夢を見たんだ。
彼女と仲良く暮らしてる、そんな甘い夢を。
その世界はキラなんてものは存在しなくて、暖かく、平和そのものだった。
朝には彼女の笑顔で起こされ、夜には彼女を抱きしめ眠りにつく。
そんな淡い、儚い夢を。
だから熱い体も、柔らかい唇も、全て夢の続きだと思った。
現実には起こりえない、ありえないことだったから。
触れ合う唇が熱い。
絡み合う舌が熱い。
何度も何度も何度も、求めては、あまりにリアリティのないキスに酔いしれる。
「…ん、メロ…」
が、僅かに唇が離れた時、かすかにの声が耳に届く。そこで一気に覚醒した。
「―――っ」
暗い部屋の中、ベッドの上。
目の前には浅く呼吸を繰り返すの潤んだ瞳―――
夢ではない確かな鼓動と、熱い体温に思わず上半身を起こした。
「…メロ…?」
少し驚いたように小さな声で俺の名を呼ぶに、一瞬で頭が真っ白になる。
俺は…今何を―――?
まだ温もりの残る自分の唇をそっと指で触れてみると、そこはしっとりと濡れていて、今まで求め合っていた事が夢じゃないんだと思い知る。
そこでカッと顔が熱くなった。
「悪い、俺―――」
「わああぁぁっ」
「「―――っ?!」」
口を開きかけた時、外から悲鳴が聞え、ビクリと体が跳ねた。
次の瞬間、俺の携帯が鳴り響き、慌ててベッドから出て通話ボタンを押す。
が心配そうな顔で息を呑むのが分かったが、今はかける言葉も見つからない。
「もしもし、ロッドか?何があった……何?ああ、分かった…すぐ行く!」
(とうとう来たか…しかし何故、ここが…)
ロッドから20人ほどの完全武装した隊が来たと連絡が入り、俺は軽く舌打ちをした。
あの死神を見張りに立てておいて良かったようだ。
「…メロ…?何があったの?」
「……っ」
後ろから不安げな声を出すにドキっとした。
さっきの自分の行動を思い出し、再び鼓動が早まる。
だが今は落ち着いて話してる場合じゃない。
「悪い、…俺、行かないと…。どうやら敵が動いたらしい」
「え…」
「ここもすぐに移動する事になると思う。荷物をまとめておいてくれ」
それだけ言っての方に振り向くと、彼女はひどく怯えた顔をして立ち上がった。
「メロ、大丈夫…?」
「ああ…何も心配する事はないから…。俺が戻るまでに、ここを出る準備だけしておいてくれないか?」
「うん…分かった…」
彼女が素直に頷いてくれた事でホっとすると、そのままドアに向かって歩き出す。
だが、「待ってメロ」とが俺の服を掴んだ。
「気をつけて…」
「…ああ」
ドキっとしたが彼女の方を見ないまま頷くとドアを開け、出て行こうとした。
けれど先ほどの自分の行動を思い出し、ふと足を止める。
「メロ…?」
「さっきは…悪かった…」
「………っ」
俺の言葉にが息を呑んだのが分かった。
しかし他にかける言葉も見つからず、そのまま背中越しにドアを閉め、深く息を吐き出す。
本当なら触れてはいけない人だった。
寝ぼけていたとか、夢だと思ったなんて言い訳は通用しない。
確かに夢の中のは優しく笑っていて、彼女から口付けて来たような気がする。
夢の中での俺は、何も制御される事はなく、彼女を愛していて、だから素直にそれを受け入れた。
なのに…まさか現実だったなんて―――
「…クソッ」
自分で自分に腹が立ち、怒りを吐き出す。
「うわあぁぁぁっ」
「な、何だ…わぁぁっ」
外からは、まだ悲鳴が聞えていて、俺はすぐにロッドの元へと向かった。
後でもう一度、に謝ろうと思いながら―――
『ボス、ダメです。歯に毒を仕込んでいたらしく、誰の命令か吐かせる間もなく自害を―――』
「…チッ。また自殺だとよ」
ロッドは忌々しげに呟くと電話を切った。
あれから死神のおかげで、敵を一網打尽にし、アジトを後にした。
今は車で次のアジトへと移動中だ。
その際、一人だけ殺さず連れて来たが、それも自殺という結果で無駄に終わったようだ。
「しかし…思ったより早かったな…。何故あの場所がバレたんだ?」
「さあな…。しかし、あの死神もなかなか役に立つじゃないか」
俺がそう言ってチョコを噛み砕くと、隣にいるロッドは巨体を揺らして笑った。
「ああ、撃たれても死なないし、見張りにちょうどいいぜ。それより…彼女はどうした?」
「…アネットの車に乗せた」
「何?しかし…アネットとお前は確か…」
そう言ってロッドはニヤリと笑った。
どうせ前の関係の事を言ってるんだろう。
「今は関係ない」
「まあ、そうだろうな。でもいいのか?そんな女に大切な女を預けて」
「良くはないが…今回は仕方ないさ。俺と居ない方が安全な時もある」
そう言ってチョコをかじると、ロッドは苦笑を零し、肩を竦めた。
「それより大統領に電話を」
「ああ」
ロッドはすぐに大統領へと電話をかけた。
「いくらコールしても出ない」
「…特殊部隊を突入させたが失敗…それで自分が操られる事を恐れ、核のボタンを押す前に自殺…だったら随分と立派な大統領だな…」
「まさか…出ないだけだろ?」
運転している男が慌てたように口を挟むが、「どうだかな」とロッドが苦笑した。
大統領と一部隊だけで、SPKも分かっていなかった俺達の居場所を掴めたとは思えない。
SPKか…
Lの方か…それとも…
「つきました」
車が静かに停車し、古い建物が見えた。
そのまま車を降りると、後方からついて来ていた車が次々に到着する。
「ロッド、先に入っててくれ。俺はを連れて行く」
「ああ、分かった」
二番目の車からグレンが降りてきたが、軽く無視して一番最後の車の後部座席を覗く。
俺を見るとはホっとしたように微笑み、ドアを開けた。
「荷物貸して」
「あ、うん…」
彼女の持つ大きなバッグを手に彼女の腕を引っ張ると、運転席に居たアネットがニヤニヤしながら降りてきた。
「わー優しいんだね〜、メロってば」
「…うるさい。お前は他の女達と地下にもぐってろ」
「…分かってるわよ。じゃあさん、またね」
アネットはにだけ笑顔を見せると、俺に舌を出してグレンの後から建物へと入って行った。
他の仲間たちは車から次々に荷物を降ろし、パソコンやカメラといったものを中へ運んでいく。
俺はの手を引いて、正面玄関ではなく、建物の横に位置する非常階段を上っていった。
「メ、メロ…?どこに―――」
「俺達の部屋は上だ。前に下見した時、決めてある」
それだけ言って中へ入ると、少し埃臭い匂いが鼻をつく。
「ここは前のと違って廃墟だし少し汚いけど我慢してくれ」
「そ、それはいいけど…もう大丈夫なの…?」
はさっきの襲撃に不安になったのか、繋いでいる手をギュッと握ってきた。
その体温にドキっとするが、返事をせず黙って暗い廊下を進み、部屋へと入る。
「メロ…?」
「…ここを使っててくれ。危ないから窓とカーテンは開けられないが…食料や飲み物は後で買いに行かせる」
荷物を置き、カーテンを閉めようと歩き出そうとした。
が、不意に手をグイと引っ張られて振り返れば、がスネたような顔で俺を見上げていた。
「メロ…危険な事は―――」
「大丈夫だ。そんなに心配するな」
「でも…」
「言っただろ?俺は死なないって」
そう言って彼女の頭を撫でると、の瞳がかすかに揺れた。
それを見て、夕べのキスを思い出し、顔が熱くなる。
心の奥に重たい十字架を背負ったような気持ちになり、ふと彼女から視線を反らした。
触れたい、触れてはいけない。
そんな二つの想いが交差して、まともにの顔を見れない。
そんな俺を見て、は小さく息をついた。
たった、それだけでビクリとなる。
彼女が夕べの事をどう思ったのか、その事について口に出されるのが怖い。
情けない、と思いながら、俺は彼女に背を向けた。
「あのメロ…夕べの―――」
「悪い…」
「え…?」
「あの時の俺は…どうかしてたんだ」
「…メロ…?」
の声が震えてる。
本当なら、このまま抱きしめてしまいたい。
でも今それをするべきじゃないという事くらいは分かってる。
いや、分かってたはずだったのに―――
