の頭に頬を摺り寄せて来てドキっとした。

「い、犬と一緒にしないでよっ」
「一緒にしてないって。犬より小さくて可愛いって誉めたんだろ?」
「それが誉め言葉?!そ、それに誉めてもらわなくて結構です・・・っ。放してっ」

私がジタバタ暴れるとレオは苦笑しながら少しだけ力を緩めた。

「はいはい・・・。ほんとロマンティックじゃないな・・・?」
「は・・・?何でレオとロマンテックにならないといけないのよ・・・っ」
「だって見ろよ。夕日が奇麗でその中で男と女が抱き合ってるのにさ」

レオの言葉にハっと顔を上げれば・・・確かに夕日に照らされた砂浜に二人きり・・・
しかもレオの瞳は夕日に揺れて凄く奇麗だった。

な、何なの、このシチュエーション・・・!
しかも何をときめいてるの、私ってば・・・っ
この瞳に騙されちゃいけないわ・・・・!

「い、いいから放してよ・・・。こんなシチュエーションでロマンティックになれるのは恋人同士だけでしょ・・・っ」

そう言って無理やりレオの腕から逃げ出した。
レオはレオで何だか苦笑しながら、「ほーんとって、お堅いな。俺のこと、そんなに嫌い?」と聞いてきた。

(そんなストレートに聞かれても困る・・・・)

「き、嫌いって、そういう訳じゃないけど・・・」

何て言っていいのか分からず言葉を切ると、レオは困ったように微笑みながら、

「嘘だよ、ごめん。もう行こう?暗くなる」

と言って私の頭をクシャっと撫でた後、助手席に乗り込んだ。
私もそのまま車に乗り込むとエンジンをかけて車を出した。
チラっとレオを見れば、窓の外を眺めながら黙っていたが、私が見ているのに気付くとニッコリ微笑んだ。

「お腹空いただろ?何か食べに行こう」
「う、うん・・・。でも・・・どこに?」
は何が食べたい?」
「え?わ、私?」
「そうだよ。今日はデートだって言っただろ?俺がをエスコートするよ」

レオはそう言いながら優しく私の頭を撫でてきて少しドキっとした。

「さあ、何が食べたい?何でもいいよ?」
「え?あ・・・えっと・・・」

(急にそんなこと言われてもパっと浮かんでこないわよ・・・)

私は運転に集中しながらも色々と食べたいものを思い浮かべて見る。

お寿司は、この間、食べてたし・・・昨日は何だか立食だったから和洋中と色々な食事を食べたし・・・
同じようなものじゃない方がいいよね、きっと・・・

なんて気付けばレオの基準で考えていてハっとする。

やだ・・・レオは私の食べたいものを聞いてるのに・・・
でも・・・・・・レオって何が好きなんだろう?
そんな事すら知らないのよね…

・・・?」
「え?あ・・・えっと・・・ホテルのレストランでいいよ・・・?沢山、お店あったし・・・」
「え?それでいいの?」
「うん・・・・」

何とか頷くとレオは何故かニヤっとして私の顔を覗き込んできた。

「あ~外で食事したら帰り運転しなくちゃならないし、お酒飲めないからだろ?」
「・・・・はぁ?何言ってんの?」
「ま、ホテルなら安心だよな?そういう意味で」
「ちょ・・・私は、そんな飲兵衛じゃないわよっ」

レオの言葉に文句を言えば彼はますます楽しげに笑い出した。

「よく言うよ。夕べのパーティの時だってかなりワイン飲んでただろ?
シャンパンは酔うからワインにするって言って。俺はどっちも同じだと思うけど」
「な、何よ。いいじゃない・・・」
「どっちみち酔ってたじゃん」
「・・・・む・・・っ」

