From me Dear you....Catch me if you canSequel...~



ACT.4...恋敵                               




今日のレオは機嫌がいい。
さっきから鼻歌なんて歌ってジャックのブラッシングをしてあげている。


「さ、出来た。って言っても、お前は毛が短いんだからブラッシングなんていらないのにな」
「ワゥン…」
「はいはい。気持ちいいんだよな?解かってるよ」


レオはそう言って苦笑しながら立ち上がるとソファーで本を読んでる私の方に歩いて来た。


もブラッシングしてあげようか?」
「え?」


レオは隣に座ると読んでた本を私の手から取って横に置き髪に口付けた。


「レオ、機嫌いいのね」


私は照れくさくて少し視線を伏せると頬にチュっとキスをされた。


「だって明後日から三日間、が休みだからね。ずっと一緒にいれるだろ?」


レオは、そう言って私の頬にそっと手を添えた。


「休みに入ったら、どこかに出かけよう?」
「え…?出かけるって…どこに?」
「う~ん。どこでもいいよ?一緒にいられるなら」


レオは嬉しそうに微笑みながら私を抱き寄せ、優しくキスをした。
私はレオの胸に寄りかかり、そっと頬を寄せる。
するとレオはいつも通り私を腕の中にスッポリ納めて後ろから抱きしめてくれる。
この腕の中が一番、安心出来る場所だ。


そっか…私が休みだからあんなに機嫌が良かったんだ…
ここのとこ…二人きりでゆっくりする時間なんてなかったもんね。


そう思うと私も明後日からの休みはレオと二人きりで出かけたいと思った。
結婚してからすぐに私も仕事に復帰してしまって新婚旅行も行けずじまいだったし、
家にいると必ず誰かが遊びに来るので二人きりで、ノンビリ過ごすなんて出来そうにない。
レオはクランクアップからは暫くオフだったが来週からトムとの映画のプロモーションが始まるので忙しくなる。
その前に私は休みを取った。
病院の方も何人か新しい看護婦が入ったのでやっと休みが取れたのだ。



「え?」


名を呼ばれて少しだけ顔を上げるとレオが私の髪を指に絡めながら、


はどこに行きたい?行きたいとこある?」


と聞いてきた。


「私は…レオと一緒だったら、どこでもいいよ?」
「それじゃ俺と同じじゃん」


レオはそう言って笑った。


「まあ…三日しかないから…そんな遠くには行けないけど…。あ…そうだ…サンフランシスコは?」
「え?」
、行った事ある?」


レオが身を乗り出して私の顔を覗き込んだ。


「ううん。ないわ?」
「ほんと?じゃあ…行ってみる?奇麗な街だよ?」
「うん。行ってみたい」
「よし、じゃあ決まり!」


レオは嬉しそうに微笑むと顔を屈めて私にチュっとキスをした。

「向こうでノンビリ観光でもしよう?」
「うん。あ…ジャックはどうしよう…」


私が体を離し、レオの方に振り向くと彼は、「あ~忘れてた…」と呟き、ジャックの方をチラっと見ている。
ジャックは私達の足元で、お腹を出して"撫でて"ポーズを取っていた。


「こいつ…連れて行くわけには行かないよなぁ…」


レオがジャックを見て苦笑しながら呟いた。
私もしばし考えたが、


「あ…じゃあ…私の実家に預けようか。お母さん犬が大好きだし今度ジャック貸してって言ってたから」
「そうする?お養母さんがOKなら助かるな…」
「大丈夫よ。明日、電話して頼んでみるわ?」
「そうしてくれる? ―おい、ジャック、お前、明後日からお泊りだぞ?」


レオはそう言って私を離すとジャックのお腹を撫でてあげている。
ジャックはというと呑気に尻尾を振りつつ、嬉しそうだ。


「こいつ、絶対解かってないな?置いてかれるって」


レオはそう言って笑いながら肩を竦めた。


「ほんと。当日になっても解からないかもね」


私がそう言って笑うとジャックが起き上がって、「ワゥ!」と返事(?)をした。


「ちょっとかわいそうだけど…」


私がジャックの頭を撫でながらそう言うとレオが顔を顰めて私を抱き寄せる。


「かわいそうなのは俺だよ…。いっつもこいつとかトビーや母さん、ジョーに邪魔されてるんだからさ…」
「また、そういう事言う…」


私がちょっと笑うとレオは口を尖らせた。


「だって結婚してまともに二人でゆっくりした日がないんだよ?これって凄い事だって。俺の周りは最悪なほど無神経ぞろいだよな…」
「でもレオだって皆が来ると楽しそうじゃない」
「どこが?!もうイライラしてカウンセリングでも受けようかと思うくらいだったのにっ」


私の言葉にレオが信じられないといった顔で大げさに溜息をついている。


「この休みには絶対に誰にも邪魔させないから…」


レオはそう呟くと私をソファーに押し倒して優しく見つめてくる。


「あの…レオ…」


私は驚いてレオを見上げると、


「ほんとなら長い休みとって暫く旅行に出かけたいとこだよ」


と言ってニッコリ微笑んだ。


「うん…そうだね…。ごめんね?なかなか休めなくて…」
「仕方ないだろ?俺の奥さんは責任感が強いんだからさ?」


レオはそう言って苦笑すると私の額にチュっとキスをしてそのまま唇をゆっくり重ねた。
最初は触れる程度に、そして少しづつ愛撫するように深くなるキスに私も素直に体の力を抜いていく。
軽く唇を舐められ、ドキっとして少しだけ口を開いた時、急に体に重みを感じた。


「…ん…っ?」


レオがゆっくり唇を離すと軽く息をついて私を見つめる。


「レオ…?」
「……俺の背中に…ジャックが前足乗せてきた…」
「え…?」


その言葉に視線を横に向けて見ると確かにジャックが後ろ足をピーンと伸ばし、前足をレオの背中に乗せている。
そして構ってくれと言わんばかりに尻尾をブンブンと振っていた。


「こいつ、解かってて邪魔してるのか…?それとも俺とが遊んでると思って仲間に入ろうとしてるのか、どっちだ…」


レオは思い切り起き上がるとジャックの鼻を指で弾いた。


「ハグゥ…っ」


変な声を上げてジャックがキョトンとした顔をしている。
私はちょっと笑うと体を起こしてレオに抱きついた。


「きっと仲間に入れてって事じゃないかな?」
「そう思う…?」
「うん」
「はぁ…きっと一番のお邪魔虫は、こいつだな…」


レオはそう呟くと私をギュ~っと抱きしめた。


…俺達、まだまだ子供は作らないでおこうね…?」
「え?」


突然のその言葉に驚くとレオは悲しげな瞳で私を見つめた。


「新婚気分も味わってないうちからこれ以上、お邪魔虫増やすの嫌だしさ…」


レオは真剣な顔でそう言うので私はちょっと笑ってしまった。


「レオったら…子供はまた別なんじゃない?」
「そんな事ないよ…。ジャックだけでも手を焼いてるのに子供なんてそれ以上に手がかかるだろ?まだいらないよ…」


レオはそう言って私にチュっとキスをした。


「今はと二人でいたい…」
「じゃあ…レオは…しばらく子供いらないの?」


そう言って私がレオを見上げると途端に怪しい笑顔を見せてドキっとした。


「作る作業は、もちろんするけどね?」
「………っ」


レオの言葉に私の顔が一瞬で赤くなると彼はクスクス笑いながら、


「す~ぐ真っ赤になっちゃって…。ほんとって可愛いよね」


と言って強く抱き寄せてきてすぐに唇を塞がれた。
そのまま軽く唇を噛まれ、少し開いた隙間から舌を入れられ口内を愛撫されると心臓が跳ね上がるようにドキドキと鳴り出し少し苦しくなる。
気付けばレオの服をギュっと掴んでしまい、それに気付いたレオはゆっくりと唇を離した。


「ここだと、お邪魔虫が一匹いるし…二階に行こうか…?」
「…え?」


驚いて顔をあげるとレオは最後にチュっとキスをして、私をひょいっと抱き上げた。


「ちょ…レオ…?今日は一緒にDVD見るって…」
「まだ9時前だしそれは後でね?」
「あ、後でって…」
「いいから、いいから。、明日は午後からだし寝坊できるだろ?」


レオはそう言うとニッコリ微笑んでジャックが水を飲みに行った隙にさっさとリビングを出てドアを閉めてしまった。


「またベッドに上がって来られても困るからさ」


そう言って苦笑するレオに私もちょっと噴出してしまった。


その後、暫くすると、リビングの中からカチャカチャとジャックの爪の音がしたのは言うまでもない…。












ロッカーのドアを閉めた途端、ちょっと欠伸をしつつ振り向くと目の前にキャシーがいて驚いた。


「おはよ、
「お、おはよ。キャシー」
「あらら~?何?寝不足?」


キャシーがニヤニヤしながら私の顔を覗き込んできた。


「ちょ、ちょっと夕べ遅くまでDVD見てて…」
「ほんとぉ?DVDって…もしかしてベッドの中でレオと仲良く寄り添って見てたのかしら?」
「そ、そうだけど…」
「あ~それじゃあ寝不足にもなるわよねぇ?新婚さんだしねぇ」


意味ありげにニヤリとするキャシーに私は顔が赤くなった。


「な、何言ってるのよ…っ。映画見てただけだってば」
「ふぅ~ん。でも、それだけじゃ済まないでしょ?あの情熱的なレオが隣にいたら」
「へ、変なこと言ってないで仕事するわよ?」


私はますます顔が赤くなり、慌ててロッカールームを出てナースステーションへと向かった。
それをキャシーも追いかけてくる。


「何よ、そんな事くらいで恥ずかしがっちゃって。人妻のクセにっ。しかも旦那はあのレオ様だし?」
「ひ、人妻だって恥ずかしいものは恥ずかしいでしょ?全くキャシーったら独身でもそんな事あっけらかんと言うんだからっ」
「だって気になるじゃない?レオ様の新婚生活!」
「別に普通の人と一緒よ?」


私は呆れてそう言うと途端にキャシーが怖い顔をした。


「同じなわけないじゃないのっ。その辺に転がってるポテトくん達とは違うのよ?相手はレオ様よ?」
「はいはい。解かったから…早く自分の仕事しなさいよ。主任にまた怒られるわよ?」


私は苦笑しながら自分のデスクの上にあるカルテを集めて手に持った。


「もう!ったら呑気なんだから。それに新婚早々、仕事だって復帰しちゃって。レオ、かわいそう」
「だって人が足りないって言われたら断れないじゃない…」
「普通は断るわよ?そのうちレオだって不満が爆発するに決まってるわ?」


キャシーにそう言われてドキっとした。


(も、もう不満爆発寸前なんだけど…)


そんな事を思いつつ、カイルの病室に行くのに歩き出した。
それにもキャシーはついてくると私の肩を抱いて、「そんな安心してていいわけ?」と横目で見てくる。


「な、何が?別に安心なんて…」
「してるじゃない。、余裕かまして仕事なんてしてるし。レオはモテると思うしそのうち浮気でもされちゃうかもよ~?が構ってあげないとね?」
「う、浮気なんて…」
「絶対にしないって言える?男なんて必ず浮気する生き物よ?愛がなくても本能で出来ちゃうんだから」


