全てのピースが揃った。
ここまで来れば、私も日本へ―――
二アの言葉に従い、再び訪れた国、日本。
ここは―――悲しい思い出が多すぎる。
「…大丈夫ですか?」
ホテルの部屋に無事、落ち着き、ベッドルームで休んでいると、モニター等の設置が終わったのか、二アが顔を出した。
「…ええ…私は大丈夫…。もう、終わったの?」
「はい。通信機器も設置が終わりました」
「そう…」
二アは私の隣に座ると、小さく息をついて、顔を上げた。
「それで…これから"二代目L"…いえ、夜神ライトに…連絡を取ります」
「………ッ」
その名前を聞き、心臓が音を立てる。
今日まで忘れた事のない名前、そしてあの顔―――
「レスターに聞いた所、彼はすでに日本へ帰国しています。そして、その直後、今、キラの代弁者として有名な高田アナが誰かとホテルで密会してたようです」
「……密会…?」
「はい。私は…それが夜神ライトだと睨んでます…」
「…あの二人が…?」
「はい。夜神ライトと高田は、大学時代の同期だとか」
「え、ええ…確か…Lが名前を偽って、その大学に入学した時、彼女は夜神ライトと付き合ってた事もあったようだけど…」
「そうですか。やはり……Lがそこまでの行動をするなら…間違いないようですね」
では…大学時代、高田がキラ崇拝者だと知って夜神ライトが、出目川の次に高田を使え、とXキラに指示を出していたのか…?
いや…それだと高田が急に自分の意見を言い出した事をみても……少しおかしい。
誰かと密会した後、あの発言をしたとこを見ると、その時点で高田に指示を出したのは夜神ライト……
「二ア…?」
「…夜神ライトと…話してきます。はここで休んでいて下さい。長旅で疲れたでしょう」
「私は大丈夫…。それより…メロがどこにいるか調べて欲しいの…」
「………」
そう言って不安げな顔をするに胸が痛む。
きっとメロは独自に動き、キラを追っているだろう。
こうなれば止めようもない。
「…分かりました。先に日本に入っているリドナーに調べさせます。きっとメロと連絡を取っているでしょうから」
「…リドナーって……あのハルって人?」
「はい、そうです」
「そう……」
は少し表情を曇らせると、ベッドの上に上がり、横になった。
「疲れたから…少し寝るね」
「分かりました。後で食事を運ばせますので、それまでゆっくりしていて下さい」
「…うん。ありがとう」
「では私は隣にいますので」
それだけ言うと、部屋を出て、静かにドアを閉めた。
広いリビングには沢山の機器が設置され、その前にはレスター指揮官がいる。
どうやらジェバンニやリドナー達と連絡を取っているようだ。
「ああ、二ア。二人がNHNの近くのホテルに入ったそうです」
「そうですか。では繋いでください」
そう言うと、すぐにモニターに二人の姿が映し出された。
「私はこれからLと連絡を取ります。その報告はまた後ほどしますが、その前に…リドナー」
『はい』
「メロも日本に来ているようですが、連絡取れますか?」
『はい』
「では…居場所を聞き出すと言う事は出来ますか?」
『…いえ、それは無理でしょう。メロは自分の動きは一切、話しませんし…』
「そうですか。では…が日本に来ていると教えて下さい」
『え…?話しても…いいんですか?』
「ええ、お願いします。彼女が日本にいると分かれば、メロも私に連絡してくるでしょう。その後の事は私が考えます」
『…分かりました。では後でメロに連絡してみます』
「お願いします。では今からLに連絡しますので、終わるまでそこで待っていて下さい」
それだけ告げ、通信を終える。
すると隣で聞いていたレスター指揮官が心配そうに私を見た。
「いいんですか?二ア…メロに彼女の事を伝えて。彼の事だから、また感情的になるのでは……」
「それでいいんです。が日本にいると分かれば、メロも心配するでしょうし、無茶をしなくなる可能性があります。あくまで可能性だけですが…」
それだけ言うと、私はすぐに二代目Lへと連絡をとるべく、マイクの前に座った。
日本に入り、模木達の動向を追うと共に、新たにキラの代弁者となった高田という女を、探る事にした。
この女は頻繁に誰かとホテルで密会している。
その相手は、必ずキラと繋がりのあるもの…いや、それかキラ本人…
「…模木達の動きはどうだ」
『…いや、特に動きはない』
「そうか…」
『そっちはどうだ?綺麗な女子アナさんが誰と密会してるか、分かりそうか?』
