06.XOXO-❶



「じゃあ…送ってくれてありがとう」

マンションの前につくと、は笑顔で振り向いた。
二人でファミレスに行き、食事をした後で万次郎に送ってもらったところだ。

「佐野くんは集会だっけ」
「あーうん。そうなんだけど…」

万次郎は頷きながらもガシガシと頭をかきつつ、目の前のを見つめた。

「こんなに行きたくないって思ったの初めてかも…」
「え?」

困ったような顔で苦笑いを浮かべた万次郎は、キョトンとしているの腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。

「さ、佐野くん…?」
「まだと一緒にいたいって…思ってる」

を抱きしめながら万次郎が呟き、その言葉にの鼓動が小さく跳ねる。
今では毎日のように会っているのに、いつも別れ際に寂しく思うのはも同じだった。

「佐野くん…」
「俺、飛ばし過ぎ?」

少しだけ体を離し、の顔を覗き込む万次郎の瞳は真剣だ。
は小さく首を振ると「私も…まだ一緒にいたいっていつも思ってるから…」と赤くなりながらも呟いた。
その言葉を聞いた万次郎は嬉しそうな笑みを浮かべて、もう一度を抱きしめる。
今は雨もすっかり止み、夜空には綺麗な星がたくさん光っていて、辺りは人通りもなく静かだった。
そこに気づいた万次郎はこの雰囲気なら今日こそキスできるかも…と抱きしめる腕に力を入れた。

(いや…でも付き合って一週間じゃ早いか…?)

いざ、しようという段階になると、いつもそんな思いが頭を過ぎる。
これまで誰かと付き合ったことがないだけに、その最初のタイミングが万次郎には分からない。
本当ならOKをもらった時点でしたかったくらいだが(!)
も誰かと付き合うのは初めてで、いきなり手を出すのはマズいだろう、と思い直し何とか堪えたのだ。
でも万次郎にしたらは初めて好きになった女の子であり、やはり好きな子にはアレコレしたくなるのが男の性というものだ。
これまでどんなに綺麗な女の子達に言い寄られても全くそんな気にならなかった万次郎にとって、やっぱり気持ちがあるとそういう欲求が自然に沸いて来るんだな、と改めて気づいた。
ただ自分がしたくてもがどうなのか分からず、万次郎は悶々としながら悩んでいた。

(もしキスしてが泣いちゃったら…)
(それか、不純異性交遊です!って怒られるとか…?)
(いや最悪、佐野くんのエッチ!なんて言われて嫌われるかも―――)

最悪な事を並べ立てて想像していると、万次郎はだんだん血の気が引いていくのを感じた。
ダメだ、と今日も心が折れて、万次郎は抱きしめていた腕を放した。

「えっと…じゃ…また明日」
「うん。あ、佐野くん、バイク乗る時は気を付けてね」
「大丈夫…ってゆーか、今度俺のバブに乗せてあげるよ」

心配そうな顔をするの頭を撫でながら、万次郎はそう言えばまだに愛機すら見せていない事を思い出した。
これまで接した事のないタイプなだけに、どこまで自分の行動範囲の中にを連れて行っていいのか分からない。

「え…ばぶ?」
「あ、俺のバイクの愛称。正式名称は"Honda CB250T HAWK"っていうんだけど、これのエンジンの排気音がバブ―って聞こえるから―――」
「……??」
「って言ってもには分かんないか」

不思議そうな顔で首を傾げているを見て、万次郎の頬が緩む。

「あ、ご、ごめんなさい…。私、そういうの疎くて―――」
「え、謝る事ないじゃん。いーんだよ、はわかんなくても」

焦るの頭を撫でつつ、万次郎は可愛いなあと思いながら微笑んだ。
だがは逆に不安げな顔で、

「でも…私と話しててもつまんないんじゃ…」

と、最近少し心配だった事を思わず口にした。
知らなかった時はまだ良かったが、万次郎が暴走族と知ってからというもの。
万次郎と自分に共通するものがなさすぎて、一緒にいても退屈なんじゃないのかと心配だったのだ。
だがの言葉に万次郎は「え?そんなわけないじゃん!」と驚いたように言った。

