From me Dear you....~Catch
me if you can!Sequel...~
ACT.3...懲りない面々
俺は鼻歌を歌いながら運転しているジョーを横目で観察していた。
ハンドルを握る手でリズムなんてとって凄く楽しそうだ。
「…ジョー、機嫌いいね。何かいいことでもあったわけ?」
「ん~?そうかな?そう見えるか?」
「ああ、とっても」
ジョーは俺の問いには答えず何だか、しきりにニヤニヤとしていて気持ちが悪い(!)
やっぱり、この前公園で会ってた子…彼女なのかな…
いや、でもジョーに、そんな器量は…
「おし!到着~!」
ジョーは車をホテルの駐車場に入れると体も軽く、すぐに車から降りてエレベーターの方へ歩いて行った。
「ったく…。解かりやすいったらないな…」
まあ、彼女うんぬんよりも、ジョーが今、恋してるって事だけは確かだろう。
俺はそんな事を思いつつ、ジョーに続いてエレベーターへと乗り込んだ。
「今日は取材だけだし楽だろ?」
「ん?ああ、そうだな」
「何だよ。もっと嬉しそうにしろよ。早く終ればちゃんのとこに迎えに行けるだろ?」
俺が気のない返事をすると、ジョーは不満そうにしている。
「それは嬉しいけどさ…。なあ、ジョー」
「ん?何だ?」
「俺に…何か隠してることない?」
「隠してること…。はて…?何のことだ?」
ジョーはキョトンとした顔で俺を見ている。
解かっていて本気でとぼけてるならたいした役者だろう。
でもジョーは本当に解かっていない様子だ。
(まあ、俺にバレてるなんて自分では思ってないからこの質問の意味も深く考えてないんだろうな…)
そんな事を思いながら俺は軽く首を振った。
「いや…何でもない」
「…?変な奴だな…。お前の方こそ俺に何か隠し事があるんじゃないのか?」
「何だよ、それ。別にないね」
疑いの眼差しで見てくるジョーに俺は顔を顰めた。
チーンとエレベーターが到着して俺は廊下に出ると、取材用にとってある部屋へと向かう。
ジョーが先に歩いて部屋の前に行くとチャイムを鳴らした。
するとすぐにドアが開き、トムのマネージャーが顔を出す。
「あ、どうも、ジョーさん、レオナルド」
「ああ、どうも。記者の人は来てますか?」
「いえ、まだ。我々も少し速めに来てしまいましてね」
「そうですか。こっちもですよ。何せレオはよく遅刻しますからね、八ッハッハっ」
そう言って豪快に笑っているジョーに俺はムっとしつつ部屋の中へ入って行った。
「よぉ、レオ!」
「トム、久し振りっ」
俺はトムの方まで歩いて行くと隣に腰をかけた。
「レオの結婚式以来かな?」
「そうだね。元気だった?」
「ああ、何とかね?レオは?相変わらず、ちゃんとラブラブか?」
「もちろん。今朝も彼女を病院まで送ってから来たんだ」
「へぇ!天下のレオナルド・ディカプリオが奥さんを仕事場まで送り迎えねっ!」
「何だよ。いいだろ?」
トムの言葉に俺は苦笑しながら煙草に火をつけた。
ジョーとトムのマネージャーは入り口に近い方のソファーに座って何やら楽しそうに、おしゃべりをしている。
俺はそれを眺めつつ煙を吐き出し、トムにそっと耳打ちした。
「あのさ…」
「ん?」
「ジョーの奴、影でコッソリと女に会ってるんだよね」
「…な、何?ほんとか?」
「しぃ!偶然、見ちゃってさ?でもジョーにそれとなく聞いてもシラを切るんだよ」
「へぇ…。何だよ。ジョーも結構やるもんだなぁ…」
トムはチラチラとジョーの方に視線をやりながら羨ましそうに呟いている。
「で?どんな子?普通の子か?」
トムは興味津々で俺の方に身を乗り出してくる。
俺はちょっと笑って肩を竦めた。
「いや…それが新人の女優らしいんだ」
「うっそだろぉ?!」
「バ…!しぃ!」
「あ…す、すまん…っ」
トムが大きな声を出したからか、二人はこっちを見て首を傾げている。
「どうした?トム。またレオにノロケ聞かされてるのか?」
「え?い、いや、まあ、そんなとこか…な?」
「うるさいぞ!ジョー!」
ケラケラと呑気に笑っているジョーに俺とトムは何とか誤魔化した。
「で、ほ、ほんとか?女優って…っ」
「ああ。会ったのを見た時、その子は撮影中だったらしいし…。ま、新人だから名前も聞いた事がなかったよ」
「名前は?」
「確か、"シェリー"って言ってたけど…」
「へぇ、俺も知らないな…。でも…ジョーも侮れないな…。陰でコソコソとっ」
トムは顎を撫でながら半目でジョーを見ている。
「まあ、隠してるってことは俺とかに邪魔されると思ってるからだろうなぁ…」
「そうかもなぁ。案外、用心深いな…」
「でも見ててバレバレなくらい浮かれてるからね?用心してるとも思えないけど」
俺は煙草を消してソファーに凭れた。
「ちょっと、その子のこと探ってみるかな?」
「え?レオ、ジョーの彼女なんて探って、どうするんだ?」
「ああ、いや…彼女じゃないかもしれないし。ほんとに付き合ってるのかどんな子か少し知りたいんだよ」
「何で?」
「ああ、暇つぶし」(!)」
「え?」
トムが呆れたように俺を見た。
「だっては仕事に復帰しちゃったけど俺はまだオフが残ってるしさ?ジャックと遊ぶのも疲れるし…だからほんの暇つぶしだよ」
「お前なぁ…。ま、面白そうだけど(!)」
「だろ?彼女の事務所からでも探れそうだしさ?そもそもジョーが知り合ったくらいなんだからうちの社長がらみだと思うんだ」
「ほ~。そうか!なるほどな」
「その辺から探ってみるよ。社長に聞けば何か知ってるだろ」
俺はちょっと笑いながらジョーを見るとジョーはトムのマネージャーと呑気にバカ笑いしていた。
午後5時、少し涼しくなってきた頃、検査を終えたカイルと私はまた庭で一緒に遊んでいた。
「うわぁ、カイル、リフティング上手いのね!」
「こんなの簡単だよ?これくらい出来ないとサッカーやれないしさ?」
カイルは、そう言って笑うと膝でポーンとボールをあげてから手でキャッチした。
「もやってみる?」
「…え?」
「リフティング!」
「…………」
そう言われて私はマークと遊んでたバスケを思い出した。
確か、あの時、私はよくドリブルして自分の足にボールを当てて飛ばしてたっけ…
手でやっても、あんなザマだったんだもの…
足で…なんて絶対に無理…="やらない"という答えに到達した。
「う、ううん…。私はいいわ…」
私は顔が引きつりながらも笑顔を見せるとカイルはニヤニヤしながらボールを指で回している。(上手いじゃない…)
「あ~って運動音痴なんだ…?」
「な、何よっ。そんなこと言ってないでしょ?私はスカートだし…」
「こんなの膝使うだけだから見えないって。それに僕はのパンツ見たって仕方ないしね?」
「ぅ…っ」
(な、生意気…!)
