From me Dear you....~Catch
me if you can!Sequel...~
ACT.5...君がくれた未来
旅行当日の朝、ディカプリオ家は大騒ぎだった。
別に寝坊をしたわけじゃない。
前の日の夜はレオも"愛の営み"は自粛(?)してと早々とベッドへ入り目覚ましもセットした。
朝もちゃんと目が覚めて二人は用意しておいた荷物を車へと積みこみ、戸締りも確認。
さあ、後は愛犬のジャックを車に乗せて空港へ向かう前にの実家に連れて行くだけ…のはずだった。
あのチャイムが鳴るまでは…
「ねぇ~レオ~いいでしょう~?」
「NO!!そんな甘えた声出したってダメなものはダメだ!」
「いつからそんな冷たくなったの?」
「そんなの昔からだよ。知ってるだろ?!」
「ねぇ、レオォォオ…」
「ダーメ!!!」
俺はキッパリとそう言いきると顔を彼女から背けた。
と言っても別ににこんな事を言ってるわけじゃない。(まあ、には、こんなに怒るはずもないが)
俺が怒ってるその相手と言うのは…
「何よ、何よ…っ。私は、こんな冷たい息子に育てたつもりはないわよ?!」
「…母さん…。頼むよ…。何度、俺との邪魔をすれば気が済むわけ?」
「そんな邪魔なんて!いつも気を利かせてるでしょ?」
母、イルメリンは口を尖らせて俺を見ている。(ったく、いい歳して)
だが俺はその言葉だけは許せなかった(!)
「はあ?気を利かせてる?どこが?どの辺が?!毎晩のように遊びに来ては一緒に夕飯食べてくし、
その後は勝手にワインなんて開けて、一本まるまる一人で飲んじゃって、泥酔したあげくに泊ってくし、
客室用意してんのに"ママ、寂しいの"とか言って俺達の寝室に入ってくるし!!
これのどこが気を利かせてるって言うんだよっ!」
俺は一気にそう言って息苦しくなった。
「レ、レオ…落ち着いて…ね?」
が心配して俺の腕をそっと掴んでくる。
「ごめん…大きな声出して…。でも言わないと気がすまない…っ」
俺はそう言って母の方を見ると彼女は澄ました顔で、
「心の狭い男って嫌ねぇ?ね?ちゃん」
なんて言っている。
これには俺も我慢の限界を極度に超えた。
「俺は意外には心が狭くたっていいよ!お邪魔虫に心なんて広げたくない!」
「ま!感じ悪い。愛妻家もいいけど、愛母家になるもの大事よ?それでまた演技にも幅が出るから」
「………」
もう疲れた…
この母には何を言っても聞きやしない…。
バズーカ撃ち込んでも跳ね返しそうだ…
「、もう母さんは放っておいて行こう?飛行機に乗り遅れる」
「え?で、でも…」
「ちょっとレオ!だから母さんも行くわっ。サンフランシスコなんて久し振りだもの!」
「だからダメだって言ってるだろ?だいたい息子の新婚旅行に母親同伴なんて聞いた事がない!!」
俺はそう怒鳴りながらもの手を引いて外へ出た。
ジャックが恐々と後をついてくる。
車のドアを開けるとジャックは後部座席にすぐ移動した。
「さ、も乗って?」
「でもレオ…お義母さんが…」
「いいから。俺が追い出してくるから待ってて」
俺はそう言っての頬にチュっとキスをするとドアを閉めた。
「ちょ、レオ?!待って…っ」
が困った顔で叫んでいたが、俺はまず母を何とかしないと…と思って家の方に戻った。
「おい、母さん!俺達、行くから帰れよ!」
母さんはエントランスのところでスネながら、「えぇ~…酷いじゃないの~…」と言っている。
「酷いのはどっちだよ、ったくさぁ…。こんな朝から何しに来たかと思えば…。何が"一緒に連れて行って"だよ」
「だってぇ…。二人がいなかったら寂しいじゃない…。ここに来ても誰もいないのよ?」
「だから自分も早く恋人見つけろよ。まだ若いんだからさ~。いっそのこと父さんとヨリでも戻せば?」
「な、何で私が、あんな男と!!ジョージなんてもう二度とごめんだわ!」
「あっそ。じゃあ他で見つけろよ。とにかく…ほんと急がないと飛行機に乗り遅れそうなんだ。我がまま言うなよ」
俺は母の腕を取って外へ出ようとした。
が、母は足に力を入れて動かない。
俺はちょっと息をついて振り返った。
「…母さん…っ」
「だったら私、留守番しててあげる」
「はあ?」
何を言い出したのかと俺は驚いた。
「留守番って何だよ?」
「あんた達が戻ってくるまで私がこの家でジャックの面倒を見ながら留守番しててあげるって言ってるの。それくらいいいでしょ?」
「な…別にいいよ。留守番なんて…」
「いいじゃないの。そしたらジャックを預ける必要もないし。ね?ちゃんと散歩も連れて行くから」
「…何で、ここにいたいわけ?一人は嫌なんだろ?」
俺が呆れてそう聞けば、母はニコニコしながら、
「そうだけど…ここなら何だか落ち着くし、待ってればレオとちゃんも帰って来るじゃない?ジャックもいるし大丈夫よ」
なんて呑気に言っている。
俺はちょっと考えたが、まあ、それでもいいかな…と思った。
ジャックは確かにの実家に預けると言う事になっていたがジーンは犬好きでもショーンは猫派らしく、あまりいい顔をしていなかったのだ。
俺もあのジャックが何かしないかと少し不安もあった。
普通なら人間が犬の事を苦手だと犬の方でも警戒して近づかなかったりするが、
ジャックは嫌われてるという事を本能で察知できない鈍感犬だ。
あの調子でショーンに飛び掛って顔でも舐めたら…と、ちょっと心配だったのだ。
でも母がここで留守番をしながらジャックの面倒を見てくれると言うならそんな心配をしなくても済む。
俺はそんな事を考えながら軽く息をついた。
「OK…解かったよ」
「え?じゃあ…」
「ここで留守番してていいよ?でもジャックの散歩とご飯は、ちゃんと面倒みろよ?」
「ええ!もちろんよ!ちゃんと面倒見るわ?」
母は満面の笑みになり、張り切ってそう答えた。
そんな母にちょっと苦笑すると俺は肩を竦めた。