「俺、といるだけですっげー楽しいのに」
「え、で、でもバイクの話も分からないし…」
「だからいーんだよ、そんなの。バイクの話なんてケンチン達とすりゃいいだけで、俺とはもっと別の話をいっぱいしたいし」
「佐野くん…」
「それこそしか知らない事とかさ。俺に教えてよ」

万次郎はの額に自分の額をくっつけながら「ね?」と優しく微笑んだ。
至近距離で微笑まれ、は真っ赤になりつつ何とか頷いて、嬉しそうな笑顔を見せる。
万次郎もまたその笑顔にドキっとしたが、ふと、もう少し屈めばキスが出来る…!と思ってしまった。
だが、不意に万次郎のケータイが鳴った。
その音に驚いたが慌てて体を離したおかげで、を抱きしめようとしていた万次郎の腕がスカッと空ぶる。

「…………」

思わず半目になった万次郎は「ったく誰だよ…空気読まない奴!」と文句を言いながらケータイを開く。
だがそれは電話じゃなく"集会前に銭湯行こーぜ"というドラケンからのメールだった。

「……(あんのシャンプーハットやろーめ。後で覚えてろ…)」

そのメッセージを見ながら、万次郎は思い切り目を細めたのだった。










万次郎と付き合いだしてからというもの、まず起きてから最初にする事は"おはようメール"。
これは万次郎に「毎朝送って」と言われ、それ以来毎日送っている。
今日もいつも通り「おはよう」とメールを送り、はリビングへ行くとカーテンを開けた。

「あ…いけない」

ベランダに洗濯物を干したままだった事に気づき、は慌てて窓を開けた。
夕べ万次郎に送ってもらったあと、ネットでバイクの事を色々調べたりしていたら取り込むのを忘れたらしい。
万次郎は知らなくてもいいと言ってくれたが、なりに少しでも万次郎の好きな物を知っておきたい、と思ったからだ。

「夜の間に雨が降らなくて良かった…」

洗濯物が濡れていないかチェックして、はホッと息を吐く。
だがふと違和感を覚え、洗濯物を一つ一つチェックしていった。

「嘘…下着がない…」

何度チェックしても同じ。
の下着だけがなくなっている。
そこで初めては「下着…泥棒…?」と青くなりながらベランダへ目を向けた。

「嘘でしょ…。ここ12階なのに…」

このマンションは15階建てであり、そこの12階にの家がある。
なのにベランダに干しておいた洗濯物の中から下着だけがなくなっていた。
という事は…犯人は同じマンションの住人、という事になる。
外部の人間が12階の部屋のベランダに上がって来るのはどう考えても無理があるからだ。

「ま…まさか隣…?」

と言っても右隣は幼馴染の愛子の家で、左隣は4人家族が住んでいる。
その中に男は父親だけで子供は小学生の女の子が二人という家族構成だった。
まさか父親が下着を盗むなんて事があるんだろうか、とは考えながら、とりあえず時間がないので学校へ行く事にした。
その途中、万次郎からもメールが届く。

"おはよう、。今夜は何もないからんとこの駅前で待ち合わせしない?"