そう言いきるキャシーの言葉に少しだけ不安になってくる。


確かに…浮気をしない男というのは100人中、一人か二人くらいだと聞いたことがある。
それは98~99人が少なくとも一度は浮気をするということだ。
レオがその残りの一人か二人の中に入るのか?と聞かれれば…答えに詰まってしまう。
信じていないわけじゃないが、あのレオなだけに(!)どうも言い切れない気がする。


そうよね…だって私と付き合う前だってモデルの人とデートしてたしホテルに泊まったりしてたはずだ。
あの最初に雑誌に載ってしまった時、そう書いてあった。
あの時は何とも思わなかったけど…
あ…それに…レオに告白されて次の日に家に行ったらそのモデルがいた事もあった。
あの時はレオが彼女の前で私の事を好きだと言ってくれて嬉しかったから別に気にもしてなかったけど…
今後だってレオは色々な映画に出るだろうし、そのたびに奇麗な女優と共演だってするだろう。
もしかしたら…誘われて、つい…って事もあるかもしれない。


そんな事を考えているうちに何だか悲しくなってきてしまった。


「ちょ、ちょっと?どうしたの??」
「な、何でもない…」


キャシーに肩を叩かれハっと我に返った。


「もしかして…気にしちゃった?」
「え?な、何が…?」
「だから…レオが浮気するんじゃないかな…?とか…」
「そ、そんなこと考えてないもの」
「ほんと~?何だか顔色悪いよ?ごめんね、ジョークだから…ね?」


キャシーは私が元気がなくなったのを見て慌てて慰めてきた。


「き、気にしてないって言ってるじゃない…。俳優と結婚したんだから覚悟くらいしてるわよ…」
「もう!やっぱり気にしてるじゃない…っ。大丈夫よ!レオはにベタ惚れなんだから!浮気なんてするわけないじゃない?」
「何よ。気にしてないって言ってるじゃない。そんな事より仕事!じゃね」

私はそう言うとさっさと階段を上がってカイルの病室へと向かった。


「はぁ…キャシーったら変なことばかり言うんだから…」


そう呟きながら、軽く溜息をついた。


「浮気…かあ…」


そうよね…
新婚早々、我がまま言って仕事に復帰しちゃったし…
新婚旅行に行こうって言ってくれたのに結局、近場のサンフランシスコの旅行だけで精一杯なんだもの…
レオだって不満はあるわよね…
それに普段は確かにレオが怒ってるように友達やらが家に来て二人で静かに過ごすって事も出来ていない。
レオが愚痴るのも仕方ない事だと思った。


そりゃ私だって…レオと二人きりでいたいけど…レオの友達やお母さんが来たらそんな事も言ってられなくなるんだもの…
やっぱり皆の事は好きだし結婚前は色々と協力だってしてもらった。
あんな風に遊びに来てくれるのだってレオが皆から愛されてる証拠だと思うから歓迎だってする。
ただ…レオとの時間が少なくなるのはそれなりに私だって寂しいとは思ってるのよ…?
でも仕事があるし…ついついレオに甘えてしまって作ろうと思えば作れる時間を私は作ってなかったのかもしれないな…


「はあ…こんなんじゃ本当に浮気されちゃうかも…」


色々な事を考えてるうちに一人で、どんどん落ち込んでいってそんな事を呟いてみた。
すると、


「へぇ、浮気されたの?」


と後ろから声が聞こえてドキっとして振り返る。


「あ…カイル…っ」


気付けばカイルの病室の前まで来ていて後ろにはカイルがニヤニヤしながら立っている。


「あ…ち、違うわよ…?今のは…」
「ふぅ~ん。そっかぁ~レオナルドが新婚早々、浮気ねぇ~。マスコミに売れそうだな~」


カイルはそんな事を言いながら病室に戻って行く。


「ちょ、ちょっとカイル…!違うって言ってるでしょ?」


私も病室に入るとベッドに入ろうとしていたカイルの腕を掴んだ。


「じゃあ、何で、そんな元気ない顔してるの?」
「え…?」
「何だか、この世の終りみたいな顔してるよ?」


カイルはちょっと笑いながら私を見つめる。


「そんな事ないわ?ちょっと考えごとしてただけで…」
「浮気された事?」
「だから違うってば!レオは浮気なんてしないものっ」


私はそう言ってカイルの腕を離すと、「これ、昼食の後のお薬ね。ちゃんと飲んで」と薬をベッドサイドのボードに置いた。
カイルは肩を竦めて、「解かったよ」と言うとコップに水を注いで薬を飲んだ。


「これでいい?」
「え?ええ。あとは…30分後に検査があるから病室にいて?」
「OK」
「それと…明日から3日間、私は休みだから代わりにキャシーが来るわ?ちゃんと言う事を聞いてね?」
「………」
「カイル?」


急に黙り込んだカイルに、私は首を傾げた。


「聞いてる?」
「休みって何で?」


コップをコンっと置くとカイルはベッドに腰掛け、私の方を見た。

「え?ああ…ちょっと…このところ休みがなかったから…」
「ふ~ん。そうなんだ」
「だからちゃんと言う事を…」
「解かったよ。ちゃんと聞く」


カイルは軽く息をついて、そう言った。
私は少しホっとして、「じゃあ、また後で来るわ?」と言って病室を出ようとした。


「あ、
「え?」
「今日は遅番なの?」
「ええ、そうだけど…?」
「そう。ま、頑張って」
「…?ありがと…」


私は一応、そう答えてから病室を出た。


あ~参った。
カイルに、あんな独り言を聞かれるなんて…
暫く、からかわれそうだわ…


そんな事を思いながら廊下を歩いて行くと制服を来た可愛い女の子が一人エレベーターから降りてきた。
何となく目がいってその子を見ているとカイルの病室に入って行く。


(へぇ…彼女かな?カイルも、なかなかやるじゃない)