「じゃあ…ジャック連れてくるよ」
そう言って車の方へと戻って行く。
車ではが心配そうな顔で待っていた。
ドアを開けると、すぐに、「レオ?ケンカなんてしてないよね?」なんて聞いてくる。
俺はちょっと微笑んでの唇にチュっとキスをした。
「大丈夫。もう解決した」
「え?」
「って言うかさ…。母さん、いくら言っても帰らないって言うし…。それで一緒に連れて行ってくれないならここで留守番してるって言うんだ」
「えぇ?る、留守番って…」
は驚いた顔で家の方を見た。
「ま…たった三日間だしさ。ジャックの面倒も見てくれるって言うし。いいだろ?」
「わ、私は…いいけど…。何だか悪くない?ジャックの面倒なんて…」
「悪くないよ。着いてこられるよりマシだしさ?ショーンも犬苦手なんだし母さんに預けるほうが気を使わなくていいだろ?」
「まあ…そうだけど…。じゃあ…お願いしようかな?」
「うん。そうしよう?」
俺はの頬に軽くキスをすると後部座席でワクワクしたように車が出るのを窓に足をかけ待っているジャックを見た。
「おい、ジャック!」
「ワゥ?」
「下りろ」
「………ヮ…っっっ」
俺がそう声をかけると明らかにショックを受けている。
「クゥ…ン…」
「ダメ!お前の我がまままで聞いてる時間がないんだ。早く下りろ」
俺がもう一度そう言うとジャックは耳を垂れて尻尾も心なしかシュンと下がってしまった。
その姿には可愛そうな視線を向けているが、ここは心を鬼にしないと本当に飛行機に乗り遅れて時間だって無駄にしてしまう。
なんて言ったってと二人きりの初めての旅行は三日間しかない。
貴重な時間を無駄にはしたくなかった。
「ジャック…?!下りろっ」
「ワゥ…」
俺が怖い顔で怒るとジャックも渋々車から下りた。
そして俺の前に、チョコンとお座りをするものの頭をガックリと下げている。
仕方なく俺はジャックの頭を撫でながら、
「悪いけどお前はここで母さんと留守番しててくれ。いい子で待ってるんだぞ?」
「………クゥ…」
「そんな目で俺を見るなよ…。仕方ないだろ…?」
ジャックは悲しそうな瞳で俺を見上げてくる。
それにはさすがに心が痛んだ。
本来、こいつはこれからの実家に預けられるはだったがジャックは、それを知らなかった。
一緒に連れて行ってもらえるもんだと思ってたんだろう。
だから急に下りろと言われて置いて行かれるんだと解かったようだ。
「元々、お前は置いていかれる運命だったんだ。なら知らない家より自分の家の方が、まだいいだろ?母さんもいるし」
ジャックの頭を撫でながらそう言い含めていると母さんが外に出てきた。
「ジャック~今日から三日間、宜しくね~」
母はそう言ってジャックの頭をクシャクシャっと撫でた。
だがジャックは顔をあげるなり、俺の足にしがみ付いてくる。
「うあ、バ…バカ…離せよっ」
「ワゥゥン…」
「あらら~ジャックも連れてけって言ってるわ?」
その光景を見て母がケラケラと笑っている。
それにはも心配して車から降りてきた。
「ジャック…いい子だから離してあげて?今から出かけないといけないの。でも、すぐ帰って来るから…
ちゃんと、お利口さんで待っててくれる?」
はジャックに優しく話し掛けて頭を撫でている。
それにはジャックも渋々と言った感じで俺から離れた。
だいたい何でこいつはの言う事なら素直に聞くんだ?と俺は少し溜息をついた。
「いい子ね~。じゃあ、お義母さん、ジャックをよろしくお願いします」
「ええ、任せて!ちゃんも、レオを宜しくね?ちょっと…いえ、かなり我がままな息子だけど」
「はい」
「ちょっと母さん!我がままなのは自分だろ?!俺はそれに似たんだよ」
呑気に笑っている母を俺は軽く睨んだ。
「はいはい、解かったから。早く行きなさい?飛行機、乗り遅れちゃうわよ?」
「だ、誰のせいで、こんな遅くなってんだよ!」
腹が立ってそう怒鳴るもが慌てて俺の腕を引っ張った。
「い、行こう?急がないと…」
「あ、ああ…そうだな…。じゃ、母さん、留守番頼んだよ?」
俺が口を尖らせて母を見ると、
「はいは~い!行ってらっしゃーい」
とニコニコしながら手を振っている。
ジャックは、まだ悲しげな瞳ながらも一応、尻尾を振って見送ってくれていた。
それを見届けてと俺は車に乗り込むとエンジンをかけ、勢いよく車を出した。
時間を見れば、もう飛行機が出るまでに一時間もない。
「はぁ~…余計な体力使った…」
俺がそう呟くとがクスクス笑っている。
「もう…笑い事じゃないよ…?」
「ごめん…。でも無事に出発できそうだし…」
「そうだね…。もうー向こうに着いたら思い切り二人でノンビリしよう?」
「うん」
俺の言葉にもちょっと微笑む。
その笑顔を見て少し心が癒された気がした。
こうしてディカプリオ家の騒々しい朝は静かに終わりを告げた。
俺は今日、機嫌が悪かった。
社長に散々、警察に捕まった事をからかわれたからだ。
だいたい、いつまでそんな古い話をしてくるんだっ。
あのチャビンエーンド、はっけよい男バージョン(社長のこと)めっ!
しかも来週からのレオのプロモーションにジョンを運転手としてつけるなどと言いやがって!
まあ、俺は免停になってしまったのだから仕方ないが、それならレオに運転させればいいと思っていたのにっ。(!)
おかげで後輩のジョンにまで捕まって留置された事がバレてしまった。
これは俺の面子にかかわる問題だと言うのに、社長の奴、ペラペラと!その口を縫い付けるぞっ?!
最悪なのはその理由まで話されたということだった。
俺が好きな女とデートをした帰り、浮かれまくって飲酒なのにも関わらずスピードを出しすぎたと言う事までバレバレだ。
恥ずかしいったらない。
それに…あの日以降、シェリーからは連絡がない。
もしかして…チャビンの奴、あのシェリーのとこの社長にまで話したんじゃないだろうな?!
