【第二十一話】 予定調和-後編



「ほんと五条くんの考えてることが全然わかんなくてイライラしっぱなしで」
「わかるー!アイツ、ムカつくでしょー?私も学生時代からアイツの存在がストレスでストレスで…」

私が五条くんの愚痴を言い出すと、歌姫さんも凄い勢いで文句を言い出して、思わず吹き出した。
硝子ちゃんから聞いてはいるけど、歌姫さんの五条くん嫌いは本当らしい。

「私も高一の時、初めて会って、その時はほんと失礼で何コイツって思ってました」
「でしょー?そもそもアイツ、口の利き方、おかしいのよね。先輩の私に向かって弱いだのなんだの言って!」
「それは失礼ですね、ほんとに」
「まあ、アイツはほんと強いから仕方ないけど。 ―――あ、ここがと五条に用意してた部屋よ」

歌姫さんはそう言って扉を開けると、中へ案内してくれた。
泊まるにあたって、京都高内にある客間と呼ばれる部屋を用意してくれてたらしい。
長い廊下を何度か曲がりながら歩いて来たが、一人だと絶対に迷ってただろうな、と思った。

「うわぁ、何か高級旅館に来たみたい…」

室内へ入って驚いた。
東京の高専も和の空間だが、この部屋はさすが京都といった感じのインテリアが飾られ、畳張りの広い部屋の壁には高そうな掛け軸がかけてあり、フロアランプは大きな笹の葉の型を模した場所にボールシェードが乗っかるような形のモダンなものだ。
その横には着物が飾られ、窓は和風の丸窓を使用していて障子を開けると、外の豪華な庭が見えるようになっていた。

「綺麗…」
「気に入った?」
「はい、とっても。何か京都に来たって感じです」

そう言うと、歌姫さんは笑いながら、

「少しでも観光気分になれたらいいんだけど」
「もう充分です。ほんとは五条くんと観光してく予定だったんだけど、あの分じゃ無理そうだなぁ」
「私が案内してあげたいけど…まあここから連れ出して何かあっても嫌だしね」
「…いえ、新幹線で出かけるのも久しぶりだったから、移動だけでも楽しかったです」

五条くんのせいで、かなり心臓に負担がかかったけど、と思いながら、「この部屋は何ですか?」と、隣へ続く襖を開けた。

「………っ?」

その光景を見て、かすかに顔が赤くなる。

「あ、そこは寝室……って、何よ、これ!」

私の後ろから歩いて来た歌姫さんは、部屋の中を覗いた瞬間、驚いたような声を上げた。
そして、私もきっと同じ気持ちだった。
寝室だという、その部屋には、布団が二つ、並べて敷いてあったからだ。

「え、えっと……ここって五条くんと私が泊まるはずだった部屋、なんですよね」
「え、ええ。でも、もう一つ反対側にも部屋があるから、布団は別々にしてって言ったのに…誰よ、こんな勘違いしたの!ごめんね、。ウチの補助監督、ボケたのいるから」
「い、いえ…。それに五条くんは帰っちゃったし、私が一人で二つ使います」

そう言って笑うと、歌姫さんは安堵したように息を吐き出し、「アイツが帰ってほんと良かったわ…」と呟いた。(!)

「っていうか、代わりに私がここに泊まるわ」
「え?」
「ほら、一人にするなって言われたし」
「あ、でも五条くん大げさだから…」

何をあんなに心配してるのか分からないけど、楽巖寺学長と仲が悪い、と言うのは本当だったみたいだ。
あんなにハッキリ敵意剥き出しの五条くんを見て、少しだけ驚いた。
あの二人にどんな因縁があるのか、少しだけ気になってくる。

「あ、じゃあ、その生徒の制服の要望を書いた書類を持ってくるから、それを参考にしてみて」
「はい。あ、でも本人がいるなら話を聞きながらデザインした方が、より分かりやすいと思うんですけど…」
「あ、そうね!彼、私の受け持ちなの。じゃあ、ちょっとその生徒も呼んで来るわ。多分まだ起きてると思うし。あ、鍵はかけといてね」
「はい、お願いします」