私はちょっと笑顔になるとそのまま下に下りて行った。
















俺は明日からの旅行の準備を済ませると時計を確認した。


「まだ時間あるな?散歩でも行くか?」
「ワゥ!ワゥ!」


声をかけると後ろに座っていたジャックが嬉しそうに吠える。


「でもなぁ…。海に行けば、お前足がガクガクするし全然走らないからな…」


俺がそう言って苦笑するとジャックは途端に、「ワゥン…」と鳴いて頭を垂れてしまう。


「ったく…とんだトラウマになったな?」


軽く息をついてベッドに腰をかけた。
ジャックはこの前、海で溺れてから海に散歩に行くたびに嫌がるようになった。
それでもこの辺の絶好の散歩コースなので俺が海に向かうと渋々ながらもついてくる。
だが砂浜を歩き出すとジャックの足がガクガク震えてボールを投げても走らなくなってしまった。
ボールを追いかけ海に飛び込んで溺れたのだから、ジャックもまたボールを走って追いかければ海に落ちるとでも思ってるのかもしれない。


「全く…早く忘れろよ…。お前があんなんじゃ海に散歩行けないだろ?」


俺は呆れたように呟くと、ジャックは悲しげに上目遣いで見てくる。
その顔が何ともマヌケで思わず吹き出した。


「はぁ…お前といると緊張感も何もなくなる気がするよ…」
「ワゥ…」


その返事も何だか悲しげで一人苦笑していると携帯の着信音が鳴り響いた。
ジャックがその音に反応して携帯の置いてあるテーブルまで走って行く。
俺もベッドから立ち上がると急いで携帯を取り、すぐに電話に出た。


「Hello?」
『ああ、レオか?』
「あ、社長。どうも」


電話は事務所の社長からだった。


「どうしたんですか?」
『ああ、来週はプロモーションだったな?』
「そうですけど…何か問題が?」
『いや、そんな大した事じゃない。その…迎えなんだが…』
「え?ああ、迎えって?いつもジョーが来ますけど…」


そう言うと俺はベッドにもう一度腰をかけた。
社長は俺の言葉に軽く息を吐き出すと、


『いや実はな?ジョーも、もちろん行くんだが、もう一人運転手としてジョンも一緒に行く事になったんだ』
「え?ジョンが?でも…ジョーも来るのに、どうしてですか?」


俺はちょっと驚いて聞き返すと社長は苦笑しながら、


『あいつは今、免停処分で運転できないんだ』


と言った。
それには俺も驚いた。


「はあ?免停処分って…どうしてですか?」


そう聞いてみると社長は何だか笑いながら話し出した。


『それがな…あいつ、以前にもスピード違反で捕まってるんだ。で、この前はまた飲酒とスピード違反で捕まってな?』
「えぇ?!ジョーが?!」
『そうなんだよ。バカだろ?全く懲りないというか何と言うか…』


社長は何だか楽しげに話している。
だが俺はジョーがこの前も捕まったなんて聞いてないし驚いてしまった。


「そんなの初耳ですけど…二回も捕まったんですか?」
『そうなんだよ…。ほんとアホだな?あいつは…。どっちもシェリーと会った後で浮かれすぎちまったらしい』
「え?シェリーって…」


俺はその名前を聞いて更に驚いた。


確かシェリーってジョーが密会してた女優の名前だ。
何で社長が…
やっぱり社長がらみで知り合ったのか…?


「あ、あの…社長、そのシェリーって…誰ですか?」


思い切って聞いてみると今度は社長が驚いた。


『何?お前、知らんのか?ジョーの片思いの相手だぞ?』
「え?!……そう…ですか。片思い…」


俺はそれを聞いて噴出しそうになってしまった。


何だ、彼女じゃないのか…
片思いなんて、ジョーらしいかも…っ


『何だ、レオは知らなかったのか。あいつ隠してたのかな…』
「…でしょうね。きっと俺にバレたら邪魔されるとでも思ったんじゃないですか?」

俺が笑いながら、そう言うと社長も苦笑している。

『全く。あいつも無謀な相手を好きになるもんだよな?もっと分相応な相手を探せばいいのに』
「アハハっ。ほんとですね?でもジョーは、あれで面食いなんで」
『そうだな?選べるほど余裕あるかって言うのにな?』


二人で酷い事を言い合って笑った。


「で、何で社長がその子の事を知ってるんですか?社長が紹介したとか?」
『まさか!ジョーを招介なんてするわけないだろう?先方に失礼じゃないか(!)』
「アハハハっ確かに!でもじゃあ…どうして…」
『ああ、シェリーは私の飲み仲間の社長が売り出そうとしている新人でな?たまたま飲んでたとこに居合わせただけなんだ。
それでジョーが勝手に熱をあげてるというわけだ。あいつは隠そうとしてたがあんなの誰が見たって恋してるとバレバレだろう?』
「ええ、まあ…確かにそうですね」
『だから先日、問い詰めたんだよ。そしたらアッサリと吐いてね。で、捕まった時にも素直にシェリーに会ってたと正直に話してきたんだ。
まあ、警察から会社に電話があったから捕まった事もバレバレだったし隠すのも諦めたのかもしれないけどな?』