それでシェリーにまでバレて彼女も俺のこと呆れてしまったのかも…と思うと、いてもたってもいられなくなる。
今夜電話してみようか…。
幸い、レオは奥さんと新婚旅行に出かけている。
最大の邪魔者はいないと言うわけだ。
「よし!今夜シェリーに電話してデートを申し込もう!」
俺は一大決心をして事務所を後にした。
その瞬間、携帯が鳴り出し慌ててポケットから出した。
そして相手を確めもせず出る。
「Hello?こちら、ジョーサンダー」
『あ、ジョー?俺!』
「…レ、レオ?!な、何だ?何か用か?」
意味もなく動揺してどもってしまった。
『何だよ。何、慌ててんの?』
「べ、別に何も慌ててなどいないよ、君ぃ!」
今度は変な言葉遣いになってしまった。
『……?何か変だな…?何かあった?』
「へ、変などではないだろう?何もないさ!ゴ、ゴホン!と、ところで新婚旅行中の旦那様がこの花の独身の俺に何用かな?ん?」
『…何か棘がある言い方だな…。だいたい何が"花の独身"だよ。それ自慢するとこじゃないぞ?結婚できない男の逃げだろ?』
「………っ(ピキ…っ)」
(お、落ち着け、ジョー…!こんな新婚ボケの男のいう事に聞く耳持つな!!)
「ゴ、ゴホンっ!ンッン!」
『何だよ…風邪か?やめろよ?移るから…』
「…っっ(プチっ) ……電話で話しただけでうつるか!いったい何のようだ?!」
俺は我慢も限界でそう怒鳴ると電話の向こうで、
『何だかヒステリー起こしてるよ…。嫌だね、中年男のヒステリーは…。
―ちょっとレオ…そんなこと言っちゃ悪いわ?― いいの、いいの。ジョーなんか。…チュ…v』
「………っっ?! そこぉ!!電話中にキスなんてするんじゃないっっ!それに何だ、その"ジョーなんか"って!」
『うっさいなぁ…。耳元で怒鳴るなよ…。ツバかかりそうで嫌なんだよ…』
「だ・か・ら・電・話・で・ツバ・なんて、かかるかぁぁぁぁああ!!!」
レオのアホ発言に俺は電話に向かって思い切り怒鳴った。
その瞬間、自分のツバが電話にかかってしまい慌ててハンカチで拭くハメになって更にムカつく。
「…で?!いったい何の用だ?!」
『…………。』
「…? Hello?Hello~~~~?!」
受話器の向こうから何も聞こえなくなり、俺が必死に呼びかけると突然、
『あ、終った?』
とレオの声が聞こえてきた。
「終ったって?」
『ヒステリーだよ…。ジョー声がでかいからさぁ…。ちょっと耳、離してたんだ』
「うぬぬぅ…っっ」
そ、それで返事がなかったのか…っ
ま、まあ抑えろ…
今怒ったところで目の前にレオがいるわけじゃない。
俺はそう自分に言い聞かせて、とりあえず平常心に戻った。
「で?何の用だ?」
『あ、そうそう、今さ、サンフランシスコに着いたんだけどさ』
「ああ、そのくらいだな?で?」
『あのさ。前にジョーが連れていってくれたカニ料理の店って、どこだったっけ?が夜はカニが食べたいって言うから教えて貰おうと思って』
「何だ、そんな事か…。ええっとあの店は…フィッシャーマンズ・ワーフの"ピア39"に行けばある。店の名前は確か"クラブ・ハウス"だ」
『あ~~っ。そっか、そのままの名前だっけ!』
「そうそう。ああ、そうだ!そこに行くならちゃんをシー・ライオンズに連れて行ってやれ。
アザラシが大量に見れるから。彼女、動物好きだろ?」
『ああ、そうだね!そうするよ。サンキュ、ジョー』
「いやいや。このくらい、お安い御用だ」
俺はレオに感謝され(?)気分を良くした。
「じゃ、もう、いいか?ちょっと電話をかけないといけないんだ」
『何?仕事、忙しい?』
「ん?あ、いや…まあ…。本格的に忙しくなるのは来週からだぞ?あまりハメ外しすぎるなよ?」
『まあ、気をつけるよ。ジョーも運転には気をつけて』
「え?!」
『え?何、驚いてんの?』
「あ、い、いや…運転は…今は出来ないんだ、うん…」
『えーー?何で?何で?』
レオに、そう聞かれて俺は答えに詰まった。
しかし、どうせ隠してたって来週のプロモーションでジョンも行けば解かってしまうだろうし…
「ちょっと…この前、免停くらってな?暫く運転出来ないんだ。だが来週はジョンが運転手として来るから…何、プロモーションだけだ」
『それは解かったけどさ。何で免停なんてくらったの?何したんだ?人を轢いたのか?』
「ひ、人聞き悪いことを言うな!そんな人を轢いてたらこんな電話に出れるか!今頃、留置場だっ」
『アハハっ。そうだよなぁ~?で?何したんだ?』
「ぐ…っ」
『何?俺には言えないこと?』
「そ、そんなんじゃ…。 い、飲酒運転と…スピード違反だよっ」
『えぇ~?俺には、あんなに酒飲んで運転するなとかスピード出しすぎるなって説教してたクセに?!』
「う、うるさいな!止む終えなかったんだ!(?!)」
このままではレオの尋問に絶えられなくて全てを話してしまいそうだ…っ
電話を切らなければ…っ
「じゃあ、もう用はないだろ?切るぞ?!」
『なーんか怪しいなぁ…。そんなに俺と話していたくない理由があるのかな~?』
レオは何だか楽しんでいる口調だ。
長年、あいつのマネージャをやってきている俺には今、レオがどんな顔で話しているのかすら想像ついてしまう。
「そ、そんなものはないさ!あるわけないだろう?!し、仕事の電話をかけたいんだよっ」
『どんな仕事さ?俺のだろ?何?』
(…く…っ。絶対に何か疑っているな…)
「しゅ…取材の時間を変えてくれって言われたからこれから決めるんだよっ。その取材は帰って来てすぐにあるからな?解かったな?」
俺は一気に畳み掛けるように、そう言うと、
「おっと、電話をかける約束の時間だ。じゃあ、切るぞ?旅行、思い切り楽しんで来い!あ、お土産宜しくぅ!じゃな!」
早口でそう言ってすぐ終了ボタンを押した。
「ふぅ…。ったく…。レオの奴、こういう勘だけはいいんだから…」
俺は変な汗が出てきてハンカチで額を拭いた。
そのハンカチがさっき自分のツバを拭いた物だと言う事奇麗サッパリと忘れていた(!)