という内容で、も思わず笑顔になる。
そういう事なら今日は昨日より長く一緒にいられるという事だ。
しばし下着泥棒の事を忘れ、元気になったはすぐにOKの返事を打ちながら学校へと急ぐ。
その時、ポンと肩を叩かれた。

「おはよ、!」
「あれ、愛子?おはよう」

振り向くと幼馴染の愛子が笑顔で立っていた。

「愛子、珍しく早いね」

愛子はだいたいギリギリで学校に来るため、家は隣だがあまり一緒に登校出来た試しがない。
だが今日早く出て来たのは自分の意思ではないらしい。
愛子は徐に顔を顰めると、

「それがさー。今日朝からお母さんに叩き起こされて、ベランダに干しておいた下着がないって大騒ぎよ」
「え?嘘…愛子んとこも?」
「えっ?って事は…も盗まれたの?下着…」
「うん…朝見たら下着だけなくて…」
「マジかー!やっぱマンション内の人間って事よね…」
「多分…」
の隣のオッサンだったりして」
「オッサンって…竹内さんはまだ20代後半だよ」

愛子の言いぐさには苦笑すると、その竹内さんを思い出す。
若い夫婦で二人の小学生の女の子がいるが、あの父親が下着を盗むとは思えなかった。
いつも奥さんと手を繋ぎ、仲良さそうに歩いているのを見かけるからだ。
だが愛子は「人は分からないもんだよ」と分かったような事を言っている。

「愛妻家に見えて女子中学生の下着を盗む変態は世の中にいーっぱいいると思うよ」
「で、でもそんなバレバレの事する?12階で下着泥棒なんてしたら真っ先に隣が疑われるのに」
「まあ…そう言われるとそうか…」

愛子はう~んと考え出したが「とりあえずお母さんが通報するって言ってたし、すぐ捕まるよ」と呑気に笑った。

「それより…朝から彼氏にメール?」
「え、あ…うん…」
「へえ、まーだ続いてるんだ。その金髪イケメンくんと」
「そりゃ…だってまだ一週間だし…」

愛子には相談に乗って貰ってた手前、万次郎と付き合いだした事だけは話してある。
ただ心配するといけないので彼が東京卍會という暴走族の総長、という事は話していなかった。

「ふーん、じゃあラブラブなんだね」
「ラ、ラブラブっていうか…」
「いいなあ、は。イケメンの彼氏が出来て。今度紹介してよね!そしたら彼氏の友達を紹介してもらうから」
「……あーう、うん」

彼氏の友達、と言われの脳裏にドラケン、三ツ谷、場地、パーちんの顏が浮かぶ。
愛子はほど地味ではなく、それなりに派手な方ではあるが、ヤンキーではない。
彼らを紹介したらビビるだろうな、とは内心ヒヤリとした。

「で、どこまでいったの?」
「え?」
「だから、彼氏と。どこまで?」

不意にそんな事を聞かれたは、

「ああ、えっと…渋谷のカラオケボックスとファミレス…ゲームセンターに…」
「ちょ、ちょっと!そういう意味じゃないから!」

がバカ丁寧に"行った場所"を答えだしたのを見て、愛子は思い切り吹き出している。
その意味が分からずが「え?だってどこまで行ったって…」と首を傾げると、愛子は意味深な笑みを浮かべての肩へ自分の腕を回した。

「そっちじゃなくて…彼氏とどこまでシたの?って意味」
「どこまで…した?」
「キスはもう済ませたの?」
「―――ッ」
「あ~まだなのね…。はいはい…」

一瞬での顏が赤くなったのを見た愛子は全てを察したかのように溜息をついた。

「まあの事だから期待はしてなかったけど」
「ど、どういう意味よ…」
「だっては何もかも初めてなんだし、付き合って一週間やそこらじゃキスも出来ないだろうなって」
「そ、そんな事しなくたって別に彼とは上手くいってるし…」
「そりゃはそれでいいかもしれないけど、彼氏はそーゆー事したいと思うなあ」
「えっ?!」
「そ、そんな驚く?」

真っ赤になりながら珍しく取り乱したに、愛子はギョっとしたように足を止めた。

「普通、男の方が我慢できないでしょ、そういうの」
「そそ、そう、なの…っ?」
「え、今まで迫られた事はないわけ?」
「せ、迫るって…?」
「だからー彼氏がキスしたそうな素振りとかした事ないのかって聞いてんの!」
「………」