そう言うと歌姫さんは忙しそうに部屋を出て行った。
一人になったところで、軽く息を着くと、布団の上に寝転んで両手を思い切り伸ばす。
少し緊張して体全体が硬くなっている気がする。

「は~何か疲れたぁ…」

知らない人に囲まれるというのも、思った以上に神経を使う。

(五条くん…今頃帰りの新幹線かな…イライラしてたけど大丈夫かなぁ)

ふと何度も連れて帰ろうとしてくれた五条くんを思い出す。
あの場の空気を考えると、この呪術界も全員が友好的とは言えないんだ、と思った。

「それにしたって何であんなこと…」

最後に頬へキスをされた事を思い出し、顏が熱くなる。
あんな大勢の人が集まってる中であんな事をしなくてもいいのに。
まあ皆もいい感じで酔っていて、こっちを見てたかどうかも定かじゃないが、気分的に恥ずかしいものは恥ずかしい。
ドレスの事といい、ほんと最近の五条くんは何を考えてるのか分からない。

(まさか、ほんとに硝子ちゃんの言うように私の事を好……)

いや、意味深な事は言うくせに、そういった肝心なことは言ってくれないんだから、それはないか、と首を振って起き上がった。

「あ、いけない。鍵かけなきゃ」

歌姫さんに言われた事を思い出し、私は寝室を出ると、ドアの方へ歩いて行った。

「お疲れさん」
「――――ッ」

いつの間に入って来たのか。
ドアの前には、あの禪院直哉が、笑みを浮かべて立っていた。
スーツ姿のままなのを見ると、パーティ会場から直接来たようだ。

「な…何ですか?」

ゆっくりと歩いて来る直哉に嫌な空気を感じて、私は少しずつ後ずさった。

「何て、久しぶりやから挨拶しに」

直哉はそう言うと、肩を竦めながら、

「そう言えば…悟くん帰らはったんやね」

と微笑んだ。

「何や、特級過呪怨霊が出た、とか」
「……そう、みたいです」
「呪怨霊って言うたら滅多にお目にかかれんバケモンやし、心配やねえ、ちゃん」
「滅多に…って…」
「ああ、知らん?仮想怨霊などの呪いと違て、呪怨霊はマジもんの死んだ人間の怨霊やし、ヤバさのレベルが違うねん」

直哉はそう説明しながら、室内を見渡すと、ふと奥の部屋へ目を向けた。

「へえ、ちゃんと悟くんて、そういう関係やったん?」
「え?!あ、こ、これは違います…っ」

布団が二つ敷いてある部屋を見て、ニヤリと笑う直哉に、慌てて首を振る。

「補助監督さんが間違えたみたいで…」
「そうなん?でもあの悟くんが一緒に住んでまで守ろうとしてる子ぉやからってんで、京都の連中は結構、誤解してる奴ら多いけどなあ」
「え…そ、そう…なんですか?」

護衛の話は知ってるはずなのに、そんなデマが流れてるんだ、と少しドキっとした。
ああ、そうか。パーティ会場でのあの空気は、そういう誤解もあってのものだったのかもしれない。

「えっと私と五条くんは友達なので、そういう誤解は―――」
「友達?」
「そう、ですけど…」
「でもさっき…ほっぺにキス、してはったやん」

ニヤリと笑う直哉の言葉に、顏が熱くなった。
見られてたんだ、と思うと、一気に恥ずかしくなる。

「あ、あれは…五条くんがふざけただけで…」
「まあ、悟くん、女の子には誰にでもあんな感じやし、そうかもしれへんなぁ」
「………っ」

誰にでも、と聞いて、胸の奥がぎゅっと何かに捕まれたような痛みが走った。
そうかもしれない、でも違って欲しい、と思っていたからこそ、少しショックだった。
ジクジクとした焼けるような不愉快な痛みが、お腹の奥にじんわりと広がっていくような感覚だ。
目の前で笑みを浮かべている直哉のその視線すら、今は不快に感じて来る。