「さ、レオから、またかかってこないうちにシェリーに電話を…」
俺は彼女の番号を出して、いざ通話ボタンを押そうとしたその瞬間、また携帯が鳴り出し、俺はチッっと舌打ちして、すぐに出た。
「おい、レオ!俺は忙しいんだよ!!」
『…………………っ』
「あれ?Hello?Hello~~?」
俺はまた何も聞こえてこない受話器に向かって叫んでみた。
すると突然、か細い声が聞こえてドキっとする。
『あ、あの…ジョーさん…ですか…?』
「……っ?!シェ…シェリー?!」
『あの…お忙しいとこ、すみません…。それじゃ…』
「ああーー!!ちょーーっと待って!!」
シェリーは自分が怒鳴られたのだと勘違いしたのかそう言って電話を切ろうとして俺は慌てた。
「い、今のは君に言ったんじゃないんだ!ご、ごめんね?てっきりレオのバカだと思ってさ!(!)アハハ!」
『そ、そうですか…。あの…今、大丈夫ですか?忙しいんじゃ…』
「い、いやいや!忙しくなんかないさっ。大丈夫だよ?」
俺は焦りながらも何とか穏やかにそう言った。
すると受話器の向こうでシェリーがホっと息をついたのが解かった。
『良かった…。お仕事の邪魔しちゃったかと思った』
くぅ~~~っっっ!!何て、かわゆいんだっ!
見たか、レオ!元来、女性とは、こんな風に可愛らしいものなんだ!
お前のハニーは出逢った当時は凶暴で(!)俺なんて睨みつけられてビビったくらい怖かったぞ?!
レオの事を何度もひっぱたいてたしなっ
ま…レオは、あの平手に新鮮味を感じて惚れたのかもしれないけどな…って、あいつマゾかも(!)
『あ、あの…ジョーさん…?』
「あ、ああ。ごめんね?ちょっと考えごとさっ。アハハハ!」
俺は思考回路がぶっ飛んで違う世界へいっていたがシェリーのラブリーな声で現実へと帰ってこられた。
『やっぱり忙しいんじゃ…』
「いや!全く!今はレオも新婚旅行に行っちゃってるから、そんな仕事も多くないしね?」
俺はニコニコしながら、(見えるわけじゃないが)そう言った。
『レオナルド、新婚旅行に行ったんですか?』
「ん?ああ。やっと奥さんの休みが取れてね?まあ…新婚旅行って言っても三日間だけの短い時間しか作れなかったんだが…」
『そうなんですか…。可愛そうですね。せっかく新婚さんなのに』
「いやあ、何だかんだ言っても家でイチャイチャしてるんだから、たいして可愛そうじゃないよ!」
俺は自分が邪魔しに行ってる事など棚に上げてしまった。
「あ、それで…今日はどうしたんだい?俺に何か用事だった?」
気を取り直し、そう聞いてみた。
そうだ…俺が電話しようと思ってたらタイミング良く彼女から電話がかかってきた。
やはり、これは運命としか言いようがない。
『あ、あのジョーさん、今夜、時間あるかなぁ?って思っただけなんですけど…』
シェリーは少し恥ずかしそうにそんな事を言って来て俺はテンションが一気に加速して鼻血を拭くかと思った(!)
「こ、今夜?あ、空いてるよ!もちろん!空きまくりさ!アハハッ」
『そうですか!良かった。じゃあ…一緒に食事でもどうですか?』
「え?食事?もちろんOKだよ!何時にどこがいい?」
俺はウキウキしてきた。
『じゃ…夜の7時にサンタもニカの"キャパ"はどうですか?』
「ああ、その店なら知ってるよ。OK、7時にそこだね」
『はい。じゃあ…後で…』
「うん!楽しみにしてるよ!」
俺はそう言って電話を切った。
「イエイエイエイエイ!」
一人ガッツポーズをしながら俺は道のど真ん中で叫んだ。
(きたぞ~!俺の時代が!!今夜、一気に決めちゃおっかなぁ~~~!!)
そんな事を考えながらハっと気付いた。
「俺…サンタモニカまで何で行けばいいんだ…?」
俺はそれを考えてちょっとブルーになった…。
レオはジョーとの電話を切って思わず吹き出した。
「ほんっとジョーって解かりやすい!」
「もうレオってば…顔がニヤニヤしてたよ?」
私もちょっと笑いながらレオを見上げた。
レオは私を優しく抱きしめて腕の中に納めるとチュっと頬にキスをしてくれる。
それでも、まだ少し笑っているのが解かった。
「ジョーさん、まだバレてないと思ってるのかな?」
「絶対そうだよ。あの様子じゃね。ったくさぁ…浮かれすぎて捕まるってマネージャー失格だな?」
レオはそんな事を言いながら笑うと私を解放して顔を覗き込んできた。
「さ、どこ行く?時間はたっぷりあるよ?」
「う~ん…レオが決めて?私、サンフランシスコ初めてだし…」
「そっか。まあ、俺も仕事でしか来た事ないから…普段出来ない事とかしたいなぁ…」
「出来ない事って…?」
私がそう言って顔をあげるとレオはニッコリ微笑んで、
「例えば…ケーブルカーに乗って観光するとか…?」
と言った。
「あ、ケーブルカー…。さっきタクシーから外見てたら走ってたわ?」
「そうそう、あれだよ。乗ってみる?最後につくのはジョーが教えてくれたフィッシャーマンズ・ワーフだし丁度いいよ?」
「うん、乗りたい。じゃ、行こ?行こ?」
私は元気よく立ち上がるとレオの腕を引っ張った。
「は元気だなぁ…。まだホテルに着いたばかりだってのに」
「だって凄く天気がいいし景色も奇麗だから外に出たいの」
「だな。じゃ、行こっか」
レオもちょっと笑いながら私に帽子を被せると自分もサングラスをして手を繋ぐ。
そのまま部屋を出てロビーへと下りた。
レオがとってくれたホテルはサンフランシスコのソーマという街にある"ホテル・ソーマ"というアージェントホテルだ。
全面ガラス張りの窓を使用していて夜には夜景が奇麗だという。
レオが予約したのはもちろんスィートで部屋もかなり広く、暖色系で纏めた素敵な部屋だった。
バスルームなんかは全て大理石で転ばないかなと変な心配をしてしまう。
私とレオはフロントの人にケーブルカーまでの道を聞いて手を繋いだまま外に出た。
レオだと知っているフロントのマネージャーらしき人が少し興奮気味に、
「ご結婚、おめでとう御座います」
と言ってきて私は顔が赤くなったがレオは営業スマイル(!)を見せて、
「ありがとう」
なんてクールに、でも嬉しそうに答えていた。
「、顔、赤いよ?」
通りを歩きながらレオは私の顔を覗き込んできた。
