君の瞳に恋してる // 05
今、この瞬間、俺は焦りに焦りまくっていた。
「オーリー?あれ?オーリーいないの?」
可愛く名前を呼んでいるのは俺の最愛の恋人、だ。
いつもより早めに仕事が終わったのか、珍しいくらいに早い帰宅。
普段なら俺も手放しで喜んで笑顔で出迎えなんてするところだけど、今日は違う。
ドアの開く音がした瞬間、急いでバスルームに入るはずが、何故か隣のトイレ(またかよ)に飛び込んでしまった。
俺も今日はよりも先に帰らねば、という事で急いで帰ってきた。
そして、まずは証拠隠滅を謀り、シャワーへ入ってしまおう!と思った矢先!
突然の彼女の帰宅で慌ててしまったのだ。
リビングの電気はついているので、も俺が帰ってる事は分かっただろう。
が、姿が見えないので探しているようだ。
「おかしいなぁ…帰った形跡はあるんだけど…」
のブツブツ言う声が近づいてきて、俺の心臓はバクバク鳴り出した。(因みに今は寝室にあるトイレの中)
今、見つかれば俺は終わりだ。
にHをさせてもらえないばかりか、それよりも最悪な事態、そう大好きな彼女に捨てられてしまう!
「あれ…オーリーのバスローブ…。出しっぱなしでどこ行ったんだろ…」
「……!」
マ、マズイ…。さっきちょうどクローゼットから出してベッドの上に置いたままだった!
「オーリー?シャワー入ってるの?」
「……!(ドキッ)」
隣のドアが開く音で心臓がドッキーン!と跳ね上がった。
次にトイレを覗かれたら俺はおしまいだ!
鍵もかけ忘れてる事に気付き、変な汗が出てきた。(今かけたら音でバレるし)
が、はトイレを開けることなく、「もう、バスルームにもいない…」と言ってクローゼットを開けたようだった。(音で分かる)
このトイレの位置から見て、クローゼットは真正面。
はきっと中を覗いてるから、こっちに背中を向けてるはず…
そう思ってドアをコソーっと開けてみた。
そして僅かに出来た隙間から片目だけ出して覗いてみると、は思ったとおり、こっちに背を向けて着替えているところだ。
俺がいないと思って油断しているのか、あの罰を仕掛けてからは俺の前で着替える事すらなくなったが、
今は一気にスーツのジャケットを脱ぎ、シャツのボタンを外すとそれを脱ぎ捨てた。
彼女の白い背中が見えて、一気に体が熱くなるのを感じ、俺は見つかる可能性があるにも関わらず、ついつい覗き見を続行してしまう(変態か)
あぁ〜ホントなら今、ここで出て行って、そのままを押し倒したい気分だよ!
お預けを食らってから一ヶ月近くは経ってるんだから、いい加減、裸を見ただけで鼻血が出そうだ(!)
ってか…ちょっと見えにくいな…。もう少し体を斜めにしてくれたら、彼女の綺麗な胸のラインが見えるのに…!(超、変態BOY)
あまりに欲求不満で、自分の恋人の裸を覗き見してる自分がちょっと情けなく感じないでもなかったが、
目の前の誘惑に、そんな小さな恥も理性も全て吹っ飛びそうだ。
が、あまりドアを開ければ見つかりそうだし、ここは見たいのをグっと堪えて……おぉっ♪の胸がもう少しで…!(オイ)
(は!何してる、俺!!)
そこで我に返り、慌ててドアを(あくまで静かに)閉める。
(クソ〜!後もう少しで全貌が見えたのに!)(激しく変態BOY)
おかげで垣間見たの白い肌を思い出して一人、悶々とする羽目になった。
そもそも…何で俺がまたしても、こんな臭い場所(ホントに臭くはないが)に隠れてるのかと言うと……
今日は新しい作品のキャストと初めての顔合わせで、その後には親睦もかねて皆で食事に行った。
なかなか気さくな人達ばかりで、食事をしながら一緒にお酒を飲んで楽しい時間を過ごしていたのだ。
そして明日も早いと言う事で飲んだは飲んだが早めのお開きとなった。
当然、俺はに早く会いたいがために、サッサと帰ろうとした。
が、その時、共演者で今度の俺の相手役の子が同じ方向だと言うので、じゃあ送るよと言う流れになり、一緒にタクシーに乗ったのだ。
それがいけなかった。
忘れていたのだ。
俺は凄くモテるのだ、と…(待て)
家の前に車を止め、彼女の家のエントランスまで無事に送り届けた俺は、そのまま下心も一切なく、紳士に帰ろうとした。
なのに彼女はそんな俺を引きとめ、「お茶でも一杯飲んでいかない?」なんて言うから悪い虫がむくむくと…
いやでも!実際に何かしようと思ったのではなく、せっかくお誘いしてくれたのを断るのはいかがなものか、と悩んでいると、
痺れを切らしたのか、彼女が「ちょっと酔ったみたい…部屋の中まで送ってくれる?」と寄り添ってきた。
そこで逆に理性を取り戻した俺は彼女をちゃんと部屋まで送り、見事に生還したのだ!(どこ行ってたんだ、アンタ)
ちゃんと無事に家につき、可愛い子から言い寄られてもきちんと帰ってきた自分を自分で誉めながら、
俺はが帰ってくるまで、風呂にでもゆっくり入っておこうと、自分の着ていたスーツに手をかけた。
その時、気付いてしまったのだ。
俺の首筋にべっとりついてる口紅の痕に…!
