Dances with devil /code:01:Devil's daughter








世界は闇より生まれた――――――


果てなき闇 混沌の坩堝

だがその世界にも一条の光がさし やがて世界は二つに分かれた

闇の世は魔界  光の世は人界

二つの世界は共にあり続けた 長い永い間―――――だがやがて 闇の世に生まれた王が言う


"元は一つだったこの世界 再び統べんとして何が悪い?"


その時から闇は光を覆わんとし 光は闇から逃れようと抗った
だが人は脆く弱く 魔界の住人でもある悪魔の力になど敵うべくもない
深遠なる闇に光は喰らわれ 人界の命 尽きようとしたまさにその時 その者は現れた


―――SPARDA――スパーダ


魔の世界の住人でありながら 誇り高き魂を持った者

スパーダは同胞に仇なし 光の世のために剣を取る か弱き人の為に剣を振る
その剣は魔界の王さえ斬り伏せ 王を失った闇は力を失う

スパーダは闇の再来を恐れ その世界を封じた
闇に与した悪しき人々や 忌むべき己が闇の力と共に―――――


永らえた人々は彼を崇めた 人の世を救った英雄と
そしていつしか彼をこう呼び始める

スパーダ――――伝説の魔剣士

だがスパーダは人知れずその姿を隠し 人々は次第に彼の存在を忘れゆく

実在したはずの英雄は やがて伝説となり 伝説はやがて"おとぎ話"となり―――――そして二千年が過ぎた。


『Devil May Cry 3--code1より』














『――――悪魔の存在を信じる?』


そう問われても、普通の人生を送っている人間ならば、大抵は「NO」と答えるだろう。
"悪魔"などという存在は<想像>という能力を与えられた人間が、頭の中で作りだした産物…そう考えるのが現代の人間だ。
しかし、この城砦都市――フォルトゥナ――において"悪魔"は別段、珍しい存在ではない。
魔剣士、スパーダが魔界を封印した後、この地で領主を務めていたという伝説が、今も色濃く残っているせいだ。
子供達は親からその伝説を聞き、その親も、またその親から聞かされ、そうして物語は次の世代へと受け継がれていく。
こうして現代にまで語られることになったスパーダを崇める集団までが、このフォルトゥナには古くから存在する。
フォルトゥナで生まれた人間にとって、スパーダは神も同然なのだ。

この幼き一人の少女にとっても、それは同じ事だった。

「ママ、スパーダのお話、聞かせて」

午後9時を過ぎた頃。もうすぐ10歳になろうとしている少女は自分の就寝時間になると、言いつけ通り大人しくベッドに入りながら、明りを消し出て行こうとする母親に可愛くせがんだ。

「また?ホントに好きなのねえ」

愛娘の言葉に、母親が呆れたように笑ったが、少女も当然でしょと言いたげに微笑んだ。

「うん。だってカッコいいんだもん」
「そうね。でも今夜は…」

母親は困ったように言い淀んで窓の外に見える月を見上げた。
今宵、この地方で凶兆とされる"赤い満月"が怪しく輝いている。
不気味な赤い月光を見つめながら母親は不安げな表情だ。
無意識に動いた手は胸元で深紅に光る石をぎゅっと掴んでいた。
そのネックレスは母親がお守りがわりにしているもので、今は亡き夫からもらった物らしく、ダイヤ型に切りとられた石の周りには変わった紋様の装飾がなされている。

怯えたように月を見上げている母親の姿に、少女は内心おかしかった。

(ママってば月が赤い夜は不吉な事が起こるって本当に思ってるみたい。私達はスパーダ、それに騎士団にも守られてるのに…)

この街にはスパーダを崇める"魔剣教団"という宗教団体がおり、その中でも悪魔退治を任務とする"教団騎士"というものが存在する。
悪魔との戦闘に耐え得るための精神力と、鍛錬し、鍛え抜かれた肉体。
それらを持つ精鋭だけが入団する事を許可された、教団のエリート集団だ。
ここフォルトゥナは魔剣士スパーダゆかりの地だからか、それとも他に理由があるのか、世界的に見ても多くの悪魔が出現する土地だった。
そういった悪魔から市民を守る役目を担っているのが、この騎士団なのだ。
かくいう少女の父親も、この騎士団だったと、母親から聞かされている。
いや、騎士団だったというよりも、騎士団そのものを作り上げた最初の人物といっていい。

『あなたが生まれる前、お父さんは悪魔と戦って命を落としたの。私達市民を守って亡くなった英雄なのよ』

物ごころがついた頃、何故自分だけ父親がいないのか尋ねた時、母親からそう聞かされたのだ。
その話を聞いて以来、命をかけて市民を守った父親を、少女は誇りに思っていた。
そして例え悪魔が襲ってきたとしても、父の同胞である騎士団が自分達を守ってくれる、と少女は信じて疑わない。
更に付け加えれば、自分達は敬虔な魔剣教の信徒であり、神であるスパーダの威光に守られていると信じている。

