君の瞳に恋してる // 04
今日まで色々あった俺達だけど、結構うまくいってると思う。
付き合い始めたのも、一緒に住み始めたのも、まだ日は浅いけど、友達としての付き合いはかなり長いから、もう互いの事なら手に取るように分かる。
それこそ、いいところから悪いところまで。
だから分かる事もあって…
「ん…ちょっとオーリィ…ダメ…」
「…えぇ…」
キスを拒まれ、俺は唇を尖らせた。
はそんな俺を尻目にサッサと背中を向けて、「…明日早いし眠いのよ…」とだけ言うと、そのまま数分後には気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
「…ホントに寝なくたって…」
もうスッカリその気だった俺は悶々としたまま、仕方なく布団に潜り、ぎゅっと目を瞑る。
だけど体は火照るしムラムラはなくならないしで眠れるはずがない。
(はーあ…最近こんなんばっかだよなぁ…)
ここ何日か、ずっとこんな風に拒まれてる俺はそっと溜息をついた。
せっかく想いが通じて一緒に住み始めたばかりだと言うのに、想像してたラブラブ生活とは程遠い気がする。
ラブラブと言うより、何だか何十年も一緒に生活してきたマンネリ夫婦のようだ。
―――最近、どうも彼女の様子がおかしい。
そう思うようになったのは、そんな日が二週間ほど続いたからだ。
「――で、欲求不満だと、そう言いたいのか?」
ロード・オブ・ザ・リングで共演してからの付き合いでもある俺の兄貴分が呆れたように笑いながらウイスキーのグラスを空にして軽く眉を上げた。
「今まで散々、遊びまわってたお前の口から、そんな台詞を聞くとはな」
今度は楽しげに笑い、慣れた手つきで煙草に火をつける、その仕草は男の俺から見てもカッコいいと思う。
きっとヴィゴは、こんな小さいことで悩んだ事なんてないんだろうな、なんて少しだけ悔しくなった。
「悪かったね。どうせ下らない相談だよ」
「そうスネるな。ったく…。前から好きだった彼女と暮らし始めたなんて言うから、てっきり惚気話かと思えば…」
空いたグラスに再び酒を次ぎながら、俺の頭をクシャっと撫でると、ヴィゴはグラスをゆっくりとした動作で口に運んだ。
俺もワインをグイっと煽って、おかわりを注ぎながら、「惚気たかったけどね」とボヤいて顔を反らした。
ヴィゴはの事を、よく知っている。
ニュージーランドに招待した時、皆には紹介済みだ。(まあその頃は親友として紹介したんだけど)
「まあ…女性が恋人を拒む理由と言ったら…アノ日か、その恋人が浮気をした時…とかな」
「お、俺は浮気なんてしてないってばっ。それに最初に拒まれてから二週間経ってるんだし、アノ日でもない!」
ドン!とカウンターを叩くと、ヴィゴは顔を顰め、「お前もう少し声を小さくしろ…」と目を細めている。
でも浮気なんて心外な事を言われたら、そこは反論しとかないと。
「だいたい俺、と暮らし始めてからは他の子と遊んでなんか―」
「つい先日、ゴシップ雑誌を賑わせてただろう?」
「あ、あれは別に浮気じゃない!それににもきちんと説明して分かってもらってるよ…」
この前の事を思い出し、そう断言するとヴィゴは怪訝そうな顔で口の端を軽くあげた。
「…だったら…本当に疲れてるだけなんだろう」
「でも二週間なんておかしくない?一緒に住み始めた頃はこんな事なかったのに…」
「じゃあお前が浮かれて求めすぎたんじゃないのか?」
「当然だろ?長年の想いが叶ったんだから、そりゃもう毎晩のように―って何言わせるんだよっ」
思わず赤面すれば、ヴィゴは苦笑いを零しながら、「お前が勝手に言ったんだろ」と煙草を灰皿に押し付けた。
そして徐に俺の方に意味深な視線を向けると、一言―
「…もしかしたら…すでに飽きられてるんじゃないか?オーランド」
「…な!何で飽きるんだよ?!だって俺達、まだ付き合いだしてそんなに経ってないのにっ」
ヴィゴのとんでもない言葉にムキになって言い返す。
けどヴィゴは楽しそうに笑いながら、グラスを煽った。
「とは言え…お前たち、恋人になる前からの付き合いだろう?いったい何年になるんだ」
「え?えっと…かれこれ10年以上は…」
「だろう?10年と言えば長い年月だ。その間、お前たちは時間があれば会っていたと言うし、それが友人としてでも十分な時間だ」
「…そ、そうだけど…」
冷静に語るヴィゴの話を聞きながら、俺は言葉に詰まった。
じゃあと俺はホントにマンネリ化した夫婦のようになってるって事か?
