▼人魚の泡沫-04
※★マーク付きの回はヒロイン視点の独白です。軽く性的暴力を匂わせる表現がありますので苦手な方は観覧をお控え下さい。読まなくても本編に影響はありません。
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1991年12月3日の寒い夜。
赤ちゃんのわたしは六本木の駅に捨てられました。
駅員さんに発見されたあとは養護施設に入れられて、そこで育ちました。
でもわたしが三歳の時、のオジサンが「うちにおいで」と言って養子にしてくれました。
わたしに初めて優しいお父さんとお母さんができました。
の家には七歳上の「きょうすけ」という男の子がいました。
きょうすけお兄ちゃんはわたしをとても可愛がってくれました。
だけど、お父さんとお母さんが事故で死んでしまったあとから少し怖くなりました。
少しでも言うことをきかないと、わたしを殴るようになったのです。
からだのあちこちにアザができて、学校にもいけなくなりました。
お兄ちゃんは学校なんかいかなくていいと言いました。
オレがオマエを教育してやると言われました。
13歳の誕生日の夜、お兄ちゃんはわたしのベッドにもぐりこんできました。
わたしはひとりで寝るのがいつも寂しかったのでよろこびました。
だけど、お兄ちゃんは怖い顔で言いました。
「オレとオマエは本当の兄妹じゃない。血はつながってないんだ。だから何をしてもいいんだよ」
どういう意味なのかわからなくてだまっていると、お兄ちゃんはわたしの口に自分のくちびるを押しつけてきました。
わたしの服を脱がして、からだもあちこちさわってきました。
最後は痛いこともされました。
わたしがどんなに泣いてもやめてはくれませんでした。
その日いらい、毎日同じことをされます。
お兄ちゃんはわたしに色んなことをさせました。
今後のための勉強だと言いました。
そしてわたしは笑えなくなりました。
その頃にお兄ちゃんは会社をつくりました。
悪いことをする才能があったみたいです。
お兄ちゃんはそれで成功してお金もいっぱいかせいでいました。
わたしが14歳になった時、オマエもそろそろ仕事を手伝えと言われました。
は可愛いから客が喜ぶと、お兄ちゃんは言うのです。
これまでのお兄ちゃんとしてきた勉強はそのためでした。
それからビップのお客さんがのぞむ服を着て「せったい」というものをさせられました。
「オマエがサービスするんだ。でも絶対にオマエの体は触らせるな」
いうことを守らないと殴られるので、わたしはうなずくことしかできませんでした。
それからわたしはコスプレというものをして、ビップのお客さんがのぞむことをさせられました。
ビップのお客さんはわたしがサービスするだけだけで満足してくれました。
でもある日、猫の恰好をリクエストしてきたお客さんが、わたしの体を触ろうとしたのです。
触られたらお兄ちゃんに殴られる。だから必死にていこうしました。
でも力ではかないません。
わたしは部屋にあった、フルーツを切るためのナイフを手にしました。
そのお客さんよりもお兄ちゃんが怖かったのです。
わたしはナイフでお客さんを刺しました。
何度か刺すと、お客さんは動かなくなりました。
わたしはホっとしました。
これでお兄ちゃんに殴られずにすむと思ったからです。
だけど思い出しました。
私が刺したお客さんはお兄ちゃんにとって「必要なひとだ」と言っていたことを。
急に怖くなりました。
必要なひとをキズつけてしまったから、お兄ちゃんに怒られる。殴られる。
だからわたしは逃げました。
必死で走って逃げました。
廊下でみはっていたお兄ちゃんの部下の人が追いかけて来たので、私はさらに怖くなって外へ逃げました。
すると外にきれいなお兄ちゃんが立っていました。
最初は長い髪を三つ編みにしているからお姉ちゃんかと思いました。
とっさに隠れたけれど、わたしはあっさり見つかってしまいました。
その時、声を聞いて、女のひとではなく、男のひとだと気づきました。
三つ編みのお兄ちゃんはわたしがナイフを見せても笑っていました。
その時うしろからはお兄ちゃんの部下の人が大勢追いかけてきました。
だから私は前に走るしかありませんでした。
三つ編みのお兄ちゃんにナイフをふりまわしたら、すぐ捕まりました。
捕まったらお兄ちゃんに殴られる。
わたしは目をつぶって必死で叫びました。
次に目を開けた時、わたしは三つ編みのおにいちゃんに抱っこされてました。
抱っこをされるのはお父さんとお母さんが死んでから初めてのことでした。
三つ編みのお兄ちゃんはわたしを抱っこしたまま、お兄ちゃんの部下の人たちを一瞬のうちに倒してしまいました。
三つ編みのお兄ちゃんはものすごく強かったのです。
わたしは久しぶりに心からホっとしました。
久しぶりに抱っこをされました。ひとから優しくされました。
そしてこの人だと思いました。はなれたくなくなりました。
三つ編みのお兄ちゃんはわたしを家に連れて行ってくれました。
お風呂に入れてくれました。
でもお兄ちゃんはこう言いました。
「もオレに襲われたくないだろ?」
三つ編みのお兄ちゃんはきれいな笑顔を浮かべて言いました。
「オレも男だから」
男の人がわたしに望むものはお兄ちゃんが教えてくれたので、三つ編みのお兄ちゃんが何を言っているかは分かりました。
だからお礼もかねて三つ編みのお兄ちゃんにキスをしました。
でもすごくおどろかれました。
ちょっと叱られました。
悲しくなったけど、三つ編みのお兄ちゃんはやっぱり優しいお兄ちゃんだったので、子供の頃にきょうすけお兄ちゃんと遊んだ時みたくお湯のかけ合いっこをしました。
とっても楽しかったです。
でもきょうすけお兄ちゃんのことを思い出して、やっぱり怖くなりました。
見つかったら殴られる。ううん、ころされる。
だから優しい三つ編みのお兄ちゃんに言いました。
「…助けて」