「いや…こっちは、かなりガードがキツイし、ヘタに近寄ると危ないな」
『そっか。まあ、でも羨ましいよ。オレが彼女を見張りたいくらいだ』
そう言いながら、マットは楽しげに笑っている。
人の気持ちも知らないで呑気なものだ。
「とにかく目を離すなよ。今度、見逃したら―――」
『分かってるよ!ったく男ばっか見張ってても退屈なだけなんだけどなぁ』
マットはそう言いながら電話を切った。
オレは溜息をつきつつ、再びNHNの建物を見上げる。
これから高田が出るニュースが放送されるのか、ビル内にいる警備員達も慌しくなってるようだ。
その時、再び携帯が鳴り、ディスプレイを確認すると、そこにはハルの名前が出ていた。
「もしもし…ハルか。どうした」
『メロ…二アが…こっちについたわ』
「…そうか。予想通り早かったな…。それで…の事はどうしたか聞いてるか?」
一番気になっていた事を尋ねると、ハルは、『それが…』と言葉を詰まらせた。
「どうした?」
『…どうやら二アは彼女も…日本につれてきたようなの』
「…何だってっ?」
その言葉に思わず声をあげ、慌てて建物に隠れる。
ここで高田の護衛に見つかれば、やっかいな事になってしまう。
気を落ち着け、軽く息を吐き出すと、「それは本当か?」と確認する。
『ええ…本当よ。二アがメロに連絡して、そう言えと言ってきたわ』
「…チッ。何考えてるんだ…。何故、を……」
そう言いながらも、二アなら、きっとを一人残しては来ないであろう事を、オレは何となく理解していた。
傍においておく方が、安心なのだろう。
それと同時に…オレの行動を抑えようとしているに違いない。
「…それでと二アはどこに?」
『それは私も知らされていないの。だから場所は分からないけど…都内のホテルだと思うわ』
「……分かった。二アにはオレから連絡してみる」
『その方がいいわね。きっと二アもそう考えて私に彼女の事をメロに話せと言ったんだと思う』
「……二アの奴…。おい、二アはどこまでキラに近づいてる?」
『詳しい事はまだ聞かされていないわ。でもこれから二代目Lと連絡を取るって言ってた』
「二代目Lと…?」
『ええ…その後に私達に何らかの指示を出してくると思うわ』
「…分かった。その時にまた連絡をくれ」
そう告げて電話を切る。
同時に深い溜息が洩れ、オレは壁に凭れた。
がこの国に来ている…
そう思うと心配だが、二アの傍にいる限り、安全は保証されてるといっていいだろう。
だが…二アの目的はオレを止める事……
まだ諦めてはいないんだろうな、と思うと、苦笑いが零れた。
感情で動くオレは、キラにとっても二アよりは狙いやすいんだろう。
その事で危険に曝されてるのは、確かにオレの方かもしれない。
だがオレが動く事で、あるいはキラを追い詰める手助けになるかもしれないんだ。
オレはもう二アに勝つことだけを考えてるわけじゃなかった。
の気持ちを考え、未来の事を考え、の幸せ、それだけを願い、二アは今、全力でオレを止めようとしている。
その気持ちは……オレだって認めているんだ。
だからこそ、止まれないというオレの気持ちを…二アは分かっているんだろうか。
ごめんな、…
きっと、心配してくれてるんだろうな。
でもオレは、こんな中途半端なところで逃げ出すわけには行かないんだ。
必ずキラを追い詰める…
今は、その事だけを考えていた。
「ならば近いうちに…顔を合わせるかもしれませんね」
L、夜神ライト、いやキラに、そう告げた後、私はキラの代わりに裁きを下している"Xキラ"の正体を探っていた。
大量のデータをいくつものモニターに映し出し、高田に近しい人物を割り出していく。
その中で、一人の男が浮かび上がってきた。
魅上照…
今まで高田が出演した全ての番組の中で魅上は二回確認出来た。
二回……親しくなるきっかけは十分にあったといえる。
それに、この物言い…
キラの"能力のある人間がそれを社会貢献に活かさず生きる事を許さない"と酷似している。
何より"キラ王国"の方での、この発言……
『是非、またキラの声を…考えを聞きたいと思っています。そしてその思想、目指す物に従いたい。
キラの教え、指示通りにしていく事が、世界平和への一番の近道と私は考えています。キラ、どうか声を。
もしキラの指示、言葉がなければ――これがキラの考えではないかと自分で考え判断し、行動していく事が必要と考えています』