そんな!まだ結婚だってしてないってのに!
「…何、分かりやすくへコんでるんだ」
「だってヴィゴが不吉なこと言うから…」
「例えば、の話だ。それに俺だって女性が恋人を何度も拒むホントの理由なんて分からない」
余裕たっぷりで笑うその横顔からは、そんな苦労したことなんてない、とでも言いたげなオーラが出ている。
「そんなに気になるなら本人にきちんと聞いてみろ」
「でも聞けば聞いたで、"疲れてる"としか言わないし…」
「実際そうなのかもしれないだろ?彼女だって仕事をしてる身だ。昼間、仕事をして夜はお前の相手、なんて疲れるに決まってる」
「…む」
バッサリと切られた俺は更に唇を尖らせて残りのワインを一気に飲み干した。
するとヴィゴは追い討ちをかけるように、ポツリとこう言った。
「ああ、そう言えば…拒む理由の中に…他に好きな男が出来た場合…というのも含まれるかもな」
「――――ッ!!」
――――俺は相談する相手を間違えたようだ…
紅茶を一口飲んでチラリと視線を上げれば、目の前ではオーランドがニコニコしながら頬杖をついている。
「な、何?さっきから」
「んー?の顔を見てたいだけ」
「……しょっちゅう見てるでしょ」
「そんな事ないよ?仕事行ってる時は見れないし」
「…もう時間じゃないの?用意したら?」
照れくさくて素っ気ない態度をしてしまう私に、気を悪くするでもなく彼は笑顔のまま。
ほんとにオーランドって一緒にいると、こっちまで笑顔になってしまうような存在だ。
そんな事を思いながら席を立ち、お皿やカップをキッチンに運ぶ。
オーランドも自分のお皿を運んできてくれて、私は苦笑しながら「いいってば。私がやるから」とそれを受け取った。
「俺も手伝うよ」
「いいわよ。それより用意したら?」
「まだ時間はあるって。一人より二人の方がすぐ終わるだろ」
そう言ってオーランドは私が洗ったお皿を拭き出した。
彼のこういう優しさがやっぱり好きだなと思う。
でも同時に、他の女性にも優しい彼に、少しだけ腹が立つこともあるんだけど。
「さ、出来たっと」
全てのお皿を拭いてくれたオーランドは、そう言って両腕を伸ばすと、私の頬にちゅっとキスをした。
「今度から俺も時間がある時はの手伝いするよ」
「…え?」
そのオーランドの言葉に、私は驚いて振り向いた。
"手伝う"なんて普段はものぐさなオーランドが珍しい事もあるものだ、とマジマジと見つめる。
「どうしたの?オーリィ…」
「何が?」
「急にそんなこと言って…。別にいいのよ?オーリーは忙しいんだから家事とかしなくても―」
「そんな事ないよ!ほら、だって仕事してるのに家の事も一人でやるなんて大変だろ?」
「でも―」
「いいから、いいから!」
訝しげな顔をする私に、オーランドは軽くキスをするとギュッと抱きしめてくれた。
「ばかりにさせられないよ。今度は二人で分担しよう?一緒に住んでるんだから」
「…う、うん…」
オーランドの優しい言葉に内心、嬉しく思いながらも、何故、急にこんな事を言い出したんだろう?と首を傾げていた。
「じゃ、行ってらっしゃい、」
「ありがとう、送ってくれて。オーリーも取材、頑張ってね」
「うん。じゃ」
僕は車を降りた彼女の唇にちゅっとキスをすると、は照れくさそうに笑いながらドアを閉めた。
名残惜しい気持ちを残したまま、窓越しから手を振ると、も笑顔で手を振って会社の中へと入っていく。
彼女は5年前から前の会社を辞めて今の翻訳の仕事を始めた。
男の中で仕事をしてる彼女も会社では結構、大変らしい。
やっぱり…疲れてるのかな??