多分、彼女がしなだれかかってきた時、首筋に顔を埋めてきたから(一瞬、ゾクっとして危なかった)きっとその時ついたんだろう。
しかも最悪な事にジャケットには彼女のファンデーションがついていて白くなってしまっていた。(OH!NO!)
こ、これが見つかればにまた誤解される!
そう思った俺はスーツをクリーニングに出す袋に入れず、すぐに捨ててしまった。
じゃないとクリーニングに出しに行ってくれるのはだから、すぐにバレる。
そして首筋の口紅をティッシュで拭いて、さあ安心…なんて思っていると、ふと前にが香水に気づいた事があった事を思い出した。
慌てて確かめてみれば、案の定、俺の香水に混じって女性が好んでつける甘い匂いが混じっていた。
これはバレる。
そこで俺は証拠隠滅のため、その匂いをシャワーで落としてしまおう!と準備をしていた、まさにその時!
が帰ってきてしまったのだ。
今、彼女に会えばきっと香水の匂いがバレる。
そこで浮気したと誤解され、今度こそ絶縁宣言されてしまうに違いない。
だから思い切って隠れた場所が、またトイレだったというだけの話。
(ああ…でもこのままじゃ、そのうちバレちゃうよ…)
がいる気配を感じながら、俺は死刑を宣告される被告人のような気分で、神様にお祈りをささげていた。(それも便器の上で正座して)
神様!イエスキリストさま!お願いですから俺からを奪わないで下さい!
彼女は俺が初めて本気で好きになった女性で、初めて忘れられなかった大切な子なんです!
前の恋人達にはかわいそうな事をしましたが、もう二度と浮気なんてしません!
だから…だから俺が見つからないよう、天国から祈ってて下さい―!(ぇ)
こんなに必死に神頼みをした事すら生まれて初めてで、それだけ今の俺は必死だった。
その時、部屋の方での声が聞こえてきた。
「あ、もしもし。ヴィゴ?です」
「―――ッ?!」
(な、何でヴィゴに…)
そう思ってドアに耳をつけ、会話に集中した。(とことん怪しい)
「それが…帰ってきてもオーリーがいなくて。ええ、一度帰った形跡はあるんですけど、どこにもいないんです。
だからもしかしてヴィゴのとこかなぁ?と思ったんだけど…え、来てない?そうですか。じゃあ、どこ行ったんだろう…」
声の様子からは怒っていると言うよりは俺を心配してくれてるといった響きが感じ取れて、こんな時に(しかもこんな場所で)
胸の奥がジーンとしてしまった。
「ええ、そうですね。もしかしたら近所に買い物に行ったのかも…バスローブも出しっぱなしだったし」
ああ!今すぐ飛び出して行って抱きしめてあげたい!
「はい。じゃあ、もう少し待ってみます。ええ、すみません」
マイハニー!俺はここ(トイレ)にいるよ!
なんて一人出て行きたくてウズウズしていると…
「あ、ヴィゴ。さっきはありがとう。凄く助かっちゃった。今度は私にご馳走させてください。いえ、ほんとに。はい、じゃあオーリーに内緒で。ふふふ」
「―――ッ?!!」
「はい。じゃあ…お休みなさい」
はそこで電話を切ったようだった。
でも俺は今の会話で何だか胸の奥がズキズキと痛んで、嫌ーな気分になっていく。
さっきって何だ?ご馳走って?
はさっきまでヴィゴと会ってたってのか?
しかも俺に内緒って何だよ、それ…
…まさか…はヴィゴと…?!(飛躍しすぎ)
悪い考えだけが浮かんでは消え、俺は気付けばトイレのドアをバーンと開け放ち、に向かって走っていった。
「!」
「きゃぁ!」
こっちに背中を向けていたは、この不意打ちに本気で驚いたのか、俺だと気付いても目を丸くして固まっている。
「!何だよ、今の電話!ヴィゴと会ってたの?俺に内緒って何だよっ!」
「オ、オーリィ?!な…ど、どこに…」
「そんな事より、今の電話は何だよ?もしかして俺に内緒でヴィゴに会ってるわけ?!」
ビックリしているにそう責め立てると、彼女は丸くしていた目を軽く細めて俺を見上げた。
「何言ってるの、オーリィ…そんなわけないでしょ?」
「だ、だって今―」
「今日は買い物に行ったら、たまたまヴィゴに会ったの。彼も息子さんと来てて」
「…ヘンリーと?」
「ええ。それで荷物が多い私を見て、車で送るよって言ってくれて…そのついでに美味しいケーキをご馳走になっただけよ」
「な…え?ケーキ…?」
「そう」
それを聞いて俺は一瞬、唖然としたが、すぐに体の力が抜けてヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「ちょ、オーリー大丈夫?」
「な、何だよ〜〜〜!紛らわしい〜〜っ」
「何言ってるのよ。オーリーが早とちりなだけでしょ?」
は俺の前でしゃがんでクスクス笑っている。
それを見てガックリ頭を項垂れた。
「じゃあ…俺に内緒って何だよ…」
「ああ…それは…ま、いっか。実はヴィゴ、新しい恋人が出来たみたいで、今度は彼女も一緒にって。オーリーにバレたら会わせろってうるさいって言うから」
「な!俺は別に…!」
「はいはい、分かったから。いいでしょ?誤解なんだから。それより…今度はオーリーの番よ?」
「…へ?」
ふと顔を上げると、は呆れたように俺を見ていた。
「オーリーはあんな場所にこもって何してたの?」
「え、あ、いや、あの…」
「まあ本来の用を足してるだけなら、さっき私が呼んだ時に返事くらい出来たはずよね?」
「う…そ、それは…」
バカか、俺は!
