久しぶりの快晴で、気持ちいいくらいの風に、目を細めて空を見上げる。
見事なまでの青空に、思わず笑顔になった。
そして視線を前に戻せば、はるか下方に、目的の里が姿を現した。
「やーっとついたじゃん…あー疲れたぁ〜」
「何よ、だらしない」
溜息交じりでしゃがみこんだカンクロウに、テマリさんが呆れたように笑う。
我愛羅は相変わらずの無表情だったけど、私の視線に気づき、かすかに微笑んでくれた。
最近の我愛羅は以前と違い、時々こうして笑ってくれる。
こんな風に我愛羅を変えてくれたのは、この里にいる少年だ。
「風影さま!お迎えに上がりました」
その時、前方から木の葉の使者だという忍が現れ、私達を火影邸まで案内してくれた。
明日は5代目火影さまでもある綱手さまの誕生日で、我愛羅は同盟国でもある砂隠れの代表、風影として招待されたからだ。
最初は驚いたものの、珍しく我愛羅も承諾し、木の葉へと来る事になった。
今は暁問題で砂隠れも大変な時だから、なるべく人員削除として、我愛羅の護衛に私やカンクロウ、テマリさんが任命されたのだ
「おお、遠路はるばる、よく来てくれたな、我愛羅。いや、もう風影と呼んだ方がいいか」
「…本日はお招き頂き、ありがとう御座います」
我愛羅は風影らしく、一歩前に出ると、綱手さまに軽く頭を下げる。
それを見て、綱手さまは手を左右に振りながら苦笑いを浮かべた。
「堅苦しい挨拶などいい。それより……里の方はどうだ?落ち着いたか?」
「はい…。でも今は砂隠れも人手不足なので、まだまだ、かかりそうです」
我愛羅の代わりに私が説明すると、綱手さまは小さく息をついた。
「そうか…お互いに大変だな…まあでもお前達がいれば、すぐに里も元通りになるだろう」
綱手さまは私達を見て笑うと、ふと窓の外を見て徐に顔を顰めた。
「早速、聞きつけてきたようだな…うるさいのが来た」
「…うるさいの…?」
その言葉に首をかしげれば、綱手さまは溜息交じりで笑い、窓の外を指差した。
「挨拶はもういい。どうやら、お前達に会いに来たようだし…顔でも見せてやってくれ。今回は正式な客人だ。滞在中は自由に過ごせ」
「………」
その言葉に我愛羅と顔を見合わせる。
「おーーーい!!綱手のバァちゃん!我愛羅が来てるってホントかぁ〜?!」
「「―――ッ」」
その時、窓の外から大きな声が聞こえてきた。
「我愛羅ぁ〜!よく来たってばよ!!」
「…ナルト…」
外に出てみると、明るい笑顔で、うずまきナルトが走ってくる。
彼が我愛羅の色んな意味での恩人だ。
「久しぶりー!我愛羅ー!」
「―――ッ!!」
ナルトくんはそう言いながらぎゅうぎゅうと我愛羅を抱きしめた。
そのいきなりの攻撃に我愛羅は少し(いやかなり)驚いたようだったけど、それでもどことなく嬉しそうだ。
するとナルトくんは不意に我愛羅を離し、こっちを見た。
「お♪カンクロウにテマリまでいるってばよ〜!」
「よぉ、ナルト。相変わらず、賑やかだな」
半分、嫌味を言いつつ、カンクロウが笑っている。
その時、不意にナルトくんと目が合った。
「あれ…お前ってば確か我愛羅の…付き人だった…」
「…よ。久しぶり、ナルトくん」
「おー!かぁ!久しぶりー!綺麗になってっから最初、分からなかったってばよ!」
「……き、綺麗って…」
いきなり、そんな事を言われて、頬が赤くなる。
ナルトくんは何も考えずに、そんな事をアッサリ言ってくるから、時々驚かされる事があった。
「元気にしてたか?」
「うん。ナルトくんも相変わらず元気そうね」