それとも本当にマンネリ夫婦のように飽きられてるのかな…
何にせよ、にだけ家事をやらせるのも今日限りで止めた。
疲れてるのに家のことまでやらせて、俺は何にもしない、なんて事が続けばに嫌われてしまうかもしれない。
そう思って今朝からそれを実行した。
に、しても…夕べもダメだったし…そろそろ俺は限界なんだけど(!)
こんなに我慢した事なんて今までなかったしなぁ…(!?)
そんな事を思いつつ、取材が行われるホテルへと向かった。
「お疲れ様、オーリー」
そう言って話しかけてきた子は相手役ではないにしろ、そのライバルの役として出演していた子だった。
綺麗なブロンドで、最初に会った時は悪い虫が少しだけ発動しそうになったりしたほど可愛い新人女優だ。
確か名前は…ジェンと言ったっけ。
半分、忘れてて思い出した時にどこかで聞いた名前だと思ったんだけど。
「やあ、お疲れ様。ジェンも真っ直ぐ帰るの?」
車に乗り込もうとした俺は、こっちへ歩いてきた彼女に微笑みかけた。
「ええ。でもまだ早いし一杯、飲みに行こうと思って。良かったらオーリーも一緒にどう?会うの久しぶりだし」
「え、でも…」
いきなり誘われ、一瞬どうしようかと迷った。
が、確かに時間は午後6時を回ったばかりで、早いと言えば早い。
もまだ仕事だろうし家に帰っても一人で暇かな、と思った。
この時間だし別に誤解されるような事もないだろう。
ほんとに一杯で帰ろう。
俺の頭の中であれこれ考えた結果、簡単に答えがはじき出された。
「じゃあ少しだけなら」
「ほんと?嬉しいわ?」
ジェンは可愛らしい笑顔を見せて、さり気なく俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
一瞬、胸が当たりドキっとしつつ、彼女に笑顔で返した。
こんな事くらいで、いちいち反応するなんて、よっぽど欲求不満みたいじゃないか。(実際そうだけど)
まあでもジェンは凄く可愛いし仕方ないといえば仕方ない。(には負けるけど)
それにこの子、何となく俺に気があるような感じだし…それも悪い気はしない(オイコラ)
いやいやダメだぞ、オーランド!変な気を起こしちゃ、またパパラッチに狙われる!
そんな事になればだって今度こそ愛想を尽かすかもしれないし、ここはグっと我慢だ!
そう、前の時とは違うし、もう俺は生まれ変わったんだから!