ここでに香水の匂いがバレたら―
「あれ、何だか甘い匂い…」
「こ!これは違うんだ!」
「え、な、何が?」
いきなり叫んだ俺にはまた目を丸くした。
「こ、これは今日、顔合わせした時、相手役の子とハグしてそれで移って―」
「ふーん、そう。じゃあ早くシャワー入って来たら?オーリーのと混じって凄い匂いになってきてるし」
「へ?あ、う、うん…そう…だね」
アッサリそう言われ、俺は拍子抜けしてしまった。
何だ、やっぱりは俺を何だかんだ言って信用してくれてるって事なんだ!
だったら別にビビって隠れる必要もなかった―
「ところでオーリー。まだトイレにいた理由聞いてないんだけど」
「え?あ…」
そ、そうだった!
ほんとは誤解されそうで、というとこだけど…も疑ってないなら、また変なこと言って波風を立てたくない…
で、でもじゃあ何て言えば…
「オーリィ…?トイレに隠れて何してたの?もしかして…私に言えないこと?」
「え?!ま、まさか!一人Hなんてしてないよ!そんな変態じゃあるまいし!ははは♪」 (変態だろ)
が顔を赤らめて俺を睨んでくるもんだから、慌ててソレは否定した。
「じゃあ…何してたの?」
「…う」
目を細めて聞いてくるに、俺は再び言葉に詰まった。
が、これ以上、変に誤魔化しても、ますます怪しく思われるだけだ。
そう思った俺は思い切ってを見つめ、「実は…を驚かそうと思って…」と言った。
が、は訝しげな顔で、「だったら、すぐ出てきたらいいのに…」と眉を顰める。
「私が帰ってきてから、かなり経ってるわよ?帰ってすぐオーリー探し回って、その後に着替えて…」
はそこで言葉を切ると、何かに気付いたようにジロっと俺を見るからドキンと鼓動が跳ね上がる。
「な、何?どうしたの、―」
「まさかオーリィ…」
「え…?」
「私が着替えてるとこ、覗いてたんじゃないでしょうね!」
「―――っ!!(ひゃー!)」
それが目的で隠れたわけじゃなかったけど、さっきの着替えをコソッと見てたのは事実。
つい顔に出てしまって、サっとから目をそらしてしまった。
それを"肯定"ととった彼女は見る見るうちに目が釣りあがっていく。
「オーリー!答えてよ!覗いてたの?」
「あ、いや、だから、それは」
「正直に言って!」
「はい……覗いてました…」
の剣幕に押され、ちっさーく答えると、彼女はいきなり立ち上がり―
「オーリーの変態!!信じられない!トイレで覗きなんて!」
「あ、だから違う、ってか、それが目的じゃ―」
「いくら欲求不満だからって普通、彼女の着替え覗く?!そんなに見たいわけ?!」
「え?そりゃ見たいに決まって…」
「―――ッ」
バカ正直に答えてしまった俺は慌てて手で口を抑えた。
が、時すでに遅し――
「最低!!…罰として"H禁止令"に10日間追加よ!!」
「え!!そんな!」
「え、そんな!じゃないわ!分かった?あと半月はダメよっ?」
「ちょ、ちょっと待って、俺、ほんとに死んじゃうってば―」
「人間、Hしなくても死にません!!オーリーのスケベ!変態!覗き魔!」
「そんな!!」
ことごとく彼女になじられた俺は、更に半月、禁欲生活を強いられる事になってしまった…(神様の意地悪…)
今に絶望、君を切望
ああ、それも全て君への愛ゆえなのに
連続でアップで御座います。
ホントはジーク夢書いてたんですけどオーリーが到着したのを見て、ついつい(笑)
結局、ジョニーの自家用ジェットで一緒に来るのではなく、別々に来ましたねv
しかし今回は最もへタレなオーリーをお届けしてしまい、すみませ.…;;
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO
ホントはジーク夢書いてたんですけどオーリーが到着したのを見て、ついつい(笑)
結局、ジョニーの自家用ジェットで一緒に来るのではなく、別々に来ましたねv
しかし今回は最もへタレなオーリーをお届けしてしまい、すみませ.…;;
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO