16章 / 月の行方(2)


綺麗な細い指が包帯を器用に巻いて行く。それをはどこか気恥ずかしい気持ちで見ていた。

「はい、でけた。きつきつ巻いときましたんで、これで濡れても多少は大丈夫どっしゃろ」
「ありがとう御座います…」
「お風呂の後にもう一回、新しいのと変えますよってに」

新しく包帯を巻き直してくれた女将に、は照れ臭そうに微笑みながら、薬箱を片づける彼女を見ていた。
女将の動作一つ一つから女らしい柔らかさが滲み出ていて、自分とは違うその姿を少しだけ羨ましく思う。

「でも年頃の娘さんがこない怪我するやなんて…護廷十三隊ゆうところは、ほんまに大変なんどすなぁ」
「い、いえ…こんな怪我、大した事ありません…いつもの事ですし…」
「何言うてはりますのん。大した事ありますえ?それもいつもの事て…嫁入り前の娘さんをあまりコキ使わんよう、ギンちゃんに言わなあきまへんわ」

同じ女としてなのか、女将はそう言いながら廊下に続く襖を睨んでいる。
ギンは先にお風呂へ向かった為、今は座敷にと女将の二人きりだ。
怒っている女将を見ながらは苦笑すると、小さく首を振った。

「いえ…市丸隊長にコキ使われた事なんかないんです。普段は本当に甘やかされてるくらいで…」
「女は甘やかされるくらいが丁度ええんどす。でも…そうどすかー。ギンちゃんは隊長さんのお仕事、きばってはるんやねぇ」

「ここへ顔出してもお仕事の話は一切してくれはらへんから…」と、女将はどこか寂しそうに微笑む。
その姿から、どこかギンに対する親愛の情みたいなものを感じ、は小首を傾げた。
のその様子に気付いた女将はふと顔を上げ、「ああ…」とかすかに苦笑いを零す。

「ギンちゃんはちっさい頃から見守うて来たさかい、何や自分の息子みたいに思てますのんや」
「息子…ですか?でも女将さん若いですし隊長の母親っていうよりお姉さんみたいです」
「嫌やわぁ。おべんちゃら言うても何も出てきやしまへんえー。うちはこう見えてギンちゃんの倍は生きてますさかい」

女将はの言葉に楽しげな笑い声をあげ、照れ隠しのように手をひらひらと振っている。

「最初にここへ連れられて来た頃、惣右介さんから面倒見てくれ言うて頼まれて…。まあ最初はなんぎなボンでほとほと手ぇ焼きましたわぁ」

女将はその頃の事を思い出したのか、苦笑いを浮かべた。

「ギンちゃんは親御さんもいはらへんし一人で生きて来た子ぉやから、護廷十三隊の隊士として無作法な事はないように、と、うちが作法を教えたんどす」
「…そう…だったんですか。知らなかった……」

考えてみればはギンの事を何も知らないのだ、という事に気付き、ふと胸が痛くなった。
乱菊と幼馴染だということ以外、いつ護廷十三隊に入ったのかも、両親がいなかった事も、何も知らなかったのだ。
僅かに俯いたを見て、女将は優しい笑みを浮かべると、

「ギンちゃんも余計な事はペラペラ話すクセに自分の事をよぅしゃべはらへんでしょう?最初はうちにもそうどした。その上何を教えても"つまらん"の一言でサボってばかりで…」
「それは今もあまり変わってませんけど」

普段のギンを思い出しながらが言えば、女将は口元に手を当てて苦笑いを浮かべた。

「根っこは変わりゃしまへんなぁ。せやけど…何故か惣右介さんの言わはる事はよぉ聞いて。器用な事も手伝ってか、すぐに大概の作法は身につけましたんえ」
「そうなんですか…」
「へぇ。その甲斐あってか、ギンちゃんの得意なものは裁縫で針に糸を通すんが、えらい上手どした」
「えぇ!市丸隊長が…お裁縫…ですかっ」

普段の姿から想像の出来ない話を聞き、は驚愕したように声を上げた。
そんなの反応に、女将もくすくす笑っている。

「ギンちゃんはああ見えて、なかなか器用なんどすえ」
「そ、それは分かるんですけど…好物の渋柿の木を植えて上手に育ててるくらいなんで…でも縫物してる姿は想像できません」
「あらまあ、渋柿植えてる話はほんまどしたかー。嫌やわぁ、うちは冗談やー思てましたわぁ」

「―――そら紅ちゃんがボクの言う事はぜーんぶ冗談や思いこんでるからやろ」

「い、市丸隊長…っ」

突然聞こえた声に振り向けば、いつの間にか襖が開けられ、そこには寄りかかるようにしてギンが立っていた。
ギンは死覇装を脱ぎ、今は女将が誂えたという紺鼠に染められた綿ちりめんの浴衣を着流していて、普段とは違う雰囲気だ。
風呂上がりだからか、色素の薄い髪がしっとりと濡れているギンの立ち姿からは大人の男の色香すら感じ、は照れくささを隠すように俯いて所在なさげに座っていた。