「じゃあ、この上のバーに行きましょ?」
「あ、うん。いいよ、どこでも」
心の中で固く決心しつつ、やっぱり腕に胸が当たると、顔がニヤケそうになる俺。
いけない妄想を振り払いつつ、紳士な笑顔を見せるのが大変だ。
「どうしたの?オーリー」
「い、いや何でもないよ?じゃあ行こうか」
爽やかな笑顔を見せつつ、俺達はそのままエレベーターまで戻り、このホテルの最上階にあるバーへと向かった。
が、この時、大人しく帰っていれば…と、俺は後々後悔する事になる――
「はい、オーリー」
「あ、ありがとう」
可愛い笑顔でワインを注がれると、ついついグラスを傾けてしまう。
実はこれでもう7杯目だ。
最初は本当に一杯のつもりで、ワインをグラスで頼んだ。
でも一杯飲めば、もう少し、もう一杯飲めば、まだ時間はあるし…などと促され、結局はボトルを頼んでしまい、一杯で済むことはなかった。
飲めば飲むほど彼女の頬も薄っすらと赤みが差し、何とも色っぽい。
それにさっきから寄り添うように体を密着させてくるから、ワインの酔いも手伝ってイケナイ気持ちが芽生えてくる。
「…でも…私、ショックだったな」
「え?何が?」
いきなり俺の肩に頭を乗せて、彼女が呟いた。
「だってオーリーってば私を誘ったくせに、実は恋人と一緒に住んでるんだもの」
「へ?な、何でそれ知って…ってか俺が誘ったって?」
「ええ、この前の打ち上げの時ね。二人で飲みなおそうって店を出たじゃない。覚えてないの?」
「…お、俺そんなこと言ったっけ…」
一瞬で頭の中にその時の記憶がめぐる。
が、やっぱり思い出せず首を傾げた。
「ごめん…かなり酔ってたかも…」
「そうね。だから飲みには行かないで私がオーリーを家まで送ったのよ?そしたら女の人が出て…」
「え!き、君、彼女に会ったとか…」
「ええ、会ったわ?彼女から聞いてない?」
「き、聞いてない…」
今の話に脳内パニックを起こしながら、ふと思い出した。
そう言えばあの打ち上げの次の日の朝…の様子が少しおかしくて、その時に…
「あ…」
"ジェンって子、可愛いわね"
は確かそう言った気がする…
その時はジェンの事も忘れてたし、名前すら覚えてなかったから何を言われたのか分からなかった。
でもじゃあはこの子との事を誤解して…
「オーリー?どうしたの?」
「え?!あ、な、何でもないよ。その…迷惑かけてごめんね」
「いいわよ、そんな。でも代わりに今夜はもう少し付き合ってね?」
「え…」
更に色っぽい目つきでそう言われて、一瞬ドキっとする。
でもの事が頭に過ぎり、
「うん…じゃあ…もう一杯だけ…」
俺は引きつった笑顔で、そう答えた。
「ロニー、これ出来たわ」
「ああ、ありがとう、」
私が翻訳した書類を持っていくと、上司であるロニーがこちらに振り向いた。
「良く出来てるじゃないか。さすがだね」
「そんな誉めてもらっても今更、何も出ないわよ?」
私が苦笑しながら答えると、ロニーもまた笑いながら肩を竦めた。
「事実を言ったまでだ。遅くまで悪かったね。もう帰っていいよ」
「ええ、そうさせて頂きます」
「ああ、何なら送ろうか?もう暗くなってしまったし…」
「いえ。タクシーで帰るから平気よ?それに買い物して行きたいから」
「そう?じゃあ気をつけて。明日はオフにしたんだろ?ゆっくり休め」
「ええ、そうするわ。じゃ、お疲れ様」
簡単に挨拶をして部屋を出ると、急いで自分のデスクに戻って帰る支度を始めた。
明日が締め切りだったので、残業して一気に仕上げたから、スッカリ遅くなってしまった。
(ああ、もう11時?オーリーってばお腹空かせてるかも…)
腕時計を見て溜息をつくと、すぐに会社を出てタクシーを拾う。
そのまま家の近くのスーパーまで行って夕食の材料を買わないといけない。
近所のスーパーは24時間開いてるので、遅くなった時でもかなり助かってる。