私は頭に来てカイルの手からサッカーボールを奪った。
「や、やるわよ!簡単なんでしょ?」
「ああ、バランスさえ掴めばね?」
カイルはそう言うと芝生の上に座ってニッコリ微笑んだ。
ぬ…あの余裕の顔…!
こうなったらリフティングでも何でもやってやろうじゃないっ
私はムキになって(大人気ない)さっきカイルがやっていたリフティングの見よう見マネでボールをポンっと放ると膝でトントンと打ってみた。
が、そもそもナースの制服はそんなに広がるようには出来ていない。
よって膝を高く上げるとピンっと張ってしまうのだ。
だからなのか何なのか私はバランスを崩し、ボールが私の膝の端に当たってバイン…っと真横に飛んで行った。
「あ…」
と思った時は、すでに遅し。
ボス…っ
「ぃ…っ」
サッカーボールは勢いよく近くで座って見ていたカイルの顔面を直撃してしまった(!)
「カ、カイル!大丈夫?!」
私は慌ててカイルの傍に膝をつくと鼻先を押えてる彼の手をどけて顔を覗きこんだ。
「うぁ、な、何だよ…っ。寄るなって…っ」
カイルは頬に触れた私の手を振り払って顔を背ける。
「何よっ。怪我してないか見るだけよ?ちょっとこっち向いて、ほらっ」
そう言って私は無理やり、カイルの顔を自分の方に向け、怪我をしていないか確めた。
カイルは顔を顰めてはいるものの今度は大人しくしている。
「はぁ…大丈夫みたいね…。良かった…」
「よ、良かったじゃないよっ。こっちは痛い思いしたって言うのに…」
カイルは文句を言って顔を背けた。
見れば少しだけ頬が赤くなっている。
「カイル…?ごめんね…?」
「別に…そんな謝らなくてもいいけどさ…。はリフティングしない方がいいみたいだな?」
カイルはそう言うとやっと私の方に顔を向けて苦笑いしている。
「な、何よ、失礼ね!仕方ないでしょ?こっちはスカートなんだし、これあまり足上がらないのよっ」
私が口を尖らせて文句を言うと、カイルがニヤリと笑った。
「あ~。そう言えば…さっきチラっと白いものが見えたけど…今日ののパンツは白かな?」
「…………っっ!!」
「あ、ほんとに、そうだった?」
顔を真っ赤にして口をパクパクしているとカイルは笑いながら私の顔を覗き込んできた。
「カ…カ…カイル~~~!!さっき見たって仕方ないって…っ」
「でも見ようと思わなくても見えちゃったんだからそれも仕方ないだろ?」
カイルは澄ました顔でそう言うと肩を竦めている。
その仕草が何となくレオに似ていて私は腹がたってきた(!)
「全く!口だけ達者なんだから!」
私はそう言ってカイルの首に腕を回して頭の中心をグーでグリグリしてやった。
「ぃたた!痛いよ、!」
そう言いながらも楽しそうに笑うカイルは初めて会った時の彼ではなく歳相応の顔に見える。
私は一通りグリグリして気が済んだので(!)少し腕の力を緩めたがそれが油断に繋がった。
カイルは体勢を変えて、
「お返しだっ」
と言うや否や私の腕を掴んでくすぐろうとした。
だが私は不意を疲れて体を押えきれずにそのまま後ろへひっくり返った。
「キャ…っ」
「わ…っ」
ドサっと音がして私は後頭部を芝生に打ちつけクラっとした。
前の古傷に響いたのか一瞬、目の前が真っ暗になる。
カイルも私の上に倒れこんできたが、私が動かないのを知ると慌てて体を起こし頬を軽く叩いてきた。
「おい!?!どうしたの?っ」
「ん…ぃつつ…」
頬を叩かれた感触で何とか目を開けると目の前にはカイルの奇麗なブルーアイが見えてギョっとする。
「わ…っ。な、何よ?!」
「は~良かったぁ…」
「え?」
カイルは心底ホっとした顔で息をつくと頭を垂れた。
「もぉ~驚かせんなよな?気絶したかと思っただろ?」
「き、気絶って言うか一瞬クラってきただけ…。そ、それより…」
「何だよ…?」
「は、早くどけてよ…」
「え?」
「わ、私、起き上がれないでしょ?」
何となく照れくさくて視線を反らすとカイルも顔を赤くした。
何せ至近距離に互いの顔があるのだ。
「ご、ごめん…っ」
カイルはそう言うと私の上からパっと避けてくれた。
そこで何とか体を起こすと制服についた草を払う。
「だ、大丈夫かよ…?」
「え?」
「頭…ぶつけたんだろ?痛くない?」
カイルは気にしているのか私の方をチラチラ見ている。
「ああ、もう平気よ?痛くないわ?」
私が笑顔でそう答えるとカイルは安心したように溜息をついた。
「そ…。良かった」
私はちょっと苦笑しながらカイルの頭をクシャっと撫でると立ち上がろうと腰を浮かした。
その時…
「…っ」
「え…?」
いきなり名前を呼ばれて振り向くとこっちに向かってレオが走ってくるのが見える。
「レ、レオ?!」
私は驚いて立ち上がった。
「、何してんだよっ」
レオは私の前に来るなりそう言って抱きしめてきた。
「キ…っ。ちょ、ちょっとレオ?」
「今、迎えに来たらが押し倒されてるのが見えて…」
レオはそう言って驚いた顔で立ち上がったカイルを睨んだ。
「お前、俺の奥さんに何してんだ?」
「え?奥さん…?」
カイルはキョトンとした顔で私を見た。
「ちょ、ちょっとレオ…っ。カイルは患者さんよ?!何言ってるの?」
「え…?患者…って、そう言えば…」
レオは私の言葉に驚いた顔で、カイルの格好を見た。
パジャマに軽く黒のカーディガンを羽織っている姿にやっと患者と解かったようだ。
「ご、ごめん…。遠くからだと、そう見えなくてさ…?」
レオは恥ずかしそうに頭をかいたが、確かにカイルは身長もあり遠くからだと大人の男に見えただろう。