「盗み聞きやなんてえげつない事しはってから…」
「ボクの話題してるのに入るに入られへんやん。それも知られたないネタ話されてる時は特になぁ」
「そら、すんませんどしたなぁ。余計なこと言うて。――――ほな、さん」

ギンの苦情に苦笑いを浮かべた女将は、俯いたまま座っているへと声をかけた。

「お風呂どうぞ入らはっておくれやす。その間にお食事用意しときますよってに」
「ボクは一杯やりながら待っとるし、ゆぅくり入ってき」

ギンは女将の用意した冷酒を早速注ぎながら、お猪口を軽く持ち上げてみせた。

「は、はい。じゃあ…行ってきます」
「案内致しやす」

女将は座敷を出ると、の先を歩き、奥の浴場へと案内する。
夜になって離れの辺りはいっそう静けさを増し、廊下はシュッシュッという二人の足袋がこする音しか聞こえない。

「あ、あの…ここには私達以外にお客様は泊ってないんでしょうか」

ふと気になって尋ねると、女将は足を止めないまま、小さく頷いた。

「へぇ。昔からこの離れはうちの個人的なお客様しか通しまへん。元々常連さんに寛いで欲しゅうて自宅を改造して造ったもんどすのんえ」
「そうなんですか…」
「静か過ぎて落ちつきまへんか?若い方には少々窮屈かもしれまへんなぁ」
「い、いえ。いつも賑やかな場所で暮らしてるので、たまには静かなところもいいなあと思って。お庭も凄く素敵ですし」
「おおきに。ほな安心どす。お仕事の事は忘れてノンビリしはっておくれやっしゃ。――――ここがお風呂どす」

廊下突き当たりを右に曲がると"湯"と書かれた暖簾が見えて、女将はそこの引き戸を開けた。

「浴衣は良ければこれをどうぞー。うちが若い頃に着てたもんどすし、今時じじむさいかもしれまへんけど寸法直してありますさかいに」
「あ…ありがとう御座います」

綺麗な絞りの浴衣を渡され、は笑顔で受け取った。触った感じがとても心地いい。
瀞霊廷内でも夏には浴衣を売りだす事もあり、色んな行事事の時に着る機会もある事からも多少の知識がある方だ。
女将は"じじむさい"――あか抜けない――と言っていたが、この浴衣の生地に触れただけでとても高価だと分かるし、柄も大正ロマン風、今でいえばレトロな感じが素敵だった。

「ほな、うちはお食事の準備に向かいますけど、ギンちゃんも晩酌しはるやろうし、焦らんとゆっくり入っておくれやす」
「はい。あ、あの…ギン太のご飯までありがとう御座いました」

出て行こうとする女将にそう声をかける。
先ほどギン太用の餌もきちんと出してくれたのだ。

「めっそうもありまへん。可愛らしいワンちゃんどすなぁ。よーけ食べて満腹やさかい、コロリと眠ってしもて」
「まだ子供だからなのか、寝てばっかりなんです」
「生きてるもんは子供のうち誰でもそうどすえー。うちの子ぉもちっさい時はよーけ食べてよーけ寝てましたわぁ」
「お子さんがいらっしゃるんですか?」
「へぇ。娘が一人。今はここの若女将どす」

女将はそう言って、「今でも手を焼きますんよ」と苦笑した。

「ほな、ごゆっくり」
「あ、はい。ありがとう御座います」

女将は引き戸を静かに閉めると、再び廊下を歩いて行った。
その様子を聞きながら、はキョロキョロと脱衣所を見渡す。
全て檜で出来ている為、ほんのり檜独特のいい香りがした。
死覇装を脱いで風呂場へと続く引き戸を開ければ、庭の奥に作れられたそこは全体が竹に覆われた奇石の露天風呂となっている。
夜空に浮かぶ綺麗な満月までが見えて、"雪見酒"ならぬ"月見酒"が出来そうだ。

「…素敵」

濡れた石床で足を滑らせないよう慎重に歩きながら洗い場に向かうと、そこで軽く体を洗う。
蒸し暑くなる初夏の中、長い道のりを歩いて来たせいで、かいた汗を流すと少しはスッキリした。
腕の傷も、女将がきつく包帯を巻いてくれたおかげで沁みる事はなく済んだ。
そのまま洗った髪を手ぬぐいで巻いて、湯の中へ浸かると、は盛大に息を吐き出し、夜空に浮かぶ満月を見上げる。
ここ2〜3カ月は心が休まる事もなく、眠れない夜が続いていたせいで、こんな風にゆっくりと月夜を楽しむゆとりもなかった。
眠ると死んでいった仲間達が毎晩のように夢に現れるのだ。助けてくれ、と血に濡れた手をの方へと差し出してくる。
そんな悪夢を見たくなくて寝ない夜が続く事も多かった。


―――――!逃げろ…!!