20分ほどで到着し、中へ入ると時間も時間なのに結構、混んでいて何となくホっとした。
自分の他にも同じような人がいるのだと思うと、少しは安心するのだ。
カゴを持ち、食材を見ながら、一応、電話入れておこうかな…と思った。
まあでも携帯に電話がないところをみると、オーリーも遅いのかもしれないけど…
そう思いながらふと、今朝オーリーが、"今日は取材だけだし早いと思う"と言ってたのを思い出す。
家に帰ったら電話入れる、と言ってたことも。
という事は…オーリーもまだ帰ってないのだろうか。
まあ仕事が早く終わって、友人と食事をしてるのかもしれない。
「…どうしよう。だったら…明日の朝の分だけでいいかなぁ」
野菜を色々手に取りながら、暫し考える。
自分の夕飯だけなら何でもいいし、オーリーの好きな物を多めに入れて、レジへと向かった。
だがレジは人が数人並んでいて、思わず溜息が洩れる。
ここのとこ詰めて仕事をしてたせいで、かなり体がだるく、出来れば早く家に帰りたかった。
普通なら今回のような大きな仕事の場合、一人ではなく二人か三人でやるのだが、ちょうど結婚退職した子や、
有給をとって休んでる人が重なったために人手不足で私が一人でやるハメになった。
おかげで毎日、朝早くから会社に行って、時には家に持ち帰ってまで仕事をして何とか今日までに間に合わせたのだ。
そのせいでオーリーが帰ってくる頃には疲れ果てて眠ってしまうという事が多かった。
オーリーの仕事は時間も不規則だし、彼が家にいる時は私が大抵、眠くなる時間ばかりで、朝も私が先に起きて朝食の準備をしてから会社へ行くと言う日々。
ここのとこ、そういうことが続いてたせいでオーリーもスネてるようだったけど、それも今日で終わる。
まあ、後で説明すればオーリーも分かってくれるだろう。
今朝、妙に優しかったオーリーを思い出し、今までほったらかしておいた事に少しだけ罪悪感を感じた。
やっと自分の番に回ってきたレジでサッサとお金を払い、急いで家に向かう。
このスーパーから家まで徒歩5分くらいだ。
「はぁ…シャワー入って寛ぎたい…」
重たい足を引きずりつつ、二人で住むフラットが見えてきて、ホっとしながら呟いた。
オートロックのキーを開け、ドアを開けて中へ入る。
エレベーターを見れば、ちょうど降りてくるところで、それほど待つこともなく、ドアが開いた。
「あ、すみませ―」
「あ…」
誰もいないだろうと思って、すぐ乗ろうとしたら、中から人が降りてきてぶつかりそうになった。
が、その目の前の人物が、この前オーリーを送ってきたジェンという子だと、すぐに気付き、ハっとする。
「あなた…」
「こんばんは。またお会いしましたね」
ジェンは悪びれた様子もなく、ニッコリ微笑んでそう言うと私の格好をチラっと見下ろし、
「今、帰ってきたんですか?遅いんですね」
「ええ…仕事で…。それより今日は…」
「ああ…今日は一緒に取材があって、帰りに少し飲んできたんです」
アッサリそう言われると私も何も言えなくなり、「そう…」とだけ答えてエレベーターに乗り込んだ。
「それじゃ―」
「ああ、オーリーってば今日も飲みすぎたみたいなんで送ってきたんですよ?」
「…そうですか。それはどうも」
何となく嫌な笑みを浮かべている彼女を見て、私はそれだけ言うとエレベーターのドアを閉めた。
僅かに指が震えて、一人になった途端、怒りが沸々と沸いてくるのを感じ、軽く深呼吸をする。
(まさか…私がいないのをいい事に、彼女を部屋に連れ込んで…?)
一度ならず二度も彼女に送ってもらったなんて、こんなのおかしい。
前にオーリーは彼女の名前を出しても知らないといった風に答えてたけど、実はしらばっくれてたんじゃ―
色々な事が頭に浮かび、私は本気で腹が立ってきた。
人が仕事で忙しくて大変だった時に、オーリーの奴、また浮気?!