最低だ、俺は…。
「ちょっと疲れてて…アネットと見間違えた…」
最低だ。
あんな事をしてしまった俺も、誰よりも大切な人に、こんな言葉を吐かなきゃいけない現状も。
「…ヒドイ…」
声の震え方で、が泣いてしまうと思った。
「…ヒドイよ、メロ…」
「悪い…。もう…二度としない。だから…今は大人しくここにいてくれ」
それだけ告げて静かに部屋を出る。
裂かれそうな痛みが胸を走っても、俺は振り返らなかった。
まだ俺にはやる事がある。
を本当の意味で安心させたいからこそ、今は彼女の傍にだけいるわけにはいかない。
外に出ると、少しづつ空が白み始め、11月10日の朝を迎えようとしていた―――
「え、今夜…?」
「ああ…今夜だ」
グレンはニヤリと笑って顎を撫でた。
だが、アネットが青い顔をして俯くと、グレンは凄い力で彼女を壁に押し付け、首を手で締め上げる。
「…ぅ…っゃ…」
「今更ヤダって言ってもダメだぜ?」
「は…なして…苦し…」
本気で首を絞めてくるグレンに、アネットは涙目で哀願した。
すると手を外したグレンは、咽て床に崩れ落ちるアネットを冷たい目で見下ろす。
「ゴタゴタしてる今が丁度いい。メロも今夜は部屋に戻らないだろう。いつまた特殊部隊が乗り込んでくるか分からねーからな」
「ゴホッ…」
アネットが首を擦りながら見上げると、グレンは巨体を屈めて目の前にしゃがんだ。
「いいか?もしやらないと言ったり、この事を誰かにチクれば俺がお前を殺してやる。ボスにはお前が逃げたと言えばいいだけだ」
「わ…分かってる…。何を…すればいいの…?」
グレンが本気だという事を肌で感じ、アネットは震えながら尋ねた。
するとポケットから小さなビンを取り出し、グレンはそれをアネットの手に握らせる。
「これを女に飲ませろ。コーヒーにでも入れちまえば味は分からねぇ。あの女、お前の事は部屋に入れるんだろう?」
「う、うん…でも…これ何…?」
ビンに入った透明の液体を見て、アネットは不安げな顔をした。
「心配すんな。毒じゃねぇよ。ただちょっと体が痺れるだけだ」
「し、痺れるって…」
「眠り薬じゃつまんねぇだろ?少しは反応してくれなきゃよ。これは少しの間、手足の自由を奪うだけで意識はハッキリしてるから楽しめるんだ」
「…ど、どれくらい入れれば…」
「そうだな。終わるまで暴れられても困るし…5滴以上は入れておけ。薬の効果はすぐに現れる。いいか?俺が部屋に入れるよう鍵は開けておけよ?」
「わ、分かった…」
「クックック…楽しみだぜ…。アイツの女を犯して、その後は自殺に見せかけ殺してやる。どうせ最近まで死んだような生活をしてた女だ。自殺したっておかしくはねぇ」
グレンはそう言うとニヤリと笑って、アネットの体を抱え上げた。
「ちょ、何する―――」
「その前にまずはお前を可愛がってやるよ」
そう言って立ち上がると、グレンはアネットをベッドの上に押し倒した。
「はぁ…」
部屋に一人残された私は何度目かの溜息をついた。
今朝のメロの言葉が頭から離れず、結局は眠れないまま、また夜を迎えてしまった。
疲れてるはずのなのに、頭が冴えてて、ちっとも眠くない。
「何よ…メロのバカ…最低…」
そう呟くと悔しくて、また涙が浮かんでくる。
あの時、あのキスで通じたと思っていたのは私だけだった事が、ひどくショックだった。
そこで、ふと不安になる。
メロは本当に私の事を好きなんだろうか。
前にアネットが教えてくれた事だが、もしかしたら違うのかもしれないと思ったのだ。
アネットの言葉、そして今日までのメロの言動で、私は勝手にそう思い込んでたのかもしれない。
本当はLの恋人だった私を守りたいだけで、他に特別な感情などないのかもしれない。
アネットも勘違いしてるだけで、メロが本当に好きなのは彼女なのかも…とふと思う。
あのキスは確かに愛情を感じるものだったし、現にメロは私とアネットを見間違えたと言っていた。
もし…そうだったら?