淡々と語る姿がモニターに映し出されている。
キラ思想にどっぷりと浸かった"キラ信者"の一人だ。
この発言の四日前…出目川は死に、この発言の四日後、高田が代弁者に選ばれた……
それは私がLに"13日のルールが嘘"と突きつけ、模木はメロにより、相沢は自ら私のところへ来た後の出来事…
頭の中のパズルが動き出し、徐々に真相に近づいていく。
あらゆることをつなぎ合わせていくと、全てのつじつまが合っていった。
魅上照="Xキラ"
この図式は…考えられる。
「レスター指揮官」
そのまま捜査に出かけているレスターの携帯に電話をかける。
『はい』
「交友関係を洗うのはもういいです。戻って来て下さい。今、一人の者が浮かびあがりました。それが外れだった場合、またお願いします」
『えっ?もうXキラの容疑者が?!』
「はい。私、観るのは得意なんです」
それだけ言って交信を切ると、再びモニターに視線を戻した。
モニターには色々な番組に映っている魅上を映し出していて、その中でも魅上は淡々と、キラへの言葉を語っている。
凝り固まった"正義"を掲げ、キラを崇拝している事を隠そうともしない。
この男もまた、歪んだ正義の持ち主…
似ている…この思想、理想…何もかも、キラの持つ"正義"に。
ピピピピ……
その時、電話が鳴り、すぐに通話ボタンを押した。
「メロですか」
『…ああ』
「そろそろ、かかってくる頃かと思っていました」
『相変わらずだな。何でもお見通しってわけか』
「……の事でしょう?」
そう応えると、メロはそうだ、と一言、呟き、『そこにいるのか?』と訊いて来た。
「いえ…今はベッドルームで寝ているようです」
『…そうか。でも…大丈夫なんだろうな』
「……何がです?」
『分かってるんだろう?ここはLを失った国だ。にしたら、もう二度と来たくはなかっただろう』
「…そうですね…。最初は…嫌がっていました。ですが…メロが日本へ行くと聞いて、承諾してくれたんです」
『…オレを利用したってわけか…』
「結果的には。でもが自分で決めた事です」
『……そこまでしたなら…必ずを守れ。彼女に何かあったら許さない』
「………」
メロの言葉は真剣だった。
そこからも彼女への想いが伝わってくる。
幼い頃から、何度となく見せ付けられたものだった。
「分かっています。ですが…そんなに心配ならメロがキラを追うことをやめればいいだけの事です」
『…またをだしにオレを止める気か?』
「もちろんです。これ以上、を心配させて何になるんです?メロだって分かっているでしょう」
『……二ア、一言だけ言っておく。Lに誓ったのは…お前だけじゃない』
「………ッ」
『生半可な気持ちで、ここまで来たわけじゃないんだ』
「…分かって…います」
『だったら…オレが言いたい事も分かるだろう』
「…はい」
『…オレは…絶対に死なない。必ず戻る。それまで……を守っていて欲しい』
「……分かりました」
メロの固い決心が胸をつく。
分かっていた。
メロがどれほどの思いでキラを追っているか。
それでも私は……メロを止めたかったのだ。
「…では…必ず戻る、と約束して下さい。決して…を悲しませるような事はしない、と」
『約束する…。オレだって…の傍に帰りたいんだ…』
「………」
それは初めて聞く、メロの弱音だった。
これまで私には、そんな姿をさらけ出した事はない。
自分の弱い部分を隠して、これまで競ってきた。
それなのに、今は恥も外聞もかなぐり捨て、彼女を守る為、必死にLへの誓いを貫こうとしている。
その気持ちは、イヤというほど分かった。
私も、それは同じだからだ。
『二ア…』
「はい…」
『と話したい。代わってくれるか…?』
「…もちろんです」
一つ、溜息をつくと、私はそのままのいるベッドルームへと歩いていった。
ふと目が覚めると、綺麗な天井が見えた。
ハッと起き上がれば、すぐにホテルのベッドルームだと気づく。
そうだ…私は二アと共に日本へ来たんだった。
もう二度と…この国に来る事はないと思っていたのに。
こんな豪華な部屋にいると、イヤでもLと一緒にいた日々を思い出してしまう。
4年前、この日本で過ごした、あの最後の日々を。
「はあ…寝すぎちゃったかな…」
時計を見れば、すでに夜中に近い時間。
二アはどうしたんだろう、と思い、ベッドから降りる。
だが、その時、ノックの音がしてドキっとした。
「私です。、起きてますか?」