「まーな!それがとりえだしよ!しっかしホントに変わったなぁ〜」
「そ…そう?」
「うんうん、変わったってばよ!だって最初に会った頃はこう…殺気丸出しでオレのこと殺そうとしたしよ!」
「あ、あの時は敵だったし…それにナルトくんが我愛羅を侮辱したから――」
「分かってるってばよ!いやぁーでも今思うとアレもいい思い出だな、うん!あははは!」
「………」
「相変わらず、我愛羅と一緒にいるんだな♪」
「そ、そりゃ…」
大笑いしながらバシバシ私の背中を叩いてくるナルトくんに、皆も苦笑いを浮かべている。
けど一人だけ、不満そうな顔をしてる人がいた。
「おい、ナルト…」
「ん?何だ、我愛羅」
「……あまり…に馴れ馴れしくするな」
「へ?」
「………ッ」
その一言にドキっとして振り向くと、我愛羅は僅かに視線を反らし、腕を組んでいる。
それは我愛羅が機嫌の悪い時にする仕草だ。
「何だってばよ…急に怖い顔して……せっかく久しぶりに会ったってのによー!なーに怒ってるんだってばよ〜!」
「…うるさい。怒ってなどいない…」
「怒ってるってばよ、その目!」
「…く…そんなに顔を近づけるな…」
顔を覗き込まれ、我愛羅は眉間に皺を寄せると、一歩あとずさっている。
その様子を見て、テマリさんは苦笑しながら私の肩をポンと叩いた。
「我愛羅の奴…ヤキモチ妬いてるみたいだよ?」
「…えっ?」
「…あんな我愛羅、初めて見るけど絶対、ヤキモチだね。女の勘だ」
テマリさんはそう言ってニヤリとすると、私の事を肘で突付いてきた。
「我愛羅と何があったのさ」
「…ぇ?!」
「最近、何か怪しいと睨んでたんだ。さあ、白状しな♪我愛羅と何があった?ん?」
「ちょ、あの…」
ずんずんと迫ってくるテマリさんに、思わず首を窄める。
そして未だナルトくんに追い込まれてる(?)我愛羅を見た。
"オレの為に生きて欲しい"
先日、我愛羅に言われた言葉を思い出し、一気に顔が赤くなる。
あの夜の事は、まだ誰にも話していない。
たとえ我愛羅の実の姉であっても、あんなこと、言える訳がない。
「な、何もないです」
「嘘おっしゃい!我愛羅だって最近おかしくなったんじゃないかと思うほど明るくなったのは私だって知ってんだよ」
(お、おかしくなったって、ちょっとテマリさん……それ言いすぎ)
内心、そう突っ込んでいると、テマリさんの背後に誰かが立った。
「何をしている」
「あ…」
「が、我愛羅…」
テマリさんは青い顔をして振り返った。
見れば我愛羅は仏頂面をしながら、腕組をしたまま、テマリさんを睨んでいる。
ナルトくんまでが不思議そうな顔をしながらこっちに歩いて来た。
「…またをイジメてたんじゃないだろうな…」
「ま、まさか!そんな事するはずないだろ?はもう砂隠れの一員として認めてる」
「なら何をコソコソ話してる」
「う…い、いやだからそれは…」
テマリさんも我愛羅には未だに弱いらしい。
あの目つきでジロっと睨まれると、額に汗をかきながらも笑顔で誤魔化している。
「あ、あの我愛羅、何でもないの。ちょっと女同士の話をしてただけだから」
「……女同士の話…?」
「そ、そうなんだよ、我愛羅!」
私の言葉にテマリさんも合わせてくれる。
そんな私達を交互に見ながら、我愛羅は訝しげな顔をした。
「おい我愛羅。女ってのは時々こんな風に内緒話するのが好きな生き物なんだってばよ!」
「ナルト…」
その時ナルトくんが話に割り込んで来た。
「こういう時は男は入っちゃダメなの。前にサクラちゃんといのの話に入ろうとしたら、オレ、すっげー勢いでぶっ飛ばされてよー。ホント女って怖いよなあ?」