「あ、あの…何の、用ですか?」
「ん?ああ、そうそう。ちゃんて、あの樹の娘やってんね。びっくりしたわ」
「え?お父さんのこと…知ってるんですか?」

いきなり父の名を出され、驚いた。
何故この人が?と思っていると、直哉は楽しげな笑みを浮かべている。

「そら特級までいった術師は誰でも知ってるわ。まあ、でも…ある呪詛師に力奪われて、引退しはったんやろ?もったいなー」
「……力を…奪われた?」
「あれ、知らんかったん?自分の父親のことなのに」

直哉は多少驚いたように私を見ている。
でも私はその初めて聞く話に驚いて、何も応えられなかった。

「おんねん。人の術式を盗む術式を持ってる呪詛師が。ちゃんのパパはソイツと対峙して、その力を奪われた。ついでに呪力もな」
「……呪詛師…」
「そぉや。ちゃんの元カレと一緒 ♡」
「―――ッ」
「あれ、その顔…まだ忘れてへんの?」
「や…やめて…下さい」

声が震えた。
楽しげに、私の父や、過去の話をしてくる直哉の無神経さに、どんどん不快な気分になっていく。
その時、不意に腕を引き寄せられた。

「俺が忘れさせたろか?」
「や…放してっ」

いきなり抱きしめて来た直哉に驚き、体を離そうともがいた。
それでも直哉の力は強くて、思い切り腰を抱きよせられる。

「やだ…っ放して!」
「もしパパに呪力があるうちにちゃんが産まれてたら、ちゃんにも術式が刻まれてたかもしれへんね。ほんで、そうなってたら…」
「……っ?」
「恋人に殺されかかる、なんて悲惨な事にはならんかったのに」
「――――ッ」
「非術師であるがゆえに、愛しい男に殺されそうになるなんて、悲恋やなあ?可哀そうに」

カッと来て、力の限り、直哉の体を突き飛ばすと、直哉は不機嫌そうな目を私に向けた。

「何や、慰めたろう思たのに……ちゃんもそういう女、なんやねぇ」
「……出てって」
「女が舐めた口、きくなや」
「きゃ…っ」

突然、声のトーンが変わった。
同時に直哉は、私の腕を掴むと、凄い力でその場に押し倒す。
背中を強く打ち、一瞬息が出来なくなった。

「……っ」
「女は大人しゅう男の言うことを聞いとけばええねん」
「…ゃ…」
「そもそも悟くんをどうやってたぶらかしたん?何や、最近の悟くん変わってもーた気がすんねんけど。ちゃんのせい?」
「な…何…」

上から体を抑えつけられ、その痛みに顔をしかめる。
禪院家当主の息子だという、この直哉は、どこか歪んだ人間のように思えた。

「女ごときで変わるような男とちゃうねん、悟くんは。せやしちゃんは邪魔せんと、はよう悟くんの傍から消えてや」
「ど、どけてよ…っ」
「まだそんな口きくんや」

そう言うと、いきなり顔を近づけて来る直哉を見て驚いた。
どうにか顔を背けながら、体を押しのけようと手で直哉の肩を押す。
その時、背後から誰かが入って来る気配がした。

「何してるの?直哉」
「……っ」

直哉が驚いたように私から離れると、「麗良…」と呟いた。
体が自由になった私は、すぐに直哉から離れると、今、部屋に入って来た人物を見て息を呑んだ。

「出て行きなさい。そんなバカな真似して当主であるアナタのお父様に恥をかかせたくないでしょ?それとも五条悟に殺されたいのかしら」
「…別に本気とちゃう。ちょっとしたおふざけや。なあ?ちゃん」