私はちょっと苦笑して、「もう…レオ、早っとちりなんだから…」と言った。
「今、ちょっと二人で、ふざけてただけよ?ね?カイル」
「え?あ、ああ…」
私が声をかけるとカイルは少し俯いて視線を反らした。
きっと知らない人がいるからだと思って私はレオを紹介する事にした。
「あ、あの…彼は…私の旦那様…なの…。レオよ?レオ、今の私の担当患者でカイル。凄くサッカー上手なの」
「そうなんだ。宜しく、カイル」
レオは旦那様と紹介されて嬉しかったのかニコニコしながら私の頬にチュっとキスをした。
「ちょ…レオ…っ」
「奥さんにキスして何が悪いの?」
レオは澄ました顔でそんな事を言っている。
私はちょっと頬を押えてレオを睨むと時計を確認した。
「あ…もう、こんな時間…?カイル、病室に戻らないと…。夕飯の時間よ?」
「え?あ、そっか」
カイルはそう言ってボールを持つと、「僕、先に行ってようか?」と振り向いた。
「え?一緒に行くわよ。薬も出さないと…。レオ、待っててくれる?」
「ああ、いいよ。じゃ、またな?カイル」
レオが声をかけるとカイルは少し照れくさそうに頭を下げて歩いて行った。
「じゃ、すぐ来るから」
「ああ。解かった」
私はレオに声をかけると急いでカイルの後を追っていった。
「ちょ…カイル、待ってよ…っ」
ズンズンと歩いて行くカイルにやっと追いつき、私は息を吐き出した。
するとカイルはチラっと私を見ると少しだけゆっくり歩いてくれる。
「、結婚してたんだ?」
「え?」
「指輪してないし解からなかったよ」
「あ…。そうね。仕事中は外すようにしてるの」
「ふぅん。あと…さ…」
「え?」
病院の中に入ったとこでカイルが立ち止まった。
「さっきの…レオナルド…だよね?俳優の…」
「あ…う、うん…。そう…ね」
「驚いたよ。レオナルドが目の前に走って来たから」
「そ、そうね…。確かに…」
私は苦笑しながらカイルを見ると彼はまた歩き出した。
「そう言えば…この前まで騒がれてたよね?」
「え…?」
「…婚約者から奪った女性と結婚…ってさ?」
「カイル…」
私はその言葉にドキっとした。
だがカイルは慌てた顔で私を見ると、
「あ、ご、ごめん。あの…驚いただけなんだ…。その女性が…だってことにさ…?」
と気まずそうに目を伏せた。
私はちょっと微笑むとカイルの頭に手を乗せた。
「そんな気にしないで?誰だって驚くわよね?」
「…うん…」
カイルは少し顔を上げて頷いた。
「さ、じゃあ夕飯はちゃんと食べてね?今、薬持ってくるから」
私は病室のドアを開けるとカイルを中に入れて、そう言った。
カイルは黙ったままベッドに入ると窓の外を眺めている。
私はそっと病室を出て行った。
「お待たせ!」
が笑顔で走って来て俺は吸っていた煙草を消して車から降りた。
「お疲れ様!」
そう言って抱きしめてから軽くキスをするとは恥ずかしそうに辺りを見渡している。
「まだ照れくさい?」
俺が意地悪でそう言うとは顔を赤くして見上げてくる。
「だ、だって…後で皆にからかわれたりするし…」
「そんなの言わせておけばいいさ」
俺はの頬にもチュっとキスをすると助手席のドアを開けてあげた。
は困った顔をしつつも大人しく車に乗り込む。
そのままドアを閉めて俺も運転席へと乗り込むとエンジンをかけた。
「あ…レオ、仕事は…?今、終ったの?」
不意にが聞いてきた。
俺はアクセルを踏んでハンドルを切りながら、
「そうだよ?終って速攻で迎えに来た」
「ジョーさんは?」
「ん~何だか用事があるって言っていそいそと帰って行ったけど…もしかしたら…」
そこで言葉を切り、を見ると彼女もこっちを見た。
「あ…例の女優さん!」
「そう。俺もそうかな?と思って突っ込んで聞いてみたんだけどさ?ジョーもなかなか手強くて挙動不審にはなるんだけど口は割りそうにないな?」
「口を割るって…そんな犯罪者じゃないんだから」
と、はクスクス笑っている。
「いやぁ~。ある意味、犯罪だろ?あれは…。あの子とジョーなんてどう見たって釣りあわない」
「そんな…失礼よ?」
と、言っては呆れたように俺を見た。
それには俺も苦笑しながら、
「ジョーの存在が失礼だよ。ほんと毎晩のように夕飯食べに来るんだからさ?今度、セキュリティーシステム導入しようかと思って」
「ええ?な、何するの?この前だって門のところにテレビカメラつけたばかりじゃない」
と、は大きな瞳をますます大きくしてクリクリさせている。
その顔が何とも可愛くて俺はちょっと顔が綻んだ。
「まあカメラだけじゃ不安だしさ?何か敵を攻撃(!)できるものでも…て思ってセキュリティー会社の重役に相談してるとこなんだ」
「えぇ?!な、何よ。攻撃って…マシンガンでも設置するの?!」
「アハハハハ!」
の突拍子もない言葉に思わず俺は爆笑してしまった。
それにはもプ~っと頬を脹らませている。
「何よ、そこまで笑わなくても…」
「ご、ごめん…アハハハ…。だ、だってマシンガンって…。そんなの設置したら軍隊だろ?アハハ…っ」
「もう、レオ笑いすぎ!」
はプイっと顔を背けて窓の方を向いてしまった。
そんな彼女を見て俺は必死に笑いを堪えると、「~?ごめんってば。怒らないでよ…。?」と優しく声をかける。
するとがゆっくりと俺の方を見た。
「怒ってないけど…。でも何を設置するの…?」
はまだ気になってる様子だ。
俺はちょっと笑うと、