「……………」
ナルトくんの言葉に、我愛羅は何ともいえない顔をしつつも、どうやら納得してくれたようだ。
軽く息を吐くと、私の頭に手を乗せ、
「ならいいが…またイジメられたら、その時はすぐに言え」
「…へ?」
「ちょ、ちょっと我愛羅…だから私はもうそんな事しないって〜っ」
テマリさんは慌てたように首を振った。
その様子を見ながら、カンクロウは笑ってるし、ナルトくんは頭の上にクエスチョンを出しつつ、小首をかしげている。
我愛羅が心配するのも無理はない。
私が砂隠れに連れて行かれた時、テマリさんは猛反対したからだ。
我愛羅の命を狙って忍び込んだ敵を、快く迎えてくれるはずもなかった。
それでも我愛羅の意向で私を砂の一員にしてくれたけど、テマリさんはいつも私に対し、冷たく当たっていた。
でもいつだったか、我愛羅が再び暗殺犯に狙われた時、私が命がけで戦ったのを見て、認めてくれたのだ。
敵の人数は多く、とても我愛羅一人では戦えない状況の中、私も大怪我を負いながら、必死で我愛羅を守った。
後から騒ぎをききつけて駆けつけてくれたテマリさんやカンクロウも、それを見て、初めて私に「我愛羅を守ってくれてありがとう」と言ってくれたのだ。
それからは、本当の妹みたいに可愛がってくれている。
でも我愛羅は見かけによらず心配性なのか、未だテマリさんが私に意地悪をしてると勘違いする事も多かった。
「ナルトー!」
「あ、サクラちゃん!」
その時、通りの向こうから誰かが走ってきた。
よく見れば、ナルトくんと同じチームのサクラという女の子で、後ろには奈良一族のシカマル、そして犬を連れたキバという男の子達までいる。
3人はこっちまで走ってくると、笑顔で迎えてくれた。
「我愛羅くん、ちゃん、テマリさん、カンクロウさんも、お久しぶりです」
「よう」
「久しぶりじゃん」
「ワンワン!」
「へへ、赤丸も久しぶりっつってるぜ」
「こうして皆で顔を合わせるのは、サスケ奪還任務以来だっけかな」
シカマルくんはそう言って苦笑すると、テマリさんを見て、「おっす。元気そうだな」と手を上げた。
それにはテマリさんも「お前も元気そうだな」と挨拶をしたけど、少しだけ頬が赤い気がする。
(そう言えば…テマリさんてば、木の葉に来る事が多くなったんだっけ…。まさか…何かあるのかな、あの二人)
さり気なく二人を観察して見ていると、テマリさんは、「こいつとちょっと茶でも飲んでくる。我愛羅たちは先に宿に行っててくれ」と言い出した。
それにはカンクロウもニヤリとして、「勝手に行けよ」と笑っている。
「じゃーな、我愛羅、カンクロウ、ちゃん。また後で」
シカマルくんも素直にテマリさんの後についていくのを見ながら、私の女の勘が働いた。
(この二人…やっぱり怪しい…)
「…どうした?」
「…あ、何でもない…。えっと…宿ってどこだっけ」
「ああ、それオレ達が案内するよう言われてきたんだ。ナルトの奴、今回の事、何も知らないまま飛び出したからよ」
キバくんはそう言って笑うと、ナルトくんが再び小首をかしげた。
「そう言えば…何で我愛羅たちがいんだってばよ?」
「え……(知らないで会いに来てたの?!)」
「ほーらな?」
ナルトくんのボケに、キバくんが苦笑した。
その足元で赤丸もワンワンと笑って(?)いる。
「我愛羅くんたちは、明日の綱手さまの誕生日を祝いに来てくれたのよ、ナルト」
「えっ?そうなの?!」
サクラちゃんの説明に、目を丸くしたナルトくんは、返事を促すようにこっちを見た。