レオの言葉に頬が膨らみ少しだけアクセルを踏み込んだ。

「わ・・・ちょ・・・?スピード出しすぎっ」
「何よ。レオだって、さっき凄いスピード出してたじゃない」
「あ、あれは障害物が何もないビーチだからだろ?ここは対向車から前後にだって車がいるんだぞ?」
「分かってるわよ。大丈夫。運転する感覚、戻ってきたから」
「ちょ・・・危ないってっ」
「うるさいなぁ・・・。私だってレオと心中する気はないわよ」

そう言って少しだけスピードを落とすとレオもホっとしたように息をついた。

「ったく・・・。みたいな子、俺、初めてだよ・・・・」
「・・・・・どういう意味よ・・・」
「そういう意味だよ・・・」
「・・・・」

そんな呆れたように言わないでよね・・・
私だってレオみたいな男の人、初めてなんだから・・・。
まあ仕事も特殊だし、当たり前なんだけど・・・

そう思いながらすっかり暗くなった道をホテルに向って走らせる。


レオは黙って煙草を吸いながらまたCDをかけると、流れてきた音楽にジっと聴き入ってるようだった―













「やっぱ外で食べよう」
「・・・・・・へ?」

やっとの思いでホテルに到着した時、俺はの手を引っ張りながらそう言った。
車を返し歩きで行く分には差し支えないだろう。

「ちょ・・・外って・・・」
「別に遠くじゃなくていいよ。ここの近くならさ」
「近くって・・・でも・・・・」
「いいから、ここって思った店に入ろう?俺、ホテルのレストランとか行き飽きたしさ」

そう言いながら駐車場を出て外へと出る。
日曜という事もあり、昨日よりは歩いている人も少ない。

「この辺って・・・赤坂よね・・・・。赤坂って言えば大人のスポットだしなぁ・・・」
「そうなの?」
「うん。飲み屋さんとか多いと思う。まあアメリカにはないような飲み屋さんね」
「どんなの?」
「ん~だから・・・スナックとかクラブとか。クラブって言っても踊る場所じゃなくて奇麗なお姉さんに接待されてお酒を飲む店ってこと」
「ああ、そんな店ならこの前、映画会社の人が話してたなぁ。明日の記者会見の後に行きませんか?ってさ」
「ふ~ん。言って来れば?奇麗な大和撫子さんにキャーキャー言われると思うよ?」
「え?そうなの?」

俺が嬉しそうにを見ると彼女は呆れたような目で見上げてくる。

「・・・・・でも言葉通じないと思うけど―」
「ああ、そんなのが通訳してくれればいいじゃん」
「・・・・嫌です。だいたい何で女の私がお姉ちゃんのいるクラブに行かないといけないのよ・・・」
「何で?いいじゃん」
「もう、そんな事より、どこかに入ろう?お腹空いちゃった」
「ああ、そうだな・・・・。じゃあ・・・そこの店は?」
「あそこ?!」
「うん。何だか観光客とか行かなそうだろ?」
「で、でも・・・・あそこ多分、焼き肉屋だよ?」
「焼き肉?ステーキと違うの?」
「うん。全く・・・」
「へぇ、どんなの?牛肉って事は間違いないんだろ?」
「そうだけど・・・まあ、でもいっか・・・。私も焼き肉なんて久し振りだし」
「そう?じゃあ、あそこにしよう」

そう言って二人でその"焼き肉屋"とやらに入って行った。



『いらっしゃいませぇ~!』

元気な日本語が聞こえて来て、中年の女性が笑顔で歩いて来る。

『あの二人なんですけど・・・』
『ああ、はいはい。奥へどうぞ?』

そこはが日本語で話してくれて奥の席へと案内された。

「何だか凄い匂いだな・・・」
「でしょ?でも私には懐かしい~匂い!昔は、よく友達や彼氏と食べに来たなぁ」
「ふ~ん。これって、そんな美味しいの?」
「もちろん!アメリカのステーキよりはね」