(ママってばホントに心配性なんだから…)

心の中で思いながら、それでも少女は哀願するように母親を見上げた。

「…少しだけでいいの。話を聞きながらすぐ寝ちゃうもの」

娘のお願いに母親は小さく息をつき、仕方ないというように微笑む。
一度言い出したらきかない性格なのは自分譲りだと、母親も分かっている。

「…じゃあ眠くなったら、ちゃんと寝てね」
「うん」

母親がベッド脇の椅子に腰かけるのを見ながら、少女は嬉しそうに微笑んだ。
大好きなスパーダの話を聞きながら眠りに就くのが、少女にとって一番の至福の時なのだ。
それも彼の夢を見れるかもしれない、という子供らしい発想で。

「ちゃんと初めから話してね、ママ」

この土地では珍しい黒色の髪を肩まで伸ばした少女は、その髪とは異なる銀色の大きな瞳を、キラキラと輝かせた。
しかし、この少女から"ママ"と呼ばれた女性の容姿は、少女と全く異なっている。透けるように白い肌が同じという事を除いては。

「はいはい。分かってるわ―――遥か遠い昔昔…」

娘にせがまれた母親は、その綺麗なブロンドを指ですくい、耳にかけながら、静かに話し始めた。
スパーダについては色々な書物はあるが、そんなものを開く必要もない。
彼女は過去に、夫から何度も聞かされたスパーダの伝説を、全て覚えているからだ。

「自らの主であり、魔王であるムゥンドゥスを裏切り、人間側についたスパーダは――――」

少女は母親の優しい声にジっと聞き入りながら、この話の主人公である伝説の魔剣士に想いを馳せる。
身の丈ほどもある自分と同じ名前の大剣で魔王と戦ったスパーダは、どんな悪魔だったんだろう、と考えるだけでワクワクしてくるのだ。
話に聞けば、人型になったスパーダは銀髪に青い瞳をしていたという。
きっと素敵だったに違いない。少女は話に聞き入りながら、自らの想像で作り上げた魔剣士に、憧れにも似た感情を抱いていた。
父親が残してくれたこの屋敷にも、スパーダに関する伝書が多々ある事は少女も知っている。
時々、書斎に入ってはそういった書物を読みあさっているのだ。
彼女にとってスパーダとは、父親と同じくらいに身近な存在、英雄であった。

「…そうしてスパーダは魔王を倒し、魔界と共に――――っ」

話も佳境に入り、少女もウトウトし始めた頃。
外から獣の遠吠えのような声が聞こえて、母親はハッとしたように小さく息をのんだ。

「…ん、ママ…?」

睡魔はあったものの、突然話を中断した母親に、少女は"まだ起きてるのに"と抗議するよう薄っすらと目を開けた。
だが母親の青い瞳は娘を見てはおらず、ただジっと息を殺すように窓の外へと視線を向けている。

「…ママ?」

そこで母親の異変を感じた少女は、少し不安に思いながらもう一度声をかける。
しかし母親は娘の呼びかけに応える代りに、無言のまま立ちあがると窓の方へと歩み寄って扉を開け放った。
生前、父親が建てたと言うこの屋敷は、街の中でも少し高台にあり、少女の部屋の窓からはフォルトゥナの街が見渡せるようになっている。
遠くには魔剣教団、本部や、高い城砦で覆われたフォルトゥナ城――かつてスパーダが城主だった――がおぼろげに見えた。

「…ママ、どうしたの?外に何かいるの?」

無言のまま、ただジっと窓の外を眺めている母親の後ろ姿に、更に不安を煽られた少女は、上半身だけ起こして尋ねた。
窓を開けた事で赤い月明かりが、不気味に室内を照らしている事もあり何となく怖くなったのだ。


ギャァ────ッ!!!


しかし母親が応えるよりも先に、先ほども聞こえた獣のような鳴き声が、今度はすぐ近くで聞こえて、少女は伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。

「…な、何…?今の…」

ハッキリと聞こえた不気味な鳴き声に、少女が怯えながら窓の外へと視線を向ける。

「…来た..わ…。とうとう奴ら..が―――」
「何――――」

意味深なその言葉に少女は再び口を開きかけようとしたが、ふと母親の胸元が赤く光っている事に気づく。
それは、あのアミュレットだった。

「…ママ…それ何で光って――――」
、起きなさい」

母親は少女の言葉を遮るように言い放ち、慌てたようにベッドへ駆け寄ると、娘の手を無造作に引っ張る。

「マ、ママ?!」

こんな事は初めてだった。
""と呼ばれた少女は戸惑いながらも、自分の手を引く母親に、懸命について行くしか出来ない。

「マ…」
「…シッ。静かに…!」

再び口を開こうとする娘に、母親は何の説明もしないまま、唇に指をあてる。
そして二階の寝室から飛び出し階段を下りると、一階にある書斎へと駆け込んだ。
暗がりにぼんやり見えるのは、部屋の奥にある大きな書斎机と、壁に設置された沢山の本棚達だ。
母親は中へ入ると、すぐにドアの鍵をかけ、明かりもつけないままに、びっしりと本が詰まっている棚へと歩いて行く。
この書斎はもともと夫の部屋であり、普段は使ってはいない。時々が読書に入り浸るくらいだった。

「…ママ…どうしたの?何があったの?」

毛並みの深い絨毯を裸足のまま踏みしめながら、が怯えたように問う。
訳も分からず、寝ようとしていたのを叩き起こされ、書斎に連れてこられたは、ますます不安にかられているようだった。
しかし母親は何も応えないまま、真ん中の棚、それも一番下の段に詰まっている本を数冊取り出している。
は何故母親がそんな事をしているのか、さっぱり分からなかった。
だが本を抜いて空いたスペースに、母親が手を入れた瞬間――――

ギィィ…

重苦しい音と共に、その棚がまるで扉のように手前側へ開いたのを見て、は目を丸くした。

「何これ…」

壁に設置された、ただの本棚だと思っていたものが、ドアのように開いてるのをポカンと見上げる。
だが更に少女を驚かせるものが、棚の後ろに現れた。
てっきり壁だと思っていた場所に、何故か鉄製のドアらしきものがあったのだ。
"らしきもの"…というのも、そのドアにはどう見てもノブがなかった。

(――――隠し扉?)

これまで何度もこの書斎に来た事があったにとっても、初めて見るものである。
母親は手前に開いた棚を完全に開ききると、現れた鉄製のドアの前に立ち、そこへ両手をついた。
そして思い切り力を入れ、ドアを押していく。
押す事によって、ノブのないドアが重苦しい音を立てながら少しづつ奥へ開いていった。

「…ここ、何?」

ノブのないドアを開けると、そこには更に部屋のようなものが現れ、は再び驚いた。

「いいから、ここに入って」

ようやく口を開いた母親は娘の手を引いて現れた部屋の中へと入る。
中は思っていたよりも少し狭い小部屋になっていて、あるのはシングルのベッドと、木箱が二つだけ。
床は石畳がむき出しで、絨毯すらも敷いてなければ窓の一つもない。
――――いったい何のための部屋なのだろう?
そう疑問に思っているを、母親はベッドの上に座らせると、深呼吸を一つしてから、真剣な顔で口を開いた。

「いい?これからママの言う事を良く聞いて」
「……ママ…?」

これまで何を聞いても応えてくれなかった母親がやっと口を開いたと思えば、今まで見た事もない怖ばった表情で自分を見つめる。
母親のそんな顔を見た事がないは、そのただならぬ雰囲気に小さく喉を鳴らした。

「今からここに悪魔が来るわ」
「………っ?」
「だからあなたはここに隠れてて。何があっても声を出しちゃダメよ」

こんな突然、しかも悪魔が来ると言われたところで、にはピンとこなかった。
確かにその存在は認識しているし信じてもいる。
でも実際に見た事があるか?と問われれば、の答えは"NO"だった。
今までに悪魔が襲ってきた事もなかったし、まして家にまで襲撃してくるなどとは、もすぐには信じられない。

「な…何で…?」
「今は詳しく話している時間はないの…。とにかくあなたは隠れてて。分かった?」
「マ、ママは…?」

急な話で混乱はしているものの、は当然気になっていた事を尋ねた。

「私はこの屋敷に結界を張ったら戻ってくるわ」
「…けっかい…?」
「ええ。こんな日が来るかと、あなたのお父さんが用意してくれてたものよ」
「パパが…?」
「そうよ。完全にとはいかなくても多少の足どめは出来る。その間に騎士が来てくれれば…」

母親は娘に、というよりも自分に言い聞かせるよう呟いた。

「…騎士が来てくれたら私達助かるんでしょう?」
「ええ…。私は今からその準備をしに行く。だからあなたは大人しく待ってるの。出来るわね?」

母親に問われ、は一瞬言葉に詰まった。
正直に言えば一人で待つのは怖い。
見た事がなくても、悪魔がどれほど恐ろしい存在かというのは、色々な書物を読んで嫌というほど理解している。

(でも騎士が来てくれるはず…)

先ほど母親の口から騎士の話が出た事が、の不安を少しだけ軽いものにしてくれた。

「…分かった。待ってるわ、ママ」
「いい子ね」

の返事を聞き、母親はこの時初めて表情を緩めた。
そして不安げな顔の愛娘を一度強く抱きしめると、優しく頭を撫でる。

「いい?部屋の外で何が起きたとしても…何が聞こえたとしても、あなたは出てきちゃダメよ」
「…何かって…?ママ、戻ってくるんでしょう?」
「ええ…ええ、戻ってくる。でも…もし私が戻れなかったら…」