我愛羅が無言で頷くと、ナルトくんは頭をかきながら、「なーんだ、そういう事かぁ〜」と笑っている。
やっぱりナルトくんって天然みたいだ。
「オレ、てっきり、遊びに来てくれたんだと思った」
「バカね、ナルト!我愛羅くんは今じゃ風影さまなのよ?色々忙しいのに遠い木の葉まで、ただ遊びにくるわけないでしょ」
サクラちゃんは呆れたように溜息をつき、「あ、じゃあ案内します」と、微笑んだ。
木の葉で泊まる宿は綱手さまが用意してくれているらしい。
すでに疲れたと連呼しているカンクロウは、欠伸をしながらサクラちゃんの後をついていく。
ナルトくんは我愛羅と話しながら、時々何かを突っ込んでいるようだ。
(多分、風影になった我愛羅に火影になると豪語してるナルトくんが絡んでるんだろう)
我愛羅も少しづつ慣れてきたのか、ナルトくんの突っ込みに突っ込みで返す、という今までに見たことがないコンビネーションを見せていて、思わず笑みが零れた。
「お、あの我愛羅がナルトに突っ込んでるぜ…。変われば変わるもんだな」
私の隣にいるキバくんは前の二人を見て、そんな事を言っている。
確かに私も少しだけ驚いていた。
「我愛羅は…もう昔の我愛羅じゃないの」
「…え?」
「ナルトくんに会って…救われたのよ」
「救われた…か。まあ…よく分かんねーけど…何となく分かるかな。ナルトって、何か知らねーけど不思議な力、持ってっからさ」
「…うん」
「ワンワン♪」
その時、足元に赤丸が来た。
「ふふ、可愛い。ね、撫でてもいい?」
「ああ、いいぜ。あ、でも今日、修行した後、洗ってないから犬くせーかも…」
「ううん、いいの。犬は大好きだし」
そう言って赤丸を撫でると、嬉しそうに尾っぽを振って私の顔をぺろぺろ舐めてきた。
「くすぐったいよ、赤丸」
「へへ…。赤丸もちゃんのこと、好きみたいだな」
「ホント?嬉しいな」
そう言って赤丸くんを撫でながら、ぎゅっと抱きしめる。
ふわふわしてて気持ちがいい……
そう思いつつ、ふと顔を上げた。
「赤丸…も?」
今の発言に違和感を感じ、キバくんを見る。
すると目に見えてキバくんの顔が赤くなった。
「え?あ、いや…それより…我愛羅もだけどちゃんも…変わったよな…?」
「…え、そう?」
「ああ。何つーか…最初に会った時の凄みが取れたっつーか……まあ…綺麗なのは変わんねーけど……」
「え?何?」
「な、何でもねーよ、うん!」
「…??」
最後の言葉をボソボソと呟き、何て言ったのか聞き取れず、私は首をかしげた。
赤丸だけは何だか楽しそうに鳴きながら、尻尾を振って喜んでいるようだ。
その時、不意に「!」と名を呼ばれ、ハッとした。
「早く来い」
「あ、う、うん…」
見れば、前を歩いていた我愛羅が立ち止まって、こっちを見ている。
何となく、さっきと同じく機嫌が悪いように見えた。
「…なあ。何か我愛羅、怒ってねえ?」
「え、えっと…そんな事ないんじゃない?」
キバくんの言葉に笑って誤魔化しつつ、内心では私もそう感じていた。
それでもキバくんは怯えたような顔をして、
「何かオレ、すっげぇ睨まれてる気がするんだけど…」
「…え?ま、まさか…。我愛羅ってば、元々あんな顔だし…目つき悪いし…」(!)
「…まあ…そう言われてみると……そうだな…」(!!)
私の言葉にキバくんは納得したように頷くと、気を取り直して歩き出した。
我愛羅もナルトくんに急かされ、再び歩き出すも、時々振り返ってこっちの様子を伺っている。
そんな彼を見て、ふと、先ほどテマリさんに言われた事を思い出した。
"我愛羅の奴…ヤキモチ妬いてるみたいだよ?"