「別にジョークだよ?まあ重役と話してるってのは本当だけどさ。攻撃できるものって言っても人が近寄れば光るライトとかレーザービームくらいかな?」
「で、でも、そんなジョーさん一人に大げさな…」
「ぶ…っアハハハハっ!」
「ま、また笑う!もう知らない!」
またスネた彼女は顔をずっと窓の方に向けて口を尖らせている。
俺は笑いを噛み殺し、
「、それ設置するのは何もジョーとかトビーが来るからじゃないって」
「…どういう意味?」
俺の言葉に、は少し反応して聞いてきたがこっちは見てくれそうにない。
「だから…俺が仕事とかロケで家を空けるときにさ?、一人になるだろ?」
「…ぅん…」
「それが俺は凄く心配なの」
「…ぅん」
「ジャックも頼りないだろ?」
「…………ん」
そこは小さく答えたに俺はまた笑いそうになったが何とか堪えて言葉を続けた。
「で、セキュリティーを強化しようかと思ってね?ロケ先とか連れて行きたいけど、も仕事あるしいつもは無理だからさ?」
俺はそう言って信号が赤になったところで車を止めると、顔を背けたままのの腕を軽く引き寄せた。
「キャ…っ」
「解かった?」
驚いたの頬に俺がそう言ってキスをすると、彼女は恥ずかしそうにこっちを見た。
「ん…。解かった…。ありがとう…」
そこで俺はちょっと微笑むと今度はの唇に優しく口付けた。
チュっとすぐに離せばちょうど信号も青になる。
「さ、今夜は、ジョーも来ないし平和だな?何を食べよっか」
俺はそう言ってに微笑むとアクセルを踏み込んでスピードをあげていった。
「何やってんの…?母さん…」
俺はキッチンで鼻歌なんて歌いながら鍋をかき回してる母を見て開いた口が塞がらない。
「何って見れば解かるでしょ~?この前、ちゃんが好物だって言ってたカレーを作ってるのよ?」
「そりゃ見なくても、この匂いで解かるよ…。じゃなくて!!何で勝手に人の家のキッチンでカレーなんてかき混ぜてんだって聞いてるんだよっっ」
俺がそう怒鳴ると母は呆れたように息を吐き出し、鍋に蓋をしてこっちを見た。
「何を、そんなカリカリしてるの?カルシウム不足?」
「あのね!イライラさせるのは母さんだろ?!それに何だよ。あのリビングにいるのは!」
「何って…あなたの親友のトビー・マグワイアじゃない。どうしたの?記憶喪失?」
「んなわけないだろっ。連れてくるな!あんなややこしいセクハラ男わ!だいたいどうやって入ったんだよ?!鍵かけて行ったはずなのにっ」
「あら、そんなのジョーさんから合鍵預かってるに決まってるじゃない」
「はあ?!そんなはずは…合鍵だって俺との分とジョーのと………あ…っ」
俺は思いついて、すぐにリビングへ走って行った。
そこにはジャックと遊んでるトビーもいたが、奴を突き飛ばしてリビングにある酒の閉まってあるボードの引出しを一気に開ける。
「ないっ。ここに閉まってあった最後の合鍵…っ」
俺は引出しの中を探し回ったが、いざ落とした時のためにと作ってもらったうちの一つの合鍵がない事に気付いた。
「フフフ。お探しの物はこれかしら?」
母さんの声にバっと振り向けばその手には確かにこの家の合鍵が握られている。
「そ、それ…っ」
「これジョーさんに言ってコッソリそこから抜いて貰ったの。だって母さんだってよく遊びに来るのに誰もいなかったら入れないでしょ?」
俺は澄ました顔でそう言った母を見て額がピキピキしたのを感じた。
「入れなかったら帰れ!合鍵盗んでまで無理やり入るなっっ」
「まあ、怖い…。嫌ねぇ?怒りんぼな男って」
「ね~?レオママ」
トビーと母は何だかニコニコしながら頷きあっていて俺の怒りが最高潮に達した時、が着替えてリビングに入ってきた。
「あ、お母さん、私も手伝います」
「まあ、ちゃんは優しいわねぇ?どこかの親不孝な息子とは大違い!やっぱり娘っていいわねぇ?」
「…??」
母の言葉には首を傾げている。
俺はスタスタ歩いての手を掴むと、「ジャック!散歩行くぞ?!」と呼んでそのまま外へと出た。
「ワンワン!」
ジャックも尻尾をブンブン振りながら追いかけてきたが、は驚いた顔で俺を見あげて来る。
「ちょ、ちょっとレオ?どうしたの?いきなり…」
「いいんだ。気にしないで?ジャックの散歩に行こう」
「で、でも私、お母さんの手伝い…」
「しなくていいからっ」
俺はそう言ってプリプリしつつ、海への道を暗い中、歩いて行った。
「ジャック~!こっちこっち!」
「ワゥ!」
「ほら、ボールだよ!」
は砂浜に誰かが忘れて行った野球のボールを拾うとそれを遠くへ放り投げた。
ジャックがボールに素早く反応して必死に走りながら取りに行く。
俺はそれを砂浜に座りながら見ていた。
はぁ…全く母さんの奴…わざと邪魔しに来て楽しんでるな、ありゃ…。
今日はジョーが用事あるとかで、来ないとホっとしていたのに。
煙草の火をつけ煙を吐き出しながら俺は楽しそうにジャックと遊ぶを見ていた。
はぁ…もある意味呑気だからな…
嫁姑が仲いいのはいいけど仲が良すぎるのも問題だ…
そんな事を考えているとが俺の方に歩いて来て隣に座った。
「はぁ~疲れたっ。ジャック、よく遊ぶね?」
「ああ、あれ?あいつ、どこ?」
俺は暗いので、真っ黒なジャックの姿が見えにくく辺りを見渡した。
「ああ、ジャックならボール追いかけて向こうに走って行ったわ?」
「そっか。じゃ、暫くは邪魔しに来ないかな?」
「え?」
俺はちょっと笑っての腰を抱き寄せると驚いた顔で見上げてくる彼女の唇を優しく塞いだ。
「ん…っ」