メロがアネットに冷たくしてるのも、意地っ張りなメロが素直になれないだけなのだとしたら?
「…バカみたいじゃない…私…」
こんな事を…メロを好きになってから気づくなんて―――
コンコン!
「―――っ」
涙が頬を伝い落ちた時、不意にノックの音がして慌てて涙を拭った。
こんな風にノックをするのはアネットだけだ。
が、メロに言われているのでドアの前で「誰?」と一応、声をかける。
「私、アネット」
「あ、今あけるね」
アネットの声にホっと息をついて鍵を開けると、すぐにドアが開き明るい笑顔が顔を出した。
「今、食料とか届いたから持って来たの。入ってもいい?」
「あ、うん。どうぞ?」
そう言って中へ促すと、アネットは後ろ手にドアを閉めて、私の方へと歩いて来た。
「メロはまだ?」
「え?あ…うん、そうみたいね…。あんな事があった後だし…」
「そっか。じゃあさんも寂しいね。まあメロもだろうけど」
アネットはそう言って無邪気に笑うと、私に缶コーヒーをくれた。
ありがとう、とそれを受け取り、一口飲むと、缶コーヒー独特の苦さが口内に広がった。
まあこの部屋にキッチンはついてないし、美味しい紅茶など淹れられないから、これで我慢するしかない。
「メロは…寂しいなんて思ってないよ…」
「え?」
そう呟く私に、アネットは驚いたように顔を上げる。
その表情がいつもより緊張していてるように感じたが、この時の私には、それを怪しむ余裕なんてなかった。
訝しげな顔をする彼女に、ちょっと微笑んで軽く息をついた。
「メロが私を好きだなんて嘘。きっとメロが本当に好きなのはアネットだよ」
「…えっ?な、何で?」
私の言葉に思った以上に動揺するアネットを見て、少しだけ目を伏せた。
夕べの事を話すべきか悩んだのだ。
アネットはメロの事が好きなのだから、キスをした、と言うのはやはり躊躇われる。
「さん…?」
「あ、ご、ごめんね…。ちょっと…そう思っただけ…」
「…そんな…そんな事ないよ…」
「え…?」
私がコーヒーを飲もうとした時、アネットは小さく首を振った。
「メロが本当に、心から好きなのは…私なんかじゃない…」
「アネット…?」
「メロが心の底から大切にしたいと思ってるのも…私じゃないよ、さん…」
「…ど、どうしたの?」
少し様子のおかしい彼女に首を傾げると、アネットは悲しそうな目で私を見た。
「メロが…いつも見てるのは…さんだけ。それは出逢った頃から変わらない…。それが私は凄く羨ましかった…」
「…アネット…」
「セックスして気持ちいいと思ったのはメロだけで、でもそれは私がメロの事を好きだからなんだって気づいた…」
悲しげな笑みを浮かべたアネットの言葉に、私は何も言えなかった。
「私は…さんになりたかったよ…。メロに愛される…女になりたかった」
「な…何言ってるの…?メロは私の事なんか好きじゃないのよ」
そう言って視線を反らすと、缶コーヒーを口に運ぶ。
「あ…もう飲んじゃダメ…!」
「え?きゃ…っ」
その時、突然アネットが立ち上がり、私の手から缶コーヒーを叩き落した。
ゴトッという音と共に缶が床に落ち、茶色いシミを作っていく。
「アネット…どうしたの?」
「ダメ…やっぱり私できない…」
「え…?」
「メロの大切な人を傷つけるなんて―――」
「アネットっ?」
アネットはそう呟くと慌てたようにドアの方に走っていった。
そして閉めたと思っていた鍵を回そうとしている。
それには驚いて、「どうしたの?」と声をかけた、その時―――
バンッ
「きゃぁっ」
「アネット!」
いきなりの事で驚いた。
不意にドアが勢いよく開き、目の前にいたアネットが飛ばされ、床に転がるのを信じられない思いで見ていた。
けど次の瞬間、部屋に入って来たのは、体の大きな怖い顔をした男――確かグレンといった――だった。
「あ、あなた…」
「チッ。クソ女、やっぱり裏切ろうとしたなっ?」
ドカッ!
