どれだけ君を好きかなんて、そんなこと言えない。





遠くから、時折聞こえる歓声と、花火の上がる音…


その明るい輪の中に、彼女の笑顔もあるんだろう。


それを想像して、ふと笑みが零れた。










「行かねーのか?我愛羅」


その声に振り向くと、カンクロウが入り口に寄りかかるように立っていた。


「…ああ。あんな賑やかな場所は、まだ慣れない」
「ふん…よく言うじゃん。何だかんだ言って、昨日から楽しそうに見えるけどな」
「…そうだな…。あいつらと一緒にいると…悩んでるのがバカらしくなる」


ふっと笑みを零せば、カンクロウも苦笑しながら隣に並び、目の前の庭を眺めた。


「悩んでんのか?」
「…………」
「聞いたぜ。の奴、五代目に誘われてるんだってな」
「……ああ」
「どーすんだよ。我愛羅はそれでいいのか?」
「……決めるのはだ」
「それは分かってるじゃん。でも我愛羅、お前だって決める権利くらいあるだろう?」


カンクロウは呆れたようにオレを見ながら、溜息をついた。
決める権利、か。
風影の立場で言えば、そうだろう。
だがそうすれば、里の事を一番に考えなくてはならない。
里の為を思えば、優秀な医療忍者を育てるのは大事な事だ。
風影として、今回の申し出はこの上なく、ありがたい。
でも…個人として考えれば、それはまた違ったものになる。


「…やっぱ何年も離れるのはキツイんだろ?」


何も応えないオレに、カンクロウは分かりきっている事を口にした。
でも、それでも、個人的な感情で"やめろ"とは、今のオレの立場からは言えない。


「オレは…と出会い、救われた…」
「………ああ」
「孤独な中で唯一、オレを理解出来る…してくれる存在に出会えた、と思った」
「…………」
がオレの傍にいないと、どこか不安で…オレはいつも不安定になってた…」
「…それはも同じだろ」


カンクロウは苦笑交じりで肩を竦めると、オレの肩にポンと手を置いた。
ふと顔を上げれば、オレと同じくらいの位置にカンクロウの目線があり、自分の背が、また伸びている事に気づく。
少しづつ、ゆっくりと、でも確実に、時は過ぎて。
あの頃とは違うのだ、という事を思い知らされた。


「あの頃…よくに"オレの傍にいろ"と言っていた。"離れる事は許さない"と…。でも今、それを言えないオレは、やっぱり冷たいんだろうな…」
「我愛羅…」
「オレは風影で、何より里の事を一番に考えなくてはならない。里の為になる事を優先して動かなくちゃいけない…個人的な感情で、チャンスを棒に振るなんて事は、してはならないんだ」


燻っていた思いを口にすると、ホっとしたのと同時に、胸が痛んだ。
比べる事の出来ない大切な者たち。
その間を行き来する思いは、やっぱりどこか、苦しくて。


「…それで…いいんじゃん?」
「………」
「昔とは違う…。我愛羅も同じでいる事は出来ない。それを冷たい、とか、オレは思わねーよ」


うっすらと星が出始めた空を見上げながら、カンクロウは微笑んだ。


だって、ホントはそんな事、分かってるんじゃねーの?まあ女心なんて、オレには分からねーけど…」
「…ああ、オレもだ」


そう言って笑いあう。
あの頃には、考えられなかった光景。
兄であり、弟でありながら、その関係は他人よりも冷めていた。
でも今は肩を並べ、笑顔で話せている。
時が経つとは、そう言うことなのかもしれない、とふと思った。


「お、来たようだぜ?」
「………」


気配を感じたのか、カンクロウはニヤリと笑った。


「ま、邪魔者は退散するじゃん。きちんと話せよ、二人でな」
「……ああ」


ポンと肩を叩くカンクロウに頷くのと同時に、部屋の襖が静かに開いた。


「我愛羅…って、あれ…カンクロウもいたの」
「よ、。どうだ?里の様子は」
「うん…もうすぐ花火が上がるみたい。凄く盛り上がってるよ」
「そっか。んじゃーオレも参加してくるじゃん。お前らも後で来いよ」


カンクロウはそう言うと、入り口に立ったままのの頭をクシャクシャっと撫でて、部屋から出て行った。
はどこか気まずそうにしながらも、ぎこちない笑顔を見せている。
少し寂しげなその顔は、出会った頃の彼女とだぶって見える。
孤独の中で、一人耐えている、そんな顔…
昔のオレも、同じ顔をしてた事がある。


「…どうした?こっちに来い」


なかなか入ってこようとしないに声をかけると、彼女は小さく頷いた。


「…皆と会えたのか?」


ゆっくり歩いて来たにそう尋ねると、「うん」と嬉しそうな笑顔を見せる。
その笑顔は、いつもオレを明るく照らしてくれる。


「今はガイ先生とカカシ先生が盛り上げてくれてて…それを皆で見てる」
「そうか。で…何故ここに?」
「……我愛羅もいないと…つまんない」


僅かに目を伏せて、は呟いた。
たったそれだけの事が嬉しく思う。


「…だから呼びに来たの。もうすぐ花火も始まるし…我愛羅も一緒に行こう?」


ね、と微笑み、オレの手を掴む。
だがその前に、と、オレはその手を、そっと離した。


「…我愛羅…?」
「……お前に話がある」
「………ッ」


ドキっとしたように顔を上げる彼女の瞳は、かすかに潤んでいた。


「…何の…話?さっきの事なら、まだ私――」
「…オレは明日、里に帰る」
「……え?」
「お前は……この木の葉に残れ」
「―――ッ」


オレの一言に、は目を見開いた。
揺れる瞳は今にも泣き出してしまいそうなほどに、潤みを増していく。


「…我愛…羅?」
「…さっき…お前はオレに"どうして欲しい?"と聞いたな」
「………」
「オレは…里の為にも五代目火影くらいの、医療忍者が必要だと、そう思った」
「…………」


一言、一言。
オレの言葉を噛み締めるように聞いているの肩は、かすかに震えている。


「……お前は忍として優秀だ。きっと厳しい修行にも耐えられるだろう」
「…我愛羅……」
「だからオレは……に木の葉に残り、医療忍者としての修行をして欲しいと、そう思っている」
「………ッ」


は息を呑んで、一歩、後ろへと下がった。
何かを話そうとしている唇もまた、かすかに震えている。
彼女のそんな不安げな顔を見るのは、正直ツライ。
でも…オレは一人の男である前に……風影なんだ。


…里の為にも…そうしてくれるか?」
「…………」


ズルイ質問だと思った。
こう言えば、は頷かざるを得ない。
でも…そうしないと、弱い自分が、今この瞬間も躊躇している自分が、溢れてしまうから――




「…それは…命令…?」


掠れたような声で、は問う。


「…そうだ」


と、静かに頷けば、は真っ直ぐにオレを見上げた。
その顔に、もう迷いはない。


「…分かり…ました。風影さまのご命令なら…私はこの里に…残ります」


真剣な顔、涙を堪えている表情。
どれも胸を貫いてくる。
出来れば、このまま抱きしめたい、と強く思った。
だが伸ばしかけた手がふと止まり、気づかれないようにその手を引いた。


「…宜しく頼む…」
「……はい」


は俯いたまま、かすかに頷いた。
その瞬間、遠くの空でドォォンという音と共に、鮮やかな花火が上がり、オレたちを照らした。


「…花火…始まったようだな…」
「……綺麗…」


ふとを見れば、瞳を輝かせて、夜空に散る、花火を見ている。
さっきまでは泣きそうだったのに、と笑みが零れた。


「そう言えば…花火を見るのは久しぶりだな」
「…うん…」
「…近くで…見るか?」
「え?」


驚いたようにオレを見上げるに微笑み、素早く彼女を腕に抱き上げた。


「ひゃ…が、我愛羅?」
「…掴まってろ」


それだけ言うと、庭先に出て、木に飛び移る。
は何か言いたげな顔をしたが、「落ちるなよ」というオレの一言に黙って頷き、首にそっと腕を回す。
それを確認すると、木から木へ高速で移動して、森の中でも一際目立つ、大きな木へ飛び移った。


「…わぁ…近い」


頭上で色とりどりの炎を散らす花火を見上げ、は子供のように、瞳をキラキラさせている。
が、ふと思い出したように俯くと


「あ、あの…我愛羅…」
「…何だ?」
「そろそろ…下ろしてもらっていい…?その…重たいでしょ?」


恥ずかしそうに掴まっていた首からパっと手を離すに、内心苦笑しながらも、下ろしてやると、彼女はホっとしたように息を吐き出した。


「…ありがと」
「重たいというよりも…」
「え?」
はもう少し、太った方がいい。これじゃ軽すぎる」
「…………」


オレの言葉にの頬が赤く染まり、恥ずかしそうに目を伏せる。
そんな彼女が愛しくて、胸が苦しい。


「…修行がどれほどキツくても、ちゃんと食事はしろ。五代目にはよく言っておく」
「…でも太ったら嫌だし…」
「どうしてだ?」
「それは…だって…太ったら可愛くないし…」