最初から強引に舌を忍ばせ、深く口内を愛撫すればはギュっと俺の胸元を掴んでくる。
少しづつ優しいキスに戻しながら、最後、チュっと軽く口付けるとは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「家には、お邪魔虫が二匹いるからね?今のうちにキスしとかないと」
俺が笑いながらそう言うと、「また、そんなこと言って…」と苦笑した。
その時、あの「八ハッハ…」 という荒い息遣いが聞こえて来てドキっとして顔をそっちへ向けるとジャックが目の前まで走って来た。
「うわ…っ」
俺はまた舐められると思って逃げる用意をしたが、ジャックはいつもの様に飛びかかっては来ないで俺の目の前にポトっとボールを落とした。
「あ、レオ、それ投げてって言ってるのよ」
がクスクス笑いながらそう言うもんだから俺も仕方なくボールを持った。
「俺との邪魔しないでくれるなら何度でも投げてやるよ」
と、言って笑いながら立ち上がると俺はボールをなるべく遠くへと放り投げた。
するとかすかにボチャン…っと水音がしたような気がしての方に振り返る。
「あ…」
猛然とボールに向かって走り出したジャックを見ては驚いたように立ち上がる。
俺も思い切り溜息をついて、「ごめん…。海に落ちたみたいだ…」と肩を竦めた。
「仕方ないわ?」
と、も苦笑して俺の腕に自分の腕を絡ませ微笑む。
だが、仕方ない…で気がすまないのが一人…いや、一匹いた事を俺達は忘れていた。
「あ…レオ…っ。ジャックが…」
「あ…」
俺とはボールに向かって猛然と走り出したジャックがてっきり途中で諦めて戻ってくるかと思っていたが、それが甘いことに気付く。
ジャックはボールしか見えてないようでそのまま海に飛び込むと暗闇に姿を消した(!)
「あ、あれ…?あいつ…見えなくなったぞ…?暗いから解からないだけかな…」
「で、でも何だか水しぶきが見えるし…。ひょっとして泳いでるのかも…」
「でも、あいつ泳いだ事はないだろ?前にも風呂に入れたら沈んでいったしさ(!)」
「あの時は子犬だったし…。ほ、ほら。犬って本能で初めてでも犬かき出来るって言うし…」
笑顔でそう言うに俺もなるほど…と頷き、それでも二人で心配になり、海の方へ歩いて行った。
すると…
「フガゥ…フグゥ…っ」
「ねえ…何だか変な声聞こえない?」
「ああ…俺もそう思った…」
そう言って二人で顔を見合わせ、もう一度暗い海の方へと視線を向けた。
その時、ジャックらしい耳が海面にひょこひょこと出てきたり沈んだりしているのが見えてギョっとする。
「あいつ…!もしかして溺れてんのか?!」
「や、やだ…っ。どうしよう…」
がアタフタしだして俺の腕を掴んでくる。
だが俺は咄嗟に上のシャツだけ脱いで海へ走って行って海水の中へ入って行った。
「レオ…っ。気をつけて?!」
の声がかすかに聞こえたが俺は真っ暗な中、必死にジャックを探した。
するとすぐ近くでさっきの、「フグゥ…っフガっ」と怪しい声が聞こえて来て、俺はその声のする方へと手を伸ばした。
すると指先に何かが触れて俺は思い切り、それを掴み泳いで、ビーチへと戻った。
「ゲホ…っゲホ…っ」
少しだけ海水を飲んでしまい咽たが、そのまま砂の上に寝転がると隣でいつも以上に、
「ハァハァハァハァ…」
と気持ちの悪い息遣いのジャックが横になっている。
そこへが走って来た。
「レオ!大丈夫?」
「ああ…俺は大丈夫だけどさ…。ジャックは…?」
俺がそう聞くとはすぐにジャックの方にしゃがんで頭を撫でている。
「ジャック?大丈夫…?」
「ハグゥン…」
「大丈夫みたい…」
「そっか。良かったぁ~」
俺はちょっとホっとして起き上がるとジャックの方に這って行った。
ジャックは少しすると体を起こし、水を弾くのにプルプルっと体を振り出す。
「つめて…っ。何だよ、こいつは…。溺れたって解かってるのか?」
「ワゥ…」
口の中で小さく吠えたジャックの目は少しだけ怯えていて耳も尻尾もシュンと垂れ下がったままだ。
「解かってるみたいだな…。ったく…犬が溺れたのを見たのは初めてだよ…」
「ほ、ほんとね…?」
今さらながらに笑いが込み上げて来て俺とは顔を見合わせて思い切り笑った。
「アハッハハ…何だ?こいつ…。泳げないなんて…ハハハハ…っ」
「ワゥ…ン…」
「アハハハっ。何だかへこんでるわ?溺れたの恥ずかしいのかな?アハハ…っ」
俺とが笑っているとジャックは悲しそうにその場に伏せをして自分の前足の上に顎を乗せると、半目になりながらたそがれていた。
「うわぁ…これ全部、脱いで行った方がいいかな…」
水浸しの自分を見ながら、レオは悲しげに呟いた。
「あ…待ってて?私、今、タオル持ってくるから」
「うん、ありがと」
私はちょっと微笑むとすぐにバスルームへと走って行く。
そして大きなバスタオルを出してもう一度玄関ホールへ戻ると、レオの母が驚いた顔で立っている。
「な、何してるの?こんな夜に水泳でもしたの?」
「違うよ…っ。ジャックが溺れたから助けたんだ」
「えぇ?!犬が溺れた?!」
お母さんの声にレオの足元に座っていたジャックが、またしてもシュンとして耳をたれている。
「ワゥンン…」
「もう…こいつデリケートなんだから、そうバカにするなよ。見ろ、へこんだだろ?」
さっきまで大笑いしていた人の台詞とは到底、思えなかったが、とにかくレオが風邪を引いたら大変だとバスタオルを渡した。
「はい、レオ。これで拭いて?」