「だ、だって…急に知らない人から、あんなこと言われたら…」
「ああ…。でも嬉しいだろ?俺、顔ニヤケそうになったよ」
「嘘~っ。レオったら慣れた感じでサラっと答えてたじゃない」
ちょっと苦笑しながらレオを見上げてそう言えばチュっと軽くキスをされ、また顔の熱が上がった。
「俺があまりデレっと出来ないだろ?」
「…………」
「あれ…?もしかして…怒ってる…?」
「…だって…こんな道端で…」
少し視線を伏せながらそう呟くとクスクス笑う声が聞こえて私は顔をあげた。
「もう…笑い事じゃないわよ…」
「ごめん、ごめん!スネたも可愛いな~って思ってさ?」
「……………っっ」
また私が照れるような事をアッサリ言う…
「ケ、ケーブルカーは、この先を右って言ってたよね?」
「うん、あの角まで行けばいいって」
赤くなった顔を見られないようにレオの手を引っ張るようにして前を歩いて行く。
でも…レオはきっと気付いてる。
だって…繋いでいた手が少し緩んだと思った瞬間、指と指を絡めるようにして繋ぎなおした手―
その手がギュっと強く握られたから…
その温もりにドキドキしてくる。
初めて恋をした頃の自分に戻ったみたい。
そう言えば…こんな風に二人きりで旅行に来る事も…こうして人前を堂々と歩くのも、初めてだったな…と、ふと思った。
もう誰の目を気にすることもない。
私とレオは夫婦なんだ。
その夢のような現実が今、私の隣にある。
俺は照れて顔を赤くしているのを見られたくないのか、どんどん繋いだ手を引っ張っていくの後姿を見てちょっと微笑んだ。
そして繋いだままの手を少し緩めるとそっと指と指を絡めて強く握った。
その瞬間にの手がかすかに緊張したのが解かる。
こんな事くらいで照れてしまう彼女がめちゃくちゃ愛しい。
それに…結婚してからこんな風に二人でノンビリするのなんて初めてでそれだけで嬉しくなってしまう。
と言うより…こうして二人きりで旅行するのも初めてだな。
そんな事を思いながら歩いて行くとケーブルカー乗り場が見えてくる。
ちょうど発車する所だったらしい。
「、あれ乗っちゃおう」
「うん」
俺はの手を引いてケーブルカーに飛び乗った。
中は混んでるので外に立ったまま景色を眺める。
「わぁ…レトロで可愛いね。初めて乗った」
「ああ、俺も乗ったのは初めてだなぁ」
そこに発車のベルが鳴りゆっくりとケーブルカーが走り出した。
だんだんスピードが出てきて気持ちいい風が頬を撫でて行く。
「はぁ~…気持ちいい…。ねえ、レオ」
「ん?」
「これ、どのくらいで終点につくのかな?」
「あ~。一時間くらいかかると思うよ?」
「そうなんだ。でもドライブ感覚で楽しいし、すぐよね、きっと」
は楽しそうに周りの景色を楽しみながらそんな事を言っている。
俺はの腰を抱き寄せて、素早く頬にキスをした。
「キャ…レオ…?」
「いいだろ?一応、新婚旅行の代わりなんだしさ?こんなの普通だよ」
「で、でも…」
ちょっと恥ずかしそうに周りをキョロキョロと見ながら人の目を気にしている。
「レオだって気付かれたら…」
「ああ、そんなこと?別にいいだろ?俺とはもう結婚してるんだから誰にバレたって」
「そうだけど…」
まだ少し恥ずかしそうな彼女を自分の方に向かせて、更に腰を強く抱き寄せた。
「ちょ…レオ…?!」
「そんな、よそよそしくされると寂しいんだけどな?」
俺がちょっと目を細めてスネたように言えばも困ったような顔でチラっと見上げてくる。
その顔が可愛くて、俺はちょっと噴出した。
そのまま唇に触れる程度のキスをすると、は真っ赤な顔のまま俯いてしまう。
「、顔あげて?そんな俯いてたら景色見られないよ」
ちょっと笑いながらの頬に手を添えると、ゆっくりと俺の方を見て、
「…レオが悪いんじゃない」
と口を尖らせている。
その言葉に苦笑しながらも彼女を抱きしめ、額にキスをした。
「ごめん。でもこうして二人で新婚らしくノンビリするのって初めてだからさ…」
そう言ってに微笑むと彼女もまたちょっと微笑んでくれた。
「ほんとだね…?家じゃ、ゆっくり出来なかったし…」
「…だろ?でも今は邪魔者はいないよ?」
「…うん」
はちょっと笑って俺の腕からするりと抜け出すと、「海の匂いがする…」と言って目を瞑った。
前の方へ視線を向けると青い光が見えてくる。サンフランシスコ湾だ。
「レオ、ウォーターフロントが見えて来たよ?」
は帽子を手で抑えながら嬉しそうに海の方を指差して振り向いた。
その方向には沢山の埠頭も並んで見える。
俺はサングラスを外して海を眺めた。
「マリブもいいけど…ここの海もいいなぁ…」
ちょっと伸びをしながら、呟いた。
こんな穏やかな気持ちになった事はないかもしれない。
それも…に出逢えたから…
もし彼女と出逢ってなかったら、俺は今でもくだらない恋愛ゲームを楽しんでたかもな…
ふと、そんな事を思って隣で身を乗り出しながら海を眺めているを見た。
「シェリー、ワインもっと飲むかい?」
「あ、はい。ありがとう御座います」
俺がワインのボトルを出すと、彼女は嬉しそうにグラスを出した。
今日はちょっと頑張って有名なイタリアンの店へと来ていた。
「でも、またワイン飲みすぎちゃうかしら…」
「も、もし、そうだったら家の近くまで送っていくよ。あ、タクシーでだけど…」
俺は何とか笑顔を作りながらそう言うと、シェリーも優しく微笑んでくれる。
はぁ~…可愛いよなぁ…
彼女が僕の恋人になってくれるなら…俺はレオの、どんな仕打ちにだって絶えられるぞっ
や、やっぱり今夜、決めちゃおうかな…っ
そんな事を考えていると俺は緊張してきてついついグビグビとワインを飲み干してしまった。
「ジョーさん、大丈夫ですか?そんな一気に飲んで…」
心配そうに俺を見ながらシェリーがそう言ってくれて胸が熱くなる。(いやワインでもなんだけど)
「ああ、今日は運転することもないし警察には捕まらないさ!」
俺はちょっとほろ酔い気分になり、そう言って笑うとシェリーもクスクス笑っている。
「そうですね。今日はタクシーですからね」
「ああ、だから今夜は大いに飲もう」
空になったグラスにワインを注ぎながら彼女を見ると、シェリーも笑顔で頷いてくれた。
ああ…やっぱり彼女も俺のことを…っ!