もごもごと言葉を濁すに、軽く首を傾げた。


「そ、それに我愛羅はそんなに細いのに付き人の私だけがブクブク太れないよ…我愛羅も連れて歩くの嫌でしょ?」
「…??オレは別に構わないが?」
「嘘っ。私がデブになったらきっと我愛羅だって、私のこと嫌になるよ」
「…だから何故そう思う」
「それは…」


訝しげに眉を寄せると、はブツブツ言いながらも、「もういい…」と顔を背けた。
どうやらスネたようだ。
何故この状況でスネるのか、そして太る太らないの話で、何故オレがの事を嫌になると思うのか、良く分からない。
さっきまで花火を見て機嫌が良かったというのに…


「…?何をスネている」
「もういいもん。我愛羅に女の子の気持ちを言っても、どーせ分からないだろうし」
「…女の気持ち…?」
「そーよ。でも少しくらい女の子の気持ちが分からないと、風影なんて勤まらないんだから」
「…………?」
「今の我愛羅は里の女の子の憧れの存在だけど、少しは女心を分からないと、人気なくなるよ?」


どんどん本題からズレていってるようで、オレは更に眉を寄せる。
女の気持ちと風影…
いったい何が関係あるんだろう?


"女ってホント、分かんねーよな!"


ふと夕べ、ナルトが言っていた事を思い出す。
全く、同感だ、と内心苦笑しながら、未だそっぽを向いているの頭に手を乗せた。


「他の女は知らないが…」
「もう…だからそれが――」
「オレはが太っていても痩せていても、嫌いになったりはしない」
「………ッ」
「太っていようと痩せていようと…オレがを大切に思っている気持ちだけは変わらない。ただ元気でさえいてくれれば…それでいい」
「……我愛羅…」


驚いたように顔を上げたは、軽く唇を噛み締め、目を伏せた。


「ズルイ…」
「…ズルイ?」
「こんな日に…そんなこと言うなんて…そんなこと言われたら…明日から凄い食べちゃいそう」


そう呟くと、は不意にオレを見上げ、微笑んだ。
その嬉しそうな笑顔を見て、やっぱり女心とは複雑なものだ、と思った。



「さっきまでスネてたのに、もう機嫌が直ったのか?」
「だって我愛羅があんなこと言うから…」
「…本心だからな」


苦笑交じりでそう告げると、はクスクス笑いながら、夜空を見上げた。


「私…明日から頑張れそうだよ」
「…そうか」
「私…うんと頑張って…里の為に優秀な医療忍者になるね…もちろん…我愛羅の為にも」


そう言いきったの顔に、もう何の迷いも見られない。
彼女なら、きっと立派な医療忍者になって、戻って来てくれるだろう。


「…頑張れ。オレの元に帰ってくるのを………ずっと待ってる」


そう呟いた時、再び大きな花火が上がり、最後の言葉はその音でかき消された。
首をかしげ、「何?聞こえなかったよ」と言う彼女に微笑み、そのままそっと抱き寄せる。


「…我愛羅…?」
「何でもない」


恥ずかしそうにオレを見上げたの額に、軽く口づける。


そうする事で、出来れば、オレの思いが、少しでも彼女に伝わるように、と願った。














「では…安心して待っていろ」
「…を、宜しくお願いします」


木の葉の里へと続く、正門前。
五代目やナルト、それに他の仲間たちも、オレたちが帰るのを見送りに来てくれていた。


「んじゃーまたな!我愛羅!風影の仕事、頑張れってばよ」
「ああ…お前も」


そう言って固く握手を交わす。
以前の時よりも、それはすんなりと出来た。
が、手を離そうとした時、ナルトがそのままオレの肩に腕を回し、皆より少し離れた場所へと歩いていく。


「何だ?」
「あのさ、あのさ。ホントにいーのか?」
「…………?」


コソコソと小声で、そんな事を訊いて来るナルトに、軽く首をかしげる。
何の事だ、と尋ねると、ナルトはチラっと後ろを振り向き、テマリやカンクロウと別れの挨拶をしているを見た。