今でもあの声が耳から離れない。あの夜は、全てがまるで悪夢のようだった―――――










流魂街を北東から東南へ野営をしながら移動して三日が経っていた。
その間、噂にある虚が出現する気配もなく、この日も太陽が沈んだ時点で野営をする事になった。
松明を燃し、二つほど天幕を張り終えると、交代で三人が見張りに立つ。
この夜もいつも通りの野営となるはずだった。

「――――はい、橘さん。夕飯です」
「おう、悪いな」

食事を運んできたからお椀を受け取り、橘は軽く腰をかけた。
まずは部下に見張りを頼み、自分は夕飯を先に済ませた後、この辺りの見周りに行く予定だ。
も自分の分を持ってくると、橘の隣に座り、軽く一息ついた。

「でもアレですね。三日も同じメニューだと飽きますね」

は塩おむすびを口にしながら苦笑する。橘もお椀を口に運びながら「確かにな」と苦笑いを零した。
瀞霊廷を出発してからこの三日。朝昼夜と、隊士たちはトン汁におむすびだけしか口にしてないのだからそれも仕方のない事だ。

「こればっかりはな。材料を多く持ってきたところで長くは持たん。それに荷物になるだろう」
「そうですけど…トン汁の具もだんだん減って来て、これじゃただの味噌汁ですよ」
「まあそう言うな。明日には流魂街に近い場所まで戻るんだしな。その時に街で残り三日分の材料を調達出来る」
「そうだった!今度は食べても飽きない料理がいいなぁ」
「贅沢言うな。この設備じゃ簡単な物しか作れないのは知ってるだろう」

の愚痴に笑いながら橘はおむすびを頬張った。
野営中の食事は女性隊士の仕事であり、飯盒で米を炊き、持ってきた一つの鍋で何か一品料理を作るという形の為、それほど凝った料理など作れないのだ。

「ご馳走さん。――――よし、と、。俺は今から山野第六席と有吉、五井を連れ、この一帯の見周りに行ってくる。お前は高居七席と食べ終わったら見張りを変わってここを守ってくれ」
「分かりました」
「今日まで変わった事がなかったからと言って油断するなよ?探査能力は全開にして何かあればすぐに霊圧を飛ばせ」
「はい。橘さんも気をつけて」

天幕を出て行こうとする橘に声をかけると、橘も軽く手を上げ、「お前もな」と一言残し出て行った。
外からは数人の隊士達がと同じように「副官補佐、お気をつけて」という声をかけているのが聞こえて来る。
部下達を預かったは急いで食事を終えると、すぐに天幕の外へと出た。

「あ、さん。お食事はお済みですか」
「ええ。高居くんも交代で食事して。暗くなる前に」
「分かりました」

天幕の周りにはズラリと隊士達が囲み、敵がどこから出現してもいいように目を光らせている。
その部下たちに交代で食事を摂るよう伝えると、は早速この近くに虚がいないかどうか霊圧を探ってみた。
しかし今のところ引っかかるようなものは何もなく、は天幕の正面にある持ち場へと着く。
三人ほど橘と見周りに行っていて、今はを除き、十人中、三人が見張りをし、高居七席と隊士一名が食事休憩に入ったようだ。
今、三番隊には四席がいない為、副官補佐の橘がいなければ五席であるが部下達をまとめなくてはならない。
当然、部下達を守るのも役目のうちだ。だからこそ見張りをしながらも、コソコソおしゃべりをしている女性隊士二人を見て、は僅かに息を吐いた。

「あなた達。おしゃべりは休憩の時だけにして。それと、そんなにくっついてたら後方がガラ空きになるわ。一人はちゃんと後ろを見張って」

周りに気を配るでもなく、距離を開けて立たず、くっついてヒソヒソと無駄話をしていた女性隊士を、は上官として注意した。

「遊びで来てるわけじゃないのよ」

しかし女性隊士二人はあからさまに不貞腐れた表情を出し、返事もしないまま一人が天幕の後方へと歩いて行く。
女性隊士達から好かれていないのは知っている。は特に相手をせず、黙って自分の持ち場へと戻った。
だがもう一人の女性隊士が怖い顔で近づいてくるのに気付き、は軽く溜息をついた。

「自分の持ち場を勝手に離れないで」
さん」
「…何?」

その女性隊士はが注意した事を気に留めるでもなく、怖い顔で目の前に立つと、

「出発前に市丸隊長が抱いていた仔犬はさんが隊長に押し付けたって本当ですか?」
「……誰から聞いたの?そんな事」
「見た人がいるんです。修練場でさんが仔犬を拾ってるのを…。その仔犬を隊長が抱いてるなんて、さんが押し付けたんじゃないかって皆言ってます」