はそう言って笑うと注文を取りに来た先ほどの店員に飲み物を頼んでいる。

「私はビール頼んだけど、レオは?」
「え?ああ、俺も」
『じゃあ生、二つ』
『はい、生ですね』

俺には何と言ったか分からないが、店員は笑顔で頷くとそのまま一度歩いて行ってしまった。

「さ、レオ、何にする?メニュー見てみてよ」
「ん~と・・・って、え?これ、生の肉?」
「うん。ここで焼くのよ?」

はそう言ってテーブルの中心にある鉄板を指さした。

「ああ、これ・・・。何だろうって思ったんだ。へえ、自分でここで焼くってこと?」
「そう。レオってばほんとに食べたことないの?」
「ああ、ないよ?ロスにもあった気がするけど入った事はないかな?」
「そうなんだ。私もロスで、ほんと時々行くけど、そう言えばアジア系の客ばっかりだったなあ。
アメリカの人って自分で焼くの面倒だって言うのよね」
「あ~何となく分かるな、それ。だってステーキだってシェフに焼いてもらうだろ?」
「あれとは、た別よ。 ―あ、きた」

は運ばれて来たビールを嬉しそうに受け取り一つを俺に渡した。

「はい、ビール」
「ああ、何だかビールだけはアメリカンサイズだな・・・・」
「あはは、これは"ナマビール"って言って、アメリカのバーでグラスで出してるのと同じだよ?」
「ああ、あれか・・・・」

俺は何となく思い出し軽く頷くと、がグラスをカチンと当ててきた。

「まずは乾杯」
「あ、ああ、乾杯」

そこでビールを飲むと、はメニューを広げてあれこれ注文している。
そして俺を見ると、「私に任せてもらってもいい?」と聞いてきた。

「ああ、いいよ?俺、きっと何を頼めばいいのか分からないし・・・」
「そう?あ、レオ、普通にお肉でいいでしょ?」
「普通じゃない肉なんてあんの・・・?」
「だから内臓系よ。レバーとかミノとか・・・・」
「な、内臓?うぇ、俺、普通の肉でいい」

ちょっと顔を顰めつつ、そう言えばはクスクス笑っている。

『じゃあ、カルビーと、タン塩でしょ?ロースとハラミに・・・鳥のバジル焼き・・・トントロ・・・・』
『はい、じゃあ、すぐにお持ちしますね』

が注文を済ませると店員の女性は歩いて行ってしまった。

「美味しいから、レオきっと気に入ると思うよ?」
「そう?で・・・この小皿は何?」
「ああ、これは焼き肉のタレを入れるの。お肉を焼いてこのタレにつけて食べるのよ?」
「へぇ・・・面白い・・・」

俺は本気でそう思いながら、他の客が食べてるのを見てみた。
すると本当に自分で肉を焼き、タレにつけて食べている。
店の客は何だか男女が多くて全て恋人同士のようだ。

「やっぱりレオ、目立つよね・・・・」
「え?」

興味津々で店内を見渡しているとが苦笑交じりでそう呟いた。

「ほら、他の人もチラチラ見てるし・・・そのうちバレちゃうんじゃない?知らないから」
「ああ、別にバレたっていいけどさ。でも見てくるのは俺が外国人だからだろ?」
「そうだけど・・・・でも、それはレオが目立つからだよ。日本にだって外国人は沢山いるし」
「ふ~ん・・・。俺、今日、これでも地味にしてきたんだけどな・・・」

そう言いながら自分の格好を見下ろすと、は驚いたように顔を上げた。

「地味?それで?」
「え?何で?地味だろ?」
「どこがよ?真っ黒で一見、地味風だけどかなり派手だよ?」
「そ、そう・・・?でもだって・・・って、それ・・・・」
「え?ああ、これ?この前レオに選んで買ってもらったやつ・・・」
「うん・・・。さっきまでコート羽織ってたし気付かなかった・・・。それ、やっぱり似合うよ。可愛い」
「・・・・・・・あ、ありがと」