そこで母親は娘の体を離すと、悲しそうな笑みを浮かべた。

「朝になってから…ここを出て孤児院へ行くの。出来るかしら」
「…孤児院?シェスタのところ?」
「そうよ。いい?私が戻らなかったら…朝になるのを待ってシェスタを尋ねるの。出来るわよね」

シェスタとは、この街にある孤児院の院長であり、魔剣教団の敬虔な使徒だ。
も日頃から、よく可愛がってもらっている。
この屋敷からの孤児院への行き方も、はきちんと覚えていた。

「…出来るけど…でもママは戻ってくるでしょ?」

母親の言い方が気になり、もう一度その言葉を口にする。
まるで戻って来れないかのように話す母親が嫌だったのだ。
母親は娘の不安を察したのか、笑みを浮かべて頷いた。

「…もちろんよ」

きっぱりと言い切った母親に、今度こその顔に安堵の笑みが浮かぶ。
そんな我が子を、母親は再び抱きしめた。

「あなたにコレを預けておくわ」

母親は胸に下げていた"お守り"を外すと、の首へとかける。
あの深紅に光るアミュレットだ。今もかすかに怪しい光を放っている。

「これ…いいの?パパからもらったママの宝物でしょう?」

母親から預けられた物を見て、が目を丸くする。
が知る限り、母親がコレを外したところを見た事がない。それほど母親にとっては大切な物だと分かっていた。

「いいのよ。これは半分はあなたの物でもあるの。パパのあなたへの想いがこれに沢山つまってる」
「パパの想い…?」
「そう。きっとあなたを守ってくれる…」

母親はそう言うと、の赤みがさした頬を優しく撫で、ドアの横にあるレバーを指差した。

「いい?出る時はこのレバーを思い切り手前に引けばドアが開くわ。もし私が朝までに戻らなかった場合、これを引いて外に出るの。分かるわね」
「うん…」
「いい子ね。じゃあ…大人しくしてて」
「ママ…早く戻って来てね」

怖いのをこらえながらも、涙を浮かべる愛娘に母親の瞳がかすかに揺れた。
零れ落ちそうになった涙を指で拭い、最後にもう一度だけ娘を抱きしめ、その小さな額に口づける。

「…Ti amo――愛してるわ――」

普段は使わない母国語で呟く。
同時に彼女は娘を残し、隠し部屋を出ると、重たいドアを再び閉じる。最後に見えたの泣き顔だけが脳裏に焼きついた。

「ごめんね…

ドアに手をつき、小さく呟かれた母の言葉は、の耳に届く事はない。
それでも愛おしそうにドアを撫でると、彼女、イリーナは急いで反対側の棚へと歩み寄った。
そして再び真ん中の棚の一番下にある本を数冊ほど抜くと、空いたスペースへ手を入れ、とあるスイッチを押す。
瞬間、深紅色の怪しい光が屋敷全体を包み込んだ。

――――守護結界。

それはイリーナの夫であるカーロが、愛する妻と娘の為に用意してくれたものであった。
これなら下級悪魔がどれほどの数で来ようと、多少の時間稼ぎは出来るはずだ。
イリーナは結界が屋敷を覆ったのを確認し、すぐに書斎机の上の電話を取る。
魔剣騎士団本部に直通の番号を押せば、昔からの知人でもある騎士団の長、ミハエルがすぐに出た。

『…もしもし』
「もしもし!ミハエル?私よ――――」

相手に名前を伝えようとした刹那―――ガシャーン!というガラスの割れる音が屋敷に響き渡り、イリーナはビクリと体を震わせた。

ギィァーーーッ!

頬に刺すような冷気を感じた瞬間。すぐ近くで獣のような咆哮が聞こえ、イリーナは目を見開く。
それは悪魔が屋敷内に侵入した事を示していた。

(バカな…!あの結界がすぐに破られるなんて――――)

慌てて窓の外を見たが、先ほどまで屋敷を包んでいた深紅の光が僅かに消えかかっているのを見て、イリーナは再び受話器に飛びつく。

「もしもし?!ミハエル…!イリーナよ!お願い急いで――――」

そう叫んだ瞬間、書斎のドアが物凄い音と共に破壊され吹き飛んだのを、イリーナは信じられない思いで見つめていた。

「…あ…」
『もしもし?!イリーナ!どうした?何があった!』

受話器の向こうからミハエルの緊迫した声が聞こえて来たが、イリーナは返事をする事が出来なかった。
ひどい冷気に、唇から洩れる吐息が白くなる。奥歯がガチガチと鳴るのは恐怖というよりも寒さからだろう。
目の前に現れた悪魔は三匹。まるでトカゲのような形態で、氷の鎧を全身にまとっている。
森でよく出没している下級悪魔のスケアクロウとは違い、目の前にいる悪魔を、イリーナは見た事がなかった。

(こんな悪魔、見た事がない…こいつらが結界を破ったというの――――?)