「…うっ!」
「やめて!」
グレンは倒れているアネットのお腹を思い切り蹴りあげ、彼女が低くうめいている。
それを見て慌てて駆け寄ろうとした。
が、立ち上がった瞬間、足の感覚がない事に気づき、フラリと天井が回った。
「…きゃっ」
気を失ったアネットの隣に倒れこむ私に、グレンがニヤニヤした顔で近づいてくるのが見えてゾっと背筋が寒くなる。
さっきのアネットの言葉、そしてグレンの言葉…
どう考えても、この状況は危険だ。
「へへへ…薬も効いてきたみたいだな?」
「…っ?!」
私の顔の前にしゃがむと、グレンは大きな手で私の頬から首にかけて、ゆっくりと撫でていく。
その感触に鳥肌が立った。
「あんたが飲んだコーヒーには薬が入ってたんだよ。手足が痺れてんだろ?」
「な…なんですって…?」
そう言われて驚いたが、確かにさっきまで動いてた手も今は冷たく、血が通ってない気さえする。
動かそうとしてみたが、全くと言っていいほど動かない事で、私は一瞬で恐怖に支配された。
「や…いやっ来ないで…っ」
「うるせぇなぁ。まあすぐ気持ちよくしてやっから」
「きゃ、放してっ」
いきなり体ごと抱えられ、ベッドの上に放り出される。
怖くて逃げようとするが、手足が痺れていて動く事が出来ず、男はそんな私を見て楽しそうに舌なめずりをした。
「へぇ…近くで見ると思った以上にいい女だ。アンタみたいな女、頂けるなんて俺はついてるぜ。あの売女の体にゃ飽きてたトコでね」
「…な…っアネットのこと、そんな風に言わないでっ!」
「けっ。女の友情って奴か?アンタに薬をもったのはあの女だぜ?」
「それはアンタが脅してやらせたんでしょう?!卑怯者っ」
怒りのまま叫ぶと、グレンは怖い顔で私の髪を思い切り引っ張った。
その痛みに思わず涙が浮かぶ。
「てめぇ、口の利き方に気をつけな…。体のあちこちに傷作りたくねぇだろ…?」
「痛…や…っ」
「気の強いトコはメロにソックリだな…。まあいい。アイツもアンタには手を出してないんだろ?俺が先に味見してやるよ…」
「…ぃやぁっ…」
グレンは胸元に手をかけ、それを左右に思い切り引き裂いた。
ビリビリ…っと布が裂ける音に思わず目を瞑る。
グレンは下着も剥ぎ取ると、ギシッという音を立ててベッドへと上がり、興奮したような顔で私を見下ろした。
「細っこいが、色白でいい体だ…こりゃ楽しめそうだぜ…」
「や…触らないでっいやぁ!」
息を荒くして覆いかぶさってきたグレンに思い切り身を捩ったつもりが、あっさり拘束され、胸元をベロリと舐められる。
その感触に全身が総毛立ち、唯一動く首を左右に振った。
そんなものは何の抵抗にもならず、男は私の体を好きなように弄り、息を荒くしていく。
いっそ舌を噛んでしまいたい、と歯を食いしばるが、脳裏にL、そしてメロの優しい笑顔が過ぎり、涙がポロポロ零れてきた。
「ぃや…っやだっ!L…!…メロ…!助けて―――」
体を汚されていくのと同時に、二人への想いまで汚されていくようで、私は必死に声を上げた―――
「―――っ?」
「どうした?メロ」
「いや…別に」
ふと顔を上げた俺に、ロッドが訝しげな顔をする。
一瞬、が呼んでるような気がしたが、今は何も聞えない。
幻聴か…だいぶ重症だ。
「それより…静かだな、今夜は…」
「もう大丈夫って事かもな。このアジトは誰も知らないだろう」
「いや…油断は出きない。何故、あそこがバレたのかも分かってないんだ」
俺の言葉にロッドも、「そうだな…」と不安げな顔をしてソファにもたれかかる。
その時、外の監視カメラをチェックしていた男が、目を細めて画面を覗き込んだ。
「ん?何か言ったか?シドウ」
『あ、はい。異常ありません』
「さっきも寝言言ってたみたいだが、ちゃんと見張ってろよ?」
そんなやり取りを聞きながら、俺がチョコを咥えると、ロッドは少しだけ身を乗り出し、「そう言えば…」と笑みを浮かべた。