愛子にそんな事を言われ、は朝から心臓が痛くなった。
そもそも付き合いだしたばかりで、男のそんな素振りなどに分かるはずもない。

「え、ないの?」
「わ、わかんない…。いつもスキンシップは凄いされるけど…」
「え、どんな風に?」

愛子は興味津々といった顔で聞いてきて、は熱くなった顔を扇ぎながら夕べの事を思い出す。

「えっと…抱きしめて…来たり…」
「うんうん」
「手を繋いだり…」
「ほー」
「…オデコくっつけてきたり…」

そこでふと夕べの事を思い出し、更に顔が赤くなる。
あの時は互いの顏が近くなり、心臓が色々ヤバかった事を思い出す。
それを聞いた愛子は「それ!何でそこでキスしないわけ?」との顔を覗き込んで来た。

「フツーそこまで接近したらするでしょ」
「そ、そうなの?でもそんな感じは…」
「えー?その彼氏ってホントにのこと好きなのー?手も出してこないなんてさー」
「……う」

グサっと来るような事を言われ、は少し落ちこんだ。
恋人同士がどういう基準で愛情を図るのか分からないが、好き=キスする、という図式はでも理解できる。
という事はキスもされない自分は万次郎に好かれていないという事になるんだろうか。
そんな事を考えていると、愛子はをジロジロ見ながら「よし。私に任せて」と指を鳴らした。

「きっとが色気ゼロなのがいけないのよ」
「え…?」
「まずはその眼鏡と髪型をどうにかしよう」
「えぇ?ど、どうにかって…」
「今日もデートなんでしょ?だったら可愛くしなくちゃ」
「で、でも彼は私が眼鏡取ると嫌がるから…」
「はあ?何、ソイツ眼鏡フェチとか?」
「さ、さあ…それは分からないけど…」
「ま、でもいつもその恰好で会ってるんでしょ?ならたまには普段と違う姿で会うのも新鮮でいいんじゃないかな」
「いつもと違う…?」
「そーよ。あ、今日の放課後、私がちゃんとを可愛くしてあげるから先に帰んないでよ?」
「うん…分かった」

愛子の強引さに負け、はとりあえず頷いた。
そもそもも万次郎と付き合いだした事でお洒落はしたいという気持ちは沸いて来たものの。
これまで何もした事がなかったせいで何をどうすればいいのか分からないのだ。
ここは愛子に任せてみようと決心し、放課後が少しだけ楽しみになって来た。











「なーんでケンチンまで来るわけ…?」

放課後、万次郎は約束通り宅の最寄りの駅にあるファミレスでを待っていた。
だが、ここまでドラケンにバイクで送ってもらったまでは良かったものの。
「俺も喉乾いたから何か飲んでこ」とドラケンが言い出し、今は二人でを待つ形となった。

「別にずっといるわけじゃねーし。これ飲んだら帰るよ」

不満げにジトっと見て来る万次郎を見て、ドラケンは笑いを噛み殺した。
別に本気で二人の邪魔をしようとは思っていない。
ただ万次郎があまりににベタ惚れなのを見ていると、ちょっとした意地悪をしたくなるのだ。