なんて奴なの!
チンという音と共にドアが開き、私はすぐに部屋へと向かった。
鍵が開いてるのを確かめて、中へ入ると、リビングの方からテレビの音が聞こえてくる。
だがそこへ行く前にバスルームから出てきた、上半身裸のオーリーとバッタリ出くわした。
「あ、!お帰り」
オーリーは私を見て嬉しそうな笑顔を見せると、ガバっと抱きついてきた。
が、かすかに彼の首筋から甘い香水の匂いがして、すぐにあのジェンがつけてた香水だと気付いた。
「離してよ!」
「……っ?」
カッとしてオーリーから離れると、彼は一瞬キョトンとした顔で私を見た。
「な、何怒ってんの…?」
「オーリィ…何、その格好…」
「え?ああ、今シャワーに入ろうかと…」
「…ふーん…。香水の匂いでも落とそうとしたの?」
「え?!」
私の言葉に明らかに動揺したオーリーを見て、やっぱり浮気?と彼の顔をジっと睨んだ。
その時、彼の口元を見てハっとした。
「あ、あの…?」
「…オーリィ…その口紅はどうしたの?」
「え、あ…っ」
更にギョっとした顔でオーリーは慌てて口元を手で拭った。
そして困ったように眉を下げると、ぶんぶんと首を振っている。
「ち、違うんだ、これは―」
「何が違うの?下で彼女と会ったわ」
「ええ?!あ、や、だからそれはさ―」
「言い訳なんか聞きたくない!何なの?私がいない間に彼女を連れ込んでたわけ?!」
「つ、連れこんでなんかないよ!」
「じゃあ彼女と何してたのよ!体に香水つけて口紅まで!最低!」
「あ、ちょ…待ってよ、!誤解だってば!」
怒りながらリビングに向かう私を、オーリーは必死に追いかけてきた。
「離してよ!もう知らないからっ」
「待ってって!ちゃんと聞いてよ!俺は浮気はしてないってば!」
「嘘!じゃあ何で彼女が来てたの?また二人で飲みにいったんでしょう?」
「そ、それは行ったけど…」
言葉を濁すオーリーから顔を反らすと、彼は小さな声で、「ごめん…」と呟いた。
「何、やっと認めるわけ?」
「え、違うよっ。浮気じゃなくて…いや、その…危なかったけど…さ…」
「はあ?」
「いやでも何もしてないって!あ、キスはされたけどさ…でも俺からは何も―」
「オーリーのバカ!死んじゃえ!!」
「あ、!!」
あまりに頭にきて寝室に飛び込むと、オーリーの鼻先でバンっとドアを思い切り閉めた。
「ちょと−!出てきてよ!俺、浮気はしてないって!誘われたけど断ったら無理やりキスされただけだってばー!」
「でもちょっとはフラっとしたんでしょ?!」
「う…そ、それは―」
「ほら!最低!」
腹が立つのと悔しいのとで涙がポロポロ零れてくる。
ドアから離れ、思い切りベッドに倒れこみ、強く唇を噛み締めた。
確かにベッドは朝のまま綺麗だけど、Hなんてどこでも出来るし、例えしてなくても、相手の方からキスをしてきたんだとしても、
オーリーも少しはその気になったというのが無性にムカついた。
オーリーと二人でゆっくりしたいのを我慢して頑張って仕事をしてたのに、その間オーリーはあの子と楽しく飲んでたんだと思うと
思い切り殴ってやれば良かったと思う。
その時、ドアが勢いよく開いてオーリーが飛び込んできた。
「!聞いてよ!ちゃんと話し合おうっ」
「何を話すのよ?言い訳なんか聞きたくないものっ」
「言い訳じゃないって…」
「何よ、他の子に色目使われたらすぐフラフラしちゃって…オーリーのスケベ!」
そう怒鳴ってオーリーに枕をぶつければ、ムっとした顔でこっちに歩いてきた。
「そ、そりゃ俺はスケベだけどさ…のせいでもあるんだからなっ」
「はあ?何でオーリーの浮気グセが私のせいでもあるのよ?」
「だってここずーっとお預けだっただろ?」
「……は?」
「だからそう言う時にジェンみたいな可愛い子に言い寄られたら少しくらいフラっとしちゃうもんなんだよ、男はっ」