「ホント〜〜にちゃんを置いてくのか?いーのか?それで」
「…置いていくわけじゃない。ちゃんと時がくれば迎えに来る」
「いや、そーいうんじゃなくて…暫く会えないんだぞ?心配じゃないのかよ」
「…心配はあるがそれを言えばキリがない。それに木の葉の皆はに優しくしてくれる。それだけ分かっていれば少しは安心だ」
「…そりゃそうだけど…そーじゃなくてっ」
「…??じゃあ何の事だ?」


煮え切らないナルトに眉を顰めると、ナルトは意味深な笑みを浮かべ、更に顔を近づけて来た。


「…実はさぁ〜何気にこの里にはちゃんのファンがたくさんいるんだってばよ」
「…………ッ?」


その言葉にギョっとして顔を上げると、ナルトはニヤニヤしながら、の周りにいる連中に目を向けた。


「オレの勘だと…まずはあそこにいるキバ。ちゃんの前だと急に態度が変わるし怪しい」
「…………」
「そんで次にカカシ先生…。カカシ先生はああ見えてムッツリだし、昨日も何気にちゃんをデートに誘ってたから危ないってばよ」
「………ッ?」
「で、次にゲジマユ。サクラちゃんに相手にされてないからって、優しくしてくれるちゃんの事をかなり気に入ってるらしい…」
「…………」
「んで次に――」
「…まだいるのか…?」


少しづつ不安が込み上げてくる中、言葉を続けようとしたナルトに、つい本音が出る。
そんなオレを見て、ナルトはニッと笑った。


「んで最後は……オレだってばよ♪」
「………ッ?」
「いやぁ〜ちゃん綺麗になってるし、オレってば昨日から何気にときめいちゃって――」
「お前には好きな女がいるんだろう?」
「いやだってサクラちゃんってば、ちっともデートしてくれないし、いつも冷たいし――」
「だからってにちょっかいを出すな。あいつは――」
「オレのもの、だろ?分かってるってばよ♪」
「………ッ」


ムッっとして言い返すオレに、ナルトは満面の笑みを浮かべて親指を立てた。
その何もかも分かってると言いたげな顔に、ガラにもなく顔が赤くなる。


「分かってるから心配すんなってばよ!オレもちゃんファンとして、変な虫がつかないよう、守ってやっから」
「………ふん。どうだかな」
「あれ、お前、友達を疑うのか〜?」
「……友達…」


その言葉にドキっとしてナルトを見れば、当たり前といった表情で頷いた。


「オレとお前は…もう敵同士じゃない。なら…友達だろ?」
「………ああ」


友達…
その言葉がオレの心に沁み込んで来る。
その時、「なーに二人でコソコソ話してるんだ、我愛羅!」と、テマリの声が聞こえてきた。
見れば、皆がこっちを見て笑っている。
一人、一人が優しい顔で、まるで昔から仲間だったように。


「ほら行こうぜ、我愛羅。皆が呼んでる」
「………」
「皆、お前の友達だ」


ナルトはそう言うと、最高の笑顔でオレの手を引っ張った。
見れば皆も同じ笑顔を浮かべ、オレに手を振っている。
それは何もかも諦めていた昔のオレが、どうしても手に入れたかった、絆、という光景。
その場所へ、オレは躊躇うことなく、一歩、踏み出した。






「何コソコソ話してたのよ、ナルト!」
「別に〜♪内緒だってばよ!男同士の秘密。な?我愛羅」


そう言ってウインクするナルトに、苦笑を漏らせば、サクラは訝しげな顔のまま、と顔を見合わせた。


「…全く…変なこと吹き込んだんじゃないでしょーね?大丈夫?我愛羅くん」
「ああ…」
「そ?ならいーけど…って、あ、最後にちゃんと二人で話したら?今日から暫く会えないんだし!」


サクラはそう言って、後ろにいるを引っ張った。
は恥ずかしそうにしていたが、ゆっくりオレの前まで来ると、「途中、気をつけてね」と微笑む。
この笑顔を当分見れないんだと思うと、やっぱり寂しさが残る。