子供を産む為、引退したとはいえ、イリーナも過去に、魔剣教団初の"女騎士"として悪魔と戦った事のある身だ。
これまでに色々な悪魔と対峙した事がある。しかし今、我が家に不法侵入してきた悪魔たちを、イリーナは知らなかった。

「…なるほどね。スケアクロウなんかよりも、ずっと上級の悪魔ってわけ…予想外だったわ。で…"ダレ"の使いで来たのかしら」

イリーナは受話器を放ると、ゆっくりと自らのドレスを捲り、太腿に携帯してあるホルスターから銃を掴んだ。
それを一番手前の悪魔に向ける。
それは引退後にイリーナが愛用していたオートマチック製の銃だった。

現役の騎士だった頃のイリーナは、銃など一切使わなかった。
魔剣教団はその名の通り、"剣"という存在が非常に重んじられているからだ。
神と崇められるスパーダが、一振りの剣を持って、悪魔の軍勢を打ち倒したという伝説があり、その伝説を元に作られた魔剣教団も、「携えるは一振りの剣」という概念を非常に強く持っている。
だからイリーナも、女の身でありながら自らの剣を武器に戦ってきた。

しかしフォルトゥナはいつ悪魔に襲われるか分からない土地柄でもあり、引退したとはいえ丸腰で出歩く、というのは、あまりに危険だ。
といって剣など目立つ物を持ち歩くわけにもいかない。(これでも彼女の過去を知らない街の人達には優しい母親で通っているのだ)
そこで思いついたのが、女性の手にも馴染みやすいハンドガンだった。
"元騎士"が銃などマズイかとも思ったが、そこは大目に見てもらうしかない。
イリーナも自分の身だけでなく、亡き夫の代わりに我が子を守らねばならないのだ。
そんな事情で、この9年ほどは銃の腕も自分なりに鍛えて来た。もちろん"対悪魔用"に改造してある。

(…といっても、身体中、氷漬けのこの悪魔に銃なんか大してきかないわよね…。)

そう考える間もない。
氷漬けの悪魔は先ほどの奇怪な鳴き声を再び上げると、腕をイリーナの方へと突き出した。
その瞬間、叫び声と共に弾丸のような氷を飛ばし、それがイリーナの腕を掠める。

「…ちぃっ!」

先ほどまで見せていた優しい母親の顔から一変。
淑女らしかぬ舌打ちをしたイリーナは床を転がるのと同時に何発か悪魔へと発砲する。
しかし予想通り、厚い氷で守られている身体は、その弾丸を簡単に弾いた。―――が、更に同じ場所へ素早く弾丸を撃ち込む。
それも最大9発まで連射出来るよう改造した、この銃ならではだ。
これでも銃の腕はいいと自負している。同じ場所へ弾を撃ち込む事など、イリーナにとっては造作もない事だ。
そしてそうする事で悪魔の身体を覆っている氷が次第にひび割れていくのをイリーナは見逃さなかった。

「…やだやだ。歳は取りたくないものだわ。昔ならこんな雑魚、一撃でラクラク仕留められたのに」

溜息交じりでボヤいたイリーナは、徐々に近づいてくる氷の悪魔―――この際フロストと呼ぼう―――を睨みながら、再び銃を構える。

(剣で戦う方が早いけど…二階まで取りに行く暇は与えてくれそうにないわね…。仕方ない。この場はコレで凌ぐしかないわ)

時間は食うが、連弾ぶち当てれば殺れない事はない。元騎士としての本能で、イリーナはそう感じていた。
そしてまず、最初の一匹を、その方法で仕留める。氷を破られ肉体に連弾を食らったフロストは、奇声を発しながら一瞬にして蒸発した。

「―――まずは一匹」

他の二匹の動きを冷静に確認しながら、窓際へと移動し、距離を取る。その間に素早く弾の補充をした。

(こいつらだけとは思えないけど…とりあえず時間を稼がなくては…。さっきの電話でミハエルが状況を察して今頃こっちに向かっているはずだし…)

ミハエルとはイリーナが騎士団にいた頃の後輩でもあったが、気心の知れた友人の一人だった。
その実力ゆえに、30という若さで騎士団の長となったらしく、イリーナも最近その報告を受けたばかりだ。

(大丈夫…ミハエルは優秀な男だもの。きっと来てくれる)

イリーナはそこに賭けて、騎士団が到着するまでの間、この場をどう凌ぐか考える。
そして今にも飛びかかってこようとしているフロストへ再び銃口を向けた瞬間―――背後の窓ガラスが突如砕け散った。

「…くっ!」

鋭い激痛が首筋を走ったのと同時に、イリーナの手から銃が落ちた。
一瞬、何が起きたのか分からないまま、骨に何かが食いこむ鈍い音を聞いていた。

(…獣…?)