俺が素直な感想を言えば、は恥ずかしそうに視線を反らした。
その態度にちょっと笑いそうになる。

でも・・・ちゃんと着てくれたんだ。
サイズもピッタリだし、のイメージによく似合うと思ったのは間違っていなかったようだ。

そこへ店員が焼き肉とやらを運んできてテーブルに並べていった。
その皿を見て、少々驚く。

「これ・・・何が何だか分かるの?」
「え?分かるよ?これがカルビで、これがタン塩で・・・」

はそう言いながら説明しているが俺にはサッパリ分からない。
そこで全て彼女に任せる事にした。
が肉を焼いていくのをみながら、この肉はこのタレで・・・と教えて貰う。
そして最初に焼けたであろう、肉を小皿にとってくれた。

「はい、食べてみて?」
「うん」
「あ、箸、使いづらい?」
「え?ああ、まあ・・・でも一応、習ったから平気だよ」
「習ったの?」
「ああ、前にね。ほら」

そう言って箸を持って見せると、は笑顔で、「上手いね」と言って自分も肉を取っている。

「いただきまーす」
「・・・いただきます」

かなりドキドキしつつ、その肉を口に運ぶ。
そしてかなりの美味しさに顔を上げた。

「美味しい・・・」
「でしょ?はい、どんどん食べて~。焦げちゃうから」

は、そう言って楽しそうに肉を取り分けながら、次の肉を更に焼いていく。
ジュゥゥ・・・っと美味しそうな音が響いて煙が黙々出て来るのを上にある機械が上手く吸っていた。

「でも、これガーリック、かなり効いてるね」
「うん。焼き肉はどうしてもね?でも二人で臭いんだしいいんじゃない?」
「え?ああ、まあ、そうだけど」
「あ・・・明日の仕事に差し支える?」
「ああ、明日は取材はないし、記者会見だから平気だよ?」
「そう?なら良かった」

はそう言いながらパクパクと美味しそうに食べている。
そんな彼女を見ていてまた"新鮮"だなぁと感じていた。

「レオ・・・?どうしたの?食べないの?」
「え?ああ、食べるよ」
「・・・何?人の顔、ジィっと見ちゃって・・・・」
「ああ、いや・・・よく食べるなぁと思って」
「・・・・・悪かったわね・・・」

俺の言葉に、はすぐに口を尖らせちょっとだけ苦笑した。

「別に変な意味で言ったんじゃないよ。凄く新鮮だなって思ってさ」
「・・・・新鮮って?」
「まあ・・・俺って仕事柄、色々な女性と食事をした事あるけど、そんなに美味しそうにパクパク食べる子っていなかったなってさ」
「・・・・何よ、やっぱり嫌味じゃないの」
「え?違うよ。そうじゃなくてさ・・・・。美味しそうに食べてくれる女の子っていいなぁってこと」
「え・・・?」
「ほら、お上品もいいんだけどさ。一緒に食事するんだから美味しいって顔で食べてくれた方が嬉しいだろ?」
「そう・・・・なの?」
「ああ。まあ、これも今、思った事なんだけどさ」
「・・・・・・?」
「ああ、だから・・・・今まで、そんなこと気にした事なかったんだけど・・・。
を見てたら、そう言えば今までそうやってパクパク食べてくれた子っていなかったなって」
「そ、それは・・・レオと一緒で緊張してたとか・・・じゃないの?」
「緊張?」
「そうよ・・・。きっとその子達はレオの事が好きだから、あまり食べ過ぎて"よく食う女"とか思われたくなかったんだと思うけど・・・」
「そういうもん?」
「女だしそういうもんだよ?好きな人の前じゃあまりガツガツ食べれないじゃない。私だって付き合い始めは、そうだったし」
「ふ~ん。でも今は違うよね?」
「い、今はって、だって私とレオは別に・・・」
「まあ、いいけど。俺はみたいに食べてくれる方が嬉しいよ」

