06.君の声で愛を囁いてくれないか
「ど…どう…するの?」
寝室に移動し、ベッドに寝転んだ半間を見ながら、がおずおずと訊いて来た。
「んーまずは脱がせて♡」
「え…っ」
「ああ、上は自分で脱ぐから下だけ」
そう言って半間は着ていた上着とTシャツを脱いでいく。は恥ずかしそうに視線を反らしながらベッドへ上がって来た。
「えっと…」
「ベルト、外して」
「う、うん…」
言われた通り、ベルトを外し、もう一度半間を見ると、次に「ジッパー下ろして」と言われた。さすがに躊躇ったが、ここまで来て出来ないとも言えない。
「じゃ…じゃあ…下ろすね…」
「ひゃは…♡ 何かコーフンすんな」
「ちょ、楽しんでる…?」
が真っ赤になりながら不満そうに口を尖らせる。だいたい、こういう関係になったとはいえ、自分から事を進めるのは初めてのにしたら、とてつもなく恥ずかしい。
「当たり前だろ。からしてもらうの初めてだし」
半間がニヤリと笑う。は文句を言いたそうにしたが、ここで言い合いしても仕方がない。震える手でゆっくりジッパーを下ろしていくと、すでに勃ち上がっているのが下着越しでも分かった。の顏が更に熱く火照っていく。
「げ…元気過ぎじゃない…?」
「当たり前だろ…?一か月以上してねーんだから」
「………」
やぶ蛇だったと言わんばかりに、が押し黙る。そこへ半間の手が伸びての腕を引き寄せた。
「これも脱がせて」
「え…それくらい自分で脱げるでしょ…?」
「に脱がせて欲しいんだよ。ダメ?」
「う…」
いつも強引な半間が可愛くねだってくる姿に、結局は根負けしてしまった。は恥ずかしいのを堪えながら、半間の下着に手をかける。あまり見ないよう視線を反らしながら緩慢な動作でそれを下げていくと硬く主張していた部分が露わになった。
「やべ…めちゃくちゃコーフンしてきた…」
「ちょ…っと…何言って…」
「惚れてる女に脱がされてくのにコーフンしなかったらそれはそれでヤバくね?」
「…修二のエッチ」
カッと顔が熱くなり、咄嗟に離れようとしたの手を、半間が掴んだ。力を入れたせいで痛みが走ったのか、半間が僅かに顔をしかめている。
「いってぇ…あんま動かさせんなって…」
「だ、だって…こんなの恥ずかしいよ…」
「そういう顔すっから余計にコーフンすんだよ…」
半間は苦笑気味に言いながらの手をそのまま自身の勃ち上がっている部分へ持っていく。ビクリとして手を引きかけたが、強引に触らされた。
「ちょ…」
「まずは手でして…」
「ま、まずはって何…っ?」
「え、口でもして欲しいし」
「くっ口なんて無理…ちょ…っとっ」
「こう握って上下にしごいて」
「や…やだ…って…ひゃ…」
半間の手に誘導されるように勃起したものを握らされ、上下に動かされた。初めて触ったソレは想像以上に熱く、また握ったことで更に硬さを増していく。先から垂れてくる蜜のようなものがの手を濡らして滑りが良くなった気がした。男の人も濡れるのかと驚きながらも、あまりの恥ずかしさで半間にされるがまま手を預けていると、それだけで興奮したように半間の呼吸が荒くなっていく。
「やべ…マジで気持ちいい」
「…こ…こう…?」
「んー…もう少し強くてもいい…。あ、口でしてくれてもいいけど」
ニヤリと笑みを浮かべる半間を見て、は慌てて首を振った。
「えー…」
「えーって…言われても…」
恥ずかしさで死ねるなら今この瞬間にでも死ねると思った。脳に熱が集中して逆上せてしまいそうになるほど顔が熱くてクラクラする。まだ不慣れな上に初めて男性のものに触れている衝撃でさっきから心臓が激しく動き、少し息苦しい。その上、したこともない口淫をするのは無理だと思った。の態度に焦れたのか、それとも我慢の限界が来たのか、半間は苦笑しながらもへ手を伸ばした。
「…こっち来いよ」
「え、しゅ、修二…?」
グイっと腕を引かれ、半間に覆いかぶさる形で抱き着くと、すぐに唇を塞がれた。最初から舌を滑り込ませ、先ほどよりも激しく絡ませ吸い上げる。その性急さにの身体がゾクリと粟立った。
「ん…ん…っ」
未だ濡れている場所に半間の指が伸び、そこへ性急に挿入される。そのまま激しく抽送を繰り返されると卑猥な水音が室内に響き、の羞恥心を煽っていった。