少し顔を赤くしながらも、多分本気で言ってるであろうオーリーを涙で濡れた顔で見上げる。
「…こそ…俺以外の男と浮気してるんじゃないの?だから俺のことずっと拒んでたんだろ」
「バ、バカなこと言わないでよっ。仕事で疲れてるって言ったでしょ?!」
「だからって二週間もほったらかしなんて―」
「人が足りないから私一人で全ー部やってたの!仕方ないじゃないっ」
半分、呆れてそう怒鳴れば、オーリーはグっと言葉を詰まらせた。
「…ほんとに?」
「ほんと!何なら私の上司に聞いてみれば?」
「…………」
あまりに呆れて涙も引っ込んだ私の言葉に、オーリーは一気にシュンとなった。
そしてゆっくり歩いてくるとベッドの端に座り、泣きそうな顔で私を見つめてくる。
「…じゃあ俺に飽きたとか…」
「…何それ。あるわけないじゃない」
「…他に好きな人が―」
「いない」
「……そっか…」
キッパリ否定すると、オーリーは何故かホっとしたような顔をして、すぐに「良かった〜」と嬉しそうな笑顔を見せた。
怒りの収まっていない私がそんな彼に唖然としてると、
「俺、てっきりが俺に飽きて他の男に走ったのかと思って内心ビクビクしてたんだー♪」
「……へぇ…」
「じゃあお互いに誤解だったという事で仲直りのキッスを―」
「…するわけないでしょ!!!」
「―――ッ!」
ん〜と顔を近づけてきたオーリーにそう怒鳴ると、彼は目をまん丸にして固まった。
「何が誤解だった、なの?オーリーは明らかに他の子にフラっとしたんじゃないっ」
「あ、あれはホントにチラっとだよ!勝手に部屋まで着いてきたけど俺はちゃんと追い帰したし―」
「でもキスはされたんでしょ?」
「だから不意打ちだってば〜」
「信じられない」
「〜信じてよ〜」
私が顔を反らすと、オーリーは泣きそうな声で私の服を引っ張ってくる。
ホントはそのふにゃっと下げられた眉とウルウルした瞳に凄く弱いから、許してしまいそうになるけどグっと我慢しなくちゃ。
いくらチラっとでも、いくら私が相手をしてあげなかったのが原因でも、今度ばかりは簡単に許さないんだから。
「ねぇ、ってば…ごめんって…俺が好きなのはだけだよ…?」
「…………」
そう言いながらクイクイっと服を引っ張るオーリーに負けそうになる。
が、その時、私の頭の中でいい考えが浮かんでニヤリとした。
「ほんと…?」
「え?」
「ほんとに私の事だけが好きなの?」
そう言ってチラっとオーリーの方を見れば、それはもう必死の顔で、
「も、もちろんだよ!俺には世界中の美女よりがいいんだ!」
「………」
捨て犬のような顔でそんな事を言う、オーリーを見て、可愛いなんて思っちゃったけど、でもここは一つ心を鬼にして。
「そう、じゃあ…許してあげてもいいわ」
「ホントに?!」
「ええ」
「じゃあ今すぐ仲直りのキッスを―」
「ダメ、許すには条件があるの」
「…うむぅ?」
顔を近づけてきたオーリーの顔をグイっと押しやると、私はニヤリと笑った。
「罰として一ヶ月間、H禁止。それが守れたら許してあげる」
「え…えぇぇぇぇーーっ?!」
私の言葉に、オーリーはそんなに驚かなくても、というくらい大げさに眼を丸くした。
「な、な、何だよ、それ!ただでさえ我慢してたのに、これから一ヶ月もダメだってこと?!」
「その通り。浮気じゃなくても未遂だし。私の事まで疑ったし。その罰なんだから、それくらい当然でしょ?」
そう言って微笑むと、オーリーの瞳が更にウルウルした。
「そ、そんなぁ…」
「もし我慢出来たら一ヵ月後には何でもしてあげるわ?」
「…え♪」 (おバカ)
「でも我慢できずに、他の子としたりしたら…絶対に許さないし、ここから出てくからね」
「わ、分かった…!約束する!俺、頑張るよ!」 (?)