その女性隊士の目はきつい視線でをとらえる。だがには分かっていた。
彼女は仔犬を預けた事を怒っているのではなく、ギンと親しくしているが気にいらないのだ。
そんなものは相手の気持ちなのだからはどうする事も出来ない。好き嫌いとはそういうものだ。
だがにはどうしても上官として、許せない事があった。

「それは任務中に話さなきゃいけない話なの?」

が一言そう言えば、その女性隊士はムッとしたように顔をしかめた。

「私の事が気にいらないのは仕方ない。でも今、私達はどんな能力を持っているかも分からない虚を追っているのよ」
「それは―――――」
「そんな危険な任務に就いている時に犬の話なんかする余裕ないはずでしょ?」

は女性隊士の言う言葉を聞きながら、内心どう理解してもらおうか、と考えていた。
しかしその隊士は徐に不満げな表情を出して、

「…何よ。自分だって公私混同してるじゃない…犬の事だってそうだわ。隊舎に連れて来るなんて…市丸隊長は優しいから文句も言えずにいるだけ――――」

隊士が食ってかかってくる様子に、も反論しかけた。
だが次の瞬間――――月明かりが陰って目の前の隊士の背後に巨大な虚が姿を現し、その意表をついた出現に大きく目を見開く。

「――――っ危ない…!!」

咄嗟に動けたのは奇跡に近かったかもしれない。
片手で隊士を突き飛ばし、もう片方の手で斬魄刀を抜く。
虚の振りおろした大きな爪を受け止めた瞬間、キィンッという金属音が響き、ものすごい衝撃が腕を伝わって来た。

「…くっ」
「…さん…!!」

虚の重たい攻撃には思わず膝をつく。だがその体制で後ろにいる隊士に向かって叫んだ。

「ここは私が…!あなたは橘さんを――――」
「……きゃぁぁぁっ!!」
「「――――――」」

呼んできて、と言おうとした瞬間、後方で悲鳴が聞こえた。何とか目の前の虚の爪を弾き、振り返る。

「…もう一体いたの…っ?!」
「あ……」

先ほどまで強気な態度だった隊士が声を震わせ、あとずさる。
も言葉を無くし、もう一体の虚が後方を見張っていた女性隊士の体を鋭い爪で貫いている光景をただ見上げていた。
気付けば最初に出現した虚を含め三体が天幕の周りを囲んでいる。なのに姿を見せるまで霊圧を感じなかった事をは疑問に思った。

「あ…さん…!彼女が――――!」
「あの子はもう助からない…!いいから刀を抜いて!戦うのよ!!普段から橘さんと虚退治してるんでしょっ」
「で、でもこんな虚、見た事ありません…っ」
「確かにね…。こいつら自分の霊圧を消せるんだわ…。前に檜佐木さんが話してたのと同じかも…」

霊圧を自ら消し、誰に気付かれる事なく、死神に忍び寄り牙をむいた目の前の虚達を、は実際に見るのは初めての事だ。
同時に、自分達が探していた虚はこいつらだ、とは確信した。

さん…!!」

騒ぎを聞き、天幕の中から休んでいた七席である高居と、もう一人男隊士の二人が飛び出してきたが、目の前の虚を見上げ、唖然とした顔でを見た。
その一瞬の隙で虚達が攻撃を仕掛けて来る。

「――――破道の三十一!"赤火砲"!!」

≪ぐあぁぁぁっ≫

「あんた達もボケっとしてないで!」
「「は、はい…!!」」

隊士達を攻撃しようとした虚に鬼道を放ち、同時に後方へと飛ぶ。
詠唱破棄の為、それほどの深手を負わせる事は出来なかったが、一瞬怯んだ隙に全員で虚達から距離をとる事は出来た。
一体は体を分裂させる事が出来、他の二体はこれまでの獣のような姿をした虚とは違い、若干人型に近い。
それでいて三体ともが自らの霊圧を消せるのか、動きがつかみづらかった。

(…報告の通り確かに今までの虚とは形態も能力も違う…。それに攻撃を受け止めて分かったけどパワーすら圧倒的に強い…このままじゃ――――)

攻撃を交わしながら、は何か打開策がないかと考えた。
しかし他の隊士達も入れて、二人で一体と戦うのがやっとだ。ノーマークになった虚の攻撃を全て回避しながら戦うのは難しい。

(橘さん…!早く戻って来て…!)