社長はそう言いながらガハハと笑っている。
俺も暫くは、社長の話を聞いて一緒にジョーをネタにして盛り上がった。
結局、仕事の話は少しだけで残りは無駄話で終った。
まあ、社長が直々に電話してきたのも、ジョーのネタを話したかったからかもしれない。
俺は電話を切ると暇そうにしていたジャックの方を見て、


「ジョーの奴、警察にお世話になったらしいぞ?」


と言ってまた噴出してしまった。


「ぶ…っ。し、しかもシェリーに会って浮かれてノリノリで歌いながらスピード出して街中、走り回ったあげく
パトカーに囲まれたんだってさ。バカだよなぁ?ハハハハっ」


俺が一人ベッドに転がって笑っているとジャックがキョトンとした顔で、その場に座っていた。













「はあ…もう、こんな時間か…」


私はカイルの検査結果をカルテに書き上げると顔を上げて息をついた。
もう夜の8時半だ。


「ちょっと遅くなっちゃったかな…。最後の見回り行って帰ろう…」


そう呟いて椅子から立ち上がった。
そこに主任が歩いて来る。


「あら、。見回り?」
「はい。それ終わったら帰ります」
「そう。あ、明日から連休よね?」
「はい。すみませんけど…」


私がそう言うと主任が笑いながら私の肩に手をかけた。


「何言ってるの。結婚早々、復帰してもらって悪いと思ってるのよ?明日からは旦那様と、ゆっくりしなさい。
まだ新婚旅行にも行ってないんでしょ?」
「はい…。ありがとう御座います」
「いいのよ。じゃ、見回りお願いね?その後は夜勤の子に変わってもらって?」
「はい。それじゃ行って来ます」


私はそう言って懐中電灯を持つと病室のある二階へと向かった。


「急がないと…レオが迎えに来ちゃう…」


腕時計を見ながら急いで歩いて行く。
病室を一つ一つ見て回って異常がないかを見て行った。
子供たちは皆スヤスヤと眠っていて、私は最後にカイルの病室のドアを静かに開けて中を覗いてみる。


「あら…?」


懐中電灯でチラっと見えたのはベッドの下に半分落ちた布団だった。


「…カイル?いるの?」


私は小声でそう声をかけるとそっと中へ入って行った。
だが人の居る気配がなく私は急いで病室のライトをつけてみる。


「…いない…」


さほど広くもない病室の中には誰も居ない事が一目瞭然だった。


「トイレかな…」


ふと、そう思ってすぐにトイレを見てみるが誰もいなかった。


「あ…屋上…?」


確か前にマークが病室にいなかった時マークは屋上にいた。
もしかしてカイルも眠れなくて屋上に行ったのかも…
そう思ってすぐに階段を上がり、屋上に出てみる。


「カイル…?いるの…?カイル…っ!」


少し大きな声を出して呼んでみるが返事もなければ気配もない。


「やだ…どこ行ったの…?」


私はどこを探せばいいのか解からなくて困ってしまった。


まさか…病院抜け出して…家に帰ったなんて事は…
いや、でも、それなら家族から病院に連絡があるはずだし…


「と、とにかく主任に知らせないと…」


私はそこに気付き、屋上から出ようと歩き出したその時、シーンと静まり返った中にかすかな音が聞こえて来て足を止めた。


(何…?このポーンって音…まるでボールを蹴ってるような…)


そう思った瞬間、胸がドキンと鳴った。


まさか…


私は急いで屋上の上から下を覗き込んでみた。
真っ暗で見えないが、確かに下の方で音がしている。


「この下は…庭だわ…」


そこに気付いて私はすぐに屋上を飛び出し下に向かった。


(全く…!こんな夜中に病院抜け出して何してるのよ…っ)


怒りながら一階まで下りると、他の看護婦や主任に見付からないように外へと出た。
正面玄関には誰か一人はいるから裏から周り、庭へと向かう。
暗い中を歩いて行くと前方の噴水の辺りに人影が見えてくる。


「カイル?そこにいるの?」


小声でそう呼んでみると、その人影はハっとしたように顔を上げた。
私は懐中電灯をその人影に向けると眩しそうに目を細めているカイルの姿が暗闇に浮かび上がる。


「ちょっと…何してるの?!」
「ああ、か…驚かせるなよ」


私が歩いて行くとカイルは苦笑しながらボールをポンと蹴って手で受け取った。


「お、驚かせるなって、それは私の台詞よ?こんな時間に何をしてるの?」
「そんな怒るなよ…。眠れないからサッカーしてただけだろ?」
「そんな…だからって勝手に病院抜け出さないでっ。しかも、こんな時間に…」


私は腹が立ってカイルの腕を掴んだ。


「ほら、戻るわよ?主任に見付かったら凄く怒られるんだから…」
、どうしてそんなイライラしてるの?あ~やっぱりレオナルドの浮気が原因?」
「バカなこと言わないでっ。あなたが怒らせてるんでしょ?!」


カイルの言葉に、私は呆れて思い切り溜息をついた。
するとカイルは少しだけ目を伏せて、


「ごめん…。別に…を怒らせようと思ったわけじゃないんだ…」


と呟いた。


「カイル…どうしたの?何か…あった?」


私はそこでカイルの様子がおかしい事に気付いた。


「カイル…?」


私がそっと腕を離すとカイルは小さく息をついて顔を上げた。


「今日…サッカー部のマネージャーが来てさ…」
「え?あ…あの女の子…」
「会ったの?」


カイルが驚いたように目を見開いた。


「あ、あの会ったんじゃなくて…廊下で擦れ違っただけ。その子、カイルの病室に入って行ったから…」
「そう…」
「あの子、マネージャーなんだ。彼女じゃないの?」
「バ、バカ言うなよ。違うよ」
「そう?可愛い子だったしてっきり彼女がお見舞いに来たのかと思ったけど」