「サンキュ。ちょっと足拭いてこのままバスルームでシャワー入るよ」
「うん。あ、バスローブ持っていくね?」
「ありがと。は、ほんと気が利くよね?」
レオはそう言って私の頬に軽くチュっとキスをした。
「これ以上、近づくとまで濡れちゃうからね?まずは先にシャワー入ってくるよ」
「う、うん…」
私はお母さんの前でキスをされ、少し恥ずかしかったが何とか笑顔を見せた。
「ほんと大変だったわね?あ、そうだ。カレーもう出来てるのよ?早く食べましょ?」
「はい、ありがとう御座います」
「そんな、お礼なんていいのよ?トビーはもう食べてるから早くちゃんもいらっしゃい?」
レオの母、イルメリンは、そう言ってダイニングの方に歩いて行く。
私は慌てて、
「あ、その前にレオにバスローブ取って来ます」
と声をかけると振り向いたイルメリンは優しく微笑んでくれた。
そのまま二階へ上がり、新しいバスローブを出すとすぐに一階のバスルームへ向かった。
濡れた服を洗濯するのに袋に入れて代わりにバスローブを置く。
「レオ~?ここに置いておくね?」
そう声をかけると突然シャワールームのドアが開き、レオが顔だけひょこっと出した。
「サンキュ。あ、も一緒に入る?」
「な、何言ってるのよ…。もう!早く出てね?夕飯出来てるって」
「アハハハ。OK!すぐ行くよ」
私が真っ赤な顔で目を反らせばレオは笑いながらドアを閉めた。
「も、もう…いっつも人をからかうんだから…」
そう呟きながら玄関へ戻ると、まだその場で伏せをしているジャックを見た。
「あ、ジャックも海水と砂を落とさないとね?おいで?」
「ワゥっ」
私が声をかけるとジャックは嬉しそうに立ち上がって尻尾を振り出した。
そのまま外に出て庭へ周り、そこにある蛇口にホースをつける。
「さ、おいで?洗ってあげる」
手招きするとジャックは、すぐに傍に来た。
水とお湯を出して温度を調節すると丁度いい加減のぬるま湯が出て来る。
それをジャックにかけて海水と砂を洗い流してあげた。
ジャックは…というよりはラブラドールは毛が短いので洗うのは割と簡単だ。
「さ、これでいいわ?」
「ワンワン!」
水をプルプル弾いたジャックは嬉しそうに吠えると庭先を走り出した。
そこにベランダの窓が開いてバスローブ姿のレオが顔を出す。
「?何してるの?」
「あ、あのね。今ジャックも洗ってあげてたの」
「ああ、そっか。で、何…ああやってはしゃいでるの?」
庭先で楽しげに駆け回ってるジャックを見てレオは苦笑した。
「そうみたい。あ、そこのジャック用のタオルとって?」
「ん?ああ、はい」
「ありがと」
私はそれを受け取ると、「ジャック、おいで!」と声をかけた。
「ワゥ!」
「体拭かないと家に入れないからね~?」
そう言いながら濡れたジャックの体を拭いてあげるとジャックも大人しくお座りをして尻尾を振っている。
「こいつ、さっきまで死にそうな顔してたクセにもう機嫌直ってるな?」
レオがクスクス笑いながら窓際にしゃがんだ。
「ほんとね?でも、さっきは泣きそうな瞳で見るから心配しちゃったわ?」
「ああ、ほんと。でもこれで二度と海には近寄らないだろうな」
レオはそう言って笑うと私の頬にチュっとキスをして手を引っ張り立たせてくれた。
「さ、食事にしよう?」
「うん。あ、ジャック、おいで?」
「ワゥ!」
私が窓から家に入るとジャックもすっ飛んできた。
また庭先に締め出されるのが怖いんだろう。
「ジャックにもご飯あげないと」
「あ、そうだなぁ…。今日は何味にする?」
そんな事を話しているとダイニングからトビーがお腹を擦りながら歩いて来た。
「はぁ~お腹いーっぱい!」
「おい、トビー…。お前、家の主より先に食事していいと思ってるわけ…?」
「え?だって俺、ご飯4杯もお代わりして待ってたんだよ~?それなのに二人なかなか来ないからさ~。おかげでお腹苦しいよ~」
トビーは、「ゲフ…っ」と言いながらソファーにボスっと座ってお腹を擦っている。
レオを見れば何だか怒りマークがピキピキと出ていて私は怖くなった。
「おい、トビー…」
「ん~?ああ、デザートは、もう入らないなぁ~。アイスしか(!)」
「だ、誰がデザートの話なんてしてるんだ!!!」
突然、レオが怒り出し私とジャックは慌ててレオから離れた。
「な、何だよ、レオ…。また怒っちゃってさ?」
「誰が怒らせてるんだよ!だいたい人の家に勝手に上がりこんで、しかも先に食事してその上4杯も食うな!!」
「だってさ…お腹空いたんだよ…」
「………っ」
「レ、レオ…?そんな怒らないで…?ね?私達も食べに行こ?」
私はレオの腕を引っ張り、必死にそう言えばレオもやっと振り向いてくれる。
「ごめん…。大きな声だして…。何だか、どっと疲れたよ…」
「う、うん、そうね?じゃあ、後で私がマッサージしてあげるから。ね?」
何とかレオの怒りを静めようとそう言ってみると、途端にレオの表情が明るくなった。
「ほんと?」
「…え?」
「ほんとにがマッサージしてくれるの…?」
「え、ええ…。寝る前にしてあげる」
「やった!じゃあ、その後に俺もしてあげるね?」
「え?わ…っ」
突然、レオに抱きしめられて驚いた。
するとソファーに伸びていたトビーが騒ぎ出す。
「あーーーっっ!ずるーい!!ねね、ハニー!俺にもマッサージ~~~~っっ!!」
「え…?」
「…………っっ?!」
その途端、今まで私を抱きしめニコニコしていたレオの怒りマークがトビーの発言で復活した(!)