「ならいいけどー」

万次郎は頬を膨らませながらそっぽを向き、ストローを咥えながらケータイを確認している。
が、ふと思い出したように「あ」と声を上げ、真剣な顔でドラケンを見た。

「あのさ、ケンチン」
「だからこれ飲んだら―――」
「そーじゃなくて」
「あ?何だよ…」

てっきりまた文句を言われるかと思っていたドラケンは、急に真剣な顔で自分を見ている万次郎に気づき、眉間を寄せた。
東卍に関わる内容かと思ったのだ。

「どっかのバカが何か仕掛けて来たとか?」
「は?そんな話じゃないし」
「じゃあ何だよ…」
「あのさ…」

揉め事と違うのか、とホっとしつつ、ドラケンは頼んだジンジャーエールを口へ運んだ。

「ケンチンってキス、した事ある?」
「ぶー-ーっっ!」
「きったねっ!!」

口からジンジャーエールを吹き出したドラケンに、万次郎は席から飛びのいた。

「ゲホッゲホッ」
「ケンチン、だいじょーぶ?」

万次郎は苦笑しながら店員を呼ぶと、濡れたテーブルを拭いてもらっている。

「ゴホッ…って、おま…何…て言った?」

ドラケンは咽ながらも何とか言葉を絞り出すと、万次郎が「だからキスした事あんのかって聞いたの」ともう一度同じ質問をした。
これまで万次郎とその手の話は殆どしてこなかった為、さすがのドラケンも少し驚いている。

「そりゃ…まあ…あるけど」
「だよね。前は彼女とかいたもんね、ケンチン」
「…つーか何でそんなこと聞くわけ」
「……だから…付き合ってる相手と…初めてキスする時って、どういうタイミングなのかなーと」
「はあ?そんなもん、したきゃすればいーだろが」

ドラケンは濡れた口元をナプキンで拭きながら、目の前で照れ臭そうに目を反らしている万次郎を見て苦笑いを浮かべた。

「だからそれが出来ないから悩んでんだろ?だいたいコッチがしたくても相手が嫌だったら嫌われるかもしんないじゃん」
「…え、マイキー、まさか…」
「何だよ…」
「まだとキスもしてない…とか?」
「…ぐ…」
「マジで?」
「何だよ?文句あんの?」
「いや…ないし、してない理由もだいたい分かった…」

頬を赤らめ、ムっとしたように唇を尖らせている万次郎を見て、ドラケンは笑いを噛み殺した。
相手が男なら自分よりガタイのいい相手でも平気で向って行くクセに、好きな相手には嫌われるのが怖くてキスも出来ない。
そんな万次郎を見て、ドラケンは(可愛いヤツ♡)と思ったが、今それを言えば怒るのは目に見えているので敢えて黙っておく。

「まあ…はそんな簡単に手を出せる感じしねーしな」
「簡単に手を出そうなんて思ってないけどさ。一緒にいると…こう…何か…アレになるっていうか…」
「アレ?」
「だから…くっついたりしてると、こう…」
「あ~ムラムラするって事か」
「そう、それ!俺、変なのかな」
「いや、それが普通なの。そもそもエロ動画見て勃たない前のオマエが変だったんだよ、マイキー」
「え、そうなの?」
「…オマエ、激しく何かを間違えてるよな」

キョトンとしている万次郎を見て、ドラケンは顔が引きつった。
だがと付き合いだした万次郎も、まともな男になりつつあるようだ。

「まあ…キスなんて雰囲気でするもんだろ」
「雰囲気って?」
「だから…そういう雰囲気だよ」
「そういう…?」

腕を組み、難しい顔で首を傾げる万次郎に、ドラケンはガックリ項垂れる。
何で自分のチームの総長にキスするタイミングを説かなければならないんだ、と言いたげだ。

「まあ…素人童貞のマイキーには難しいか、そういう雰囲気にするのは」
「何ソレ、バカにしてんの」
「いや…まあ…悶々としてるマイキーが可愛いなって話ね」
「はあ?やっぱバカにしてんじゃん」

唇を尖らせ、目を細める万次郎はムスっとした顔でそっぽを向く。
それにはドラケンも苦笑するしかない。
でもまあ、どこぞのチームとモメとか、そういう物騒な話より。
好きな子にキスが出来ずに悶々としてる万次郎を見てるのも悪くない、とドラケンは思った。

「ま、早く出来るといいな。キス」
「…うっせぇ」

ニヤリと笑うドラケンを見て、万次郎はとてつもない弱みを握られた気がして、思い切り唇を突き出した。