私が少しおどけてそう言うとカイルは不貞腐れたように顔を顰めた。


「そんなんじゃないよ。ただのマネージャーだってば」
「そうなの。ま、いいけど…。で、あの子がどうしたの…?」
「うん…」


カイルはまた少し目を伏せると、

「あいつが来たのはさ…今度の大会で出場するメンバーが決まったからなんだ…」
「え?大会?」
「うん。今度、夏の大会があるんだけどさ…。俺、それに出る予定だったんだ」
「そうなの…」
「でも…この通り入院だろ?だから…メンバーから外されたって…」
「…カイル…」
「ったく…まだ6月前だよ?気が早いったらないよな…」


カイルはそう言って苦笑しているが相当落ち込んでるのは私でも解かった。


(そうか…だから…こんな抜け出してサッカーの練習を…)


きっとカイルは出場を諦めてないんだ。
だから体が訛ってしまわないように練習してたのかもしれない。


「あの…カイル…」
「なあ、…」
「え?」
「俺…いつ退院出来るの…?」
「…………っ」
「…教えてよ…」
「カイル…それは…」


そこで言葉が詰まってしまう。
私にはハッキリとは解からない。


「それは…私には解からないわ…?」


何とかそう言うとカイルは肩を竦めた。


「そっか。いいよ、明日ドクターに聞いてみるから」
「あ、あの…」
「俺…諦めたくないんだ…」


カイルはそう言うとサッカーボールを軽く投げて足でリフティングをしだした。


「あ、あのカイル…そろそろ病室に戻らないと…」


私はそう言ってカイルの腕を掴んだ。
その拍子にバランスを崩したのか、ボールはカイルの足首に当たって横に飛んで転がっていった。


「あ~あ…邪魔するなよ」


カイルはそう言って私の方を苦笑しながら振り返る。


「あ…ごめん…。でも、もう部屋に戻って…?」


そう言った時、カイルに思い切り腕を引っ張られた。


「キャ…っ」


驚いて顔を上げたときにはカイルに強く抱きしめられていた。


「ちょ…カイル…離して…っ」
「ちょっと…このままでいて…?」
「…カイル…?」


カイルの声はかすかに震えていて私はドキっとした。
私を抱き寄せる腕も、ぎこちなく、だが少し震えているのが解かる。


(カイル…強がってるけど…凄くショックだったんだ…)


そう思うと胸が痛んだ。
サッカーには不整脈という病気は致命的な気がしたからだ。
レオとは別の少し細い腕に抱きしめられていると何だか変な気分だったが今のカイルを冷たくつき離す事は出来ないと思った。


「カイル…もう…戻ろう?ね?」


私はそう言ってカイルの背中に手をまわし軽くポンポンっと叩いてみた。
するとカイルは少しだけ体を離し、私の顔を見つめてくる。
その奇麗なブルーアイと至近距離で目が合い、ドキっとした。
その視線が何だか急にカイルが男の人に見えたからだ。


「あの…カイル…離して…?」
「…嫌だよ」
「え?」
も元気なかっただろ…」
「あれは…別に何でもないのよ…。それより…」
「そんなに彼が好きなんだ」
「え?」


私は少し顔を上げてカイルを見た。
その時、カイルが少しだけ屈んできて気付けば私はカイルにキスをされていた。
あまりに驚きすぎて一瞬、固まっているとカイルはそっと唇を離して、


「俺…のこと、好きかもしれない…」


と小さな声で呟いた。
その声にハっと我に帰り、私は慌ててカイルから離れた。


「な、何するの?!」
「何って…キスした」
「………っ」


どこかで聞いた事のある台詞だ…と思いつつ私は顔が真っ赤になった。


「ふ、ふざけないで!何、考えてるの?」
「別にふざけてない。俺は…」
「聞きたくないわ!私は…私にはレオがいるのよ?こ、こんな事しないで…っ」
…」
「いいから早く病室に戻って…っ。じゃないと主任を呼んでくるわよ?」


私は何だか動揺してしまってこの場から逃げたかった。
だがカイルを放って帰る訳には行かない。
私が黙ったままカイルを睨んでいると、


「…OK…。解かったよ…戻る」


と言ってカイルは肩を竦めて息をついた。


その時、車のエンジン音が聞こえて私はドキっとして振り向いた。











「あれ…?」


俺はを迎えに来て車を駐車場に入れるのに門の中へと入って行った。
その時、庭の方で白い人影を見た気がして振り返ってみる。


「何だ…?こんな時間に…」


エンジンを止めると俺はもう一度じっと庭の方を見てみた。


「まさか…幽霊じゃないよな…?」
「ワゥ…?」


俺は少し怖くなり助手席に座っているジャックに話し掛けた。


「お前…ちょっと見て来いよ…」
「ワゥ!ワゥ!」
「そっか、そっか。見て来たいか。じゃ、行って来い(!)」


俺はすぐに助手席のドアを開けてやるとジャックは顔だけ出して鼻をヒクヒクさせている。
そして、いきなり車を飛び出して行った。


「何だ…?幽霊でも匂いなんてあるのか?」


俺は苦笑しながらも車を降りてジャックが走って行った方に歩いて行った。

「おい、ジャック?!どこだ? ―ったく…あいつ黒いから暗闇だと見えないのが欠点だよな…(!)」


そんな事を呟きつつ、目を凝らして歩いて行くと突然、


「キャ、ジャック?!」


と噴水の方から声が聞こえてドキっとした。


(今の声は…)


