▼人魚の泡沫-09
※ヒロイン視点の独白です。読まなくても本編に影響はありません。
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2006年1月20日(火曜日)夜。
蘭ちゃんとお風呂場で水遊びをしたらリンドウというお兄ちゃんに怒られました。
リンドウは蘭ちゃんの弟です。いつも怒ってるので苦手です。
お風呂から出ると蘭ちゃんはわたしの髪を編んでくれました。
可愛いと誉めてくれました。
蘭ちゃんとお揃いで嬉しいな。
夜は蘭ちゃんと寝たかったのにリンドウにソファで寝ろと言われました…。
リンドウは少し意地悪です。だから苦手です。
2006年1月21日(水曜日)
起きたら蘭ちゃんがキッチンで朝ご飯を作ってくれました。
ふわふわのフレンチトーストでした。
甘くて美味しいフレンチトースト、また食べたいな。
蘭ちゃんは「野菜も食べろよ」とサラダも作ってくれました。
野菜は少し苦手だけど蘭ちゃんが作ってくれたのできちんと食べました。
蘭ちゃんに誉められました。
そしたらリンドウが起きて来て「俺のは?!」とまた怒り出しました。
わたしのことを睨みながら「オマエだけ食べてんのかよ」と文句を言われました。
やっぱりリンドウは苦手です…。
その後は蘭ちゃんとお買い物に行きました。リンドウは荷物持ちです。
蘭ちゃんはお洋服をいっぱい買ってくれました。
靴もお揃いのサンダルを買ってくれました。
蘭ちゃんは黒だけどわたしのはお洋服に合わせて白を買ってくれました。
大きなロゴがすごく可愛い。
そのあとはお風呂グッズとバスローブなるものを買ってくれました。
「オマエ、素っ裸で出て来ちゃうし」
と蘭ちゃんは困ったように笑いました。
今までは京介お兄ちゃんがお風呂に入れてくれてたけど同じようにしちゃいけないみたい。
お風呂あがりに裸でいると「おおかみに喰われちゃう」からです。
リンドウがまた怒ってました。やっぱり少し怖いです。
買い物のあとパフェを食べにいきました。
お店のおばさんに「お兄さんとお揃いの髪型で可愛いらしい」と褒められました。
凄く嬉しくて栗のパフェもすごく美味しかったです。
蘭ちゃんは自分の栗も「あげる」と言って食べさせてくれました。
蘭ちゃんはやっぱり優しいです。
だから蘭ちゃんがそばにいないと不安になります。
トイレに行ってもなかなか蘭ちゃんが戻って来なくて探しにいきました。
蘭ちゃんはリンドウのとこにいました。
そこにはココちゃんもいました。
ココちゃんは京介お兄ちゃんのお仕事をお手伝いしていた人です。
だからわたしを連れ戻しにきたのかと怖くなりました。
でも蘭ちゃんが違うよと教えてくれてホっとしました。
ココちゃんは今、蘭ちゃんの仲間になったとおしえてくれました。
ココちゃんは京介お兄ちゃんのお仕事を手伝っている人の中で、初めてわたしに優しくしてくれたお兄ちゃんなので蘭ちゃんと仲間と聞いて嬉しかったです。
わたしの話を聞いた蘭ちゃんは助けてくれると言いました。
京介お兄ちゃんのことはオレに任せてと言ってくれました。
少し心配になったけど優しかった頃の京介お兄ちゃんはもういません。
わたしは久しぶりに外へ出て、自由になりたいと、その時思いました。
蘭ちゃんが助けてくれたら、わたしはまた自然に笑えるようになるのかな。
わたしの頭を撫でてくれる蘭ちゃんの大きな手が好きです。
胸の奥がほんわかします。
蘭ちゃんの優しい目で見つめられると胸の奥がうるさくなります。
ふれたくなります。
だから「がやりたいことを自由にしていい」と言われた時、したいと思ったことを素直にしました。
京介お兄ちゃんにされる時は怖くて嫌だったのに、蘭ちゃんにはしたくなりました。
蘭ちゃんにキスしたら、やっぱり胸の奥がざわざわしました。
少しも怖くなくて怖いどころか幸せな気持ちになりました。
でも蘭ちゃんは凄く困った顔をしました。
少し悲しくなりました。
でも「怒ってないよ」と言ってくれてホっとしたら、またキスしたくなりました。
この気持ちはなんですか?
胸のおくから、あふれてくるものはなんですか?