俺が思った事をそのまま言うと、は少しだけ頬を赤くしている。

「そんな風に言われたんじゃ、余計に食べづらい・・・・」
「え?どうして?気にしないで食べてよ。ほら」

そう言って肉を取ってあげると、は少しだけ困ったように視線を反らしたがすぐに顔を上げてクスクス笑い出した。

「何だか・・・・レオって変わってる」
「変わってる?どこが?」
「妙なとこで反応するし・・・・。普通、おしとやかな子がいいって思うんじゃないの?」
「そう?俺は別に・・・その子が本当にそうなら構わないけど、今思うと皆きっと本当の姿を見せてくれてなかったんだなって思ったよ」
「本当の姿・・・・?」
「そう。いつでも奇麗で上品な子っているわけないだろ?でも今まで付き合ってきた子達って、
俺の前じゃ絶対に酔いつぶれないし、バカみたいに大口開けて笑ったりしなかったから」
「それはレオに嫌われたくないからじゃない?」
「そうかな・・・。でもは素の自分を見せてくれてる」
「私は・・・・レオに気取ってみせたって仕方ないもの」

はそう言うとクスクス笑いながらビールを口に運んだ。
だが俺は彼女の、その言葉が胸に引っかかる。

(それって・・・俺のことは、どうでもいいって事か?何か少しショックなんだけど)

「じゃあ・・・はロスの恋人の前じゃ、おしとやかなわけ?」
「え・・・?」
「だってそういう事だろ?俺の事は別に意識するほど好きじゃないから、どんな事でも平気で出来る。
でも好きな人の前じゃ少しは気取るんだ?」
「それは・・・・だから・・・最初はね・・・?でも今は一緒に住んでるしこのままだよ?」
「・・・ふ~ん・・・」
「でも・・・彼はレオみたいに思わないみたいだけど」
「・・・?・・・どういう事?」
「もっと女らしくしろって言われるもん。一緒に出かける時だってメイクはちゃんとしろとか。バクバク食うなとか?」
「そうなの?何で?」
「さあ?彼は、おしとやかな子が好きなんじゃないかな?」

はそう言って笑っていたが、俺には彼女が少しだけ寂しそうな表情をしたのに気付いてハっとした。

(やっぱり・・・上手くいってないんだろうか)

ふと、そんな事を考える。


「電話・・・・」
「え?」
「彼に電話した?」
「・・・まだ・・・だけど・・・・」
「今、してみたら?」
「え?」
「心配してるんじゃない?」

俺がそう言うとは少し目を伏せてしまって、まずいこと言ったかな・・・と思った。
だがすぐに顔を上げて笑顔を見せるにドキっとする。

「いいよ。今頃寝てると思うし・・・・」
「あ・・・時差があるんだっけ・・・」
「うん。だから・・・明日かける」
「そう?」
「うん。それより・・・・レオには電話する恋人とかいないわけ?」
「え?」

不意にそんな事を聞かれドキっとした。

「どうしたの?」
「あ、ああ・・・。恋人は・・・いないよ」
「ほんとに?絶対いそうなんだけどなぁ」
「忙しいからね。すぐダメになっちゃうんだ」
「ああ、そっか・・・。俳優も大変だね。でもすぐ見つかるでしょ?レオなら」
「・・・・いや・・・そうでもないよ」
「嘘~奇麗な人に囲まれてそうだけど」
「そうだけど別に彼女たちは俺の事を好きなわけじゃないよ」
「え?」
「こんな仕事してると何かの見返りを求めて近づいてくる子とか多いんだ。だから殆ど遊びに近いかな?」