…?そこにいるのか?」
「ワゥ!ワゥ!」


ジャックの泣き声が聞こえてそっちの方に歩いて行くと、さっきチラっと見えた白い人影がこっちに振り向いた。


「レオ?」
か?」


俺は何でが、こんな場所に居るんだと驚いたが、いで声のした方に走っていった。


「レオ…」
、どうしたんだ?こんな暗いとこで何して…って…あれ」
「どうも…」


の後ろに、あのの担当患者とか言う男の子が見えて俺は驚いた。


…何してたんだ…?」
「あ、あの…カイルが抜け出して…ここでサッカーしてたから連れ戻しに来たの…」
「え?抜け出した?」


俺はの言葉に、カイルの方を見た。
するとカイルはチラっと俺を見て、


「ほんとですよ?今、俺、に説教されてたんだ」


と言って頭をかいている。


「そう…。じゃ、早く病室に戻った方がいい。、彼を病室まで連れて行って」
「レオは…?」
「俺は車のとこでジャックと待ってるからさ。早く行っておいで?」


俺はそう言っての頬に軽くキスをした。


「ちょ…レオ…」
「いいだろ?キスくらい」


俺が澄ましてそう言うとは気まずそうな顔でカイルの方を見た。


「じゃ、カイル…戻りましょ?」
「うん。あ、この犬?がいつも話してるジャックって」
「え?あ…そう…」
「へぇ~可愛いな~。人懐っこいね」


カイルはそう言って目の前で尻尾を振っているジャックの頭を軽く撫でると、


「じゃ、行こうか」


と言って裏口の方に歩いて行く。
それを見ては俺の方に、


「あ…じゃ、ちょっと病室まで行ってくるから…待ってて?」


と言ってきた。


「ああ、待ってるよ」


俺が笑顔で手を上げると、も少し微笑んでカイルの後から歩いて行った。
その時、カイルが振り返って俺の方を見た。


「あのさ」
「え?」
に、あまり心配かけないでね」
「は…?」


俺はカイルの言葉に一瞬、驚いたが、が慌てて、「ちょっとカイル!」と怒っている。
俺は何だか嫌な感じがして、「…。何のこと…?」と聞いてみた。


「あ、あの…何でもないの。カイルが勘違いしてて…。と、とにかく待っててね?」
「ああ…解かった」


俺が仕方なく頷くとはホっとした顔で一人先を歩いて行くカイルの後ろから走って行ってしまった。
それを見送りつつ、俺はゆっくりと車の方に歩いて行った。


「何だ…?に心配かけるなって…何のことだよ…。なあ?ジャック」
「ワゥン?」


ジャックは俺の隣を歩きながら見上げてきて情けない声を出した。


「はぁ…」


俺は車に寄りかかり、煙草に火をつけると思い切り煙を吐き出した。


「な~んか、あのカイルって俺を見る目が怖いんだよなぁ…。嫌われてんのかな?
それとも…の事が好きだから、あんな態度とか…どう思う?ジャック」
「ワゥ!」
「って…お前に話しても仕方ないか…」


俺がそう言って苦笑するとジャックは尻尾を振りつつ、へッへッへと舌を出している。


「お前のその顔見てると、ほんと気が抜ける…」


煙草を吸いながらジャックを見て苦笑すると俺は病院の方に視線を向けた。


、大丈夫か…?
あんな変わった奴の担当なんて大変そうだ…
マークみたいに素直な子だったら良かったのにな。


「確か…15歳って言ってたっけ…。俺、嫌だぞ…中学生がライバルって…」


そう呟いて俺は煙草を下に落とすと足で踏み潰し、溜息をついた。










「ちょっとカイル!何で、あんなこと言うの?レオが変に思うでしょ?」


私はカイルを病室に入れるとつい大きな声で怒鳴ってしまった。
だがカイルは堪える様子もなく、さっさとベッドに入ってしまう。


「ちょっと、カイル…っ」
「…何だよ…」


私がもう一度名前を呼ぶとカイルは面倒くさそうにチラっとこっちを見た。


「もうレオに変なこと言わないで。別に彼は何もしてないし私も心配なんてしてない。それと…」
「それと?」
「もう二度と、あんな事しないで」
「あんな事って…。ああ、キスしたこと?」
「…そ、そうよっ」
「だってキスしたかったんだ…」
「…………っ?!」


カイルはそう言って顔を反対側に向けてしまった。


(も、もう~~っ。どうしてカイルってば変なとこ、レオに似てるのよ…っ)


私は、そう思いつつも最後に、


「と、とにかく!もう二度としないで。解かった?じゃあね!」


と言ってすぐに病室を出た。


「ったく…何なの?もう!」


一人怒りながら急いでロッカールームへと向かう。


(患者だと思って油断した私もいけないけど…まさか中学生にキスされるなんて思わなかったわ…っ)


思い出しただけで恥ずかしいのと情けないのとで顔が熱くなる。


「信じられない…っ」


そう呟きつつ、制服を脱いで自分の服に着替えた。
そしてバッグを掴むとすぐにレオのとこに向かう。
途中、夜勤の看護婦に挨拶をしながら、私は駐車場へと急いだ。


こんな事…レオに言えないし…
でも、さっきカイルが、あんなこと言ったせいでレオも変に思ってるかもしれない…
どうしよう…何て説明しようか。
まさかカイルがレオが浮気したと勘違いしてるなんて…言えないしなぁ…