ヌケヌケとそんな事を言って来る直哉を睨むと、彼は面白くなさそうに舌打ちをして部屋を出て行った。
直哉がいなくなり、ホっと息をつくと、麗良さんに、「…ありがとう御座います」とお礼を言う。
彼女は溜息交じりで私を見ると、「たまたま通りかかっただけよ」と肩を竦めた。

「ああいう女性蔑視な男が嫌いなだけ」
「…怖い、人ですね」
「小さい頃から天才だの何だのとチヤホヤ育てられた結果がアレよ。自分以外を見下す事しか出来ない可哀そうな男」

麗良さんは吐き捨てるように言うと、私の方へ歩いて来た。
そして赤くなっている肩を見て、「大丈夫?」と心配そうに聞いて来る。
直哉に強く押さえつけられた肩には、打撲のような跡が残っていた。

「あ…これくらい大丈夫です…」
「ダメよ。こんな跡、残したまま五条くんのところへ帰せないわ。彼、めざといから、すぐ気づく」
「あ…」
「直哉のことがバレたら、それこそ面倒なことになりかねない」
「面倒な…こと?」

どういう意味だろう、と思いながら麗良さんを見ると、彼女は苦笑しながら、

「聞いてない?禪院家と五条家は昔から関係が良くないの。あの直哉がアナタに乱暴したって分かったら五条くん、何をするか…」
「……っ」

そこで思い出した。
前に高居さんに襲われかけた時に見た、五条くんの事を。
あの時の五条くんは本気で怒ってた。
高居さんを殺してしまうんじゃないか、と…怖くなった。
もし直哉の事も知られてしまったら、何かしらモメる原因にはなるかもしれない。

「五条くん、最近は大人しくしてるけど、元々は気性の激しい人よ。大切に思ってる子が傷つけられたと知ったら直哉を殺しかねない」
「え…た、大切に思ってるっていうか…友達ってだけだと思いますけど…」
「何言ってるの。さっきだってアナタのこと、あんなに心配してたじゃない。私には友達以上に見えたけど」
「ま…まさか…。さっき直哉さんも、五条くんは誰にでも同じみたいなこと言ってたし…」

さっきの言葉を思い出し、また胸が痛くなる。
そんな私を見て、麗良さんは困ったような顔で笑った。

「アナタも結構鈍感ね」
「え…?」
「まあいいわ。とにかく傷を治してもらいましょ?反転術式を使える術師がいるから、一緒に来て」
「え、で、でも歌姫さんがここに戻って来るので―――」
「ああ、歌姫さんには私が電話しておく。彼女にもそれバレない方がいいわ。もしバレたら五条くんに話すだろうし」
「あ、そ、そっか…」

確かに、五条くんに私のことを頼まれた歌姫さんなら、この事を話してしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。

「あ、じゃあ…術師の方に治療お願いしてもいいですか?」
「もちろん。案内するわ。来て」

麗良さんはそう言うと、部屋を出て行く。
私もその後からついて行くと、麗良さんは客間のあるエリアを出て、校舎らしき建物が見える方向へ向かっているようだった。
外はほんのり明るく、庭先も月明りに照らされ、少しだけ幻想的な空間に見える。
それを眺めながら麗良さんについて行くと、彼女は建物から外へ出て、「こっちよ」と言った。
広い庭先に出ると、雲一つない夜空に、綺麗な満月が光っている。
その明かりを頼りに、薄暗い庭の小道を、麗良さんについて行きながら、外気の冷たさに体が少し震えた。
この季節に肩を出したドレスで外を歩くのは、かなり寒く感じる。
建物の外へ出るなら羽織るものを持ってくれば良かったな、と少しだけ後悔しながら、前を歩く麗良さんへ声をかけた。