虚の攻撃を斬魄刀で受けながら、必死に霊圧を飛ばす。
その時、後ろで「ぎゃぁぁっ」っという隊士の悲鳴が聞こえ、は慌てて振り向いた。

「高居七席!!」

一目で助からないと分かった。分裂する虚の上半身が隊士の体に巻きついて、その体を剣山のように鋭く変化させたのだ。
高居の体は一瞬で串刺しになった。

さん…!こいつらすばしっこくて強い…!!我々だけでは無理です!」

もう一人の男の隊士が青い顔で叫ぶ。その時、後方で戦っていたあの女性隊士が地面の小石に躓き、派手に転んだ。
そのすぐ後ろには巨体の虚が迫っている。

「きゃぁぁ――――」
「…危ない!」

は瞬歩を使い、瞬時に女性隊士の前へ出ると自らの斬魄刀を解放しようと刀をかざす。
だがその横から別の虚が攻撃を仕掛けて来て、その爪がの腕を斬り裂いた。

「……あっ!」
さん…!!」

深くえぐられ、その激しい痛みに思わず膝をつく。傷口からはボタボタと赤い血液が溢れては地面に染みを作った。
だが次の攻撃を喰らう前に、は怪我をしていない方の手で"蒼火墜"を放ち、虚を分散させる。

「…くっ」
さん…!その怪我で鬼道は無理だわ…!」
「何言ってるの!このまま黙って殺されるつもり?!」
「で、でも私達だけじゃ……っ」
「そのうち橘さんが助けに来てくれる!それまで何とか持ちこたえるの!」
「でも――――」
「あなたも護廷十三隊の隊士でしょう!簡単に諦めないで戦いなさい!!」

は死覇装の袖を口に挟んで破り取ると、それを傷口にきつく巻き付けた。
そして斬魄刀を構え、今度こそ始解の句を叫ぼうとした―――その時、「うわぁぁっ」という悲鳴が聞こえ、後方で戦っていた男の隊士が虚の腕に掴み上げられている。

「……っ」

舌打ちをし、助けに行こうとしたが、凄い勢いで行く手を別の虚に塞がれる。
その虚は目がけて、その大きな腕を振りおろそうとした。

さん、逃げて―――――」

そう叫ぶのと同時に、あの女性隊士がの前に飛び出し、一瞬で虚の腕に弾き飛ばされていく。

「……日向さん!!」

そう叫んでから、彼女がそんな名であった事を思い出した。
日向は大木に激突し、口から血を吐いて地面へ倒れる。その光景をは言葉もなく、ただ見ていた。

「――――さん、後ろ!!」

その時、虚に掴まれていた男の隊士が叫ぶ。ハッと息を呑み振り向けば、そこには二体に分かれた虚がを見下ろしていた。

「……くっ!"月の光、宿りて"―――――」

回避が間に合わないと判断したは斬魄刀の解放をしようと始解の句を読もうとした。
だがその瞬間――――「ぎゃぁぁぁぁっ」
捕まっていた隊士が虚の手で握り潰されるのが視界に入り、思わず息を呑む。
次々と部下達が目の前で殺され、傷ついて行くのを見ながら、は自分の無力さに、刀を握る手が震えた。

(何で…どうしてこんな…!)

その時、背後にいた虚が、目がけて鋭い爪を突き出し、間に合わない、とが斬魄刀で受け止めようとした瞬間――――


「――――"颶風ぐんぷうやせ――烈火丸れっかまる"!!!!」


始解の句と共に、激しい熱風が虚を襲い、その腕が一瞬にして灰と化したのをは言葉もなく見ていた。

!!大丈夫か!」
「……橘さん!!」

その声に顔を上げると、橘が部下三人と走ってくるのが見える。その姿に、心から安堵の息を漏らしたのと同時に、悔しさで涙が浮かんだ。
橘と他の隊士はそれぞれ斬魄刀を解放しながら虚に攻撃を仕掛けている。
だが一体が傷ついたのと同時に、その虚達は一瞬で姿を消した。

「…ちっ。逃げられたか…」

忽然と消えた虚を見て、橘は悔しげに呟くと、フラフラと立ち上がったの方へ走って来た。

「大丈夫か?怪我してるじゃないかっ」
「…こんなの大した事ありません…それより…日向さんは――――」

男の隊士二人は形も残らないほどの状態だったが、日向は地面に倒れているだけだ。
命だけは助かっていて欲しい、と願いながら橘に尋ねた。
しかし他の隊士が確認しに行き、静かに首を振った。

「……全身の骨が砕けています。おそらく内臓も破裂しているかと…」
「…そんな…何とか治療出来ないの?!まだ生きてるなら――――」
…!四番隊ならともかく…我々だけではそこまでの治療は出来ない。それに彼女はもう…」

橘はそう言いながらの腕をつかみ、首を振る。日向の瞳は瞳孔が開いており、どう見ても生きているとは言えない状態だ。

「…そんな…私を…かばって死ぬなんて……本当なら私が守らなきゃいけないのに――――」
…!」

崩れるように倒れたを橘が慌てて抱きとめる。はそのまま眠るように意識を失った。





どれくらい時間が経ったのか。は額に冷んやりとするものを感じ、ゆっくりと目を開けた。

「…橘…さん…」
「お、気がついたか」

が視線を彷徨わせると、目の前にいた橘がホッとしたように息を吐き出した。

「…私…どうして…」

見渡すと、そこは天幕の中らしく、は地面の上に寝かされていた。

「気を失っていたんだ。怪我もかなりひどくて出血が止まらなかったんだぞ」
「……っ」

橘のその一言で、は一気に記憶が蘇る。突然、虚の襲撃を受け、抵抗も空しく部下を四人も死なせてしまった事を。

「…申し訳…ありません…。私がいながら……」
…」

ぽろぽろと涙を零すに、橘も言葉が詰まる。だがそっと濡れた頬を手で拭ってやると、「仕方ないさ」と首を振った。

「あの虚達は、これまで我々が退治してきた奴らとは比べ物にならないほど強かった。スピードもパワーもケタ違いだ。少し戦っただけで分かる」
「…でもっ――――」
「それに!お前がどうこう言う問題じゃない。やられた彼らが弱かったんだ。俺の選択ミスでもある」
「そんな事…!」
「いやそうだ。実戦経験を積ませた者ばかりを選んだつもりだったが…彼らには早すぎたのかもしれない…」

橘は口惜しそうに言いながら、深く息を吐いた。
悔しいのはも橘も同じなのだ。
目の前で部下を殺されるほど辛い事はない。いや、今回の事があるまで、もその辛さは知らなかった。初めての経験だったのだ。

「…心のどこかで侮っていたのかもしれんな…。どんな変わった能力を使おうと、しょせん虚…。容易く葬れる、と」
「…橘さん…」

静かに自分を責める橘の姿に、も胸が痛くなった。
確かに侮り、と言われればそうかもしれないと、も思う。
そういった意味では、今回の任務を全員が侮っていたのかもしれない。

「……ここは…?」

はふと気になり、体を起こした。少し動くだけで腕がズキズキと痛みだす。
傷のせいで多少の熱もあるようだ。

「先ほどの地点から少し移動した。街まで行こうと思ったんだが、もう暗いのでな。救援部隊を呼んだがあまり移動するのも危険だし今夜はここで野営だ」
「それじゃ日向さん達は…」
「連れて来れなかったから戻るまで埋めておいた。獣に荒らされても可哀想だからな…」
「そうですか…。山野さん達は…」
「三人なら外で見張りをしている。心配しないでお前は体を休めておけ。日が昇ればすぐ移動だ。明日には一度瀞霊廷へ戻るからな」
「……そう、ですよね…」

瀞霊廷へ戻ると聞いて、は小さく息を吐き出した。
隊士四人が殺され、自分は負傷した。このまま任務をこなす事など出来ない。それは分かっているが、は出来れば部下達の仇を取りたいと思っていた。

「ところで…何故あれほどの被害になったんだ?三体一度に出現したのか?」

橘のその質問に、はハッと息を呑む。大事な事を思い出したのだ。

「そう言えば…あの虚達、霊圧を消して近づいてきたんです」
「…何?」
「探査能力は全開にしてました。でも一切それに引っかかることなく…気付けば目の前にいたんです…。その奇襲攻撃に回避が遅れ、他の隊士も…」
「そうか…。変わった能力とはそういう事か…?」

橘は訝しげに眉をひそめる。霊圧を消せる虚など、話でしか聞いた事がない。以前、檜佐木が酒のつまみにと話してくれた事があった。
「霊圧を消せる虚、か。厄介な存在だ」、と橘は呟いた。
さっきのように奇襲攻撃を仕掛けられる上にパワーも今までのそれとは比べ物にならないのだ。

「…思ったよりも大変な奴らみたいだな…。通りで死神にも被害が拡大しているわけだ」
「…はい。霊圧を感じられないとなると…こうして野営をしていても、かなり危険です。背後に近づいてきても分からないんですから…」

のその言葉に、橘はふと表の様子を伺った。
確かに言われれば、暗闇に乗じて襲ってくる事も出来るだろう。

「…心配するな。今夜は俺も見張りについている。お前は休んでろ」
「で、でも…っ」
「大丈夫だ。霊圧を消せると知っていれば、それなりの対処法もある。油断しなければやられはしないさ」

を安心させるよう橘はポンポンと彼女の頭に手を乗せる。そこでやっと安心したのか、の顔にも僅かに笑みが浮かんだ。
仇を討つにしろ、怪我を直し体調を整えなくてはならない。護廷十三隊の隊士として最低限の事だと思った。

「じゃあ俺は外にいるから…お前はゆっくり眠っていろ」
「……はい。ありがとう御座います――――」

がそう言った時だった。天幕の外でかすかに物音がし、橘はふと振り返った。

「どうした?」

と、外にいるはずの部下へ声をかけたが何の返事もなく、橘も訝しげな表情で腰を浮かしかける。
だがその時。一瞬で橘の肉体は鋭い爪に貫かれていた――――


「……がっ…っ」
「きゃぁぁぁ!橘さん――――!」


血しぶきがの顔に飛び、驚愕しながら叫ぶ。
天幕を切り裂いての外からの奇襲攻撃に、も目を見開き、倒れこんでくる橘を慌てて支える。
だがその攻撃で天幕がゆっくり崩れると、倒れた松明の火が一気に燃え広がった。