ガンッ!!!
「ってぇぇぇ!」
「何で俺の奥さんがお前をマッサージしないといけないんだ、このバカ!!」
レオはその場にあったトレーでトビーの後頭部を思い切り殴ると私を連れてリビングを出て行った。
「あ、あの…レオ…?怒らないで…?ね?」
(もう~せっかく機嫌直ったのに~っトビーのバカ~ッ)
そんな事を思いつつ、レオの腕をつんつんと引っ張るとダイニングの手前でレオが私の方に振り向いた。
その表情は少し悲しげだ。
「…」
「ん…?」
「仕事、休みとってくれない?」
「え…?!」
「こんなとこにいたらいつまで経ってもこんな感じだし…。新婚旅行に出かけて二人きりになりたいんだ…」
「レオ…」
「ダメ…?」
レオはそう言って私の顔を覗き込んでくる。
私はなんと答えようか困ってしまった。
「で、でも…復帰したばかりだし…その…カイルの担当になったばかりだから…」
「…そっか…。そうだよな…」
レオは目に見えてガックリしてしまい、私は何だか酷い事をした気もちになった。
「あ、あの…レオ…」
「」
「え?」
不意に名を呼ばれて顔を上げるといきなりチュっとキスをされた。
「…レオ…?」
「ごめん。俺の我侭だよな?」
「そ、そんなこと…。私の我侭だよ?」
「いや…は頑張ってるしさ…。俺がと二人でいたいだけなんだ…」
「レオ…」
私は少し悲しくなってレオの胸元に顔を埋めた。
するとレオがギュっと抱きしめてくれる。
「ごめんな?あんな母親と友達で…。邪魔するの趣味なんだよ」
「ううん。結構楽しいよ?家族が大勢出来たみたいで…」
「……まあ…ね。同居でもないのに毎日、誰かかれかはいるからな…」
「そのうち、皆も来なくなるわよ…」
「うん、そうだね」
レオはそう言って体を離すと優しく微笑んで私の唇にチュっとキスをした。
「後でマッサージ、ちゃんとしてね?」
「え?あ、うん」
思い出して頷くとレオは嬉しそうに二コっとして私の手を引いてダイニングへと入って行った。
中ではイルメリンが私達を待ちくたびれた様子で、
「もぉ~~…やっと来た~~。お腹空いちゃったわ~?」
と恨めしそうな顔で口を尖らせた。
「ごめん、ごめん。早く一緒に食べよう?」
レオも機嫌が直ったのか椅子に座ると母に笑いかけている。
「あ、私、手伝います」
そう言って私はイルメリンと食事の用意をしてテーブルへカレーとサラダ、スープの皿を並べていった。
「はい、じゃあいただきますっ」
「いただきまーす」
「いただきます」
そう言って3人で食べようとした、その時…
「ワゥ!ワゥ!」
「あ…忘れてた…」
足元に悲しげに座るジャックと目が合い私はちょっとだけ苦笑したのだった。
一方、レオのマネージャーのジョーは…
「いや~今夜は楽しかったですよ!」
「私もです。ほんとに、ご馳走様でした!」
シェリーはそう言って俺に微笑んでくれた。
(…く~っ。可愛いなあ!こんちくしょうめっ!)(?)
「いやいや、あんなステーキなんてたいしたことないですよっ。アッハッハハ!」
そうは言ったもののかなり高級ヒレステーキだった。
いや、ここで無理をしないでどうする、俺!
こんな可愛い子とデナー(!)…もとい、ディナーを食べれるチャンスだって、そうそうないぞ?!
「でも…ほんとに急にお誘いして良かったんですか?何か用事でも…」
「い、いや!ないない!用事なんて全くない!」
「そうですか?ジョーさん、いつも、お忙しそうだから…」
「そ、そうなんだけどね?まあ、今夜はたまたま空いてたんだ」
(このくらいの見栄ははらないとな…)
「じゃあ…ちょうど良かったんですね?」
「あ、ああ。もう、ほーんと、ちょうど良すぎだよーっアハッ」
俺がそう言うとシェリーはクスクス笑っている。
「ほんと面白いですね?ジョーさんって」
「そ、そうかい?!そうでもないけどねっ」
(ん?もしかして…俺って笑われてる?!)
そう思いつつ彼女が何故、最近よく電話をくれるのか聞いてみないといけないと俺は思った。
(そうだ!あまり調子に乗るな、俺!)
自慢じゃないが、このジョー・サンダー、生まれて今日まで女性から好きになられたことは一度しかない。
しかもその一度というのが高校生の時に近所に住んでた"ハナタレリリちゃん"というニックネームのついた巨体な女なんだ…
何でハナタレなのかというと、奴は子供の頃いつも鼻をジュルジュルさせていた。
しかもそれを服の袖で拭くもんだから袖口がカピカピを取り越してテカテカしてたんだ。
だから同級生からそう呼ばれるようになった。
その女は高校生になって何故かブクブクと太り出し、クラスの男どもは衛星中継で見た日本のスポーツ"はっけよい"に似てると騒ぎ出し、
次の日には彼女は"ハナタレリリちゃん"から"はっけよい"にニックネームが変更されていたっけ…。
それだけでも最悪なのに何故かその"はっけよい"は俺に目をつけた!