その気配から、己の首元に牙を立てている物体を視認しようと、イリーナは視線だけ動かした。

「………ッ?」

闇に映える眼光、生臭い息、そして全身を覆っている硬そうな体毛。――――それはどう見ても獣だった。
それも狼に酷似している、とイリーナは思った。しかもかなり大きい。
2メートルはゆうに超えているであろう、その悪魔を見て、イリーナは絶望的な気分になった。

≪…ほう。これで死なないとは…さすがに元騎士だけあってタフだな≫

「―――――ッ」

イリーナの首筋からズルリと牙を抜き、その悪魔は人間の言葉を口にした。上級の悪魔にだけ時々人の言葉を話す悪魔がいるのだ。

(…狼が人の言葉を話すなんて…まるで"マンナーロ"ね…)

マンナーロ、とはイタリア語で"人狼"を現す言葉だ。
そんな事をかすかに思いながら、不意に自由になったイリーナは、脆くもその場へと崩れ落ちる。
突如現れた獣型の悪魔――マンナーロによってつけられた傷口からは、どくどくと赤い血液が流れて行くのを感じる。
何か言い返そうにも、溢れた血が喉を塞ぎ、激しく咽せかえってしまう。

「お…前…っ」

無理やり声を発したところで、出血がひどくなるだけだった。
喉の奥からは吸い込んだ空気と、溢れてくる血の混じり合ったゴボゴボという、嫌な音が漏れてくる。
悪魔が目の前に立っているのに、イリーナは床に這いつくばり、殺意をこめて睨む事しかできない。

≪お前はもう死ぬ。その前に――――アミュレットを渡せ≫

「…ッ…そ…んな…物…知らな…」

やはり目当てはそれか、とイリーナは思った。
分かっていたのだ。"アレ"を預かった時から、こんな日が来る事を。

≪知らぬはずはない。さあ、どこにある?言わねば貴様は、こいつらの餌になるぞ。同じ死ぬにも五体満足で死にたいだろう?≫

マンナーロが、低い声で脅してくる。
その後ろにはフロストが今にも襲いかからんと、先ほどから唸り声をあげていた。

「…う…るさ…いっ…犬…は…飼い…主と…散歩…でもして…な…っ」

激しく咽ながらも、イリーナは精いっぱいの抵抗をした。
これでも英雄カーロの妻、そして元騎士としてのプライドがある。どんな状況でも悪魔に弱みなど見せるものか。
イリーナの瞳には、そんな強い意志が宿っていた。

≪…舐めおって!たかが人間風情が我らにはむかうとは!≫

イリーナの態度は悪魔の怒りを買ったらしい。マンナーロは野太い声で絶叫すると、イリーナの髪を無造作につかみ上げた。

「………っ」

≪すでに声も出まい。お前の命はもうすぐ尽きる。その前にアミュレットを渡せ…っ!≫

最初から、たかが人間の女一人、と侮っていたのだろう。
自らの死が迫っていても命乞いをしないイリーナを前に、マンナーロは少しだけ焦りの色を見せた。

≪強情な女だ…さすがカーロの妻だっただけある…。彼が魔界にいた頃はとても気高く、強かった。スパーダの右腕として圧倒的な強さを誇っていた≫

「…………っ」

≪それが裏切り者のスパーダ側につき、我々同胞を裏切った…あげくお前のような人間と交わるとは…!≫

マンナーロは怒りにまかせ遠吠えのような怒号を上げた。
だがそこで、ふとイリーナを見下ろす。

≪そうだ…確かカーロとお前に子供がいたな…。まさかアレをその子供に?≫

「―――――ッ」

突然愛娘の話を持ち出され、イリーナは朦朧とする意識の中、必死に首を振る。
しかしマンナーロには通用しない。イリーナの必死な態度で、それが事実なのだと気付いたようだ。

≪…フフ…そうか。アミュレットはその子供が持っているのだな?≫

「……違…」

≪いいだろう…母親だけ死なせても不憫だ。すぐに子供を見つけ、同じ場所へと送ってやろう≫

(やめて!あの子には手を出さないで…!)

そう叫びたいのに声が出ない。手足も動かない。

(早く…早く来て…ミハエル…!)