まさか…ね、そんなはずない。
確かにあの夜、我愛羅にああ言われたけど…キスだって…されたけど……(と言っても、かすった程度)
あれから特に何も進展してないし…相変わらず何も言ってくれないし…
私としては、あの時気持ちが伝わったのかなって思って喜んでたんだけど、いつもと変わりない我愛羅を見て、ちょっとだけ落ち込んでるんだ、ホントは。
もしかして我愛羅は、私の事を仲間として大切に思ってるだけなんじゃないかって…
オレの為に生きて欲しいって言ったのも、そういう意味だったのかも…
それに我愛羅って、里の女の子から人気出てきたくせに、大した興味もないって顔してるし……
もしかして異性には興味ないんじゃ……
そう、なのに男の子のナルトくんには興味深々で、よく私との会話にも出てくるほどだ。
まさか…………………我愛羅ってホ―――
(きゃー!いけないいけない!何てこと考えてんのよ、私ってばっっ!そんな事、ぜーったいない!ありえない!)
思わず、前を歩く二人のラブシーンを想像しかけ、鳥肌がたつ。
その映像(!)を振り切ろうと、思い切り首を振れば、一瞬クラっと眩暈がした。
「ど、どうしたんだよ、ちゃん…顔色悪いぜ?」
「な、何でもない!うん、大丈夫だから!」
心配そうなキバくんに、思い切り引きつった笑顔を見せる。
それでも、ついつい視線は、仲良く並んで歩いている我愛羅とナルトくんに向いてしまう。
「あ、あのさ、ちゃんは……」
「え?」
じぃ〜っと我愛羅たちを観察していると、不意にキバくんが口を開いた。
「が、我愛羅といつも一緒なんだってな」
「…あ、うん…まあ…。私は我愛羅の付き人みたいなものだしね」
「そ、そっか…。でも、さ…その…それだけ…か?」
「…え?」
「い、いやほら…前に…我愛羅のこと悪く言われて、ナルトに食ってかかった事あったろ?殺す勢いでさ…」
「あ、あれは…」
「い、いやいいんだ。あの時は色々あったのは分かってるし…オレ達も敵対してたんだから仕方ねえ」
「…あ、あの…ごめんね?キバくんにも私……」
彼らと最初に会った時のことを思い出し、ふと目を伏せる。
そんな私を見て、キバくんは慌てたように首を振った。
「ち、違うって。責めてるんじゃなくて、オレが聞きたいのはその…ちゃんと我愛羅って、何かあるのかなぁ?なんて…さ。ははは…」
「…何かって…?私と我愛羅は似た者同志で家族みたいな――」
「そ、そうじゃなくて…だ、だからさ、ほら…その……好き…なのか、とか…」
「……えっ?」
いきなり、そんな事を聞かれ、ドキっとした。
我愛羅の後姿を目で追いながら、あの夜のことを思い出す。
「…な、何言ってるのよ、キバくんてば。好きとか嫌いとかないわ?我愛羅は家族みたいな人だって言ったでしょ?」
「じゃ、じゃあ我愛羅は?我愛羅はその…ちゃんのこと、好きなんじゃねーの?」
「どうして…そんな事、聞くの…?」
ドキっとしながらも尋ねると、キバくんは僅かに視線を反らし、頭をかいた。
「い、いや…別に意味は…。たださっきちゃんと話してるオレのこと、気に入らないって顔で見てたしさ。もしかして、と思っただけだよ」
「…気に入らないなんて思うはずないじゃない」
「そうかぁ?かなり怖い顔してたぜ?だからてっきり我愛羅はちゃんのこと、好きなのかなって思ったんだけど…」
「…ま、まさか…。言ったでしょ?我愛羅は元々ああいう顔なんだってば!」
笑いながらそう言うと、キバくんの背中をポンと叩く。
自分で言いながら、何か空しくなった。
我愛羅は今もナルトくんと何か話してる。
その後姿を見ていると、何故か少し我愛羅が遠く見えた。
オレのためだけに生きて欲しいと言ってくれたけど、それはどういう意味だったの?
今更ながらに聞いてみたくなった。
言葉で伝えるのは難しい、と我愛羅は言ったけど、でもどんな気持ちで、あの言葉をくれたのか、知りたい。
私の事をどう思ってくれてるのか……聞きたい―――