本当に、そうなら死んでもいい!あ、い、いやダメだ…
死んだら、彼女と付き合えないじゃないかっ
ブンブンと首を振りつつ、そんな考えを打ち消しているとシェリーが不思議そうな顔で俺を見ている。
「ジョーさん?どうしたんですか?」
「え?あ、いや…っ。何でもないよ!ハハハハ!」
「やだ、ほんと面白い人ですね?ジョーさんって」
「そ、そうかな?それだけが取り得なんだっ」
俺はちょっと頭をかきながら苦笑した。
だがシェリーは小さく首を振って、
「そんなこと…。ジョーさんは仕事も出来るし…優しいし…素敵なところが沢山あります」
と言って微笑んでくれた。
「シェ…シェリー…っ」
俺は彼女の言葉に感動して撃ち震えながら、好きだと告白するのは今しかないと思って決心をした。
テーブルの上にあるシェリーの白くて細い手をグイっと掴むと、
「あ、あのシェリー…」
と彼女を見つめた。
シェリーは少し驚いたような顔で俺を見ている。
「お、俺はね…君のこ…」
「あれ?シェリーじゃないか」
「……………っ?!」
(俺の一世一代の告白を邪魔する奴は、どこのどいつだ!!)
俺はいい所を邪魔され頭に来て思い切り怖い顔で振り向いた。
するとそこには身長の高い、超イケメン男が立っている。
「…マックス…!」
シェリーはその男を見て驚いたように席を立った。
少し顔色が悪く、俺はこのイケメンと彼女がどんな関係なのか気になった。
「久し振りだな?元気そうだ」
「…あなたも…」
シェリーは彼から視線を反らしつつもそう呟いた。
「何してるんだ?こんなとこで…。彼は…?」
「関係ないでしょ?あなたには」
「何だよ。冷たいな…」
マックスと言う男は苦笑しながらも俺の事をジロジロと見てきた。
そこで俺は思い出した。
このマックスという男が何者かと言う事を。
そうだ…こいつは確か…メンズブランドのイメージモデルをやってる奴だ…!
よく雑誌や,CMで顔を見る。
そんなモデル男とシェリーは一体どんな関係なんだろう?
何だか友人という感じではなさそうだ。
むしろ…ワケありっぽい…
「女優業は?順調?」
「……ええ」
「ふぅん。の割には見かけないけどな?ひょっとして、まだエキストラか?」
マックスはバカにしたような口調でシェリーの髪を一房つかみ、自分の口元へと持っていった。
俺はさすがにムっとしたが俺は別にシェリーの恋人でも何でもない。
ヘタに口を挟んでいいものか迷っていた。
「関係ないって言ったでしょ?私は…」
「好きな事が出来れば、それでいい…か?モデルをやめる時も確か、そう言ってたな?お前」
「そっちこそ…俳優になりたかったんじゃないの?モデルなんてバイトだって言ってたクセに、まだしがみついてるの?」
シェリーは俺には見せた事のないようなキツイ表情でマックスを睨んでいる。
だがマックスはちょっと楽しげに笑うと、
「ああ。ま、目が出るか出ないか解からない俳優へ転向するよりは、一流モデルとして稼いだ方が数倍いいって気付いたんだ」
「そう。なら、せいぜい新人に抜かれないように頑張れば?」
「ああ、俺は頑張ってるよ?それよりお前の方だろ?頑張らなきゃいけないのは。
今は若いからいいけど今のうちに売れておかないとおばさんになってからじゃ遅いんじゃないのか?脱ぐしかなくなるぞ?」
マックスはそう言って笑っている。
俺はテーブルの下でギュっと拳を握り締めた。
「私の事は放っておいて。早く行ってよ…」
さすがにシェリーの声も震えていたが冷静を保ちながら、そう言った。
するとマックスはクスクス笑いながらシェリーに近づくと彼女の耳元で、
「仕事で脱ぐくらいならさ…。また俺のとこに戻って来いよ。可愛がってやるからさ?」
と囁いた。
それにはシェリーも一気に青ざめる。
そして俺の我慢は限界を超えた。
「いい加減にしろ!!」
そう怒鳴って椅子から立ち上がるとマックスの胸元を掴んで壁にドンっと押し付けた。
「な、何だよ、おっさん!離せよ、アルマーニのスーツが皺になるだろ?!」
「うるさい!お前は…頑張ってる彼女を侮辱した!それだけは許せないっっ!!」
「ちょ、何だよ、こいつ!おい、シェリー何とかしろ!」
マックスはさっきの余裕の表情から一転、情けなくらいに慌て出してシェリーに助けを求めている。
「あ、あのジョーさん!やめて?そんな私の為に怒る必要ないわ?!」
「で、でも…!」
「お願い!ジョーさんに、こんな事して欲しくないの…っ」
シェリーは必死になって俺の腕にしがみ付いてきた。
そんな彼女の言葉に熱くなっていた体も少しづつ冷めて来るのがわかる。
そっと腕の力を緩めると俺はマックスの胸元から手を離した。
それにはマックスもホっとしたように息をついている。
「ったく…何なんだよ、こいつ…。シェリー、まさか、お前の新しい恋人じゃないだろうな?」
「関係ないでしょ!店員が来る前に早く行って!一流モデルがケンカしてたって雑誌に載るわよ?!」
シェリーはそう怒鳴ってから顔を背けた。
幸い、ここは店の奥の方で今の騒ぎは近くの客しか気づいていない様だった。
「はいはい。邪魔者は退散するよ。今度一緒に仕事するモデルとデート中なんだ。じゃぁな?」
マックスはスーツの皺を気にしながら自分の席へと戻った。
それを見てシェリーは大きく息をついて俺の方を見た。
「すみません…っ」
「え…?な、何で君が謝るの?俺の方こそ…カっとなってごめんな?」
「いいえ…。ジョーさんは私の為に怒ってくれたんですよね…。ありがとう御座いました」
「シェリー…」
彼女は今にも泣きそうな顔で目を伏せている。
俺はちょっと息をつくと、「店を…出よう」と言った。
そのまま二人で店を出て少し歩いてパラダイス・ビーチまでやって来た。
真っ暗な闇の中にぽつりと浮かぶ月がとても奇麗で何故だか妙に切ない気分になってくる。
俺とシェリーは黙ったまま暫くビーチを歩いていた。
だが、ふとシェリーが立ち止まり、俺の方を見る。
「ジョーさん…」
「…ん?」
「何も…聞かないんですか?さっきのこと…」