イリーナの髪から手を離し、ゆっくりと部屋の中を見渡すマンナーロに、イリーナは心の底から叫んでいた。
そんな彼女をあざ笑うかのように見下ろすと、マンナーロは鋭い爪を振り上げる。

≪案ずるな…。しょせん悪魔と人間の間に生まれた子など、畏怖されるべき存在なのだ。今ここで葬ってやるのが一番だろう?≫

勝手な事を、とイリーナは叫びたかった。だが再び彼女の喉元目がけ爪を立てようとする悪魔を、睨む事しか出来ない。

≪さあ。楽になるがいい――――≫

その怒号と共に、フロストの咆哮が更に響き渡る。

(……ごめん…ごめんね、…。ママ、やっぱり戻れそうにないわ…)

己の死を覚悟したイリーナは、最後に見た愛娘の泣き顔を思い出していた――――その刹那。


「――――ママから離れて!!!」


薄れゆく意識の中、我が子の声が、聞えた気がした。









≪――――これはこれは。自ら出て来てくれるとはありがたい≫

いつから、そこにいたのか。
幼き少女の姿を目にとめ、マンナーロはニヤリと笑った。。
――――この少女が、この女とカーロの間に出来た子だろう。
探す手間がはぶけた、と思いながら、マンナーロはイリーナにとどめを刺そうと振り上げた腕を下ろすと、目の前で自分を睨みつけている少女を見下ろした―――はず、だった。

≪―――――ッ?!≫

不意に下ろしたはずの腕が軽く感じられ、同時に激痛を感じたマンナーロは、信じられぬ思いで足元の少女を見つめていた。

≪き…貴様ぁぁ!!いったい何をしたぁ!!≫

左肩を手で押さえながら全身を震わす。今は何も無くなった腕の先からはボタボタと血液のようなものが零れ落ちて来た。

≪…おのれ、腕を…!≫

気付けば肩から下が、ない。その言葉通り、何もないのだ。しかも何かで焼き切ったかのように、傷口は若干焦げていた。
落ちた腕はすぐに塵となって消えて行く。
いや、失った腕は"超速再生"で戻るからいい。しかし攻撃を受けた記憶がない事が、マンナーロには不思議でならなかった。

(もしや、この女が?)

腕が再び戻って行くのを感じながら、背後で倒れているイリーナを見やる。
だがイリーナにそんな力が残っているとは到底思えなかった。
彼女の眼は瞳孔が開き、呼吸も浅く速い。今にも命がつきそうだからだ。

≪やはり貴様か、ガキ…。しかし―――どうする?腕はこの通り再生した。前と同じ力を出すには少々時間がかかるが…お前を切り刻むには十分だ≫

「…ママから離れて……」

マンナーロが一歩、近づくと、少女が低い声で呟く。表情は良く見えないが、彼女に怯えた様子はない。
大したガキだ、とマンナーロは思った。大抵の人間は自分の姿を見た瞬間から恐れ、泣き喚き、命乞いをする。
しかし目の前の少女はまるで怯えた様子などなく、真っすぐにマンナーロだけを見ている。
腕が元に戻ったのを見ても、無表情のままだ。

(カーロ…そしてこの女のガキなだけはある。瞳の色は奴にそっくりだ)

思いながら、また慎重に一歩近づく。
どうやったかは知らないが、鋼のような硬さを誇るマンナーロの肉体を傷つけ、それも腕を切り落としたのだ。
どんな武器を隠し持っているか分からない。
が、その時、マンナーロは気付いた。少女の胸元で怪しく輝いている深紅色の石に。

≪…おお…!それは我が主が欲している石…。やはりお前が持っていたのか…≫

それがいつから光っていたのかは分からない。
だがマンナーロが気付いた時には、その輝きがいっそう大きなものへと変わっていた。

≪何と禍々しい魔力…。これなら主も目覚める事が出来るだろう―――それを寄こせ、ガキ。そうすればお前の命までは取らない≫

石の放つ魔力溢れる輝きに目を細めながらも、マンナーロが嘯く。
当然助ける気などない。石を手に入れれば目の前の少女を八つ裂きにして母親と同じ目に合わせてやる。
それがオレの腕を落とした罪なのだ。そんな殺意を隠し、マンナーロはまた一歩、少女に近づく。

「…悪魔は嘘つき…」

≪…何?≫

不意に少女が呟く。

「…悪魔は嘘つき…狡猾で…残忍で…私達を食い物にする…悪魔は敵…人間の敵…。悪魔は嘘つき…」

少女は同じ言葉を何度も何度も繰り返す。その姿はマンナーロをひどく苛立たせた。

≪黙れガキ!!さあ…石を渡せ――――さもなくばお前の母親の首を喰いちぎるぞ!!≫

マンナーロがイリーナの髪を鷲掴みにし、彼女の顔を少女へと向ける。
イリーナの瞳は、もはや何も見てはいなかった。ただ空虚を見つめる意思のないガラス玉のようだ。
マンナーロのその行動は少女の精神をいたぶる為だけの行為でしかなく、とても残忍な方法だった。
命の火が尽き果てる寸前のイリーナ、いや母親の顔を、少女はその瞳に焼きつけることになった。