「ああ…も…無理はするなよ?」
「うん」
「たまには遊びに来い。休みがもらえたら、だけどな」


そう言っての頭を撫でると、彼女は驚いたように顔を上げた。


「……いいの?」
「当たり前だ。砂隠れは…お前の故郷でもある」
「……うん…」


は瞳に溢れた涙を慌てて拭いて何度も頷く。
その時、「そろそろ行くぞ、我愛羅」と、カンクロウの呼ぶ声がした。


「じゃあ…オレは行く」
「…うん…気をつけて帰ってね」
「ああ…」


そう言って、そのまま歩き出そうとした時、視界にキバやカカシの姿が飛び込んできた。


"オレの勘だと…まずはあそこにいるキバ。ちゃんの前だと急に態度が変わるし怪しい"
"そんで次にカカシ先生…。カカシ先生はああ見えてムッツリだし、昨日も何気にちゃんをデートに誘ってたから危ないってばよ"


先ほどのナルトの話を思い出し、急に心配になってくる。


「我愛羅…どうしたの?」
「…………」


不意に足を止めたオレを見て、が首を傾げた。
オレはそのまま踵を翻し、の手を引き寄せると、一瞬だけ、強く抱きしめる。
その突然の行動に、の体がビクっと跳ねた。


「ちょ、我愛羅…?」
「…は無防備すぎるからな…」
「え?」


オレの言葉に顔を上げたの額に、そっと口づけると、周りがどっと沸いた。


「お!やるな、我愛羅!」
「きゃー♪素敵!ね?ナルト!」
「げーっズルイってばよっ」
「…ああ…羨ましいです…我愛羅くん…」
「おおーう!青春だな!!これが青春なんだな!」
「…はあ…見せ付けてくれちゃてねぇ〜」
「……ケッ」


その冷やかしの声に、の顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。


「な、何して…」


オレの行動に、唖然としているを見て、ふと笑みを零す。


「…単なる虫除けだ」
「へ?」


何が何だか分からないといった顔をするに、優しく微笑むと、オレはテマリたちの方へと歩き出す。
を残していく事に未だ心残りはあるが、これが最後じゃない、と自分に何度も言い聞かせた。


「待たせたな」
「別に〜♪」
「もう少しゆっくりでも良かったじゃん」


テマリとカンクロウは、オレを見てニヤニヤしながら、に視線を送る。
二人が何を言いたいのか分かったが、オレは無視して歩き出した。
後ろからはナルト達の声が聞こえてくる中、テマリとカンクロウは手を振りながら、オレの隣に並んだ。


「ったく…最後くらい好きって言えばいーじゃんよ」
「全くだ。あれじゃいつものスキンシップと変わらないだろ。どーせなら口にしろ、我愛羅!」
「ま、木の葉の連中には、いい虫除けにはなっただろーけどな」
「……うるさい。行くぞ…」


後ろで好き勝手、言い始める二人を睨みながら、オレは一歩一歩、から遠ざかる。
その時、「我愛羅〜!」という、の声が届き、ゆっくりと振り返った。


「我愛羅〜!体に気をつけてね〜!お仕事無理しないでね〜!」


必死に叫びながらも、笑顔で手を振るに、オレは走り出したい衝動に駆られた。
出来る事なら、このまま彼女を連れ去りたい。
これまでと同じように、明日も、明後日も、がいる日常に戻りたい。


その全ての思いを封印して、オレはに微笑んだ。





"最後くらい好きって言えばいーじゃんよ"





それを簡単に言えるくらいなら…最初から苦労はしない。



ふと足を止めて木の葉へ続く、青い空を見上げた。




この想いは、彼女に残していく。




いつか、が戻ってくる日まで――











To the following chapter.....











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我愛羅夢、二部完結です。
え?中途半端?
いえいえ…次の三部でドォ〜ンと書く予定ですので大丈(^^)v(古)
次の三部は二人の出会い、過去をメインにする予定です。
過去と現在をいったりきたり…というのが、今の私の脳内にあるコンセプト。
でも他の連載があるし、三部はもう少し練り上げてからアップの予定ですので、
もし我愛羅夢を奇特にも楽しみに読んで下さってた方(いるのか、それ)は暫しお待ちを…♡
ああ…風影さまに嫁ぎたい今日この頃…
私はデイダラみたいにあの無表情を見飽きたりなんかしないわよ。
むしろガン見していたい。というか穴が開くほど見つめられたい(Mかお前は)


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■このサイトさんの小説は、すごくおもしろくてどれも大好きです! これからも頑張って下さい!!(高校生)
(ありがとう御座います!どれも好きだなんて、大感激ですよー(TДT)ノこれからも頑張りますね!)