シェリーはそう言って少し俯いた。
俺は立ち止まって彼女の方へ歩いて行くと、「聞いて…欲しいなら聞くよ?」と言った。
すると涙で潤んだ瞳が俺を見つめる。
「シェリー…さっきの男は…君の…恋人だった人?」
俺が思い切って聞くとシェリーは小さく頷いた。
「…前に…私もモデルをやっていたんです…。その頃、私は彼に夢中で…
一緒に俳優を目指していました。そして私は先にモデル事務所をやめて色々な映画のオーディションを受けたんです…。
その頃…彼も俳優をやりたいとオーディションを受けてたんですけど…
どうしてもオーディションが受からず、結局、モデルをやめる事も出来ずに悩んでいました。
それで…大役はなかったけど映画のオーディションに私が受かった時…彼に別れようって言われました…。
一緒にいるとイライラするって…そして他の女性と遊ぶようになったんです。だから…私も別れる決心がついて…」
シェリーは一気に話し終えると溜息をついた。
「そうか…。まあ…仕方ない事だけど…。なんて…ごめん…。何だか気の利いた言葉が出てこないよ…。
こう言うのはレオの得意分野だな…」
俺はそう言って苦笑した。
すると突然シェリーが俺に抱きついて来た。
「ちょ…シェリー?!どうしたの?!」
「…今夜…帰りたくない…。ずっと…私と一緒にいてくれませんか…?」
「え?!」
彼女の言葉に俺は一瞬、鼻血が出そうになった(!)
(ど、どういう意味で言ってるんだ?!ずっと一緒に…って…もしかして?!)
俺の頭の中はぐるぐると、あらぬ妄想に掻き立てられた。
すると、シェリーが泣き顔で俺を見上げてくる。
その顔は俺の理性を崩れさせそうな勢いの可愛さだ!
「あ、あのシェリー…?」
「ダメですか…?」
「え?あ、いや…その…」
「ジョーさんと…どこかに泊りたいんです…。ずっと一緒にいたい…」
「…………っっ?!」
(お、俺と、と、泊る?!そ、それって、やっぱり…!!そ、そういう事だよな?!え?いいのか?!)
俺は本気で鼻血が出そうで、ちょっとだけ上を向いた。
こ、これは…どういう事だ?!チャンスって事か?!
ってか俺は女性から…しかも、こーんなに若くて可愛い子から、こんな嬉しい事を言われたのは初めてだ!
くそぅ…!レオの奴は、毎回こんな美味しい思いをしてたんだな?!(!)
少し想考がズレてきていたが、それだけ今の俺は動揺してるという事だ。
「ジョーさん…?」
「あ、な、何?」
「私なんか…迷惑ですか…?」
「そ、そんなはずないじゃないか!凄く嬉しいよ?!」
俺はドキドキ飛び跳ねている心臓が口から出そうになりつつ、(んなバカな)何とか、そう答えた。
するとシェリーは俺の胸に頬を寄せてくる。
「じゃあ…私の傍に…いてくれますか…?」
そう呟く彼女の声が少し震えていて俺はハっとした。
彼女は…今、寂しいだけなんだ…
昔、愛した男に、あんな事を言われて…辛いだけなんだ…
だから…一人でいたくないって…そういう事なんだ。
…そんな弱みに付け込むような真似は…出来るハズがない…
「ジョーさん…」
「今日はずっと一緒にいるよ」
「…ほんとに?」
「ああ。でも…」
「でも…?」
顔をあげて首を傾げる彼女に俺はちょっと微笑んだ。
「どこかに泊る必要なんてない…。朝まで…一緒に飲もう?」
「え…?」
「今の君は…冷静じゃない…。俺なんかと一緒にいたいって言ってくれて…凄く嬉しいけど…。でも、それは愛じゃないだろう?
君は寂しいだけなんだ…。そんな君の弱みに付け込んで抱くわけにはいかないよ…。凄く…もったいないって思うけど…」
「ジョーさん…」
俺が苦笑しながら言った言葉で彼女の頬に涙が零れた。
「俺に出来るのは…朝まで一緒に飲む事くらいだけど…それでもいいかな?」
彼女の頭を優しく撫でてそう聞くと、シェリーはそっと涙を拭いて微笑んだ。
「ありがとう…ジョーさん…」
「お礼なんていいよ。俺もまだ君と一緒にいれると思うと嬉しいからさ?じゃあ、次はどこに行こうか?」
俺はそう言って先を歩き出した。
その時、後ろからシェリーが小走りできてそっと俺の手を持ちギュっと握った。
ドキっとしたが彼女は俺の手を繋いだまま寄り添って来て、俺の理性がまたしても崩れそうになってしまうのを何とか堪える。
ゆっくり歩きながら、俺はちょっと、もったいない事をしたかな…なんて思いつつ、それでも胸の中は妙に清清しかった。
「サイン下さい」
唐突にそう声をかけられ、俺はギョっとした。
目の前には何で持ち歩いてるんだ?と思うような太いペンと色紙が一枚…
「あの…今はちょっと…」
俺は内心、邪魔しないでくれと思いながらも何とか笑顔を見せる。
だがその女の子は悲しげな顔で、「ダメですか?」と聞いてくる。
そう言ってるだろう?と思いながらも店内を見渡す。
店員が注意してくれないかなと思ったからだ。
だが俺が座っている席は少し奥まっていて他の席からは見えないようになっている。
店員も気を使っての事か、呼ばないと来ないらしい。
俺はちょっと息をつくと、仕方なく彼女の差し出すペンを受け取った。
「ありがとう御座います…っ」
その子は嬉しそうに笑顔を見せた。
この子はさっき俺がトイレに立った時に顔を合わせてしまった子だった。
狭い通路でバッタリ出くわし、彼女は凄い驚いた顔をしていた。
きっとその後に俺がどこの席かを確認したんだろう。
そしてがトイレに立ったのを見計らってこうしてサインをもらいにきた…
「はい。これでいい?」
「はい!ありがとう御座います!」
彼女はもう一度お礼を言って俺の差し出した色紙を受け取った。
そしてチラっと後ろを見ると、「あの…彼女…と…旅行ですか?」と聞いてくる。
俺はちょっと苦笑して肩を竦めた。
「彼女じゃない。奥さんだよ?まあ…小旅行みたいなもんかな?」
「そう…ですか…。あの私…あなたのデビュー当時からの大ファンで…」
「そうなの?それは、どうもありがとう」
唐突に話が変わるのも少し緊張してるんだろうか?