「…なせ…」

≪……っ?≫

少女が何やら呟いたと思った刹那。
深紅の光が更に輝きだし、マンナーロはその眩さで思わず顔を反らす。

「―――――離せ!!!!」

≪…くっ…貴…様…!!≫

少女の感情が一気に爆発した瞬間――――部屋全体が真っ赤に染まり、紅蓮の炎がマンナーロを一瞬のうちに包んだ。

≪…ぐぁぁぁっ!!!≫

フロストの存在で氷点下まで冷え切っていたはずの部屋が、一瞬のうちに灼熱に包まれ、マンナーロはたまらず吠えた。
抵抗しようにも身体は動かず、全体を覆っている体毛が一気に燃え始める。

「……悪魔は嘘つき…狡猾で…残忍で…私達を食い物にする…悪魔は敵…人間の敵……」

≪き…貴様、いったい…っ≫

身体を燃やそうとする炎を払いながら、マンナーロはゆっくりと近づいてくる少女を見て、初めて怯えた顔を見せた。
不思議な事に、足元に倒れるイリーナの体はもちろんの事、部屋の絨毯やカーテンは一切燃えてはいない。
まるで対象は悪魔だけだとでもいうように、紅蓮の炎はマンナーロ、そして二匹のフロストを襲う。

ギィァァァーーーーっ!!

氷で覆われていたフロストも、炎の勢いには勝てなかった。
叫び声をあげて、脆くもその体は一瞬で蒸発してしまったようだ。

≪こ、この力……き、貴様、まさか――――≫

フロストが蒸発する様に、マンナーロは過去にも似たような光景を見た事があるという事に気付いた。
そして改めて、近づいてくる少女へ目を向ける。
真っ赤な炎に包まれた少女は、もはや先ほどの姿ではない。少女の変わり果てたその姿に、マンナーロは小さく唸り声を上げた。

≪お…おお!!そ…その姿…銀髪に銀の瞳…!そして纏う紅蓮の炎…!まさに"炎帝カーロ"…っ≫

かつて――――憧れてさえいた悪魔の雄姿が蘇ったような、そんな錯覚に陥る。

「悪魔は嘘つき…狡猾で…残忍で…私達を食い物にする…悪魔は敵…人間の敵――――」

同じ言葉を繰り返す少女の容姿は、すでに少女ではなかった。
漆黒だったはずの髪は銀色に輝き、その色と同じ瞳は禍々しい光を放っている。
そして少女を覆う紅蓮の炎に、紫色のオーラが混じり始めていた。
闇の住人でしかもちえない力――――デビルトリガー。

≪…貴様…やはり魔力を――――≫

無意識にしろ、少女がデビルトリガーを引いた事で魔力が混じった炎の勢いが更に増した。
マンナーロは耐えきれず、窓際へと下がり、先ほどまでは、ただの獲物でしかなかった少女を睨む。

「…悪魔は敵…殺すべきもの…悪魔は敵…闇へ還す存在…」

ゆっくりと近づいてくる少女に、マンナーロは初めて恐怖を覚えた。
少女の様子から意識があるかも疑わしいが、攻撃しなくても分かるほどに、禍々しい魔力を本能で感じる。
腕も元に戻ったとはいえ、完全に力が戻るまでは時間がかかる。それに全身炎に包まれ、肉体は灰になる寸前だ。
このまま戦闘しても無事で済むかどうか――――

(口惜しいが…今は引くのが正しい)

こんな子供を前に、尻尾を巻いて逃げだすのは腹立たしいが、悪魔とて命は惜しい。
相手の力がどんなものかも分からず、手負いのまま戦うのは危険だと判断した。
"獲物"は見つけたのだ。この事だけでも主に伝えねばなるまい。
マンナーロはそう決断すると、少女から少しづつ距離を取り、窓枠の外へとその身を投げ出す。

≪…次に会う時は必ず喰い殺してやる!!それまで、せいぜい生き延びていろ。カーロ…いや、悪魔の娘よ!≫

空中を真っ逆さまに落ちていきながら、マンナーロは叫んだ。そして一瞬にして闇へと消える。
窓の前に立った少女は、感情のない瞳でそれを眺めていた。
だがマンナーロの気配が消えたのと同時に、ふと胸元に輝く石の光が弱まる。
そして少女の体を包んでいた炎も石の失光に合わせるかのように、急速に弱まって行った。

「……マ…マ」

赤く染まっていた光が消え、再び書斎に闇と静けさが戻る。同時に、少女の瞳には感情が戻っていた。

「…ママ…」

足元に倒れている母親を見て、少女が呟く。しかし何の反応もない。
イリーナの命はすでに尽きていた。

「……ママ…」

少女はそれを理解したかのように声を震わせると、その場へと静かに崩れ落ちた――――――





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