「…ええ。どうぞ」
そう応えると、すぐにドアが開き、二アが入って来た。
その手には私の携帯電話が握られている。
「メロから電話です。話しますか?」
「…え…メロから…?」
「はい。が日本に来ていることを伝えました」
二アはそう言って私に携帯を渡す。
少し緊張しながら、それを受け取ると、二アは「話して構いませんが、ここの場所は言わないで下さい」と言って、ソファに腰掛けた。
その言葉に頷くと、軽く深呼吸をして携帯を耳に当てる。
傍にいるわけじゃないのに、妙にドキドキした。
「も、もしもし…」
『……?』
「うん……」
『…二アから聞いた。今、日本にいるんだって?』
「…ごめんね、勝手な事して…でも…少しでもいいからメロの傍にいたかったの…」
『…………』
メロは何も言わなかった。
その沈黙は、彼が怒っているのかと思ったが、軽い溜息が聞こえてきて、
『いや…悪いのはオレの方だ。心配かけてすまない…』
「メロ…」
『いつも…勝手な事してごめんな…』
メロのその言葉に、涙が溢れてきた。
メロだって分かってるんだ。
二アがどうして、こんな事をしてるかと言う事を、痛いくらいに。
「メロ…今、どこ…?」
『あちこち転々としてる。マットも一緒だ』
「…そう」
『は……二アの傍にいろ』
「…え?」
『…それならオレは安心してキラを追える』
「メロ…」
『オレのするべき事が終われば…必ず…迎えに行くから。だから……』
待ってて欲しい。
その言葉を最後に、電話は切れた。
「…?」
「…やっぱり…止められないみたい…」
零れ落ちた涙を拭いて、笑って見せれば、二アは小さく息をつき、私の方へと歩いて来た。
そして、「無理に笑う事はありません…」と軽く抱きしめてくれる。
その体温にホっとしながらも、何度か頷くと、二アの胸に顔を押し付けた。
悲しいのと、嬉しいのと、心配なのと…何だか心の中がグチャグチャだ。
でもメロだって、こんな私の気持ちを、きっと分かってる。
それでもメロは、キラを追うことを選んだ。
そのメロの気持ちも、私には痛いほど分かる。
「…キラが憎いよ、二ア……いつも私から…大切な人を奪ってく…」
「…もう…そんな事はさせません。その為に、私はここにいるんです」
「二ア…」
ゆっくり顔を上げると、二アは真剣な眼差しで私を見つめた。
「Lとキルシュがハウスへ帰ってきた時…私は二人の墓標に誓いました。必ずキラを捕まえ、そして…の幸せを守る、と」
「………っ」
「それはメロも同じです」
「……二ア…」
その言葉に顔を上げると、二アは優しく微笑んでくれた。
「Xキラの正体も少しづつ分かってきました。今、間違いなく、キラを追い詰めていっている…。もう、夜神ライトの好きにはさせません」
キッパリと言い切る二アに、涙が溢れてきた。
この国でLを失った、あの日から、今日まで、私の戦いは続いてる。
この苦しみをどうする事も出来ず、一人で彷徨っていた頃は、Lの後を追うことしか考えてなかった。
だけど…メロが私を見つけてくれたから……生きる事が出来た。
もう、一人じゃないんだと、信じる事が出来た。
そして今は二アまでが、私の事を支えてくれている。
Lの後継者だった二人が……今もLの意志を継いで…私の事を守ってくれている。
それは、どんな事よりも、嬉しい事だった。
「…ありがとう、二ア……Lもきっと…喜んでるね」
私の言葉に、二アが優しい顔で笑った。
その微笑みに、胸の奥が熱くなる。
一人、死と隣り合わせでいた日々、泣いても、叫んでも、ずっと一人だった。
でも、これからは―――
一人ぼっちで泣く夜はもう来ない
ちょっと繋ぎですかねぇ。
気づけば原作でいうと11巻辺りです。
細かいとこははぶくので、これからは原作の流れじゃなくなるかも(;^_^A
いつも素敵なコメントをありがとう御座います!
ホントに励みになっております<(_ _)>
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■切なくなります。もう大好きです。文章の書き方が好きですww(大学生)
(ありがとう御座います!文章の書き方が好きだなんて、ホント嬉しいです(*TェT*)
■ニアも絡んできて、本当に面白いです☆こんな風にメロに思われたいです(笑vv(大学生 )
(そう言って頂けて凄く嬉しいです!これからも頑張りますね♪)
TITLE:群青三メートル手前