そんな事を思いながら少し走って行くとレオがジャックとジャレてるのが見えてホっとした。


「レオ…!」
「あ、。お疲れ」


レオは走って行った私を、いつもの様に抱きしめた。
そして優しくキスをしてくれる。
いつものレオの唇の温もりに、やっと心が落ち着いてきた。


「ごめんね?遅くなって…」


ゆっくりと唇を解放された後に私がそう言うとレオは少しだけスネた顔をした。


「それはいいけど…。あのカイルってもしかしてに気があるんじゃない?何だか俺、敵視されてる気がするよ」
「そ、そんな事ないわよ…」


私はドキっとしつつも笑顔を見せた。


「ほんと?何もされてない?」
「う、うん。そんな、あるわけないじゃないっ。カイルは中学生よ?」
「いや~今の中学生なんて解からないって。それに15歳って言えば、もう男と同じだろ?」


レオはそんな事を言いながら私を車に乗せて自分は運転席へと座る。


「か、考えすぎよ…。まだ子供じゃない」


私はジャックを後部座席に乗せるとそう言いながらドアを閉めた。
レオはエンジンをかけると、


「でもさ…。あんな風に暗いとこで二人でいたら何されるか解からないしさ。気をつけろよ?」
「レオ…何言って…そんな事あるわけないわ?」


私は、その言葉にドキっとしつつ、笑って誤魔化した。
するとレオが急に私を抱き寄せる。


「俺は何歳でもの側に男がいるのが心配だからさ…」
「レオ…」
「まあ、小学生とかは問題外だけど」
「やだ…何言ってるの…?当たり前じゃない…」


レオの言葉に私が笑うと少しだけ体を離した。


「笑い事じゃないよ?とにかく…気をつけてね?は俺の大切な奥さんなんだからさ?」
「う、うん…解かった…」


私がそう言って頷くとレオは嬉しそうに微笑み、優しく唇を重ねてくる。
そして、そっと離れると額をコツンとくっつけて、


「明日から…二人でノンビリしよう」


と言って私の頬にもチュっとキスをすると車を出した。
そして、ふと思い出したかのように、


「あ、そう言えば…さっきカイルが言ってた、"に心配かけるな"って…何のこと?」


と聞いてきてドキっとする。


「え?!あ、あれ?あれは…」
、何か俺のことで心配ごとでもあるの…?」


レオはそう言って少し不安そうな顔で私をチラっと見た。

「う、ううん!何もないわ?あれは…カイルが勝手に勘違いして言っただけで…」
「勘違いって…何を?」
「それは…だから…」
「何?気になるから言ってくれない?」
「レオ…。そんな…気にすることじゃないの…。ただ…レオが俳優だから…すぐ浮気されるんじゃないかって言うから…」


"キャシーが…"と心の中で付け加えた(!)
だがそれにはレオが驚いた。


「な…っ、俺が浮気するって?!そんなこと言ったの?あいつ!」
「え?ちが…そ、そんなハッキリと言ったわけじゃ…」
「そんな事する訳ないだろ?ったく、あいつ何を勝手にそんな事に吹き込んでるんだ?」


レオはそう言ってかなり怒っている。
私はどう説明しようかと考えたが何も思い浮かばない。


「あ、あのレオ…そんな怒らないで…?カイルも軽いジョークで言っただけだから…」
「でもさ…っ」
「わ、私は信じてるから…」
…」
「レオはそんな事しないって…信じてるの。だから…何も心配なんてしてないよ?」


私はそう言ってレオの顔を見つめた。
ちょうど赤信号になり、レオは車を止めると優しい瞳で私の方を見る。


「ありがとう…。俺も…のこと信じてるよ…?」
「………」
「愛してる…」


私はレオの言葉に少しだけ罪悪感が残ったが嬉しくて胸がドキンっと鳴った。


「私も…愛してる」


そう言うとレオがニコっと微笑んで素早く私にキスをした。
そして青信号になるとまた車を走らせるがさっきよりスピードをあげていく。


「レオ…?危ないよ…?」
「大丈夫。速度は守ってるから。それより早く帰ってにいっぱいキスしたい」
「…えっ?!」
「あ~でも明日は早いから今夜は何もしないで寝ないとね?」
「な、何言ってるのよ…っ」


私はレオの言葉に少し顔が赤くなった。
そんな私を見てレオはクスクス笑っている。


「ま、今夜のキスの続きはサンフランシスコでって事で我慢して?」
「………!も、もうレオ?!」


私はさっきよりも顔が赤くなり、思わずレオを睨むと彼は楽しそうに笑っている。


「ほーんとは可愛い。他の男に手を出されないようにしっかり見張ってないとな?」
「………」


今度こそ何も言えなくなった私の真っ赤な頬にレオは素早くキスをした。


それを見てジャックもシートの間から真っ黒な顔をヌっと出してくる。


それはいつもの光景で私が大好きな時間だった。














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きゃ~ヒロイン危ないっ
青少年に狙われてるわー(アホ)(笑)
レオ様も心配ごとが増えてしまいますね^^;
今夜はフジで"タイタニック"が放送されて、最高~vv
それを見ながら書いてました。
別にテレビ見なくても自分のビデオ見ろって話ですけど、
何だかテレビでやってると、ついつい見てしまいます(笑)
やっぱジャックのレオ様は最高だわ…(胸キュン)(笑)
私、また同じとこで泣いてるし…何回泣けば気が済むねんって話ですね(笑)
最後のジャックが沈んでしまうとこもボロボロと涙が~…
いや~"タイタニック"のレオ様、ほんとかっこいいわ…ヤバイね(笑)







本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


C-MOON...管理人:HANAZO