「も…無理…ゴムつけるから上に…乗って…」
唇を啄みながら、合間にそんなお願いをして来る半間に、一瞬躊躇ったものの素直に頷いた。自分が乗る行為すら初めてでどうすればいいのか分からないが、とりあえずまたがるように乗ると、避妊具をつけた硬いものが自分の閉じた部分にこすれて背中に快感が走る。
「えっろ…たまにはいいな、女性上位も」
「バ…バカ…」
半間の肩に両手を置きながら、自分を見上げる半間の瞳にドクンと鼓動が鳴る。上から見下ろすのは初めてだ。半間の欲を孕む瞳はやけに扇情的に映った。
「、少し腰上げて…そう。で…ゆっくり下ろして」
言われるがままに腰を下ろしていくと、熱く滾ったものが狭い場所をこじ開けるように押し入って来る。その強烈な刺激に思わず背中がのけ反った。
「ん、ぁあ…っ…」
「うわ…マジやべーな…気持ち良すぎ…」
「…んん…ぁっ」
半間が腰を突き上げてくるたび、そこから快感が広がっていく。いつもと体勢が逆になっただけで刺激のくる度合が全く違う。
「しゅ…しゅ…じ…、ぁあっ」
胸元に抱き着くようにすがれば、半間の手がの着ているTシャツをまくり上げ、露わになった膨らみと硬くなった突起を乱暴な動作で口に含まれる。同時に襲う甘い刺激に、の嬌声が跳ねた。
「…すっげー可愛い」
下から見上げるの頬や体が赤く染まり、半開きになった艶のある唇に吸い寄せられるように口付ける。唇からも甘い疼きが生まれ、何度も啄みながら腰を突き上げた。全身が蕩けるほどに気持ちがいい。それはこれまで遊びで抱いて来た女では味わえない幸福感が心や体に溢れていくせいかもしれない。
「…はあ…何か幸せかも…」
「……ん…っ…な…に?」
「何でもねえ…よっ…好きだなーって思っただけ」
「…修…二…」
「こんな時に泣くなよ。萎えんだろ」
激しく抱きながらも苦笑が零れる。甘ったるい感情が次から次へと溢れて来て、の体温さえ冷えた心に幸せを与えてくれる。モノクロの世界が色づくように、それは今まで無だった心に沢山の色が塗られていくような、そんな幸福感だった。
「…修二…?」
あまりの快感にただ横になっているだけじゃ物足りない。半間は上半身を起こすと、腕の痛みも忘れてを抱えるようにしながら抱きしめた。硬く膨張したものが更に奥深くを突いて来る。
「んぁあ…っ」
たまらず背中をしならせながら、は頭をふった。最奥を下から突き上げられるたび、ゾクゾクとしたものが背中を走り、は身を震わせている。半間を包む場所が急激に締め付けられた。
「…く…っ」
柔らかく舐めるような締め付けに、久しぶりの行為で限界に近かったものが一気に上り詰めて来る。
「…ぁあっイク…っ」
「…んっ」
半間の切なげな吐息がの耳元にかかり、それすらも甘い快感を呼ぶ刺激となっていく。更に締め付けられたことで半間の腰から這い上がって来た欲望が、一気に吐き出された。
「修二…」
軽い律動を感じながら、が愛おしげに半間の首に腕を回す。半間は満足げに息を吐くと、とそのままベッドへ倒れ込んだ。
「大丈夫か…?」
ゆっくりと身体が弛緩していくの感じながら、胸元に頬を寄せているの頭を撫でる。は気だるさで動けないまま小さく頷いた。
「私も…」
「あ?」
「幸せだし…修二が好き…」
僅かに半間を見上げると、がかすかに微笑んだ。それは行為の最中、半間が呟いた言葉への返事だった。いきなりの告白に、つい頬が緩む。
「やべー…」
「え?」
「嬉しいとか…らしくねえこと思ったかも…」
照れくささを隠すよう、顔を隠しながら呟く半間を見て、の唇が優しい弧を描く。
「私も…嬉しかった」
まさか行為の最中に半間があんな言葉を言ってくれるとは思いもしなかった。狙ったわけでもない。自然に零れ落ちたような感情のこもった言葉だったからこそ泣きそうになった。この一ヶ月半、会えない日が続いて不安にならなかった日はない。稀咲のことで半間が隠し事をしているのも薄々気づいている。けれど、それはもうの中で消化した。今はただ、何事もなく半間が自分のもとへ戻って来てくれるならそれでいい。それだけを願っていた。