同じ体型に親近感が沸いたのか、毎朝俺を迎えにくるようになってしまった。
あの悪夢の日々は卒業まで続き、その頃には俺と"はっけよい"が交際している事にまで話が広がってしまったんだーー!!
何たる不覚!
ジョー・サンダー、この36年の歴史の中で唯一の汚点は"はっけよいダーリン"というニックネームをつけられたことだ!
今、思い出しても死んでしまいたくなる。
何度、屋上から飛んでしまおうかと考えたか解からない。
し、しかも、おぞましい記憶は、それだけじゃない…
こ、この俺様(!)のファ…ファーストキスの相手までがこの"はっけよいハニー"だったんだ!!(学校の皆に、そう呼ばれていた)
そう…あれは卒業式の後の帰り道…
"はっけよい"は俺の事を門のところで待ち伏せしていた。
そして、あの目なんだか肉線なんだか解からない細い瞳で、「ジョー、一緒に帰ろvv」と可愛く言ってきやがった…!!
俺は体中の毛穴がボッっと開き、その申し出を断ろうとしたが俺より太い腕には敵わず(!)ぐいぐいと引っ張られ、そのまま一緒に帰るはめになってしまった。
クラスの皆からはからかわれ、"はっけよいカップル"と叫ばれたあの日を俺は一生忘れないだろう…
は!いかん、いかん!一瞬、現実逃避してしまった…
そ、そうだ。そしてあの日、家についてホっとした俺に"はっけよい"は、「まだ帰りたくないの…」 と切なげに呟いた。
そこで俺は恐怖のあまりもらしそうになり、焦って振り向き、断ろうとした瞬間……!!
むにゅううぅぅぅっと気色悪い感触のものが俺様の唇に押し付けられたんだ!!
それが、"はっけよい"の唇だと気付いたのは彼女が俺から離れた後だった…
キスをされてる間、俺の視界にあの大きな顔は納まりきらなかったからだ…
おえぇぇ…今、思い出しても気持ちが悪い…!!
あの出来事は一生、俺のトラウマとなっていくだろう…
ん?どうやってその"はっけよい"と別れたかって?い、いや付き合ってないから!!!
まあ、そんな事はどうでもいいだろう?
と、とにかく、そんな不毛な青春時代を過ごしてきたこの俺様に!
こんなに素適な出逢いが訪れたんだからな!!アハハーーっハハハ♪
ルンルンになるのは仕方がない事なのさ!!
よ、よし!今夜こそ、シェリーに何故、俺を誘うのか聞いてみないと…!
そんな悪夢のような過去を思い出してる場合じゃなかったぜ…!
俺は、そう決心して、思い切り振り向いた。
「あ、あのシェリー!」
「あ、私、そろそろ帰らないと」
「えっ?!」
「明日、早いんです。ごめんなさい」
「い、いや…。そ、そうだよね?アハハハっ。じゃ、じゃあ家まで送るよ」
俺が何とか落ち込んだ顔を見せないでそう言うと彼女は笑顔で首を振った。
「いいえ。悪いからタクシーで帰ります」
「え、そんな遠慮しなくても…」
「いいえ。だってジョーさん、ワインあんなに飲んでるんだし運転しちゃダメですよ?」
可愛くそう言ってくるシェリーを俺は抱きしめたくなった(!)
い、いかん、いかん!ここで抱きしめてしまっては婦女暴行罪で訴えられてしまう…(!)
「そ、そうだね…。危ないよね?じゃあ…気をつけて…」
俺はまだ一緒にいたかったが、何とか笑顔を見せて手を振った。
「はい。じゃあ…おやすみなさい」
「お、おやすみ!」
俺が笑顔で手を上げてそう言った時、歩いて行きかけたシェリーが一瞬、立ち止まり、そして振り向いた。
「…?」
俺はどうしたんだろう?と戸惑っていると、シェリーは急に俺の方に走って来て突然、頬にチュっとキスをしてくれた…!!!
「………っっっ?!!」
俺はハトがマメ鉄砲みたいな顔で彼女を見ると、シェリーは少し照れくさそうな顔で微笑んでまた走って行ってしまった。
俺は暫くその場に立ち尽くしていたがハっと我に返り、キスされた頬をそっと手で触ってみた。
「ゆ、夢じゃない…!!!!」
その証拠に俺の頬には彼女の口紅がかすかについていたからだ。
「や、やったぁぁぁぁっぁあ!!!ひゃっっほーーぅぅう!!」
凄い死語だとは思ったが、ついそう叫んでいた。
そして急いで自分の車に乗ると、エンジンをかけてふかしアクセルを踏み込んだ。
キキーーーっっと軽快な音が聞こえて来て、ますますテンションがあがって行く。
「やった!!!彼女から俺に熱いキスを…!!!!イエイエイエイエーーイ!!」
俺はカーステレオもガンガンでノリノリだった。
いや…はっきり言って浮かれすぎていた。
夜のハリウッドを散々走り回っていると気付けば周りにはパトカーだらけで、
「そこの車!止まりなさーーーい!!!」
と叫ばれていた(!)
この日…俺は"飲酒運転"エーンド"スピード違反"という罪状で、またしても留置場で寝ることになったのは…
どうかレオにだけは内緒にして欲しい…。
>>Back
ACT.4...恋敵>>
ウププ(笑)何だかジョーのハイテンションで終ってしまいました(笑)
レオもそろそろ限界ベイべ(何)なので二人きりにしてあげたいなぁ~(笑)
しかしジャック…溺れるなよ…
って言うか友達の犬が風呂場で沈んで行ったネタを使わせて頂きました(笑)
「本能あるし、泳ぐよねー♪」なんて言いながら笑顔で子犬を湯の中に入れたら、
見事に沈んじゃいました~って笑いながら言ってたFちゃん!(男)
惨いな、お前…
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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