「く……っ気を…つけ…ろ…奴ら近くに……がはっ…」
「橘さん…シッカリして下さい!」

口から血を吐き出す橘に、は必死に叫んだ。同時に炎が燃え盛る中、辺りを見渡したが、見張りに立っていた隊士達がいない事に気付く。
代わりに、自分達を囲んでいる影に気付いたは、背筋に冷たいものが伝い落ちた気がした。

「…嘘…何…この数……」

月明かりに浮かぶその影。
それはまさしく先ほど襲撃してきた虚と同じだった。だが先ほどと違うのはその数―――およそ三十体。

「に…逃げろ、……この数では……」
「で、でも――――」
「お、俺の事は…いい…。お前…だけなら…瞬歩で…振り…切れる…」
「そんな…橘さんを置いて行けるわけないじゃないですかっ!」
「……バカ…野郎…!…どっち…にしろ、こ…の数の…虚相手じゃ…勝ち目は…ない…。無駄に死にたいのか…っ」

橘の言葉が胸に突き刺さり、は言葉に詰まった。橘の言っている事は分かる。
だが分かるのと行動出来るかとでは意味が違う。
虚の集団は今にも襲いかかってこようと、達の隙を伺っていた。

「…無理です!橘さんを置いていけない…!!」
「………お前…まだそんな事…っ」
「説教は後で聞きます!でも今は一緒に…連れて行きますっ」

は何かを言いかける橘を無視し、彼の体を支えると、精一杯の力を使い瞬歩で移動する。
だが橘を抱えての瞬歩では、それほど遠くへ移動する事は出来ない。
案の定、虚に追いつかれ、は片手で斬魄刀を抜き攻撃を弾き返した。
その衝撃で傷口が痛み、じわりと包帯に血が滲む。同時に熱のせいで足元がふらつき、は軽く頭を振った。

「やめ…ろ、…俺…を置いて…行け…」
「……嫌です…!もう誰も失いたくない!」
「……逃げ…ろ……っ」

次第に息が荒くなる橘を見ながら、は唇を噛みしめた。
しかし自分達を囲む虚の集団から逃れるすべなどない。

(こんな…こんなはずじゃなかったのに…!)

まさかこれほどの力だとは、数だとは、誰も思ってもいなかった。その侮りが、致命的だったと今頃気づいても遅いのだ。

(市丸隊長……私―――――)

ふとギンの顔が脳裏を過り、胸が痛んだ。その瞬間、三体の虚が一斉に飛びかかってくる姿が月と重なる。
それがまるでスローモーションのように見えて、は橘をかばうように抱きかかえると、強く目を瞑った――――










濡れた顔を湯で洗えばちゃぽん…という音が浴場に響く。
空に浮かぶ満月を見ると、ついあの夜の事を思い出してしまうのだ。

あの時――――橘はを突き飛ばし、自分が身代わりになって彼女を助けた。
その身を虚に貫かれ、引き裂かれながらも、を逃がそうと必死に叫んでいた。

――――、逃げろ!

橘のその姿を見て、は自然に体が動いていた。
泣き叫びながらも、瞬歩を使い、橘の死を無駄にしてはいけない、と必死に逃げたのだ。
だが少し行動が遅かったのだろう。虚の集団に追い付かれ、囲まれたは、ハッキリと自分の死を覚悟した。
どうせなら何体か道連れにしてやろう。そんな気持ちで斬魄刀を抜き、傷ついたその体で戦おうとしていたのだ。
だがが斬魄刀を解放した時、その光によって導かれた救援部隊がいつの間にか虚を取り囲んでいた。

「――――ちゃん!無事か?!」
「…くん!」

そして――――気付けばはギンの腕に抱かれていて、その傍らに吉良が心配そうな顔で立っていたのを見た時、思わず涙が溢れて来た。

「報告受けて飛んできてん…間に合うて良かったわ…」

助かった事でホッとしたのか、ギンのひどく心配そうな顔を見ながら、の意識は次第に薄れて行き、崩れるようにして気を失った。
その後の事は覚えてはいない。意識が戻った時には四番隊の救護詰所の一室に寝かされていた。

「虚は僕達が全滅させたよ」

後で吉良がお見舞いに顔を出した時、そう教えてくれたが、の心は晴れる事はなく。
橘や部下を失った傷が、いつまでも残っている状態のままだった。
それは任務に戻った後も続き、 一カ月経っても、二カ月経っても、彼女の傷が癒える事などなかった。
情緒不安定だったに見かねて、ギンが騙すようにして、この宿へと連れて来てくれた事は、にとっても良かったのかもしれない。
あの状態のまま任務を続けても、周りに迷惑をかけるだけだ。心に負った傷は、なかなか癒えないのだと、は思い知らされた気がした。