「何だ?」
「これ、やるよ」
「ん?」
ロッドがテーブルの上に何かを置いた。
「…これ…」
「やっと用意できたんだ。前にも言ったろう?その家の鍵さ」
「…ロッド…」
あまりに驚いて言葉を失っていると、ロッドは照れくさそうに笑った。
「何だ?嘘だと思ってたのか?」
「………」
「まあ…こんな裏世界でやってきた俺を信用しろって言うのも無理かもしれねぇが…。受け取ってくれ。俺の気持ちだ」
ロッドはそう言ってウイスキーを煽る。
俺は目の前に置かれた真新しい鍵を手に取り、マジマジと眺めた。
「これが住所だ。ロスの郊外にある。ここは死んだ浮浪者の名義で買ったもんだし足はつかねぇはずだ。」
「…でも…」
「もう少し落ち着いたら…彼女を連れて行ってやれ。…少し二人で過ごして来い」
ロッドの言葉にガラにもなく、笑みが零れる。
最低な人間が最低な人間に感謝をして、こんな事までしてくれる事実に、不思議な気持ちになった。
けど…
「そうしたいのは山々だが…は俺と一緒になんて住みたくないかもしれないな」
「は?何でだ?いや、恋人を失ったのは聞いてるが…彼女を必死で探して助けたのはお前だろう?女なら誰でも絆されるさ」
「…いや…最低なこと、しちまったしな」
胸が痛んで、僅かに苦笑いを零すと、ロッドは不思議そうな顔をしている。
「何だよ…ケンカでもしたのか?」
「…ケンカ、か。昔のように何でも言い合えたら…それも出来たかもな…」
そう言って窓の外を眺めると、ポッカリと青い月が浮かんでいる。
綺麗な光を眺めていると、不意にに言われた言葉が脳裏を掠めた。
"ヒドイよ、メロ…"
そうだよな…ヒドイよな。
でも俺は元々そんな男なんだ。
好きでもない女を抱いて、傷つけて、泣かせた事もある。
名前しか知らない人間を殺して、路地に捨てた事もある。
昔とは違うんだよ。
、そしてキラを探すため、何もかも犠牲にして前だけを見て走ってきた結果がこれだ。
今の俺は骨の髄まで汚れてしまって、だから尚更、に触れちゃいけなかったんだよ。
それでも…に男として見て欲しくて、そんなバカみたいな夢を見ながら、俺も必死で生きてきたんだ―――。
…は俺にどういう男でいて欲しいと思ってるんだろう。
俺は…が傍にいてくれるだけで…きっと一生、優しい男でいられるのに。
彼女の泣き顔が浮かび、軽く首を振る。
ロッドが、そんな俺を見て苦笑いを零し、「おい、メロ―――」と呟いた、その時、異変が起きた。
目の前にいたロッドも、近くにいた部下数人も、同時に、「う…」という、うめき声を上げて胸を押さえている。
「おい…ロッド…?」
一瞬、何が起きたのか、と思った瞬間、気づいた。
「…キラ!」
そう叫んだ時、すでに仲間たちは息絶え、冷たい床に転がっていた。
今の今まで、楽しそうにカードをしてた奴らも、俺に優しい笑顔を向けていたロッドも、 一瞬で、消え去ってしまった―――
麻痺した心は深く突き刺さった刃にも気が付かなかった
久々に更新です〜(>д<)/
前回、そう言えば、このアトガキを書くの忘れてましたΣ(・ω・ノ)ノ
早くアップしなくちゃーとか焦ってたら時々忘れるんですよ…;;
そろそろ後半へと近づいてきましたか。
ヒロインの操危うし!こうご期待?(待て)
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●メロの夢大好きです〜!!メロに愛されて、本当に幸せですvv
(大好きなんて、ありがとう御座います〜!私も幸せです(´¬`*)〜*)
●メロにもっともっと愛されたいです///
(そうですね!もっと愛されたいですよー(*ノωノ))
●デスノの中で一番Lが好きだったんですが、今ではメロの方が大好きになっちゃいましたー!!眠れない日に見る時計のおかげです!