俺は、とにかくが戻って来る前に、ここから出て行って欲しかった。
だが、その子は一向に行こうとはしない。
それどころか、じぃっと俺の顔を見つめている。
「あの…」
「彼女…奥様も…あなたのファンだったんですよね?」
「え?」
「雑誌で読みました」
「あ、ああ…。まあ…ね。それが何か?」
「いえ…だから…凄く羨ましいなって思って…。私だって同じ立場だったのにって…」
(そんな事を言われて俺は何て言えばいいんだ…?)
少しイライラしてきて俺は軽く息をついた。
「あのね…今、俺は…」
「お願いがあるんですけど…」
「…何…っ?」
俺は少しピキっときたが我慢して、そう聞いた。
すると、その子は突然、俺の目の前に顔を近づけてきたと思った瞬間、とんでもない事を口にした。
「キスして下さい」
「…は?!」
そんな事を言われて、さすがにギョっとした。
「お願いします…。今の奥さんとも出会ってすぐにキスしたんですよね?!」
「あ、あの君さ…」
「お願いします。一度でいいんですっ」
(そんな二度も三度も出来るかっ!ってか一度だって嫌だよ!)
内心、そう突っ込みつつ、俺は椅子から立ち上がった。
「困るんだ、こう言うの。もう戻った方がいい。じゃないと店員を呼ぶ事になる」
「レオ…っ」
「気持ちは嬉しいけど…。俺は結婚してるし今は奥さんとも一緒にいるんだ。君もそのくらいの常識は解かるだろ?」
俺が何とか優しい口調でそう言うとその子も小さく頷いた。
そして、「…すみませんでした…」と一言言うと、自分の席へと戻って行ったようだ。
「はぁぁぁあ…」
俺は思い切り溜息をついて椅子に座った。
そこへクスクスと笑い声が聞こえて顔をあげるとが笑顔で立っている。
「あ……!い、いつ戻ったの?」
俺は動揺しつつも笑顔を見せると、は済ました顔で俺の方に歩いて来た。
「つい、さっきよ?」
「え…?!」
「聞いちゃった。キスして下さいっていうの」
「ちょ…あ、あれはさ…っ」
「レオって、やっぱりモテるのね~」
は何だか楽しげに笑いながら俺を見ている。
「モ、モテてるとかじゃないだろ?!たまにいるんだよ、ああいう変わったファンが…」
「そう。でも…キスするのかな~?と思って見てたらしなかったら驚いちゃった」
「な、す、するわけないだろ?何?じゃあは俺があの子に本気でキスすると思ったわけ?」
俺は彼女の言葉に少しショックを受けた。
だがは首を振って笑顔を見せる。
「嘘よ。そんなこと思ってない。ただあの子が私とレオの出会いの時のこと言ってたからちょっと思い出しちゃったの。強引なレオのこと」
「あ、あれは…さ…」
俺は少しだけ顔が赤くなって視線を反らした。
だが、そのままの腕を引っ張って抱きしめる。
「ちょ…レオ…?!」
「大丈夫だよ…?この席は他の席から見えないようになってるだろ?」
「で、でも…」
は俺の腕の中でモゾモゾと動きながら落ち着かない様子だ。
そんな彼女が愛しくてそっと体を離すとの黒くて吸い込まれそうな瞳を見つめた。
「俺が…キスしたいのはだけだよ…?解かってるだろ…?」
「…レ、レオ…」
「きっと…初めて会った時も、そう思ったんだ…。だから…キスした…。そして…気付けばを本気で愛してた…」
「…………っ」
俺の言葉にの顔が真っ赤になった。
そのまま赤く熱を帯びた頬に軽く口付け、最後に優しく唇を重ねた。
今までも…何度も口付けているはずなのに…にこうしてキスをするたびに胸がドキドキする。
初めてキスした時のように、全身が熱くなってくる。
もし…さっきの子のような出逢い方をしてたなら、どうだったんだろう…?と、ふと思った。
あんな風に強引に迫ってこられたら…俺は、さっきのように引いていたんだろうか…
でも、そんな事を考えるのはバカらしい…
だって、きっとは、そんな事はしない。
いつでも…相手の事を…考えてくれる子だから…
そして、いつの間にか本当の俺を見てくれていた。
あの頃の俺は…に大事な事を教わった気がする。
人を好きになるという事…
本当の愛し方…
辛くて切ない想い…
そして…こんなにも…幸せな時間があるということ…
他にも…色んなものを俺に与えてくれた。
そして…こんなにも幸せに満ちた未来をも…
俺の人生は…と出逢ったことで…大きく変わったんだ。
彼女の唇を求めながら、心の中で神様に感謝をした。
何度も…何度でも…
俺に与えてくれた愛しい人の存在に…
>>Back
ACT.6...僕の傍に…>>
ちょっと久々に更新ですかね^^;
結婚後って何気に難しいんですよね~(苦笑)
しかし今回はジョーサンダーが男を見せました(笑)
さて念願の恋人OR未来の妻をGETなるか(笑)
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
|