俺はそう言って肩を竦めるとは何ともいえない表情をした。
そして軽く息をつくと、「それって・・・何だかちょっと寂しいね・・・」と呟く。

「ああ・・・そうだな」

その言葉に俺もちょっと笑うと、は再び食べ始めた。
そんな彼女を見ながら、俺は今の言葉が胸に刺さって少しだけ今の自分の本心が見えた気がした。



本気で誰かを愛したい・・・・

本気で誰かに愛されたい・・・・・



今までみたいな上辺だけの恋愛じゃなく。



本当の俺を見てくれる人が・・・今の自分には必要なんだと感じていた。














「臭いかな・・・?」
「どうだろ?俺、全然、分からない」

焼き肉屋を出てホテルへの帰り道、二人で自分の服についた匂いを嗅ぎながら首を傾げた。

「ま、臭くても後は寝るだけだしいいか」
「そうね。はぁ~お腹いっぱい!」

私は苦しいお腹を擦りながら伸びをすると、後ろでレオがクスクス笑っている。

「何よ?」
「いや・・・焼き肉を完食したのにデザートまで食べるからだろ?」
「だって・・・きな粉アイス大好きなんだもん…。それにデザートは別腹なのっ」
「はいはい。そうだったな?」

レオは笑いながら私の頭をクシャっと撫でると、その後、自然に手を繋いできてドキッとする。

「はぁ~ほーんと今日は久し振りにノンビリした・・・」

そう言って嬉しそうに夜空を見上げている。
今は時間も遅いので歩いている人もまばら。
その中をゆっくりと二人でホテルに向って歩いていく。
気温はさっきよりも低くなったのか、少し肌寒く吐く息も白い。

「日本の冬って結構寒いよ」

レオはそう言って首を窄めた。
そのまま繋いだ手を自分のコートのポケットに入れてしまいドキっとして顔を上げると、レオの奇麗な瞳と目が合う。

「な、何・・・・?」
「いや・・・何だか日本で、こんな楽しい時間を過ごせると思ってなかったし・・・・ちょっと驚いてる」
「え・・・?」
「それって、がいてくれるからかな・・・」
「・・・・・・っ」

何気なく言ったレオの言葉に、私は顔が熱くなって鼓動が早くなった。

「また・・・・・・口が上手いわね。さすが俳優さん」
「何だよ、それ。俺は本気で言ったつもりだけど?」
「・・・・レオ・・・」
「ほんと・・・には感謝してる。今日だって俺の我がままに付き合ってくれたしさ・・・。サンキュ」

レオはゆっくり足を止め、私の顔を見つめながらそう言ってくれた。
その優しい表情にさっき以上に鼓動が早くなるのが分かる。
気付けばホテル前の通りには人気もなくなっていて、遠くで酔っ払いの声がかすかに聞こえるだけ。
目の前をタクシーが何台か追い越していく音と混ざっている。
二人の白い息が空を舞っては消えていく。
これって何かのドラマでありそうなシーンだな・・・なんて頭の隅で変な事を考えた。

ずるい・・・
俳優なんてそんな状況が揃うだけで絵になっちゃうんだから。
しかも見惚れてしまうような、そんな優しい顔をしないで欲しい・・・。

?」
「・・・・え?」

不意に名前を呼ばれてドキっとしたが、レオは何も言うことなく微笑んだ。

「何でもない。寒いし早く帰ろう」
「う、うん・・・」

彼の言葉に素直に頷けば、レオはちょっと笑顔を見せてまたホテルの方に歩き出す。


それからホテルに戻るまでレオは何も言わなかったけど、ただ繋がれた手だけはしっかりと、コートのポケットの中にある。



三日目、私とレオは初めて長い時間を二人きりで過ごしたことに今さらながらに気付いた―




















The fourth day...>>



うひょーレオ様とドライヴしたい(笑)
この日、レオは本当にオフで実際は横浜ではなしにドライヴしながら、
都内見学をしたそうです。はぁ~助手席にレオがいたら、
ほんと事故りそうですね(笑)(まあ私は免許ないんですけど。涙)


日ごろの感謝を込めて…


C-MOON管理人HANAZO