(ヲヲ!私の書いた作品でメロの方にいってしまうなんてひぇー;;でも大好きなんて凄く嬉しいです!)
●本日一気に読ませて頂きました。一話目を読んだとき これはやばい!と思いまして。何がやばいって作品にほれ込んじゃうって所がです笑。
こんなメロ夢を待っていました…!ありがとうございます!主人公可愛い、メロかっこよすぎ。読んででほろほろしちゃうけれど、とても暖かいです。
(待ってました、と言って頂けて凄く嬉しいです!メロカッコよすぎだなんてもったいないお言葉で私がほろほろです〜(´;ω;`)
●此方のメロ大好きです☆★
(ありがとう御座います!(>д<)/)
●毎回ドキドキしながら読んでいます。
(わ、私もドキドキですよ(*ノωノ)
●メロの深い深い愛情にとろけそうですー…///
(と、蕩けそうだなんて私が蕩けてしまいそう…゜*。:゜+(人*´∀`)
●出来上がる前の二人って一番ときめきます・・・。
(わ、分かります!私もカップルより、くっつく前の二人を描く方が好きです!)
●眠れない日に見る時計のメロ本当に大好きです
(大好きと言って頂けて感激です(*TェT*)
●L好きなのにメロ夢かっ!!っていうのは気にしないで下さい。この連載大好きです!
(いや〜L好きさんからも指示して頂けて感激です!。・゚゚ '゚(*/□\*) '゚゚゚・。
●メロ大好きです!こんなにメロに優しく大事に想われるなんて、幸せでとろけそうですvv
(あのメロにこれだけ想われたら、腰砕けますよね(* ̄m ̄)(オイ)
●とっても切なくて、甘くて・・・。Lとメロの二人に愛されているヒロイン、というところが良いです。
(Lとメロの二人…そこが、これのキーワードで私の願望だったり…(待て)
●想い合ってるのにもどかしい〜〜っっ メロにもヒロインちゃんにも幸せになってほしいと心から思います!
(もどかしさが大好物な管理人は凄く意地悪です(笑)でも最後は幸せになってもらいたいなあ)
●泣ける・・・!!(´;ω;`)
(ありがと!(゚ーÅ) ホロリ
●恥ずかしながら泣きながら夢をみてしまいました。(ぇ)
(な、泣いて見てくださったなんて私が感涙にむせびますー。・°°・(((p(≧□≦)q)))・°°・。
●メロとの関係に進展があって・・・もうドキドキがとまりません!!
(ドキドキして頂けて、むふふです!(危)(* ̄m ̄)
●Lも好きですが、この話を読んでからメロにメロメロですvv(笑)
(メロにメロメロ…メロリンラヴー!(意味不明)ありがとう御座います゜*。:゜+(人*´∀`)
●眠れない日に見る時計最高です!更新されていたのですぐ読みました。続きが気になって夜も眠れません(笑
(よ、夜はちゃんと寝て下さいね(笑)今日も何気に更新してみましたw)
●L派だけど、メロ夢が一番好きです(笑)
(ヲヲーとっても嬉しいです!(>д<)/
TITLE:群青三メートル手前