「その術師の方は、まだ学校に?」
「ええ」
「でも、校舎は真っ暗ですけど…」
「医務室はあの裏側にあるの」

そう言いながら、足早に庭の間の私道を進んでいく麗良さんに、ふと違和感を覚えた。
彼女はさっき通りがかった、と言っていたが、あの客間しかないエリアに、どんな用があったんだろう。
今日は私と五条くんしか泊まらないと、歌姫さんが話してたはずだ。
なら、麗良さんは私に会いに来たことになる。
五条くんが帰ったのは、彼女もあの場にいて見てたはずだ。

(なら何で通りがかった、なんて嘘を…)

そんな事を考えながら、本当に彼女について行っていいのか、と不安になった。

"誰も信用しないで"

その時、不意に五条くんに言われた言葉を思い出す。

(そうだ…そうハッキリ言っていた。歌姫さんは信用できるけど、他の奴らは誰も信用するな…あれはそういう意味のはず)

そう気づいた時、心臓が速くなっていくのを感じた。
手にじっとりと汗が滲む。
前を歩く麗良さんに気づかれないよう、元来た道を戻ろうか、でも今は高いヒールを履いている。
万が一の時、走って逃げるという事が出来ない。いっそ脱いでしまおうか…と、そう考えていると、彼女がふと足を止めた。

ちゃん、どうしたの?」
「あ、あの…やっぱり私―――」

戻ります、と言おうとした時だった。
後ろでふわりと風が動く気配を感じ、首筋にそれが触れた時。
すでに背後には誰かの気配。
一瞬で背筋に冷たいものが走った。

「…久しぶりだね、

背後から聞こえた、その、声が引き金となり、過去の記憶が一気に頭へ流れ込んでくる。
後ろからゆっくりと伸びて来た両手が、私の体に回され、抱きしめる、その腕の感触さえ、ハッキリと。

「げ…夏油…くん?」

自然と足が震える中、それでも振り向かずにはいられなかった。

「会いたかったよ…」

ゆっくりと後ろにいる人物の顔を見上げると、そこには懐かしい、彼の笑顔があった。
まるで、10年前に戻ったかのような、そんな錯覚をしそうになる。
だが、彼は昔とは違い、髪を下ろし、何故か五条袈裟を着ていた。
その見慣れない姿を見た時、一気に現実へと引き戻される。

「な…何…で…」
「ああ、何でここにいるかってこと?麗良は私の家族のうちの一人でね」
「……家族?」
を連れて来るよう頼んだ。もちろん、呪力を感知する警報も切ってもらってね」
「……っ」

(麗良さんが、スパイ―――?)

その事実を知った時、意識が飛びそうになった。

「大丈夫?フラついてる」

軽い眩暈がしてフラついた私の体を、夏油くんはそっと支えた。
その手の、感触に、また視界が回るような感覚になる。

「…は…放して…」

何とか彼の手を振り払おうとするが、体に力が入らない。

「悟が君を残していくなんて意外だったけど、この10年、待った甲斐があったよ」

優しく、なぞるように、肩から腕へ、彼は指を滑らせる。

「……や…っ放して…」

もう片方の手で、私の唇へ触れる。

「まだ…悟とは前の関係のまま、なのかな」
「…っ?」
「それとも、は悟を受け入れた?」
「な…何の…話…?」
「まあいい。どちらにしろ、君を悟に渡す気はない」

夏油くんの言葉に、心臓が音を立てる。

「そんなに怯えなくていい」

優しく微笑む彼の背後から、不気味な呪霊が浮かび上がる。

「一瞬で終わるよ――――」

月明りに浮かぶ、その化け物を、私はただ、見つめる事しか出来ない。
ああ、今度こそ、死ぬんだ―――そう、思った。
その瞬間、背後で、何かを叩く、音が聞こえた気がした―――。

「夏油…とか言ったか」

気づけば、私は立っていた場所から、ずいぶんと離れた場所に、いた。
前方に立ちはだかる、見知らぬ男が、言った―――。

「―――どんな女がタイプだ?」




合間の繋ぎ的なお話と、五条編はこれにて終了。次回から0編に入ります。