「…隊士、失格だなぁ…」

ここ数カ月の自分の任務態度を思い出し、失笑する。
もし橘が生きていれば、こっぴどく叱られているところだ。でも、もう二度と橘の説教を聞く事は出来ない。

「……ごめんなさい…橘さん…」

月を見上げ、かすかに呟いたの声は、小さな泣き声へと変わった。






「――――えらい長風呂どすなぁ」

料理を出し終えた女将の紅子は、ふと顔を上げ呟いた。
冷酒を一人楽しんでいたギンは、紅子のその言葉に「たいがいの女の子は長風呂やろ」と笑いつつ、心配そうに表情を曇らせる。

「そうかもしれまへんけど…湯あたりでも起こしたら大変やし様子見て来まひょか」
「頼むわ…。今のちゃんは、あまり一人にしたないし…」

ギンの言葉に紅子も若干驚いた顔をしたが、すぐに苦笑いを浮かべると「へぇへぇ」と呆れ顔で立ち上がる。
だがその時、廊下から紅子を呼ぶ声が聞こえてきて、二人は顔を見合わせた。

「―――すんません。女将さん…っ」
「何事やの、全く…」

と紅子が急いで襖を開けると、そこには仲居が深々と頭を下げて座っている。
その姿を見て、紅子も訝しげな顔を隠そうともせず溜息をついた。

「何え?離れには誰も来んでええ言うときましたやろ」
「は、はい!えろう、すんません!せやけど離れのお客さんの事が若女将に知れてしまいまして――――」
「えぇ?桜子に?」
「へぇ!みんなで誤魔化したんどすけど、離れ用の料理に気付かはったみたいで……」

仲居がそう説明していると、またも廊下が騒がしくなり、紅子とギンは視線を交わし軽く首を振った。
その姿を見なくても、すでに分かっているようだ。

「――――お待ちください、若女将!離れに勝手に入ったら女将さんに叱られますよって!」
「着いてこんでええし!だいたい、うちに隠し事するて何やのっ」

一人は仲居、そしてもう一人はどうやら若女将の声らしい。紅子は呆れ顔のまま廊下に出ると、「静かにしぃ!」と大きな声で怒鳴った。

「お客さんが居はるのに何騒いどるんっ?若女将の立場でほんまに恥ずかしいえ?」
「そらすんまへんなぁ。せやけど…紅子さん。ギンちゃん来てるてほんまなん?」
「……あんたには関係あらへんし。はよ本館戻り。お客さんほったらかしてええ思とるん?」
「一通りの挨拶は済ませました。ええから、そこのいて!」

そんな声と共に襖が勢い良く開き、ギンは苦笑混じりで溜息をついた。

「ギンちゃん…!」
「…久しぶりやなぁ。桜子……いや、もう若女将て呼ぶべきやな」

そう言いながら目の前に立つ、この料亭の若女将、桜子を見上げる。
若い娘らしい淡い水浅葱色の着物をまとい、その顔立ちは紅子と良く似ていて美人だ。
しかし今はその綺麗な顔をしかめっ面にしているあたり、どうやら相当腹を立てているようだ。
桜子は真っすぐギンの前に歩いて行くと、徐に彼の前へと膝をついた。

「久しぶり〜やないわ!何でずっと来てくれへんかったん?」
「これ、桜子!若女将がみっともない真似したらあきまへんえっ」
「紅子さんは黙っといて。うちに本館任せきりで何コソコソしとる思えば」

桜子は紅子の事も睨みつけ、その怒りをぶつけている。
当事者であるギンは困ったように頭を掻き、女将に助けてという視線を送った。
久しぶりなのだから多少話すのはいいが、今回はギン一人で来たわけじゃない。
の存在が見つかれば、またややこしくなる、とギンは内心焦っていた。

「しゃーないやろ?お忍びで来はってるんやから…。あんたに話したら仕事放り出して離れに入り浸るやろうし」
「ええやないの。うちにだけ仕事押し付けてギンちゃんの世話してるなんてずるいわ。何で隠すん?」
「こうして騒ぐからやない。ええから、はよ戻り。ギンちゃんにはお連れさんがおるんえ?」
「……連れ?」

紅子の言葉に、桜子は僅かに眉を寄せる。その時―――――


「遅くなってすみません。つい長風呂になっちゃって―――――」


タイミング悪くが部屋へ戻って来てしまい、ギンは思わず顔を覆った。

「…あんた、誰え?」

「……え?」

突然現れたを見て、桜子は思い切り眉をひそめた。




  


波乱の予感…?
以前DLした護廷十三隊の隊花素材が残ってたのでデザインリニュに伴い張ってみましたよ☆
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