オーリーは私の"何でもする"発言にスッカリ気を良くしたのか、ニヤニヤしながら頷いた。(今からいったい何を考えてるんだ?コイツはっ)
「じゃあ、今度こそホントに仲直りのキスを…」
「ああ、言い忘れてたけど…罰の中に"キス禁止"も入ってるから」
「えぇぇえ?!そんな!」
「そんな!じゃないわよ。ジェンって子に唇にキスされたんでしょ?そんな人とすぐキスなんて出来ないもの」
「じゃ、じゃあ顔洗ってくるから!」
「そういう問題か!いい?とにかく一ヶ月経ったら許してあげる。分かった?」
私がビシっとそう言うと、オーリーはガックリ項垂れ、シーツを指でホジホジしはじめた。
「そんな…キスもダメなんて…何で?…ありえないよ…俺、死んじゃうよ…?」
「死ぬわけないでしょ、そんな事で」
「じゃあ唇が乾燥して切れちゃう」 (オイ)
「私のリップ貸してあげる。間接キスになっちゃうけど、これは許してあげるわ」
「…え、間接…キス?」
「何でそこでニヤっと出来るわけ……?」
「………っ」
ほんとオーリーって単純で可愛い。
でも今度ばかりは私も本気だから。
この浮気グセの直らない王子様には、これくらいの罰がないとダメなんだわ!
私はそう決心しながら、目の前でまたしてもブツブツ言い出したオーリーを尻目に、サッサと着替えてシャワーに入って寝ようと立ち上がった。
「あぁ…疲れた…。全くもう…」
そう言いながらクローゼットを開けてパジャマを出した。
そしてジャケットを脱いでシャツの胸のボタンを外していく。
が、ふと視線を感じて、ボタンを外す手が止まった。
「………何、見てるの、オーリィ…」
「…は!」
ジロっと振り返れば、指を咥えてじぃ〜っと私の胸元を見ているオーランドに、心の底から溜息が出てしまった。
(誰?この男をこんなにスケベに育てたのは!!)
裏切り者の王子様
それでも彼を嫌いになれない私がいる
あはは;;おバカですみません(;^_^A
とうとう明日、オーリーとジョニーが来日っすね〜☆
噂ではジョニーの自家用ジェットで一緒に飛んでくるとか〜ひゃ〜♪
自家用だと、どこに下りるのか謎ですし出迎えは大変ですよね(゜ε ゜;)
あ、因みにこの話は今、WEB拍手で公開してるオーリーSSと繋がってまして、SSより前の話です(笑)
WEBSSを読んで下さった方なら、ああだから、ああなったのね、とお分かりになるでしょう(* ̄m ̄)
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO
とうとう明日、オーリーとジョニーが来日っすね〜☆
噂ではジョニーの自家用ジェットで一緒に飛んでくるとか〜ひゃ〜♪
自家用だと、どこに下りるのか謎ですし出迎えは大変ですよね(゜ε ゜;)
あ、因みにこの話は今、WEB拍手で公開してるオーリーSSと繋がってまして、SSより前の話です(笑)
WEBSSを読んで下さった方なら、ああだから、ああなったのね、とお分かりになるでしょう(* ̄m ̄)
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO